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こんな記事が話題になっている。

出典kwout.com

「はてなブックマーク」のトップページ、 http://b.hatena.ne.jp/ のWed, 13 Feb 2013 20:22のキャプチャー画像。

2段目の真ん中に、168人がブックマークしている記事があります。

- 記事の導入部分に、次のように書かれている。

……最近は、“肌にやさしい”タイプの生理用ナプキンもあり、生理時のじめじめした不快感はいくらか軽減されるようになりました。しかし、それでもかぶれてしまう方もいますよね。さらに、誰もが使っている市販の生理用ナプキンに、恐ろしい害が隠れていると指摘されているのです。

今回は、生理用ナプキンに隠された害と、その害から守る方法をご紹介します。

この記事をみたときの第一声は、「またか……」

Photo by Comstock Images / Comstock

「快適に過ごせるから」、「体質に合っているから」、「一度使ってみてから判断しようと思うので」、「話題だから」など、個人が積極的な理由で布ナプキンを使うことには何も問題はないし、「使ってみたらこんな点が改善された」、「こんな手間がかかる」といった個人の体験・実感レベルの情報が共有されることは、それが「身近な日用品に関する個人の体験」だということをはっきりさせた上でのことなら、参考情報として多くの人の役に立つでしょう。

しかし、「あなたが使っているそれは有害だ(という指摘もあります)」から、これを使うべき、と主張することは、どうなのか……。

しかもその「指摘」とやらは、誰が、どこで、どのようにしているのか、この記事からはまったくわかりません。

むしろ、この記事は「根拠は不明」と強調しています。(ならば、「そのような指摘がある」とわざわざ述べる意味は? という疑問を抱くのが当然だと思います。)

「科学的な根拠」があれば絶対的に正しくて、それがなければ絶対的に間違っているという、100パーセント白か黒かの世界ではもちろんありません。「トイレの『汚物入れ』に捨てなければならない汚物」であったものに、「洗濯する」という形で、自分の手で触れることはパラダイム転換をもたらしうるし、使用感の問題、気分の問題(「地球にやさしい、エコなことをしている自分」という満足感も含めて)もあり、それらについて「科学的な根拠」は求めようがないかもしれない。

けれども、「紙ナプキンに使われるケミカル素材が、膣を経由して子宮に悪影響を与えるという説があるのです!」などと、根拠・出典も示さずに述べて、読者を脅し、焦らせるようなことをするのは、控えめに言っても、不誠実の極みです。

実はこの話題、さんざん既出。

5年前にmixiのどっかで見かけたときと全然変わってない。

はてなブックマークでのコメントより。私も、5年前ではないしmixiではないけれど、何年か前に、「こんなのを見たのだがどう思うか」と意見を聞かれて「吸収されると述べている時点で信ずるに値しない」と返し、「だよねー」となったことがあります。

1) 昨年10月に話題になった記事

"真夜中、インターネットをうろうろしていたら、ある布ナプキンのサイトにたどり着いてしまいました。そろそろ寝ようかなって思っていたときに行き当たってしまったもんだから、眠れなくなってしまったですよ。"

……と書きだされている若林さんの記事は、全部で3ページ。

読みやすい文章になっているのですが、それでも「それは身体に有害だ!」説のような見せかけだけの「わかりやすさ」は当然ないので「読みづらい」、「理屈っぽい」、「小難しい」と感じる人もいるかもしれません。

それでも、読んでみてください。

1ページ目には、若林さんが遭遇したウェブサイトの「煽り文句」が紹介されています。一言でまとめれば「市販の生理用品(ナプキン、タンポン)は有害だ」という方向の惹句です。一例として、"例えば紙ナプキンに通常使われている、石油から作られた吸収材である『高分子ポリマー(合成化学物質)』は女性器を通して子宮に吸収されます" といったことが書かれているそうです。

次のように書き始められている2ページ目は、それに対する「反証」(根拠を示した反論)です。

一応断っておきますが、私は布ナプ否定派ではなく、皮膚が弱い人にはとても良い方法だし、最近はこういう選択肢も増えて良い時代になったなあ……って思ってます。

私自身も……布ナプキンの心地良さはわかってるのです。

ですが。こういう、どう考えてもインチキな文言を使って、他人を脅すようなことを書いている業者は許せません。ひと通り反証しましょうね。

「高分子ポリマー(合成化学物質)は女性器を通して子宮に吸収されます」
→吸収されません。……

女性器を通して子宮に吸収されるには、皮膚や粘膜を高分子ポリマーが通り抜けて血液に溶けて血流にのらなければならないのだ。

高分子ポリマー http://goo.gl/jypCC

ここに書かれているように、高分子ポリマーの分子量は1万以上。皮膚を透過する分子量は概ね600以下です。まあ、粘膜から吸収出来る分子量も概ね1200前後だそうなので、それよりもずっと分子量が大きい高分子ポリマーが吸収できるわけがありません。吸収できないので、子宮に蓄積することもありません。

こういう説明文をすっと書ける人は当然、こういう説明文を読んですっと理解できるどころか、もっと「難しい」説明文を見ても理解できる人です。

しかし、"『高分子ポリマー(合成化学物質)』は女性器を通して子宮に吸収されます" などというもったいぶった記述(このカギカッコ!)を見て何も疑うこともなく焦ってしまう人には、「高分子」や「分子量」といった「専門用語」は、いわば「壁」になってしまう。そこから先は、自分では主体的に理解できない(ゆえに判断もできない)ので、自信たっぷりに「合成化学物質です」、「だから危険なんです」と言われれば言われるまま、「わかるところだけとりあえず」の形であっても、鵜呑みにしてしまうわけです。

あのような記述が対象としているのはそういう人であり、そういう人が興味を抱いてそのページをブックマークするなり、人に紹介するなり、商品の通販ページでポチっとしたりすれば、その記述は目的を達成します。そもそもが、「正しい情報を人に伝えること」を目的としない記述です。そのときに100%納得してもらう必要はない。何かのきっかけを作れば(「くさびを打ちこむ」ことができれば)よいのです。

(こういうことを誰かが書くと、「何が正しくて何が正しくないのかを決めるのは誰なのか」といったような反応をそれとなく寄せ、議論をまぜっかえし、賛同者や信奉者には「そうよねー」と思わせる、といったことも常態的に行われます。)

若林さんの文章は、このあとも、元となった記述のおかしなところに対する反証の作業を丁寧に行い、3ページ目は次のように結ばれています。

女の体を脅すのはいい加減やめないか? 女性の体は素晴らしい、自然のリズムを持っていて、男性のカラダよりも敏感で繊細で……って言っている人たちが女の体を、心を、脅してどうすんだ。結局逆方向から抑圧しているだけじゃないか。

女性のカラダ周辺のあれこれってホントにこういうので溢れ返っていて、読んでいると顎が外れそうになったあと、ふつふつと怒りが湧いてくるんだよねえ……。もう少し軽やかに女のカラダを取り扱えないもんかなと、こういうの見るたびに思うのでした。

これが、「女の体を、脅すな」という記事の見出し/表題になっているわけです。つまり、「あなたのやり方は危険! 将来生まれてくる子供が……」云々という、根拠の欠片もない言説が、あちこちにあふれている。

身体そのものに関することだけではありません。履く靴の種類から座り方まで、「俗説」という形で10代の女の子や20代の女性に親やその親の世代から言われる「そんなことをすると丈夫な赤ちゃんが産めない/お産に苦労する」という言説の数々。そういうのは今ではかなり薄れているかもしれませんが、あたかもそれに代わるかのように「信仰」に近い「自然派志向」の宣伝文句が雑誌やネットに出てきているように感じられます。

2) 昨年1月から2月に書かれ、話題になった記事

1990年代からあったと思われる「布ナプキン」ですが、ここへ来てさらなるブームの兆しが見られます。今年に入ってから、布ナプキン関連のつぶやきをtwitterでしていたのですが、かなりの反響というか、「使っている」「周りに使っている人がいる」という方からお話を伺うことができました。

……布ナプキンを使う理由は人によりさまざまでしょうけど、布ナプキン普及サイトや販売サイト、実際に利用されている方のお話を伺うと、以下のような理由が多いようです。

- 紙ナプキンの肌触りが気に入らない/かぶれる
- 紙ナプキンよりゴミが出なくてエコだから

これらの理由はなるほどと思えるものです(実際、総合的に見て『エコかどうか』はわかりませんが)。ところが、ナプキン販売、普及サイト(これらを兼ねているところがわりと多いです)を見ると、以下のような理由も挙げられていたりします。

- 生理が重かったが、紙ナプキンが原因と知り布ナプキンに変えた
- 市販の紙ナプキンは経皮毒/ダイオキシンが心配
- 紙ナプキンは身体を冷やすと聞いたから
- 紙ナプキンは石油からできている「ケミカルナプキン」だから

「うさうさメモ」さんのこの記事では、この後まず、「経皮毒」なる言説について検証されています。

いわく、"経皮毒は2005年の竹内久米司、稲津教久共著「経皮毒」により流行した概念で、ニューウエイズなどのネットワークビジネスにおいて市販の製品が危険であるという宣伝に使われました。"

つまり、商品を商店の店頭で販売するのではなく人と人のつながり(=「ネットワーク」)で販売する形の「ビジネス」での言説である、と。

このようなタイプの「ビジネス」においては(また、今はもうほとんど聞かなくなりましたが、新宿など人が多い場所での「キャッチセールス」で販売される化粧品などでも)、「一般の商店で買える商品」について、びっくりするような批判がなされることは頻繁です。(私も「化粧品、何使ってらっしゃいます~? ……ああ、そういうの、実はお肌によくないんですよー」的なトークをかまされて、適当に相槌を打っていたことがあります。)

ちなみに竹内&稲津『経皮毒』は、ISBNが4528013975、出版社は日東書院本社(辰巳出版グループ)です。(どんなことが言いふらされているか、もとい、主張されているかを確認するだけなら、購入しなくても地元の図書館に所蔵があるかもしれません。)

「経皮毒」なる説については、"この理論は特に科学的根拠はないので学術論文等では発表されておらず、一般書籍や講演会で一般人を怯えさせるのにのみ使われています" との由。

詳細は、「うさうさメモ」さん記事、および、記事内からリンクされている Gazing at the Celestial Blue というブログ(by 碧猫さん RIP)の記事をご参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/usausa1975/20120130/p1

さらにこの記事では、「(市販されている)紙ナプキン有害説」や、「月経浪漫派」とでも呼びたくなるような「化学物質から脱却し、古き良き時代の身体感覚を取り戻せ」的な言説についても、出典を示した具体例から、検討・検証されています。そして:

……もちろん、布ナプキンの愛用者が皆このような話を信じているわけではなく、「ちょっとついていけない部分もあるけど、布ナプキン自体は使い心地がいいから使っている」「まわりに布ナプキン派が多くて、経皮毒のことをいう人もいる。インチキだとは分かっているけど、面と向かっては言えない」という方もおられました。また、実際「生理が軽くなった」と感じる方もおられるようです(不快感が減ったせいで心理的なものという気もする、とおっしゃってました)。……

……「布ナプキンなら健康になれる」という考えの裏には、「人間は自然の状態なら健康なはずなのに、化学物質のせいで健康を崩している」という「自然至上主義」的世界観があると考えられます。……布ナプキンは魔法のナプキンではありません。過剰な期待を抱かず、単に選択肢の一つとして考えたほうがよいのではないでしょうか。……もし子宮内膜症や月経困難症の症状があるなら、それをナプキンの経皮毒のせいかもなんて考えてないで、早めに産婦人科医の診察を受けたほうがよいと思います。

「魔法のナプキン」とは、「布ナプキン」の普及活動が着手されたころに普及活動者によって使われたフレーズのようです(書籍のタイトルに使われた)。それは1990年代後半のことですが、そのころといえば、新聞の一面の下部にある書籍広告で「持病が治った」、「ガンが消えた」的な表現はたびたび見られた時代だったと記憶しています。(あとで参考情報挙げます。)

2000年代にそういった表現はだんだん減っていったと思いますが、そのため、ネットの無規制な言論の場にある独特の言説が、「マスコミが報じない」何かのように見えるという現象も、ひょっとしたらあるのかもしれません。

というわけで、「美レンジャー」の記事を見て「本当かな?」と思った方は、ここまでにリンクし抜粋した記事2件、ぜひ全文を読んでみてください。

それでも「経皮毒」云々が気になってしょうがない、という方は、例えば下記のQ&Aに目を通してみてください。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1442583944
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/4591258.html

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作った「まとめ」の一覧は:
http://matome.naver.jp/odai/2133787881446274501

※基本的に、ログを取ってるのであって、「まとめている」のではありません。



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