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ボスマン判決は 1995年12月に欧州司法裁判所で出された

ジャン=マルク・ボスマン

この1人の人物が起こしたある訴訟が 現在のサッカー界を劇的に変えました

当初 この訴訟は あくまでボスマン個人の問題に起因するものでした

しかし そこからのちに発展する ある訴訟が サッカー界を大きく変える流れを作り出すのです

1990年夏 ボスマンはベルギー・リーグのFCリエージュとの契約を満了し フランス・リーグ2部のダンケルクに移籍しようとした。だが 移籍金が折り合わなかったことで クラブは移籍を拒否した。ボスマンはすぐ訴訟を起こした

ジャン=マルク・ボスマン
1964年10月30日生まれ ベルギー出身

ボスマンは ベルギーのスタンダール・リエージュで選手生活をスタートするも出場機会がないため 5年後にRFCリエージュに移籍します

しかし RFCリエージュは財政難であったため ボスマンは2年の契約期間を満了したのち フランスのチームへの移籍を決断

ところが RFCリエージュが条件面からこれを拒否

しかも リエージュの新シーズンの構想でボスマンは戦力外となり ボスマンはプレーも移籍もできない状態に陥ってしまいます

今では考えられないことですが 当時は契約が満了しても 選手は自由に移籍することができなかったのです

契約期間が満了しても プロサッカー選手は次に契約するクラブを自由に選ぶことはできなかった。クラブは選手の「保有権」をもっており 契約を延長することも他のクラブから「移籍金」をとって「売り払う」こともできた

クラブは選手の保有権を持っており 選手をどう扱うかはクラブの意向しだいでした

ボスマンは プレーも移籍もできないことから訴訟を起こし 結果は全面勝訴

しかしこれによって 「サッカー界にとって好ましからざる人物」になってしまったボスマンは 当初の希望クラブに移籍できず 別のフランスのクラブでのプレーを余儀なくされ その後の選手生活もうまくいきませんでした

このボスマンに目を付けたのが EU法を専門とする弁護士のジャン・ルイ・デュポンだった。彼はボスマンに 新たな訴訟を起こしてはどうかと提案する。被告となるのは クラブの不当労働行為を許したベルギー・サッカー協会と その上部団体であるUEFAだった

▽ 原告側が要求した2点
①今後クラブは 契約が満了した選手の所有権を主張することも移籍金を要求することもできなくなる (契約満了後の移籍の自由化)
②EU域内における移動と就労を制限してはならないと定めたEUの労働規約は プロサッカー選手にも適用される (EU域内における外国人枠の撤廃=EU国籍保有者の国際移籍自由化)

そんなボスマンに声をかけたのが ベルギー人弁護士のデュポン氏(写真左)

デュポン氏は のちに欧州ビッグクラブの連合体G14の代表弁護士も務め 国際大会で選手が負傷した際にはFIFAからの補償金を所属クラブに充てる新規則を設けるなど サッカー界に変革をもたらす人物

このときデュポン氏は ボスマンを失業させる結果となった当時の移籍制度が 「EU域内における公正な競争と労働者に移動の自由」を認めるローマ条約(EU統合の基本条約のひとつ)に反していると主張します

1995年に 欧州裁判所の判断により EU(ヨーロッパ連合)内での移籍の自由化 移籍金及び外国人枠の撤廃が確定した。これにより まずEU内での移籍自由化が決まった

これに基づき 2001年3月5日 国際移籍制度の改正に関する基本部的部分について FIFAとUEFAがEU(欧州委員会)と合意し 全てのプロフットボール選手は契約満了後 自由に国際移籍をすることができるようになった。これが通称「FIFAルール」の誕生である

・18歳未満の国際移籍禁止 契約期間は5年を超えてはいけない
・1シーズンの移籍回数制限
・1年に2回の登録ウインドー(登録期間)の設定
・契約満了時の移籍自由化 契約満了時6ヶ月前からの他クラブとの契約締結
・23歳以下の選手の移籍は育成したクラブに対し補償金(トレーニング費用)を支払う

被告となったベルギー・サッカー協会とUEFAは 以下のように主張し反論します

「選手の自由な移籍は クラブ間の格差拡大を招く」「プロサッカー選手は ローマ条約の定める一般労働者とは異なる特殊技能を持つ存在なので 例外的な扱いを受けるべき」

しかし これらの主張は退けられ 1992年に2人が起こした訴訟は 実に約4年もの歳月を費やした結果 勝訴を手にし 上記2つの要求は完全に認められました

これにより まずEUに加盟する国の国籍を持つプロサッカー選手が EU内での移籍が自由にできるようになりました

その後 現在も続くEU以外の全プロ選手が国際移籍をするときのルールが作られたのです

現在 欧州では数多くのクラブが外国人を多用。スタメン全てが外国人選手であるという事態が度々発生している

2009年12月30日に行われたプレミアリーグのポーツマス対アーセナル戦で トップリーグの試合では初めて両チームのスタメンにイングランド人選手がいない事態となった

ボスマン判決以前 ほとんどの欧州リーグでは外国人枠は3人でした

左は 1989年と1990年にUEFAチャンピオンズカップを2連覇するなど 当時 世界最強といわれたACミランのフォーメーション

ファンバステン(van Basten) フリット(Gullit) ライカールト(Rijkaard)のオランダトリオ以外は全員イタリア人選手です

しかしボスマン判決以後は 多くの欧州リーグで欧州国籍の選手の移籍が活発となり 多国籍チームとなりました

その結果 自国の選手が育たないという批判が出たため それぞれのリーグでEU圏外選手数の制限や 自国選手枠を設けるなど独自の対策をしています

ボスマン判決の結果 見られるようになった現象は 資金力のあるビッグクラブによるスター選手の争奪戦の過熱であり 移籍金と年俸の高騰だった

EU域内のクラブチームにおいては EU加盟国籍を持つ選手は外国籍扱いされないため EU内の各クラブは選手と長期契約を結んでいる。長期契約中に他のクラブに移籍するためには それまでの契約を破棄する為に「違約金」を支払う必要がある。現在 EU内のクラブにおいては 移籍金と言えばこの違約金を指す

2013年夏 世界移籍金最高額の8600万ポンド(約137億5000万円)で ウェールズ代表MFギャレス・ベイルがトッテナムからレアル・マドリードへ移籍した

※高額移籍金でレアルマドリードに移籍した主な選手(金額は全て推定)
◎2009年夏 マンチェスターユナイテッド→クリスティアーノ・ロナウド 9400万ユーロ
◎2001年夏 ユヴェントス→ジネディーヌ・ジダン 7350万ユーロ
◎2009年夏 ACミラン→カカ 6500万ユーロ
◎2000年夏 バルセロナ→ルイス・フィーゴ 6000万ユーロ

裁判の中でUEFAが主張したように ボスマン判決以後 移籍金は高騰しました

選手の流出を防ぐために 高年俸の複数年契約や高い移籍金の設定などをしたからです

中小規模のクラブは 移籍金0で選手を渡すくらいならと 選手を高く売ることを考え マネーゲーム化した感もあります

そんな高騰する移籍金を払えるのは ごく一部のビッグクラブだけ

特にレアルマドリードは 銀河系軍団と言われるスター選手を集めたチームを作り 高額移籍金の上位をほぼ独占

また最近では 高額移籍金でスター選手を獲得することでビッグクラブであることをアピールしようという動きも出てきています

移籍市場の動きが大きな注目を集める現在 高額選手の獲得は絶大な宣伝効果を発揮する

高額移籍金での選手獲得には 純粋な補強のみならず 宣伝効果という側面もあります

2013年に フランスリーグ1部に復帰したASモナコは 各クラブが争奪戦を繰り広げていたファルカオの獲得に成功

移籍金は およそ5000万ポンド(約75億円)でした

これによりモナコは 自分たちは最高のタレントを引きつけ 巨額の報酬を約束するビッグクラブであると世間に示すことができたのです

同じフランスのパリサンジェルマンも同様に 2012年のイブラヒモヴィッチの獲得でビッグクラブの名乗りを挙げ さらに2013年にはカバーニも獲得

また ベッカムがラストシーズンを送ったクラブとしても大きな話題となりました

2009年度のオフシーズンから 日本もEU内システムに追随し 移籍金の制度は事実上完全撤廃された

移籍金が撤廃されると 選手側がより多くのメリットを享受することになる。契約満了とともに自由にクラブを選ぶことができるし 移籍金がかからないので海外移籍も容易になる。選手の動きが頻繁になればリーグが活性化する。古巣対決や因縁対決といったような わかりやすいゲームの見どころが増える

FIFAルールで定めた移籍ルールは あくまで国際移籍に関するもので 国内移籍に関しては EU外のリーグはその国独自のローカルルールを適用することが可能です

Jリーグでは長く 選手の年齢に応じて移籍金を算出する日本独自のローカルルールを使ってきましたが 選手会やFIFAからの要望もありルールを変更

これにより クラブ間移籍が活発化したことでリーグが活性化され また複数年契約を提示される選手も増えました

日本人選手で自由移籍第1号となったのが 2002年の廣山望選手
(契約満了につき ジェフ市原からパラグアイ2部リバープレートへ移籍)

※FIFAによる国際移籍に関するルールができてから 日本選手で最初の国際移籍です

日本の移籍金のルール改正以降 日本選手の海外移籍が加速度を増すが 移籍金を支払って日本人を獲得した海外のクラブは少ない。もちろん契約満了を待って移籍を行っているので ルール上での問題はない

▽ Jクラブから海外クラブへの移籍で 移籍金が発生した主な日本人選手
小野伸二 浦和レッズ→フェイエノールト(01/02シーズン) 550万ユーロ
川口能活 横浜マリノス→ポーツマス(01/02シーズン) 270万ユーロ
鈴木隆行 鹿島アントラーズ→レッドスター(05/06シーズン) 250万ユーロ
中村俊輔 横浜マリノス→レッジーナ(02/03シーズン) 200万ユーロ
長友佑都 FC東京→チェゼーナ(10/11シーズン) 170万ユーロ
内田篤人 鹿島アントラーズ→シャルケ(10/11シーズン) 130万ユーロ

海外組が増えた現在の日本ですが 移籍金を得たJクラブは多くはありません

一方 香川を獲得したドルトムントは 育成費を払ったものの移籍金は0で のちにマンチェスターユナイテッドに1800万ポンド(約27億円)で売却し 莫大な収益を得ました

移籍金0で海外移籍のチャンスが増えても それは選手にとってメリットばかりではありません

移籍チームで 意見の違いや監督の起用法から簡単に戦力外になるケースもあるからです

そんな中で 香川や本田は自らの実力を示し 確たる評価を得ることでステップアップに成功しました

そんな日本選手の活躍もあり 移籍金を払っても日本選手を獲得するという動きも出ています

欧州サッカー界では 16億ユーロ(約1747億円)にのぼる巨額の負債を抱えるに至った。UEFA(欧州サッカー連盟)はこの状況を懸念し 欧州の各クラブに収支のバランスを取るように求める「ファイナンシャル・フェアプレー」というルールを 2013年のシーズン終了後に実施することにした

「ファイナンシャル・フェアプレーとは」 - コトバンク より http://goo.gl/HhuZf0
※欧州内の各クラブに 収支のバランスを取るよう求めるもので UEFAが2010年5月の理事会で規則を決めた。クラブの3年間の赤字の許容額は 4500万ユーロ(約48億円)から段階的に減らされて 2018年のシーズン終了後に0になる (スタジアム建設や育成にかかる費用は対象外)。2013年のシーズン終了後に最初の審査があり 基準を満たさなければ 欧州CLなど UEFA主催の大会へ参加資格を与えないなどの制裁が科される。UEFAは 個人オーナーによる穴埋めも許さないとしている

近年の 高額な移籍金が飛び交う移籍市場には批判もあります

移籍金や給与の高騰により 選手の補強にかかった資金を回収できなくなったクラブが経営破綻を起こすケースも出てきました

UEFAは対策に乗り出し ファイナンシャル・フェアプレー規則を導入

適用1年目で 6年にわたり増え続けていた欧州1部リーグの総損失額を 6億ユーロ(約780億円)減少させることに成功しました

そんな中 育成の充実で 以前より外国人選手が減ったバルセロナのようなクラブも出てきています

財政問題が出る中で これからの移籍市場はどうなるのか

ビッグクラブの動向からますます目が離せません

<関連・参照サイト>

第7回「選手を支えるフットボールビジネス」セミナー<セミナー2>(前編) ぐっちいのスポーツを読もう!
http://gucchiebooks.jugem.jp/?eid=1797&guid=ON&view=mobile&tid=3
1995年の出来事「ボスマン判決」:和製ジダンのブログ_kurogom:So-netブログ
http://kurogoma-0728.blog.so-net.ne.jp/2011-01-11
JPFA 日本プロサッカー選手会 | 移籍制度問題
http://www.j-pfa.or.jp/activity/transfer
J移籍金撤廃によるメリット・デメリット [日本代表・Jリーグ] All About
http://allabout.co.jp/gm/gc/212185/
「1つの訴訟が選手の人権を守った」都並 敏史インタビュー 『法律とサッカー』 弁護士ドットコム
http://www.bengo4.com/feature/spinterview/tsunami01
No114 移籍金は違法か(上)(下) サッカーの話をしよう 大住良之オフィシャルアーカイブサイト
http://www.soccertalk.jp/content/1995/08/no114.html
http://www.soccertalk.jp/content/1995/08/no115.html
【寺野典子コラム】移籍金ゼロの移籍 - FOOTBALL WEEKLY
http://footballweekly.jp/archives/1766258.html
エンターテインメント化する移籍市場…移籍金高騰の舞台裏に迫る – サッカーキング
http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/135397.html
高騰するサッカー選手の給与、背景に放映権料…ベイルは4日で英首相の年収稼ぐ – サッカーキング
http://www.soccer-king.jp/news/world/world_other/20140121/163700.html
欧州サッカークラブ財政危機?移籍自由化、急騰する移籍金…(1/2) ビジネスジャーナル
http://biz-journal.jp/2012/12/post_1140.html
実を結ぶファイナンシャル・フェアプレー - UEFA.com
http://jp.uefa.com/news/newsid=1988115.html
カンテラ充実のバルセロナ、外国籍選手数がボスマン判決以降で最少人数に – サッカーキング
http://www.soccer-king.jp/news/world/esp/20120815/65921.html
FOOT × BRAIN|2012 09 08(土)放送内容 「日本人選手の海外移籍を考える」 TVでた蔵
http://datazoo.jp/tv/FOOT+%C3%97+BRAIN/589175%E2%80%8E
サッカー日本人選手の歴代移籍金ランキング! - サッカー移籍金ランキング
http://take1616.blog.fc2.com/blog-entry-86.html
サッカー歴代移籍金ランキングTOP30! - サッカー移籍金ランキング
http://take1616.blog.fc2.com/blog-entry-89.html
海外日本人選手の移籍金・年俸一覧 - 移籍金・年俸ランキング サムライサッカーMAGAZINE.com
http://samurai-soccer-magazine.com/money/
Best of the free transfers David Beckham, Sol Campbell, Teddy Sherringham Mail Online (英語サイト)
http://goo.gl/bicggw
BBC SPORT Football 10 years since Bosman (英語サイト)
http://news.bbc.co.uk/sport2/hi/football/4528732.stm

【Wikipedia】
ボスマン判決 http://goo.gl/ZOIkCH
ジャン=マルク・ボスマン http://goo.gl/i6vvg0
移籍金 http://goo.gl/Ozvu76
Jean-Louis Dupont(ジャン・ルイ・デュポン・英語) http://goo.gl/vnqDYu

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