平成13年5月8日午前10時40分ごろ、青森県弘前市 田町にあり、あるビルの前に一台のワゴン車が停まり、中から男が降りて来た。男の名は小林光弘(43)である。

小林は顔を隠すように帽子を深くかぶり、顔には白いマスクをしている。水色の作業着を着て、右手にはオイル缶、左手には新聞紙をヒモで縛った束を持っている。

そのまま小林はビルの中に入り、階段を昇っていった。目指しているのはこのビルの3階にある消費者金融 武富士の店舗(弘前支店)である。

途中、階段の踊り場に着くと、そこに新聞紙の束を置いた。そして右手に持ったオイル缶の中にはガソリンが入っていた。オイル缶を傾けて新聞紙にガソリンをかける。その新聞紙はそのままここへ置き、再び階段を昇り出した。

小林はオイル缶を持って3階の「武富士」の店舗へとやって来た。自動ドアが開き「いらっしゃいませ。」と店員が声をかける。

だがその一瞬後、小林は「うりゃっ!」と気合を入れた声と共に、オイル缶に入っていた残りのガソリンをカウンターの中に一気にぶちまけた。ガソリンの量は約4リットルだった。

「何?! これ?」「ガソリンだわ!」臭(にお)いでガソリンだと気づいたカウンターの女性が悲鳴を上げる。

「奥へ逃げろ!」
放火の可能性を察知した男性店員が大声で叫んだ。店員たちは一斉にカウンターの奥にある部屋へ駆け込んだ。

しかし支店長は席に座ったまま、その場に残った。

「なんだ、君は!」支店長が怒鳴る。

「とっとと金を出せ! 出さねば火をつけるぞ!」

小林はつなぎの作業着のポケットから、ライターと紙を取り出し、今にもこの紙に火をつけるかのような動作をしながら支店長を脅(おど)す。

「金はない。」

支店長は落ち着いて答え、自分の机にセットされている警察への通報ボタンを押した。

「ウソをつくな!」
「いや、本当にない。馬鹿なことをやめないと警察に通報するぞ。」

そう言いながら支店長は机の上の電話を取り、番号を押し始めた。

「おい! 脅しじゃねえぞ!本気だぞ!」小林は怒鳴りながら、ライターで紙に火をつけた。小林の手に持っている紙が燃え始めた。

奥の部屋から様子を見ていた店員たちから悲鳴が上がる。
「支店長! そいつ本気ですよ!」男性店員が叫ぶ。

支店長は警察につながった電話で「今、強盗が侵入してきて店に火をつけました! 大至急パトカーをよこして下さい!」と叫んだ。

「この馬鹿、本当に警察を呼びやがったな!」小林は動揺し、復讐のためか、もはやヤケクソになったのか、

「クソッ!」

と叫んで火のついた紙をカウンターの中へと投げ込んだ。

「ボン!」と音がして一気にガソリンに火がついた。灯油とは違ってガソリンは爆発的に燃え上がる。

一瞬でカウンターの中はすさまじい炎に包まれた。
「うわあぁぁ!」「キャアァ!」「助けてーっ!」と炎の中から店員たちの悲鳴が聞こえる。

あまりの炎に火をつけた本人も驚いた。
「うわっ、まずい!こんなはずじゃなかった! 大変なことになっちまった!」

http://ww5.tiki.ne.jp/~qyoshida/jikenbo/047takefuji.htm

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武富士弘前支店強盗殺人・放火事件とは【小林光弘】

武富士弘前支店強盗殺人・放火事件(たけふじひろさきしてん ごうとうさつじん・ほうかじけん)は、2001年5月8日に青森県弘前市田町で起きた強盗殺人・放火事件である。

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