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【小説】これからの作品にも期待! おすすめの新人小説家と作品【読書】

ここ2,3年に新人賞を受賞した小説を紹介。

更新日: 2013年08月08日

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keioooさん

★デッドマン/河合莞爾 第32回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作

頭のない死体、胴体のない死体…身体の一部が持ち去られた6つの死体が都内で次々と発見される連続猟奇殺人事件が発生。鏑木鉄生率いる個性派揃いの特別捜査班4人が捜査に当たる中、一通の奇妙なメールが届く。差出人は「デッドマン」。彼は6つの死体のパーツを繋ぎ合わされて蘇った死人であると言い、自分たちを殺した犯人を暴くために協力したいというのだが…。

面白かった。何より、人物の書き分けがよい。ストーリー展開の小気味よさ、間延びせず置き去りにせずこの作者ならではのリズムなのだろう。このリズムよいテンポにラストまでじっくり楽しめた。
手法は古いものを取り入れたのかもしれないが、この作品はまた違う雰囲気を醸し出しており、古臭さを感じない。刑事の帳場の臨場感よりも個々の刑事にスポットをあて、その性質を最大限に生かす作風にしたことでおりなす人間ドラマを描いているところが非常によかった。
正直、最近のミステリはついていけない展開が多く、首をかしげざるを得ない理解できないキャラクター設定、構図、あげくにまとめきれないラスト。だめだこりゃ的なうんざりする作品をこれでもかと売り出す出版社の姿勢にがっかりしていたのだ。
これからは古典を読むしかあるまいとまで思っていたところにうれしい作家の登場である。別に奇をてらった設定や人物物語を読みたいわけではなく、ミステリで人間の本質を読みたいのだ。この作品にはそれを感じる。まだまだ懐が深そうな余裕のある筆致に続編や新作品が書かれることに大いに期待を寄せている。

河合莞爾さん新作

★先導者/小杉英了 第19回日本ホラー小説大賞大賞受賞作

15歳のとき「先導者」として認可された「わたし」。死者を再び富と名誉を持った家系に生まれ変われるように導く役割を託されていた。過酷な訓練を経て、ついに最初の任務を果たすときが来たが……。

売れて欲しい作品ではありますが、文章が2001年大賞受賞作のジュリエットをも凌駕する、格式高いレベルであるため、読み手を選ばざるをえないといえます。それだけ現代人が読みやすい文章を求めているという事でもあり、悲しくもあるところです。同じく大賞を受賞した夜市のような文章であればもっと素晴らしい作品であると瞬く間に伝播していったでしょう。
誤解も招く言い方かもしれませんが、この先導者が紛れもない、2012年の文芸界の傑作であることには違いありません。ディナーのあとに謎解きだとか陳腐な小説は勘弁してくれと願う小説愛好家にはぜひおすすめします

★クリーピー/前川裕 第15回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作

犯罪心理学の教授の高倉には、奇妙な隣人がいた。父親とおぼしき同居人を「お父さんじゃない」と言う娘が住むその家庭に興味を抱いていた、高倉の友人の刑事は行方不明になってしまい、やがて高倉邸の真向かいの家が焼け、焼死体が発見される……。鬼気迫る臨場感をたたえた、傑作心理サスペンス誕生。

愛想のいい隣人・犯罪心理学者・同級生・・・見事です。私は田舎に住んでいる為周りは親戚も多く付き合いがあり、他で暮らしたときも隣人を知らないことは殆どありませんでした。でも、現代社会では隣人が誰なのか知らないのが当たり前なのでしょうね。説明にも書いてありますが、前川裕さんはこの作品が作家デビュー作とのこと。驚きです。ミステリーやホラーが好きで今まで沢山の作家さんの作品を読ませていただいてきましたが、日本の作家さんが書いたとは思えない作品。久しぶりに身震いする作品に出会えました。文章力に欠ける私には説明しづらい作品ですが、人間の心理描写が上手く引き込まれます。終盤は良い意味で裏切られました。この作品を皆さんにオススメしたいのですが、読んだ後、隣人を見る目が変わらないようご注意を。あなたが、怪しい隣人に・・・。

前川裕さん新作

★罪の余白/芦沢央 第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作

高校のベランダから転落した加奈の死を、父親の安藤は受け止められずにいた。娘は、なぜ死んだのか。自分を責める日々を送っていた安藤の前に、加奈のクラスメートだった少女が現れる。彼女の協力で娘の悩みを知ったとき、待っていた現実とは―。大切な人の命を奪われたとき、あなたはどんな償いを求めますか。

特別なトラウマや複雑な家庭環境があるわけでもない普通の女子高生たちのやりとりに現実味があって、それが結果として死につながっていった展開にどきどきしました。
いじめの背景を時代だとか家庭環境とかのせいにしたがる世の中ですが、実際のいじめはそういうものに関わらず自然と発生していることがリアルに表現されていたと思います。
ラストは皮肉さとやるせなさとを含みながらも、どこか救われたような気持ちにもなりました。
今後も楽しみにしています。

★さあ、地獄へ堕ちよう/菅原和也 第32回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作

SMバーでM嬢として働くミチは、偶然再会した幼なじみ・タミーから《地獄へ堕ちよう》というWebサイトの存在を教えられる。そのサイトに登録し、指定された相手を殺害すると報酬が与えられるというのだが……。

著者の経歴が気になって、本屋さんで買いました。
正直、読む前はかなり不安だったのですが(帯に書いてある、最凶の最年少とか、破滅型ミステリとか。なにより、著者の見た目がチャラい笑)。。。実際に読んでみると、意外とまとも。というか、むしろ深刻なテーマに真剣に向き合って書かれた内容でした。
SMだとか身体改造だとかといったアングラなテーマを扱っているのですが、そういったものに対する著者の知識が異常なくらいに深いです。そのうえ、痛覚や苦しみに対する描写がすさまじい。リアル。読んでると、体や心が痛くなってきます笑。いとも簡単に禁忌を犯して、道徳を踏みにじってしまう、そんな小説です。
かなりグロテスクな内容なのは間違いないのですが、不思議と、すらすらと読めます。そして、読み終わったあとは何故か爽やか。
いろんな意味で意外で、衝撃的な作品でした。

菅原和也さん新作

★ホテルブラジル/古川春秋 第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作

「会社」の裏取引で得た金を持って逃走中のチンピラ・江古田、武器の密売を仕切り、金を取り戻そうと江古田を追う頭脳派眼鏡・船越、特注の超合金バットで江古田と船越の粛清に乗り出す武闘派野球部・喜界島、江古田に彼女を襲われたことで抗争に巻き込まれてしまったサラリーマン・次晴。1億円はいったい誰の手に渡るのか。最悪の殺し合いが今、始まる。

深夜に放送されるような、ドタバタ映画のような小説。
文章を読んでいて、主人公たちの血と汗と焦りが肌で感じられる。
とにかく面白い。見ていて、スカッとする。
ある程度流れが予測できるが、その予測通りに動いてくれることが快感になっている。
ラストなど、水戸黄門が長年愛されてきたような、いい意味での予定調和がある。
場面が目まぐるしく動くので、一晩で読み切ってしまいました。

★襲名犯/竹吉優輔 第59回江戸川乱歩賞受賞作

十四年前、関東の地方都市で起きた連続猟奇殺人事件。ルイス・キャロルの詩を下敷きにしたかのような犯行から「ブージャム」と呼ばれた犯人は、六人を殺害した後、逮捕される。容姿端麗、取り調べにも多くを語らず、男を英雄視する熱狂的な信奉者も生まれるが、ついに死刑が執行された。
そしていま、第二の事件が始まる。小指を切り取られた女性の惨殺体。「ブージャム」を名乗る血塗られた落書き。十四年前の最後の被害者、南條信の双子の弟、南條仁のもとへ「襲名犯」からのメッセージが届けられる……。
惨劇はなぜ繰り返されるのか? 現在と過去を結ぶ事件の真相とは?

場面によって表現に多少ムラがあるかな? とも感じましたが、それはさすがに求めすぎでしょうか。ともあれ、殺人の場面には背筋がぞくっとする迫力がありましたし、日常の場面には頬がゆるむユーモラスさも感じました。全体としてメリハリがきいています。それだけに事件の真相にははっとさせられ、その後の顛末にはほっとしました。猟奇殺人を扱っているにもかかわらず、「人」全般に対する深い愛を感じる筆力があります。

私は最近あまり小説が読めていないので最近のミステリーの動向がわからないのですが、さしあたって過去の乱歩賞の作品と比べた際に上位に入るお気に入りになりました。作者はこれがデビュー作とのこと。この出版不況の折に、長編で力のある新人が出てきてうれしいです。いかなる娯楽もハードルを上げればケチのつけようはあるでしょうが、それでもミステリー好きなら、今後の作者の進化と伸展を追うためにも早めに一読しておく価値のある良作だと思います。

★絶対服従者/関俊介 第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作

女王アリVS.悪徳市長。欲望渦まく追跡バトルから逃げ切れるのか、俺。突然変異で高度な知性を備えたハチやアリがヒトの代わりに働き、失業者が溢れる街で、おぞましい秘密工場の存在を知ってしまった俺。長期政権で街を牛耳る市長の悪事を暴くべく、決死の闘いから生還した先に待っていたのは、苦痛に満ちた絶対服従の日々であった――。異色のノンストップ昆虫SFバイオレンス劇。

ストーリに関しては触れませんが、つっこみ所は多々あります。
が、それら全てをチャラにするくらいの「面白さ」と「新しさ」がこの作品にはあります。
なるほど、日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞を受賞しただけの事はある。
そう思わせてくれる、大器の予感を感じさせる作品です。

しかし、なにぶん今までに無いタイプのジャンルなので、
評価が真っ二つに分かれてしまうかもしれません。
満足するかどうかは、読み手次第だと思いますが、
内容が濃い作品なのは、間違いないでしょう。

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