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あの『トーマの心臓』が正式に英訳出版される。(米The Atlanticでの紹介記事)

萩尾望都さんによる1974年の作品、『トーマの心臓』がMatt Thornさんの翻訳で、英訳出版されます。米誌The AtlanticでのNoah Berlatskyさんによるレビュー記事を少し紹介。

更新日: 2014年04月16日

nofrillsさん

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The Gay Teen-Boy Romance Comic Beloved by Women in Japan - Noah Berlatsky - The Atlantic theatlantic.com/sexes/archive/… 何ごとかと思った。トーマの心臓の英訳出版のお知らせ&解説記事

萩尾望都『トーマの心臓』(1974年)

ある雪の日、シュロッターベッツ・ギムナジウムのアイドルだったトーマ・ヴェルナーが陸橋から転落死し、ギムナジウム中が騒然となる中、委員長であるユリスモール・バイハン(ユーリ)のもとにトーマからの遺書が届く。事故死とされていたトーマの死が自殺であること、トーマが死を選んだ理由が自分自身にあることを知り、ユーリはショックを受ける。

数日後、ギムナジウムに亡くなったトーマとそっくりの転校生、エーリク・フリューリンクがやってくる。……

漫画雑誌『週刊少女コミック』1974年19号から52号に連載

この作品が、英語圏で正式に翻訳出版される。

A shōjo classic in english for the first time.

The setting: A boys’ boarding school in Germany, sometime in the latter 20th Century. Fourteen year-old Thomas Werner falls from a lonely pedestrian overpass to his death immediately after sending a single, brief letter to a schoolmate:

To Juli, one last time
This is my love
This is the sound of my heart
Surely you must understand

Thus begins the legendary and enigmatic Heart of Thomas, by Moto Hagio. ...

(『トーマの心臓』が「20世紀後半」なのかどうか、私は知りません。いつの時代が舞台だとか、考えて読んでなかったんだと思います。)

この英訳出版の紹介記事がThe Atlanticに。

A gay love story for everyone: Why Japanese women love a teen-boy romance comic theatln.tc/VBwtI4

この媒体については:
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Atlantic

1857年、マサチューセッツ州ボストンで創刊。2005年にワシントンDCに拠点を移転。ざっくり説明すると、日本で有名なNewsweekやTIMEと同じ系統のニュース雑誌で(自社の記者が現場で取材している)、より「解説・論説的」な面が強い、というメディアです。

At the Atlantic I talk about cross-gender identification and Moto Hagio's Heart of Thomas: theatlantic.com/sexes/archive/…

記事を書いたノア・バーラトスキーさん(名字の読み方は正確にはわかりません)。漫画・カルチャーを扱うサイトの編集者で、Slate, Reasonなどで文章を書き、『ワンダー・ウーマン』についての書籍が近刊予定、との由。

このツイートで述べられているポイントが、非常に重要ですね。「男女という性別をまたがって/性別にこだわらず自己投影すること」。

At first glance, Moto Hagio's classic Japanese manga (or comic) The Heart of Thomas looks suspiciously like a serialized soap opera. ...

There is one thing, though, that definitively and obviously sets Heart of Thomas apart from daytime serials. Hagio's story is set in a German boarding school. In case the implications aren't clear, that means that all the characters are boys, and all the romances are gay.

【大意】萩尾望都の名作漫画、『トーマの心臓』は、一見、まるでテレビの連ドラのような印象を受けるような筋立てだ。……(※原文ではここに、「山あり谷あり、甘い恋愛あり悲劇的な死ありの人間模様」的なクリシェが並べられている)

しかし、『トーマの心臓』が昼間の連続ドラマと絶対的にまったく違う点が、1つある。このドラマの舞台は、ドイツの寄宿学校なのだ。といっても伝わらないかもしれないので念のために明示しておくが、つまり登場人物はすべて男の子であり、つまりすべての恋愛は同性間のものなのである。

The Heart of Thomas is, in fact, one of the seminal works in the boys' love subgenre of shojo manga ... In 1974, though, ... boys' love was experimental and even in some sense avant garde. The first story in the genre had just been published in 1971 by Hagio's roommate, Keiko Takemiya.

For mainstream American audiences, of course, the genre remains unfamiliar—and as such, it tends to provoke a certain amount of befuddlement. Gay romance comics for women? What? Why?

【大意】『トーマの心臓』は少女漫画のサブジャンルである「ボーイズラブ」の萌芽期の作品のひとつだ。……(※原文ではここに「ボーイズラブ」漫画についての説明)……しかし、萩尾が『トーマの心臓』の連載を始めた1974年には、少年愛(ボーイズラブ)は実験的である意味では前衛ですらあった。このジャンルの最初の物語は萩尾のルームメイト、竹宮恵子によって1971年に発表されたばかりであった。

むろん、アメリカのメインストリームの読者にとっては、このジャンルはほとんど未知だろう。であればこそ、わけがわからないという反応を引き起こす。「女性向けの男同士の恋愛の漫画? 一体何? 何が目的なのか?」

... Matt Thorn offers a couple of explanations. One is historical; Hagio was directly inspired by the tragic romanticism of Jean Delannoy's 1964 film Les amities particuliéres, about two boys who fall in love at a boarding school. But Thorn also suggests that there were formal and thematic reasons for the choice.

【大意】(英訳版の前書きで、翻訳者の)マット・ソーンは、いくつかの説明をしている。ひとつは歴史的な経緯だ。萩尾は、寄宿学校で恋に落ちる2人の男子を描いたジャン・ドラノワ監督の映画『悲しみの天使』(1964年)に直接触発されたというもの。しかしソーンは、萩尾のこの選択についてはこのほかに形式的な理由、テーマとしての理由があるともいう。

Hagio actually initially tried to set the story in a girls' boarding school—but found that she ended up wanting to make the action, as Thorn says, too "realistic and plausible." The result was, in Hagio's words, "sort of giggly." Thorn concludes that "It was important that the characters be _Other_ in order for Hagio to explore the themes, some quite abstract, that she wanted to explore."

【大意】萩尾は最初は、物語の舞台を女子の寄宿学校にしようとした。しかし、ソーンの言葉を借りると、萩尾は最終的に出来事をあまりに「現実的でありえそうな」ものにしたくなっていたのだという。その結果は、萩尾自身の言葉だが、"sort of giggly"(※萩尾さんの日本語を知らないので翻訳しないでおきます)になった。ソーンは、「萩尾にとって、自分が追求したいテーマ(そのいくつかはかなり抽象的なものだった)を追求するためには登場人物が『他者』であることは重要だった」と結論している。

I don't disagree with Thorn's analysis of Hagio's motivations, but I think it's worth thinking a bit more about why and how it's important for the characters in Heart of Thomas to be _Other_, and why that would be something women respond to. ...

【大意】萩尾の動機についてのソーンの分析には特に異論はないが、『トーマの心臓』という作品の登場人物が『他者』であることがなぜ、そしてどの程度重要だったのかについて、そしてそれがどうして女性たちの心に響いたのかについて、もう少し考察を深めてみたいと思う。

……という次第で、Noah Berlatsky (aka Hooded Utilitarian @hoodedu) さんのレビューは、「クールジャパン」だの「BL/やおい」だの「萌え」だの「キャラ萌え」だのといった、一種「イロモノ」としての「不思議の国ジャパン」へのスケベ心あふれる野次馬の目線ではなく、非常に(言ってみれば)お堅い「分析」の言葉でつづられています。

「レビュー、評論」というものである以上、決して読みやすい文章ではないのですが、「ニッポン特殊論」の向こうにある「普遍的な何か」(「異文化」に対する「オリエンタリズム」の遍在という問題も含め)を紹介しようという、非常に誠実な文章だと思います。ぜひご一読を。

(ただし、ジークフリードは作者であると同時に/作者である以上に、作者に対するセクシャルな力/暴力の行使者である、ともっと明確に位置付けていればもっとよかったのに、など思うところはあります。)

Noah Berlatsky talks about The Heart of Thomas, gender identity and more on @TheAtlantic: theatlantic.com/sexes/archive/…

英訳版の版元のツイート。Gender identityというのはちょっとわかりません…「同性/異性」という見方じゃなくて「性別など関係ない」(男は男にしか感情移入・自己投影しない・できない、といったしばりがない)という話をしているのに……

Noah Berlatsky (@hoodedu) has written a great essay on Moto Hagio's The Heart of Thomas for The Atlantic. theatlantic.com/sexes/archive/…

翻訳したマット・ソーンさんのツイート。

このレビューへの反応

Never thought about analyzing this genre (which very much exists). Very interesting piece. theatlantic.com/sexes/archive/… via @TheAtlantic #Japan

「このジャンルを分析するという発想はなかった」

i wonder how many Atlantic readers knew about boys love manga before @hoodededu did this write up of Heart of Thomas? theatlantic.com/sexes/archive/…

(「ボーイズラブの漫画」と言われると、すっごい違和感があるのですが。『アナザー・カントリー』が本質的に「システム」についての物語で、「ゲイのロマンス」の物語ではないのと同じで)

theatlantic.com/sexes/archive/… I think every otaku will say "Well, DUH!" to the lead.

一体どういう意味でotakuという言葉が使われているのだろうと思います。「日本の漫画に詳しい人」=otakuなのかな。

リードは: "Moto Hagio's Heart of Thomas series markets a male homosexual love story to women—and it works."

I am kind of amazed that someone took the time to deep-analyze a Japanese gay teen boy romance comic. ALSO AWESOME theatlantic.com/sexes/archive/…

@aimeelevitt In which The Atlantic talks about Shoji but doesn't mention the word Yaoi, not even once: bit.ly/Wr1r5J

WOW. It's just because The Heart Of Thomas does not belong to "yaoi". No way.

Sort of wish folks could read/comment about the story rather than the lead, which is about Heart of Thomas, not boys' love in general

The Atlanticの記事を書いた Noah Berlatskyさんのツイート。「リードだけではなく、記事全文を読んでコメントしてほしいと思う。特定の作品について書いたんであって、ボーイズラブというジャンル全体について書いたわけではない」

ごもっともです。

BLが日本女性に人気 QT @jakeadelstein: The Gay Teen-Boy Romance Comic Beloved by Women in Japan - Noah Berlatsky - The Atlantic theatlantic.com/sexes/archive/…

…リード文どころか、見出ししか見ずにツイートするとこうなっちゃいますね。あるいは『トーマの心臓』をご存じないか。。。

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