「かずゆき、お年玉はお母さんが預かっとくわね」
そう言われ、俺は10年間、母にお年玉を奪われ続けた。
母は俺からとったお年玉をカギ付きのタンスにすぐにしまい込む。
家は貧しく父がいないため、母が弟の子守りをしながら稼いだ、僅かな金でその日暮らしをしていた。

数年して、俺は母に行き先を告げないまま、上京した。
夢を追って消えた俺を、母はさぞかし心配したことだろう。
しかし、東京での暮らしは、辛いものだった。
ろくに学校も出ていない俺は、アルバイトにさえ雇ってもらうのも難しかった。

東京に来て数年たったある日、見覚えのある男が話しかけてくる
「お前・・・かずゆきか?・・・久しぶりだなぁ」
ひでおじさんだった。俺は思わず涙を流した。ひでおじさんは懐かしい匂いがした。
しかしその涙は次の瞬間、悲しみの涙に変わった。
「お前の母ちゃんな・・・ついこないだ死んでしまったんだよ。肺の病気だった。・・・どうか気を落とさないでくれよ」ひでおじさんは、俺を車に乗せた。車はひでおじさんの家へ向かっていた。・・・母の位牌。俺は手を合わせ、俺の身勝手さに泣いた。

「かずゆき、母ちゃんがお前に渡してほしいって言ってた手紙があるんだ、読むか?」
ひでおじさんはそういうと、薄汚い封筒を俺に手渡した。
封筒には、一枚の手紙が二つ折りになって入っていた。
『あけましておめでとう 最後におかあさんから お年玉』
手紙にセロテープで貼り付けられた、小さなカギ。

俺は急いであの家に帰った。
タンスを開けて、俺は泣いていた。
母に預けておいた10年間のお年玉が、そこできらきら輝いていたから。

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