マルクスの言う「商品」とは単なる「物」ではない。それは人を、人と人との関係を、そして人間と自然との関係をも変えていくモノなのだ。「商品」は(略)社会の様式を反映して作られる品物だ。そこには社会的関係が磁力のように移されている。それに触れた私たちは、その磁力の影響を受ける。(略)このような魔力を持った「商品」というモノを生み出す経済様式の拡大、そのことによって人類が進化していく様相を、西洋思想史上はじめて思考の対象としたのがマルクスだ。

出典モイシェ・ポストン『時間・労働・支配:マルクス理論の新地平』(白井聡、野尻英一監訳、筑摩書房)、「訳者解説」(野尻英一)から引用

現実の当たり前の商品交換が「人類」自体を生んでいるという視点。一つ上で引用した『経済学批判』の有名文句「人間の意識がその存在を規定するのではなく、人間の社会的存在がその意識を規定する」もこの趣向です。このモノの関係が人間関係を主導していく状態を「物象化」と呼んだり、また、こういう具体的なモノが意識や社会通念を生み出すことを「下部構造が上部構造を決定する」と言ったりします。

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《大学入学共通テスト倫理》のためのカール・ハインリヒ・マルクス

センター試験の倫理科目のために哲学者を一人ずつ簡単にまとめています。カール・ハインリヒ・マルクス(1818~1883)。キーワード:「物象化」「生産関係」「労働者(プロレタリアート)」「社会的諸関係のアンサンブル(総和)」「労働疎外」主著『経済学批判』『資本論』『経済学・哲学草稿』『共産党宣言』

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