山本七平氏は、ある日編集者から道徳教育についての質問を受けました。その時彼は、「日本の道徳は"差別の道徳"である」と答えました。しかし、編集者は「理屈ではそうですが、現場の空気としてはそれはまずい」と返答しその後いくつか質問のやり取りがあったが、そこで彼は編集者が何度も「空気」という言葉を発したことに非常に強い疑問を感じました。

「編集者などの意思決定を拘束する『空気』というものが一体何なのか」と。

彼は「空気」とはどのようなものなのかを研究するため、昭和20年の戦艦大和特攻決定までの豊田副武連合艦隊司令長官と伊藤整一中将とのやり取りを例に挙げています。

豊田副武連合艦隊司令長官(以下「豊田」):沖縄に特攻してくれ

伊藤整一海軍中将(以下「伊藤」):米軍の実力を知り尽くしており、物資や航空戦力が豊富な米軍に対して、わが軍は護衛の戦闘機がない「裸の艦隊」である。また、仮に沖縄に到達できたと
しても、機関・水圧・電力系統が無傷でなければ攻撃できないのでとてもできない。

豊田:陸軍の総反撃の呼応して、敵上陸地点に切り込み、船(戦艦大和)を乗り上げて陸兵となることまで考え願いたい。

伊藤:(ベテランである伊藤中将は豊田長官が言った言葉の意味を理解し、反論を辞め)それならば何も言わない。了解した。

ここで、注目してもらいたいのが「陸軍の総反撃に呼応して…」と言われて「それならば何も言わない。了解した」と答えた部分です。これは、「海軍全体の意見である」という「空気」の決定であることを「了解した」という意味で、決してこの決定に同意したわけではありません。
したがって、豊田長官に「何を言っても無駄」であるため、伊藤中将は「それならば何も言わない」という答えが返ってきたわけです。

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オフィス・宮島です。スクールカーストに関連した内容で、今の中学・高校で繰り広げられる人間関係の駆け引きと、山本七平氏が「絶対権を持った妖怪」と指摘した「空気」との関係から中学・高校での人間関係についてまとめました。

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