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ここまでやるか!イギリスのタブロイドは「事実」をでっち上げるために何でもする

ロンドン出身のポップなヒップホップ・グループの女性ヴォーカリスト。芸能界でもっと上に行きたいという野心にあふれる彼女がスキャンダルに見舞われたとき、ボリウッド映画のプロデューサーを名乗る男から声がかかった。「君を、僕の映画で使うことも考えている」……そこから始まったのは栄光への道ではなかった。

更新日: 2014年08月07日

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nofrillsさん

【前置き】売れれば何でもいいという媒体、それが「タブロイド」

タブロイド (Tabloid) とは、新聞判型のひとつである。元々このサイズを採用していた新聞がセンセーショナルな事件報道やゴシップ報道などに力を入れる大衆紙であったことから、転じて大衆紙の報道スタイルを指す語としても用いられる。

1918年、イギリスで新しく作られた小型の新聞判型が「タブロイド判」と名付けられ、『ザ・サン』、『デイリー・スター』、『デイリー・ミラー』などの大衆紙にタブロイド判が広く採用された。

これらの新聞はのちに題字の赤色にちなんで「レッドトップス」(Red tops)と呼ばれ、犯罪やスポーツ、性、ゴシップ記事などを、虚報も交えて扇情的に報道することで部数を獲得する編集スタイルを現代に至るまで貫き……

Red-top tabloidという言い方はありますが、単にtabloid(s) と言えばこれら「赤トップ」やそれに類する印刷媒体のこと。

英国では、The Sun, The Daily Mirrorが最も有名で、ほかにThe Daily Express, The Daily Starなど。同じタブロイド版型で、同様に無責任な書き散らしと煽動の多いThe Daily Mailは、red topではないしエロ記事はないけれど「タブロイド」ですね。

これは労働党系のタブロイド、The Daily Mirror. このように、ばかでかい文字と写真でヘッドラインだけやたらとわかりやすく伝えるのが基本スタイル。

これは「ミラーは労働党すぎる」という人たちがこぞって読みたがるタブロイド、The Sun. でも電車の中で読むのは勇気いると思うよ……エリアにもよるか。(私は拾ったのをバスの中で読んでて、おじさんにぎょっとされたことがあります。)

これも芸能ネタをさも大ニュースのように「独占スクープ」していますね。(ケイティ・プライスは英国の「セクシー・タレント」、「グラビア・アイドル」。彼女が結婚について「サイキックがそういうので」と語ったとかいう……どーでもいいわ)

「タブロイド」という存在は、日本で言うと、これ。

あと、写真がいっぱい載ってる下世話な週刊誌(『FLASH』とか『SPA』とか『アサヒ芸能』とか)のような存在だと思います。

The Sunの一面でお茶ふいた。#Russia #Ukraine #eu RT @obk: Tomorrows edition of the Sun. Wow. pic.twitter.com/9T5uSAqUs9

ときどき、非常にクリエイティヴなことをして、誰もが思わず笑ってしまいます。これは2014年、クリミアの帰属の問題が国際ニュースの中心だったときのThe Sun。YouをEUにかけているわけです。

これは検索で見つけたんだけど、おもしろい。どこのタブロイドかと思ったらフロリダだそうです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Globe_%28tabloid%29

これも検索で初めて見た写真。2003年4月9日、バグダード陥落でサダム・フセインの銅像が引き倒されたときの英国の新聞売り場なんだけど……The Sunだけ変。

ガーディアン(このロゴ、懐かしい!)やタイムズ、デイリー・エクスプレスが使ってるのはゴラン・トマシェヴィッチの写真ですね。
http://matome.naver.jp/odai/2138019374225177201/2138020684534275803

この「タブロイド」というメディア、売れれば何でもいいので、でっちあげ上等!なんです。

この本にいろいろ実例が紹介されています。ただし2004年の本なので、この10年間のもの(例えば「スアレス」騒動だとか)は入っていません。

こういうの「だけ」がイギリスだ、とか思ってるとバカを見ると思いますが、こういうのがないかのように振舞うこともまた、おかしなことです。

▼「イスラム教徒の女性」のはずが、中の人は記者(男、イスラム教徒ではない)

"On order I dressed up as John Lennon, a vampire, a Mexican, Noel Gallagher, St George (twice), Santa Claus, Aleksandr the Meerkat, the Stig, a transvestite, Alex Reid. When I was ordered to wear a burqa in public for the day, I asked: 'Just a head scarf or full veil?' Even after being ambushed by anti-terror cops when panicked Londoners reported 'a bloke pretending to be a Muslim woman', I didn't complain.

「上からの指示で、いろいろな人物に成りすました。ジョン・レノン、吸血鬼、メキシコ人、ノエル・ギャラガー、聖ジョージ(2度)、サンタクロース…(たるいので中略)…。あるとき、今日は人前でブルカを着てもらうぞといわれたときは、(反駁せず)『頭だけですか、それとも全身?』と聞いていた。パニクった住民が警察に『イスラム教徒の女性のふりをしている男がいる』と通報して対テロ警察に取り押さえられたあとでも、(仕事の)文句は言わなかった」

……まさに文字通り、会社に飼いならされた「社蓄」。「変」だと思わなかったんですね。

▼見出しでっちあげ

1989年の「ヒルズバラの悲劇」(サッカースタジアムでの群集事故で、リヴァプールFCのサポーター96人死亡)の際、The SunはThe Truth (ことの真相) とでかでかと見出しを立てて、中身はデタラメ。「観客が暴れたので96人も死んだ」と、根拠もなく報じた。これで少なからぬ人が「暴動だった」と信じた。

この件、詳細はこちら:
http://matome.naver.jp/odai/2134748421217112101?page=2

In the programme, called Hillsborough: Searching for the Truth, Mr Arnold says: "On the Sun, Kelvin MacKenzie was the rather controversial editor at the time. He liked to write his own headlines.

"He wrote the headline 'The Truth', and the reason I know that is I was about to leave the newsroom when I saw him drawing up the front page.

"When I saw the headline 'The Truth' I was aghast, because that wasn't what I'd written.

取材して記事を書いた記者のことをほとんど無視して、編集長が勝手に「ことの真相」という見出しを書いた。記者は「双方の言い分」を伝えようとしたのであって、「真相」などという扱いはしていないという。

2012年9月に、ようやく本当の「真相」が明らかになって、The Sunの「The Truth」は撤回。

でもその間、「あの報道を真に受けて」なされた議論や推測、言動によって引き起こされた被害ははかりしれないわけです。

しかし、こういったことは「言論の自由」の原則の前には……

「タブロイドのでっちあげ」のため、「おとり捜査」的なものにはめられてすべてを失った芸能人がいる。

こないだの週末に出たロング・インタビュー(本当に長い)。報道機関による人権侵害の被害者。「売れればよい」という方針のメディアの事実捏造ですべてを失った女性歌手。 The Fake Sheikh and me: Tulisa talks gu.com/p/4vbpp/tw

タブロイド、The Sun on Sunday (犯罪被害者の携帯電話を盗聴していたことからスキャンダルになり、廃刊したNews of the Worldの後継) の記者の取材にはめられた女性芸能人、トゥリーサはこの3人組のメンバー(真ん中の女性)。

承前。トゥリーサはロンドンのかなりラフなエリア出身のミュージシャン。従兄と友人と組んで音楽活動を開始し、かなり売れた。テレビの人気オーディション番組の審査員も務めた。「芸能人」として常に注目されていた彼女に、ゲスいタブロイドのうさんくさい記者が目をつけた。1

承前。その記者はこれまでにもアラブの富豪になりすまし(なのでFake Sheikhと呼ばれる)著名人をわなにかけるといった手法で「取材」を行ない、自分の作りたいように作った「事実」を「報道」してきた。 en.wikipedia.org/wiki/Mazher_Ma… 2

http://en.wikipedia.org/wiki/Mazher_Mahmood
1963年、バーミンガムにパキスタン系の両親の間に生まれた彼は、18歳のとき、海賊版を販売していた友人たちのことを書いて(つまり「売って」)ジャーナリストの世界に入った。途中で媒体を変わったこともあったが、20年間は(廃刊になった)News of the Worldで書いていて、スポーツ関連の八百長暴きなどで受賞したこともある。。。という人物。

承前。この「富豪なりすまし」の記者のでっち上げでは、「ヴィクトリア・ベッカム誘拐計画」などはまだかわいいほうで、ダーティ・ボム(放射性物質をまき散らかすだけのボム。2000年代半ばに英国で「脅威」として語られたが、06年ポロニウム事件以降忘れられた)に関するものもあった。 3

この「ダーティ・ボム」のは、かなりひどいです。めちゃくちゃ。

承前。今回被害にあったトゥリーサは、芸能界で野心に燃える若い歌手だ。ビジネスの才覚もある。従兄と友人と組んでるポップアクトを売り込むのの最前線に立って交渉してきたのは彼女だという。その彼女に、「ボリウッド映画のプロデューサー」から、オーディションに来てくれと連絡が入る。 4

承前。この「ボリウッド映画のプロデューサー」は「富豪なりすまし」の記者だ。が、トゥリーサはそんなことはまったく知らない。LAでオーディションするというその映画は、主演は彼女が子供のころにあこがれていたハリウッドの有名俳優だという。何としてもその役を手に入れたいと彼女は燃えた。 5

この「オーディション」は、いかにも「大富豪のプロデューサーが気になる女優の品定めをする」といった状況らしく、ラスヴェガスへ移動し、飛行機はファースト・クラス、空港にはリムジンが出迎え、宿泊は高級ホテルのスイートを2つ……という具合だったそうで。

そのカネはどっから出てるって、「取材費」ですよ、ルパート・マードック傘下のタブロイド・メディアの。

承前。「不良娘という役のイメージに合う子を探してるんだよ」というその「プロデューサー」をトゥリーサは「キモい」と思ったが、彼女と主に接していたのは「お母さん」的な理解を示す女性で、トゥリーサはこの女性には心を開いた。しかしこれも下世話タブロイドの下品な「やらせ」の仕込みだ。 6

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