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読みやすくて感動的な海外小説10選

「翻訳小説にちょっと興味あるけど、ちょっと手を出しにくいなー」って人に向けたまとめ

更新日: 2012年04月20日

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この記事は私がまとめました

三浦修平さん

☆重め☆

わたしを離さないで

トップバッターといえばまあこの作品でしょう。
読書家の方ならおそらくご存知、あのカズオ・イシグロさんの代表作。
海外小説は基本的に映画とかと同時に出版されることが多いです。が、そんな中にあって、珍しく映画が作られる前に口コミで評判となり、購読者を涙の海に叩きこんだ名作。
ヘールシャムという少し奇妙な学校で育った主人公キャシーたちの生涯の物語です。
エンターテイメント性と文学性を両立しており、謎めいた展開もあって、読み始めると止まらない。ラストは号泣。翻訳小説史上に名を残すだろう、紛れもない名作です。

息子を奪ったあなたへ

親愛なるオサマへ(本文より)

念のために申し上げておきますと、本作品の「オサマ」というのは、あのオサマ・ビン・ラディンのこと。
テロリズムに襲われたイギリスを舞台に、夫と息子をなくした女性の物語を描いた名作です。あまりに臨場感のある描写で、現実にこの事件が起きたのかと思いましたが、あくまで設定のようです。
内容としては、テロどうこうというより、現代イギリス社会の病理について切り込んだもの。いまいち日本とは馴染みが薄いせいか、発売当初からめっきり話題になりませんでした。
ですが、作品は紛れもない名作。テロリズム物の代表作となっていてもおかしくない完成度で、読後のずっしりとした重たさは他に類を見ません。まさに爆弾みたいなインパクトのある作品でした。

くらやみの速さはどれくらい

自閉症を題材として扱った、ソフトSF小説。
自閉症の治療が可能になった近未来を舞台に、主人公のルウの価値観と決断を描いた名作です。
一応、ジャンルの区分としてはSFになりますが、それらしいガジェットは登場せず、あくまでルウの人間性や生活のほうを掘り下げた内容になっています。ちなみに著者エリザベス・ムーンさんのご長男も自閉症だそうで、印象的なタイトルは彼の疑問から誕生したとお聞きしました。
非常に読みやすい文章で、はっとさせられるところの多い名作。SF初心者にもお勧めです。

☆柔らかめ☆

風の影

バルセロナの影と光

スペイン内戦がそう遠くない過去であったころのバルセロナを舞台に、少年ダニエルを主人公として、一冊の小説「風の影」にまつわる人々の悲喜劇を描いた物語。
話の主軸は「風の影」の作者フリアン・カラックスの過去を追いかけるものです。が、本作品の特徴はそこではなく、次から次へと現れては消えていくバルセロナの住人たち。元スパイのホームレス「フェルミン」に、青春時代に会ったらそりゃ惚れるわというヒロイン「ベアトリス」、妙に色気があってしたたかなビッチ「クララ」など、様々なキャラクタが活き活きと描かれ、古都バルセロナの情景が立体的に浮かび上がってきます。
小説版「飛び出し絵本」といえる唯一無二の作風。久しぶりに寝食を忘れて没頭しました。

ぼくは怖くない

子供はみんなヒーロー

南イタリアのど田舎アックア・トラヴェルゼを舞台に、廃屋に鎖で繋がれた謎の少年フィリッポと、主人公のミケーレの葛藤と友情を描いた物語。
児童文学的な柔らかさのある小説ですが、その背景にあるものはどうしようもなく重く悲しい。
ミケーレはそのことを薄っすらと察しつつも、子供ながらの純真さで、フィリッポとの約束を守ろうとします。
子供時代を清々しく描いた作品で、むしろ心の汚れてしまった大人にこそ読んでいただきたいところ。
シンプルで読みやすく胸打たれる名作。ぜひとも一度はお読みください。

ぼくと1ルピーの神様

あなたの運命の決断は?

主人公ラム・ムハンマド・トーマスの視点から、インドの貧民街に生きる人々を活き活きと描いた名作。
おそらくアカデミー賞を獲得した映画版「スラムドッグ$ミリオネア」のほうが有名かと思います。
ただし、作風は結構別物。ラブストーリーを主軸にした映画版とは違い、本作はトーマスの出会う人々の物語が中心になっています。構成はオムニバス方式に近く、笑ってしまうようなくだらない話から、ぎょっとするほど暗いものまであって、インドという国の熱気をまざまざと感じさせられました。
テーマ的には映画版と正反対で、まさにコインの表裏のような関係ですが、私は小説版のほうが好きです。
「運」と「金」と「決断」。あなたならどれを人生の指針にしますか?

☆短め(短編集)☆

停電の夜に

遠い人を思うということ(本文より)

本作は基本的に、インドからの移民と思しき人々の、どうにも埋めがたい周囲との亀裂を描いた作品です。
文章そのものは非常に読みやすく、まさに「瑞々しい感性」という言葉がぴったり当てはまる感じですが、内容そのものは決して安易なものではありません。読後の「置き去りにされたような気分」がひどく印象に残りました。
合計9編の短編で構成されていますが、それぞれカラーはだいぶ違います。個人的なお勧めは「ピルサダさんが食事に来たころ」「本物の門番」「セクシー」「三度目で最後の大陸」の四つ。長編に比べれば短時間で読めますので、この機会にぜひ手にとってみてください。

巡礼者たち

孤独と幸福

この世の喧騒からかけ離れたところで生きる人々の、ふとした孤独と切ない幸福を切り取った名作。
一文一文の無駄がなく、非常にダイレクトに情景が思い浮かびます。
個人的なお勧めは表題作の「巡礼者たち」と、どういうわけか泣きそうになる「トール・フォークス」、あーわかるわーって気分になれる「デニー・ブラウン(十五歳)の知らなかったこと」の三つ。
ちなみに著者のエリザベス・ギルバートさんは、これからだいぶ後に『食べて祈って恋をして』という小説(というかエッセイ)を書いています。あまりに作風が違ってびっくりしましたし、ご本人がわりと親しみの持てる性格のようでちょっと笑いました。女性にお勧めの作風です。

宮殿泥棒

優等生の宿命

大抵の作品ではまず「主人公」になれない人々の、宿命としかいいようのない一瞬を切り取った名作です。
各主人公はそれぞれ満たされないものやどうしようもない物を抱えつつも、ちゃんとした人生を歩んでいます。が、彼らのすぐ傍には自分よりも遥かに求心力を持つ人がいる。
それが「旧友」「兄」「息子」「生徒」であったときの短編を四つまとめたものです。
どの作品も決して一概に明るい結末は迎えませんが、諦めの先にある暖かさにまで内容が及んでおり、完成度はずば抜けています。話題にならないのが不思議なくらいで、特に表題作には感銘を受けました。
「凡庸」という生き方に身につまされるところがありましたら、ぜひとも手に取ってみてください。

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このまとめへのコメント1

  • kouhey12さん|2012.04.21

    海外小説は訳の加減でかなり読みにくかったりするのでこのまとめは非常に参考になります。

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