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会社を成長させる会計の考え方

「管理会計」の訳語が悪いと指摘する人もいる。管理ではなく「経営」であるべきだ、とも。経営の意思決定をするための会計情報のあり方を追究したのが管理会計だ。その肝は、付加価値の中身を意思をもって決めていくことにほかならない。ここでは管理会計の本質を学び、その考え方を、日常の経営にどう活かせばいいか学ぼう

更新日: 2018年02月21日

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▼そもそも会計とは何だろう。何のために生まれ、どのように発展したのか

出典slc4u.org

何も現代に始まったことではない。物々交換(取引)がなされ、記録が取れて以降、会計の歴史は始まっている。紀元前4000~前3000年には、穀物や貨幣などの記録がある。モノを管理したり、税金を集めたりと、何かを集め動かし、それを誰かに管理させるときには、こうした記録が重要だったとされる。古代ローマやギリシアの時代になると、すでに会計技術が確立されていた。中世に入ると、所領・荘園の管理にやはり会計が不可欠だった。15世紀のパチョリ-(Luca Pacioli)の時代になってようやく複式簿記が体系化されるようになった

会計の歴史でいうと、倉庫に入っている財産について、その一つ一つを書き出した財産目録をつくるのが最初だった。現存する最古の倉庫会計の物的証拠は、紀元前650年ごろに活躍した「エジプト国庫記録官・王室記録長官・納税記録官・国立穀物倉庫総裁兼エジプト陸軍将官」のハップ・メンの石棺(Sarcophagus of Hapmen)で、大英博物館にある。倉庫に入っている財産のひとつひとつと、財産目録の各項目は一対一に対応していたという

パチョリは、取引を左右異なる観点から記録を取り、その手法を体系的に説明した。これが複式簿記の誕生である。その特徴の一つとして、一つの取引を二つに分けて記録するものだが、目的は、正確に記録し、全体を見渡せることだった。個々の取引が整理できているため、個々の品目の増減を反映させた財産目録が作成できるようになった。複式簿記がなければ、資金が何に使われ、どうなっているかが把握できなかったはずだ

ルカ・パチョーリ。1445年にサンセポルクロという、トスカーナ州にある今でも人口16000人ほどの田舎町に生まれている。16歳で地元の実業家ベフォルチ家に住み込み奉公に入り、このころから商業記録法を学び始めたようだ。19歳になると彼はイタリア商業の中心都市ヴェネチアに行き豪商ロンピアジ家の3人子息の数学家庭教師になっている。彼の向学心は強く、30歳になるとフランチェスカ派僧団に入り、これ以降(様々な大学で)数学の講義をすることになった。この間著したのが、金字塔「ズムマ」であった。

イタリアは15世紀末に世界の商業の中心地として栄えた。そしてこの商業取引に必要な知識、例えば各地の生活様式や特産物、法律、貨幣や度量衡、簿記、計算、通信・交通、為替などについての知識は、やがて商人それぞれの個人的な体験をもとにした知識から、これら諸都市の商人たちの共通の財産として体系づけられ、図書として印刷されるにいたった。その中でも「スンマ」は最古の文献として知られる。

複式簿記は、13世紀から15世紀へかけて、イタリア商人たちの試行錯誤的な体験から生まれたもの。複式簿記を生成するうえで不可欠な要素として、私有財産,資本,商業,信用,書法,貨幣および算術の7つが挙げられた

会計記録は何千年も前から存在した。しかし、財産を所有し利用し処分する権利をもった主体がなければ、そもそも帳簿をつける必要は生まれなかった。ゆえに、国の妨害を受けず活動できたイタリア商人の時代を待たなければならなかった。まず、資本の蓄積がなければ、商業の規模を拡大することはできない。もちろん、利潤を生みだすような商業でなければ資本の蓄積はできない。当時のイタリアは十字軍の影響もあって、商業の規模が飛躍的に拡大し、商人たちに、記録する必要性を自覚させたのである

「会計が文化の中に組み込まれている社会は繁栄する」と結論を導き出している。金のかかる戦争やヴェルサイユ宮殿を始めとする宮殿建設で赤字続きだったルイ一四世は、コルベールが一六八三年に死去すると、会計報告の習慣を打ち切ってしまう。ルイ一四世は都合の悪いことは見て見ぬ振りをしたくなったらしい。しかし、最後に国を崩壊させてしまったのも、結局、これがきっかけとなった。国家であれ、企業であれ、指導者が現実を見るのを忘れた時、長続きできなくなるのだ

「複式簿記の完成」とは、元帳に設けられたすべての勘定が有機的な関連をもって、ひとつの閉ざされた体系的な組織を形成したときに初めてなし得るものとされる。その一大転機となったのは、19世紀である。鉄道が登場し、それに並ぶ巨額投資案件が増え、企業損益計算の中心がストックからフローへと移行していくことになる。さらに、残高勘定は、単なる資産・負債・資本の諸勘定を締め切るための単なる決算勘定ではなく、企業の財政状態と一年間に獲得した利益を組合員ないしは株主に開示する、財務報告のための資料となっていった。

日本でも奈良時代の木簡が数多く発見され、そこに官吏の給料や食料品の支払金額が記録されている。木簡を帳簿というかどうかは別にして、そのような現金の出納記録が残されているからと言って、奈良時代にすでに複式簿記が存在していたという会計史家はいない。これらは単なる記録であって、決して簿記でもなければ複式簿記でもない。なぜなら、そこには、損益計算が欠落しているから。

同書では、複式簿記の本質について、アメリカの会計学者(アナナイアス・チャールズ・リツルトン)の言葉を紹介している。複式簿記とは、単に記帳を二重でしてあるとか、貸借が均衡するようになっているとか、金銭の出入りの記録があればいいというものではないと言う。これらを「フロー」の取引記録だとすると、プラスされるべきものは、損益計算、すなわち大元の資本が増えたか減ったかという「ストック」の勘定ということになる。この損益計算の最古の記録が、航海後の利益配分記録だ。

現代簿記の基礎である複式簿記は、中世のイタリアで発明され、数学者ルカ・パチオリの著書「スンマ(算術、幾何、比及び比例全書)」(1494年)によってその仕組みが紹介され、たちまちヨーロッパの商人や学者の間に広く普及しました。イタリアの豪商のもとで家庭教師をしていたパチオリは、商人に、帳簿には十字架を付し、神の名を記すように助言しました。彼は、法の許す範囲内で、商人が適正な利益を追求することは正当な行為であり、その正当性を複式簿記(記帳)によって明らかにすることは、神の赦しを得るための神への告白であると考えたのです。

産業革命期には巨大な株式会社が次々に出現。(帳簿そのものを公開するわけにはいかないが、多くの株主に財務状況を開示する必要性が生じた。)そこで考え出されたのは、一年間の企業成果をストックとフローの二つの側面から要約した一覧表として開示することだった。

巨大な株式会社を支えるものは豊富な資金源だ。多くの投資を引き出せているからこそ、資金的な工面が成り立つ。ここで欠かせないのは、企業の安全性や投資の有利性をきちんと示すことに他ならない。そして発明されたのが、減価償却という費用配分法だった。実はこれまでも、固定資産(船舶、農場、工場等)の評価替えは、実務上存在した。しかし、売上と紐付けて人為的に配分する仕組みが必要になった。固定資産の一部をルールのもとで減損させていく手法は、現在の会計を特徴づけるものとなっている。そんな数々の会計上の発明がなされたのは19世紀だった。

キャッシュフロー計算書とは、これまでの伝統的な会計によって計算された利益ではなく、実際のキャッシュの増減によって企業の支払資金や投資可能資金、あるいは財務のための資金の実態を明らかにするために、その作成が義務付けられた計算書のこと。これによって、発生主義で求めた損益計算書の利益と手持ち現金との間に生じた差額の原因がどこにあるのかが明らかになる。

(上掲書は)家計簿や銀行通帳のように、現金の出入りだけを記す単式簿記ではなく、現金の増減とそれに伴う資産の価値をも表わす複式簿記の発達が、企業や国家が資産と負債の状況をリアルタイムで把握することを可能とし、横領などの不正を防止し、国家や企業の発展のキー・ポイントになったことを指摘している。その背景には実は、キリスト教の存在があった。同教は、日々の善悪を比べる心の会計があった。教徒は丹念に帳簿を付け、罪の負い目を減らすために、利益を貧民救済に寄付したり、免罪符を買ったりもする。ゆえに、会計は西洋世界で発展したという

逆説的に考えてみよう。なぜ、複式簿記の時代にあって自治体はいまだに単式簿記なのか。単式簿記とは、ある特定の財産の増減を記録する(図では「現金」の増減記録)もので、その支出入を発生した順に「収入」と「支出」に分けて記録していく。一方、複式簿記は複数の科目の増減を記録するため、勘定科目ごとにまとめた「総勘定元帳」を作成する。したがって個々の取引の処理で言えば、必ず借方と貸方の両方に記載する複雑さがある。また、自治体にはそもそも外部監査の義務が課せられておらず、利益追求という概念もない。ゆえに、財務分析などの動機がなかったため、単式簿記ですませてきたのだ

【企業会計原則とは】
今日の経済活動を活発にするために、民間企業を中心とした信用に基づく様々な取引ルールが定められている。会計とは、そこにあって、企業活動そのものの信用力を担保する最も有力なツールである。企業会計原則は、慣習的にまとめられてきたもので、会社法などの条文法として実質的に強制力を付与されてきた。以下、代表的な8つの原則を並べる:

1.真実性の原則
2.正規の簿記の原則
3.資本取引・損益取引区分の原則
4.明瞭性の原則
5.継続性の原則
6.保守主義の原則
7.単一性の原則
8.重要性の原則

日本の会計は、一般に公正妥当と認められる「公正なる会計慣行」を規範としている。1949年に大蔵省企業会計審議会が定めた「企業会計原則」を中心とし、2001年からは企業会計基準委員会(会計基準の設定主体が変更)が設定した会計基準を合わせたものを指している。近年では、グローバル化に伴う国際会計基準とのコンバージェンス(統合化)をベースに会計ビッグバンと呼ばれる大改正が加えられている

キャッシュ・フロー計算書が日本の会計制度に登場したのは決して昔のことではなく、1999年だ。日本経済はバブル崩壊を受け、従来のメインバンク制度が機能しなくなっていた。また、かつての高度成長も難しくなり、事業資金の効率活用こそが求められるようになった。ちょうど、会計基準の国際化が始まった時期とも重なる。もし、キャッシュ・フロー計算書がなければどうなるか。これは、損益計算書には現れない運転資金の状態を確認することができる。また、貸借対照表における変化も、キャッシュ・フローとの関連で計算できる

▼先に、目立たない「キャッシュ・フロー」計算書のことだけ頭に入れておこう

その期間中にどれだけお金が出入りしたのかや、会社の支払い能力の大きさを表している。営業・投資・財務の3つの活動で、実際にどのようなキャッシュの出入りがあったかを記している。では、なぜ3つに分けるのか。それは、すべての企業に共通する基本活動が、資金を調達し、投資をして、利益をあげることだからだ。つまり、「お金を集めて、使って、増やす」ことの実像がキャッシュ・フロー計算書だった。ただし実像であったとしても分かりづらいので、収益性や安全性を示すための貸借対照表や損益計算書を作っている

1)営業キャッシュフローからは、「本業でそれだけ現金を得られたか」
2)投資キャッシュフローからは、「将来のためにどれだけお金を使っているか」
3)財務キャッシュフローは、「会社がどれだけお金を借りたか、あるいはどれだけ返済したか」

が分かる。すなわち、健全な場合(本業で稼いだお金で投資して借金を返す)と、不健全な場合(本業で稼ぐよりも投資額や返済額が多いなど)とでは明確に違いが出る

「CCC」は仕入から販売に伴う現金回収までの日数を意味する。「キャッシュ→商品→支払い→販売→回収」という一連の現金循環のサイクルにおける各過程の回転日数に基づいて、「運転資金要調達期間」を明らかにする指標だ。「CCC」が短くなれば、資金繰りが楽になるだけでない。運転資金に余裕があるため、余計な借入がなくなり、調達条件もよくなる。ジョブズがアップルに戻った後、ここに目をつけ一気に改善させた。無駄な在庫をなくし、外部企業に生産を委託する方式に切り換えた

▼会社を成長させるためには、会計の何を見ればいいか

本気で業績アップのために財務分析をするには、1人当たり(経常)利益が重要だ。従業員数には、契約社員やパートといった臨時雇用者も含める。もちろん、正社員が「1」なら、臨時雇用者は「0.5」前後でカウントするなどの調整を行う。リーマンショック前なら上場企業の合格ラインは200万円程度だったが、景気の低迷もあり、現在は100万円。中小企業なら健全経営の合格の目安は1人当たり経常利益50万円である。30万円を切るとイエローカードだろう

今後の日本では、少数精鋭で高効率な経営を目指すべき。指標としては「1人あたり付加価値額」が使える。ここでは単純に粗利=付加価値額とし、人数は、役員・正社員・派遣社員などすべて含める。アルバイト、パートなどは正社員との時間比や給与比で換算すればいい。たとえば、粗利が5000万円で人数が10人の場合には、1人あたりの付加価値額は500万円になる。ざっくり言って、中小企業の平均は800万、大企業は1300万円くらいだ。中小だからこそ、最終的には1800万以上を目標にしたい。労働分配率を5割とすると、中小企業で社員1人に給与を1000万円近く支払えたら、強い少数精鋭の会社になれる

経営者のための会計はルールがないので、好きに決めていい。まずは、損益に関する会計情報。月次比較の数字や前年同月比や前年同月累計比(3期比較でも)の数字があると理解が深まる。毎月主要な数値を抜粋した損益計算書を時点比較することで、このように数字で経営を語れるようになる。また、商品別やサービス別の売上や原価、粗利をまとめると、どの製品が利益を出しているのかが分かるようになる。さらに、地域別・曜日別・時間別などの詳細把握ができれば、対策にも有効だ

将来どのような戦略をとるかによって会社の決算書は変化する。これを生産性で考えてみよう。生産性を営業利益率とし、アウトプット(売上高)を、インプット(費用=売上原価、販売費及び一般管理費)で割るものとする。経営であれば、生産性は必ず上げなければならない。たとえば企業再生中の日本航空は、パターン2を採った。運行路線を見直してもうかる路線に絞り込むことにより、アウトプットは一時的に下がるが、インプットはそれ以上に下げることができる。これでも生産性は上がる

「いい会社」の条件とは何か。

1)事業の質が高く、投資効率がいい
 →ROA →売上高利益率と総資産回転率
2)成長している
 →グローバル展開か、クロス展開
3)一定の安全性がある
 →キャッシュ・フロー(CF)重視
 →日々の運転資本の増減やCFに注意。
4)資本コストを把握
 →投資家の期待レベルを上回る計画をやりきる

逆に「危ない会社」とは、営業キャッシュのマイナスや、流動比率の悪化が見られたり、インタレストカバレッジが3倍以上(支払い利息の何倍稼いでいるか)などの指標にも注目すべき

企業価値の評価をする時は、利益ではなくキャッシュ・フローが判断材料となる。実際に事業などに使うことができるキャッシュをどの程度生み出したのかという裏付けとなる。また企業活動の実態をも表す。(逆に)「利益」とは、一定期間の途中経過を適切に表すような儲けのモノサシとして必要になったもの

フリー・キャッシュ・フローこそ、企業が自由に分配することのできるキャッシュである。これをもって自己増殖(成長)するための原資とできる。つまり、企業活動の目的がその継続・拡大にあるのだとしたら、フリー・キャッシュ・フローはその不可欠な推進力なのだ。企業はこれを獲得せずして、目的を達成できない。実際の計算は、営業利益から始まり、税金を引く。そこに、実際にはない費用「減価償却費」分を加え、費用ではないが設備投資分を差し引く。さらに正味運転資金の増えてしまった分にこれを当てると考えると、その残りがフリー・キャッシュ・フローである

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