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抗がん剤の起源

がんの治療で活躍するシクロホスファミドですが、この薬の開発には悲しい歴史があるのです。

更新日: 2014年04月30日

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シクロホスファミドの元となる物質:マスタードガス

シクロホスファミドには元となる物質があり、この物質をマスタードガスといいます。
マスタードガスは毒ガスであり、ドイツで開発されました。

マスタードガスはもともと農薬開発の研究で合成されたものです。しかし、その毒性の強さのため開発は放棄されました。

また、マスタードガスは透過性が高く、ゴムを通過することができます。

このような性質にドイツ軍は目をつけ、マスタードガスを毒ガス兵器として使用しようとしました。そして、1917年カナダ軍に対してついにマスタードガスが戦場で使用されたのです。

■マスタードガスとは
主にチオジグリコールを塩素化することによって製造される。
また、二塩化硫黄とエチレンの反応によっても生成される。
純粋なマスタードガスは、常温で無色・無臭であり、粘着性の液体である。
不純物を含むマスタードガスは、マスタード(洋からし)、ニンニクもしくはホースラディッシュ(セイヨウワサビ)に似た臭気を持ち、これが名前の由来である(他にも、不純物を含んだマスタードガスは黄色や黄土色といった色がついている為に、マスタードの名が付けられたという説もある)。

毒ガスから抗がん剤へ:ナイトロジェンマスタード

ドイツが毒ガスの研究をしていたのと同じように、アメリカも毒ガスの研究をしていました。
このとき、マスタードガスの構造に少し変化を加えたナイトロジェンマスタードという物質が開発されました。

■ナイトロジェンマスタードとは
ナイトロジェンマスタード(Nitrogen mustard、窒素マスタードとも呼ぶ) は化学兵器の一つ。第一次世界大戦で使われたマスタードガスの硫黄原子を窒素に置き換えた化合物である。

1943年12月2日、イタリアの連合国側の重要補給基地であるバーリ港にドイツ軍は爆撃を仕掛け、
輸送船・タンカーを始めとする艦船16隻が沈没した。その中のアメリカ海軍リバティー型輸送船「ジョン・E・ハーヴェイ号」には大量のマスタードガスが積まれており、
漏れたマスタードガスがタンカーから出た油に混じったため、救助された連合軍兵士たちは大量に被曝。
被爆者からは血圧低下や白血球減少などの症状が見られた。

血球細胞(白血球など)とがん細胞には共通点が

血球細胞(白血球など)とがん細胞には共通点は、どちらの細胞も増殖速度が正常細胞に比べて速いという点です。

アメリカ陸軍はこの事件およびマスタードガス被爆者のこのような症状から、
マスタードガスおよびナイトロジェンマスタードがX線同様に突然変異を引き起こす可能性が高いと考え、当時はX線照射療法しかなかった悪性リンパ腫の治療が試みられた。
マウスで成果が確かめられた後、1946年の8月には末期癌患者に対して新たに開発されたHN-3の塩酸塩が使用された。10日間の注射で、腫瘍は二日目から縮小し始めて二週間で消滅。

ナイトロジェンマスタードN-オキシド(商品名:ナイトロミン)

東京帝国大学医学部薬学科教授・石館守三と東北帝国大学医学部病理学教授・吉田富三は、ナイトロジェンマスタードの毒性を弱めるためにナイトロジェンマスタードの塩酸塩を炭酸水素ナトリウム水溶液に溶かし、過酸化水素で酸化することによりナイトロジェンマスタードN-オキシド(商品名:ナイトロミン)を合成した

その毒性はナイトロジェンマスタードの半分以下であった。
ナイトロミンの塩酸塩は、日本では吉富製薬(当時。現在の田辺三菱製薬)により抗悪性腫瘍剤として販売された。
初期のアルキル化剤である。
(2014年現在ナイトロミンは日本では販売されていない。)

その後、ドイツで同じくナイトロジェンマスタード誘導体のシクロホスファミドが開発され、ナイトロミンは市場を奪われることになった。さらに、ナイトロジェンマスタード誘導体としてクロラムブシル、メルファラン、ウラシルマスタードなどが開発されて現在に至る。

このように、ナイトロジェンマスタードはアルキル化剤の第一号として抗がん剤の歴史の一ページを開いたのである。

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