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“マミー・ポルノ”『レディース・ノベル』? 史上最速の売り上げを記録した小説って何!

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』という小説が話題になっているのをご存じだろうか。映画版キャストをめぐる騒動も相まって人気が高まり、類似の小説も多数登場。それらは主婦層にファンが多かったため、海外では「マミー・ポルノ」という総称で呼ばれている

更新日: 2015年02月18日

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jiye195623さん

映画化騒動を巻き起こした官能小説とは?

「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」が確立させたとされている、ポルノ小説のジャンル。

同作が主に30~40代を中心とした子供のいる女性の間で人気が高く、こう呼ばれている。また、著者に家庭を持つ妻や母親が多かったことも名の由来とされている。

イギリスでは発売後3か月で3000万部を突破。『ハリー・ポッター』シリーズを上回る最速記録となった。

ベストセラーになって以来、主人公のふたりを誰が演じるかが注目の的だった。ファンの間でも頻繁に投票や署名活動が行われ、キャスト決定の噂も飛び交い、2013年9月にようやくチャーリー・ハナムとダコタ・ジョンソンに決定したのだが、このキャスティングにするアンケートで約60%ものファンが猛反発。約1カ月後にはチャーリー・ハナムが降板し、直後にほぼ無名の俳優ジェイミー・ドーソンが抜擢された。このまま騒ぎが起きなければ、2015年2月に全米公開される予定だ。

ストーリー設定も「女性が気持ちよくなる」工夫

一体何がそれほどまでに支持されているのか。マミーポルノには、主婦の願望を満たすような物語設定が共通していると同担当者は説明する。ごく普通の女性がお金持ちのイケメンと恋愛をする内容が多く、男性も「おれさまタイプ」と「やさしい王子タイプ」が用意されているという。

「気持ちよくなっていただく。それは性的な面だけではなく、物語やストーリーの面でもです」

描写があからさま―だけど読みやすい官能小説の魅力

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、女子大生のアナが偶然、巨大企業の若きCEO、クリスチャン・グレイに出会うことから始まる。恋の経験がほとんどないアナだが、グレイのミステリアスな美貌に釘付けに。アナの初恋は成就するかと思われたが……彼はなんとSMの主従関係を結ぶという、とんでもない契約書を差し出してきた。『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は3部作の1作目にあたり、グレイとアナの恋(と契約)をめぐる物語が2作目、3作目へと続く。

『ベアード・トゥ・ユー』の舞台は、ニューヨークのマンハッタン。24歳のエヴァが大手広告代理店に初出勤の前日、完ぺきな容姿の若き大富豪ギデオン・クロスに出会い、心を奪われる。就職先が入っているビルにギデオンの会社があり、ふたりは何度も顔を合わせるうちに関係を持ち、次第にありとあらゆる場所で体を重ねるように。しかし実はそれぞれ、心のなかに闇を抱えており、その苦しみを互いに乗り越えるべく苦悩する。

「官能小説」なので、あからさまな性描写に最初は驚く。けれど、主人公たちが行為のあと驚くほどサッパリとしているので、あっという間に慣れてしまった。たしかに官能的だが、後に引くネットリした感じがないので、読みやすかったのかもしれない。官能的なシーンを楽しみながらも、同時に主人公たちの恋物語も集中して読むことができた。
 いずれも、基本的なパターンは同じだ。性の経験があまりなく、ロマンスに憧れる奥手の若い女性が、運命的な出会いをする。その相手は素晴らしい容姿を持つ、20代後半の大富豪。女性は運命の出会いにときめいて、彼と「普通に」付き合うことを望むが、彼らは人に言えない倒錯した秘密を抱えている。

関係が進むうちに、主従関係に変化が訪れる。最初は男性が女性を支配しているが、次第に彼女の魅力の虜になり、いつしか女性が関係の主導権を握る。うぶだった女性は小悪魔的な魅力を開花させ、支配していたはずの男性が彼女の一挙一動に振り回されることになる。

「マミー・ポルノ」ブームから、文学の新しいジャンルが生まれた

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』や『ベアード・トゥ・ユー』のヒットにより、とくに米国では類似した小説が山のように登場し、それらは「マミー・ポルノ」と呼ばれるようになった。著者に家庭を持つ妻や母親が多かったことも理由のひとつだが、中心となった読者が主婦層だったことから「マミー・ポルノ」という総称が浸透していったようだ。

「米国での『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の売れ方は、出版のあり方を大きく変えました。もとは英国に住む主婦が、映画にもなったヴァンパイアの物語『トワイライト』シリーズの影響を受け、その主人公を思い浮かべながら書いたファンフィクション、つまり同人誌です。最初はウェブで発表され、ファンの間で話題になり、2011年に小さな出版社から発売されました。その後、大手出版社のランダムハウスが版権を買い、全米ベストセラー入りする大ヒットを遂げたのです」と、早川書房・編集本部・本部長の山口晶さんは話す。

このヒットを受け、米国では現在、ファンフィクションを電子書籍で発売することが一般的になりつつあるそうだ。「作者は書いたら電子書籍としてウェブで自費出版し、ファンの間で話題になったものが出版社に版権を買われて書籍になる流れが生まれました。これは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』以降の流れです」(山口さん)
 この流れによって類似した作品が多く生まれ、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、文学の1ジャンルを築き上げた。

このヒットを受け、米国では現在、ファンフィクションを電子書籍で発売することが一般的になりつつあるそうだ。「作者は書いたら電子書籍としてウェブで自費出版し、ファンの間で話題になったものが出版社に版権を買われて書籍になる流れが生まれました。これは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』以降の流れです」(山口さん)
 この流れによって類似した作品が多く生まれ、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、文学の1ジャンルを築き上げた。

「マミー・ポルノ」という名称が誤解を招く?

発売前からテレビや雑誌などで取り上げられていたため、発売直後の売れ行きは好調で、情報番組で紹介されるとAmazon順位も急上昇したそうだ。発売数カ月間も10以上の媒体に書評や記事が掲載され、知名度が広がる。また、映画化についての話題も途切れずに出てきたため、2013年3月~10月現在まで、落ち込むことなくほぼ横ばいの売り上げ。映画化キャスト決定でまた注目が高まり、10月現在で3部作あわせての発行部数は15万部。これは翻訳ものの小説としては良い結果で、今後も映画化の話題とともに伸びていくことが予想されている。

日本でこれらを購入した主な読者層は30~50代の女性だったが、「マミー・ポルノ」という名称が先行し、最初は男性読者も多かったそうだ。
これらの小説には、ただのポルノにはない面白さがあります。女性読者にお姫様気分を味わってもらうために書かれた本で、ある種のファンタジー。SMプレイなどのきわどいシーンも多いですが、基本的には純粋なラブストーリーです。主人公が若い女性なので、読者層である30~50代の女性は物語を読みながら、かつて経験した恋のときめきを追体験できるのだと思います。ただ、私も男性ですが、男性が読むと内に秘めた女心を知る良い機会になります。」(山口さん)

「マミー・ポルノ」という名称を聞き、官能的なシーンだらけの小説なのだろうと思い込んでいた。しかし、今回代表的な小説を読んでみて、スタンダードな恋愛小説×スキャンダラスな官能小説のダブルの面白さに惹きこまれた。このカテゴリ名称が「レディース・ノベル」と呼ばれるだけで、ずいぶん印象は変わる。

ブーム定着後に見えてきた、2パターンの「書き手の変化」

「『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、このジャンルの雛型なので、ほかの小説も話のパターンが似てしまいがちでした。そこで近ごろは、ベテラン作家がエロティックな小説の執筆に乗り出しています。たとえば、ロマンス小説の大家、マヤ・バンクスという作家がいます。過去100冊以上の著作があり、USAトゥディやNYタイムズのベストセラーリストの常連作家なのですが、彼女がはじめて書いたエロティックな小説『ブレスレス・トリロジー』シリーズ3部作は大ヒットしました。骨組みは同ジャンルのパターンにのっとっていますが、主人公の恋愛関係以外に、家族や友人との人間関係もきちんと描かれた、読みごたえのある作品です。

また、6月に出版した『ダブリン・ストリートの恋人たち』も、ヤング・アダルト小説の人気作家のサマンサ・ヤングによるものです。男性の私が読んでもほろっと泣けるシーンがあるほど、ストーリーの優れた作品です」(木下さん)

「『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、同人誌ならではの素人っぽさもヒットの一因だったと思います。話に無理があったり、置いてけぼりの設定があったりと、読み手がツッコミを入れたくなる部分が出てくる。だからこそ、ファン同士がネット上で『もっと変えたほうがいい』などと、活発な意見交換をすることで、クチコミで広がっていきました。現在、特に米国では、書いた小説をウェブに掲載し、ファンからのフィードバックを受けて、中身を変える作家もいるんですよ。意見を取り入れるたびに改定してブラッシュアップされ、ついには結末を変えてしまう人もいるほどです。こうなるともう、作者だった人はあくまで代表者で、全員で書いた本のようになってきますね。ある種の『クラウド・ライティング』と呼べると思いますが、そういう作り方が増えていくのではないかと思います」(山口さん)

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