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「ゴッドファーザー」の魅力【永遠の名作】

「ゴッドファーザー」は1972年公開のアメリカ映画。映画史上に残る傑作です。マフィア映画として有名ですが、実際には家族の愛と悲劇を描く物語です。ここでは最も完成度が高いパート1のみを取り上げます。

更新日: 2017年11月06日

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「運」によって成立した奇跡の名作

「ゴッドファーザー」は全ての要素がうまく行った映画です。演技、撮影、音楽、脚本、編集、全てがです。それはもちろん監督のF.F.コッポラの功績ですが、彼自身も二度とこのような完成度の作品は作れていません。たまたま映画の神様の気まぐれで成立したとしか思えない、奇跡のような映画です。

豪華なキャスト

主演はマーロン・ブランド。
映画史上最大の俳優といわれる天才ですが、才能がありすぎて仕事に熱心になれず、一時期の名声は失われつつありました。追い詰められた彼がようやく本気で取り組んだのが、この映画の「ビトー・コルネオーネ」役です。
彼に比べればほとんどの俳優は、無理をして体を動かし、無理をしてセリフを語っています。ブランドは全てを自然に表現します。それでいてマフィアのドンにふさわしい威圧感があるのですから、本当の天才と思わずにはいれません。
しかし彼もこれ以降、「地獄の黙示録」で怪演をした以外はこれといった作品を残せていません。いわば天才の一世一代の名演技を鑑賞することができます。

三男マイケルの役はアル・パチーノ。この映画で一躍スターに上り詰めた彼ですが、実は演技はあまり上手くありません。同世代のデニーロにくらべれば大きく落ちます。しかしこの映画では、脇を固める俳優が素晴らしいため、パチーノも素晴らしく見えます。特にブランドの影響力が感じられます。同じゴットファーザーでも、パートⅡ以降の演技は大きく落ちます。(パートⅡ以降はブランドは出演していません)

次男フレッドの役は夭折した名優、ジョン・カザールが演じています(サングラスの男です)。気弱で、軽薄で、頼りない次男を見事に演じています。カザールはこの後数本の映画に出演しますが、6年後若くして病死してしまいます。この作品と「ディア・ハンター」が彼の代表作品になりました。惜しいですね。でもこの映画では絶妙の演技を見せてくれます。

養子のトム・ヘイゲン役はロバート・デュパルです。登場人物の中では理知的なキャラクターを、見事に演じています。
「地獄の黙示録」ではギルゴア中佐という、全く対照的な暴力的な役を上手に演じていますので、本当に実力のある俳優です。

絵画を連想させる深みのある撮影

撮影はゴードン・ウィリス。冒頭の暗く、印象的な撮影で一世を風靡しました。
昔テレビで彼がインタビューに答えるという番組がありました。
「われわれはたしかに暗く撮影しすぎたかもしれない・・しかしレンブラントだってときどきやりすぎたさ」。
レンブラント、あるいはカラバッジオの絵のような、影の深い照明が、この映画に重厚な奥行きをもたらしています。

巨匠による映画音楽の代表作

音楽はニーノ・ロータが担当しています。実績からは映画音楽史上最高の位置にいる作曲家です。
フェリーニのほぼ全ての映画、ほかにもビスコンティの「山猫」、クレマンの「太陽がいっぱい」と、名だたる監督の作品を手がけています。
その彼にして「最も記憶に残る作品はゴッドファーザー」と言わしめるだけの、とても良い出来になっています。
「愛のテーマ」が最も有名ですが、ワルツも素晴らしいですね。

音楽を守りきったコッポラの耳

ニーノ・ロータの音楽は、クラシック調のものでしたので、当初プロデューサーのロバート・エヴァンスの反対に遭いました。エヴァンスは「ある愛の歌」のプロデュースをした人物で、自分の音楽センスに絶対の自信を持っていたからです。音楽をもっと一般の人に親しみやすいものに変えなければヒットしないと反対したのです。
しかしコッポラは敢然と抵抗しました。
「この音楽を降ろすなら、私も監督から降ろしてくれ」
結果的にこの選択はコッポラが正しく、ロータのクラシックな音楽が、暗いカメラ、重厚な演技、文学や映画の過去の名作を下敷きにしたストーリーに完璧に調和する美しい世界を作っています。
これが通常の映画音楽でしたら、マフィア映画のすぐれたもののひとつ、というレベルで終わっていたと思います。これほどの完成度にはならなかったでしょう。

コッポラの信念は、自分自身の耳への自信からくるものです。
実はコッポラの父は、クラシックのフルート奏者で、トスカニーニ率いるNBC交響楽団のメンバーだったのです。音楽的教養が豊かだったのもうなづけます。
彼は耳のよさを生かして「地獄の黙示録」のワルキューレの騎行、「ゴットファーザーパートⅢ」のカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲など、映画史上に残る美しい音楽シーンを残しています。

トスカニーニの指揮するNBC交響楽団に在籍していた、ということはコッポラの父は当時トップクラスのフルート演奏家だったということです

文豪の小説をもとにした原作・脚本

この映画はマリオ・プーゾの原作を脚本家したものです。この原作の出来が大変良いのです。
父、長男、次男、三男、養子の、一人の父と四人の子供の物語です。この原案は、
ドストエフスキーの長編小説「カラマーゾフの兄弟」にあります。
カラマーゾフも父、長男、次男、三男、養子の、一人の父と四人の子供の物語です。父は殺され、長男は殺人の罪を着せられて流刑になり、次男は発狂、結局三男が後を継ぎます。このロシアの地主の物語を、アメリカのマフィアの物語に翻案したのが、ゴッドファーザーです。
「カラマーゾフの兄弟」は世界文学史上最高傑作の一つですから、この映画の内容が重厚で、手ごたえのあるものになったのもうなづけます。

映画史を意識したクライマックス

この映画のもう一つの下敷きは、ソ連の映画監督エイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」です。階段を落ちること、モンタージュを使うこと、二点を下敷きにしています。

ゴッドファーザーの終盤、敵のマフィアのドンを階段の下から打ち落とすシーンがあります。敵のドンは撃たれて階段を転げ落ちます。そして違う映画ですが、ゴットファーザーパートⅢでは、主人公と家族が階段から転げ落ち、覇権を失います。ここでは「階段から落ちる」ことが、権力の喪失を表現しているのです。

エイゼンシュタインのポチョムキンには、「オデッサの階段シーン」という有名な場面があります。オデッサの階段に居た一般市民が銃撃を浴びて転げ落ちます。その落ちるさまを当時としては大変劇的に描写して有名になりました。上映の日、「この日、映画は芸術になった」と言われたそうです。

「ゴッドファーザー」の階段落ちのシーンは、この「オデッサの階段シーン」を受け継いだものです。日本映画でも「鎌田行進曲」が階段落ちによる権力の移行を描いていましたね。もちろんポチョムキンとゴットファーザーを意識してもことです。
ゴッドファーザーの作中、映画プロデューサーが「どうだい、見事な馬だろう」というシーンがあります。「ロシアの皇帝でも買えない馬だ」と。コッポラはさりげなく、ロシア、ソ連に下敷きがあるということを示しています。

「ゴッドファーザー」という映画が、演劇、絵画、音楽、文学、映画、あらゆる意味で超一流なのがお分かりいただけたと思います。

対句表現で組み立てられたストーリー

いくつもの「対句」表現で全体は組み立てられています。だから統一感があります。

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文学も映像作品も、一部の傑作は「深掘り」が可能です。全体構成を分析してゆくと、作品の内部に広大な世界が広がっているのを発見出来ます。あくまで一部の傑作のみですけど。