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町山智浩さんの「面白いほどよく分かるアメリカ政治の歴史」

映画評論家なのに、アメリカの政治にも詳しい町山智浩さん(最近発売された『99%対1%アメリカ格差ウォーズ』『教科書に載ってないUSA語録』もオススメ)が大統領選を目前にして、ツイッターでアメリカ政治の流れを解説していたので、まとめてみました。

更新日: 2012年11月05日

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この記事は私がまとめました

hawaiiskyさん

共和党と民主党の対立は米国建国時に、中央政府が必要だとした連邦党と、中央政府なしで各州が国家として連合するとした共和党との対立から始まります。連邦党は現在の共和党に、建国当時の共和党は現在の民主党へと繋がります。中央政府に対する考えも入れ替わりました。

当初、共和党は連邦制、民主党は各州の自治権を重視しており、共和党は近代化された北部、民主党は奴隷制度を基盤にする南部をテリトリーとしていた。リンカーン(共和党)が連邦法で奴隷制度を禁止したので、南部(民主党)が分離独立。連邦を維持するため連邦が南部を戦争で破って「占領」した。

もともと北部は信仰の自由を求めた入植者が多かったが、南部バージニアに入植した人々は信仰に無関心で、土地や財が目的の流刑者も多く、彼らは入植するとすぐに奴隷商売を始めた。しかし南北戦争で焦土と化し、産業革命にも乗り遅れて貧困化した南部では、福音派に救いを求める信者が激増した。

南北戦争後も民主党は依然として南部の貧しい白人労働者の党で、福音派の党でもあった。しかし理想主義者のウィルソンを経て、ローズヴェルト大統領がニューディール政策で、南部に公共事業による雇用を拡大。ここから民主党は貧困の撲滅を党是とするようになった。いわゆる「リベラリズム」である。

労働者に支えられたニューディール体制の福祉国家アメリカは60年代まで続き、その間に大統領になったアイゼンハウアー(共和党)もフリーウェイの建設、人種統合、米ソ雪解け、とリベラルな政策を行った。戦後の日本にとってのアメリカの民主主義とは、このリベラリズムを指す。

共和党の伝統的な経済思想はいわゆる「見えざる手」に委ねる古典的自由主義だったが大恐慌で失敗し、ケインズ主義によるニューディール政策に道を譲る。その後、保守派は新しい指針を探し、保守論壇誌ナショナルレビューを中心にハイエクやフリードマンに基づく新自由主義経済へとたどり着く。

南北戦争後も南部では黒人の参政権は抑圧され、人種隔離が続いていたが、ケネディ-ジョンソンの民主党大統領によって撤廃される。これで南部の白人は民主党から離れていく。ベトナム戦争の継続を掲げたニクソンを再選させたのも、南部や中西部の白人、もともとは民主党支持者だった。

人工中絶が最高裁で合法化されると、全米の宗教保守はそれを再禁止すべく、投票への動員を始めた。最初は福音派のカーター(民主党)に投票したが、彼が進歩的なモラル政策を取ったので幻滅した。彼らを取り込んだのが古き良き価値観の再生を掲げたレーガン(共和党)だった。

レーガンはモラル的には福音派の不自由さを選んだが、経済政策では新自由主義による規制撤廃、減税、市場への不介入、自由放任を選んだ。こうして南部の貧しい宗教保守と産業界・富裕層という全く異なる層が共和党の支持基盤となり、この体制は子ブッシュの失政まで続いた。

レーガンは民主党によるニューディール体制を「大きな政府」だと批判し、民営化と福祉削減による「小さな政府」を掲げました。建国時に連邦政府を提唱した連邦党が共和党の源流なのに、この時、完全に立場が入れ替わったのです。

アメリカの政治は約30年でパラダイムが変わってきた。1930年から60年代まで続いたニューディール体制(アイゼンハワー含む)、10年の迷走を経て、80年から08年まで続いた新自由主義体制(クリントン含む)。それが金融崩壊で終わったので、今は次のパラダイムへの過渡期である。

このように民主党は福祉や公共事業による「平等」を、共和党は市場と競争を重視した「自由」を理念とするが、モラル的には民主党は同性愛や中絶などの「自由」を守って同性愛者や女性の支持を得て、共和党はそれの禁止、いわば「不自由」を掲げて宗教保守の支持を得るという「ねじれ」がある。

共和党の理念「自由」も、民主党の「平等」も、独立宣言に書かれている民主主義と資本主義の両輪で、日本や欧州では両者がバランスを取るが、アメリカではニューディールによる平等が行き過ぎて経済停滞、新自由主義が行き過ぎてリーマン・ショックと、どちらかが破綻するまで突き進む傾向がある。

アメリカが世界一の大国になったのは、誰でも自由市場競争に参加できるシステムのおかげだったが、自由競争が続くと勝者と敗者の間に格差が広がり、敗者は貧困の中で教育レベルが下がり、競争参加ができず、下層に固定され、社会は停滞する。

そこで政府が強制的に、富裕層の富を政府が貧者に再分配して彼らをスタート地点に戻して再び自由市場競争を活性化させる必要が出てくる。これをトランプのカードの配り直しにたとえてニュー・ディールと呼んだ。これで中流が形成され、大卒率が上がり、国民の知的レベルも上昇、巨大な生産力と消費力が生み出された。

しかし60年代後半、敗戦国である日独の工業が再生すると労働組合に支配されたアメリカの製造業は市場競争で負けてしまった。市場を再活性化するためレーガンの下で新自由主義が始まったが、企業は組合を避けるために製造部門を人件費の安い海外にアウトソースするようになった。

海外への製造部門のアウトソースで企業は効率良く収益を拡大したが、アメリカ国内の労働者の仕事は激減した。こうして経営者は豊かになり、労働者は貧しくなっていった。アメリカの主力産業はものづくりから金融、投資、情報産業へと移行した。非エリート層にはサービス業しか残されなかった。

民主党は伝統的に労働者を支持基盤としたので、クリントン政権は当初、国内の労働者を守るため、対日貿易圧力をかけた。このため、今でも日本では民主党は反日と考える人も多い。しかし成果が上がらなかったためクリントンは製造業を諦め、新自由主義経済の政策に転向し、金融・情報産業が隆盛する。

ブッシュ政権は国内の労働者を守る保護主義よりも、企業の利潤追及のためのアウトソーシングを放任する立場だったので2000年代、アメリカは中国製品に席巻された。日本は民主党の保護主義を嫌ったが、ブッシュが保護主義を取らなかったために中国経済はあれほど躍進したのだ。

レーガン政権から続いた富裕層への減税、企業の効率化、労働組合の弱体化等によって、経営者と労働者の貧富の差は何百倍にも広がり、ローンを抱えた中流以下の家庭では子どもを大学に行かせることは難しくなり、貧困層への転落、貧困の固定化のため、自由競争に参加できなくなっている。

だから現在、求められているのはかつてのニューディールのように、再び人々が自由競争のスタートラインに立てるように格差を是正して仕切り直すことである。ところがロムニーが掲げているのは、富裕層への減税、福祉など財政支出の削減、企業への規制緩和など、新自由主義の継続にすぎない。

共和党は「自由」、民主党は「平等」。どちらが正しい、ということではなく、自由と平等は資本主義の両輪。自由競争は誰にも平等にチャンスが与えられて初めて機能する。1981年から08年まで自由が暴走しすぎたから、今は平等が求められているというだけの話なのだ。

ロムニーに致命的だったのは09年にオバマが公的資金でGMを救済した際、「自己責任で倒産させろ」と言ったこと(GMは再生)。さらに、彼が経営したハゲタカ・ファンドで買収した企業の労働者を数十万人リストラし、その一方で中国の従業員2万人の工場に投資したのが発覚したことだろう。

アメリカの政治潮流は個別の大統領や政党よりもCoalition(連合)で見る必要がある。30~60年代のニューディール体制は以下の人々の投票で支えられた。労働組合、農民、南部人、インテリ、民族的または宗教的マイノリティ。これを「ニューディール連合」と呼ぶ。

レーガン以降、08年まで続いた保守体制を支えた連合は「レーガン連合」と呼ばれる。WASP、キリスト教保守、富裕層・財界、それにそれまで民主党を支持していた南部人、中西部の労働者たち。この連合によっていわゆる「アメリカ保守革命」が続いた。

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