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バイトテロ事件記録 そば屋「泰尚(たいしょう)」倒産事件

2013年に日本各地で問題になった「バイトテロ」。アルバイト店員がお店で悪事を働き、その画像をツイッターなどで公開することで、店の評判を急激に悪化させるもの。深刻なものになると休業や倒産にも追い込まれる。今回はその中でも最も悲惨な事件であるそば屋「泰尚(たいしょう)」の件を説明します。

更新日: 2015年02月07日

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この記事は私がまとめました

1. 記事の目的

バイトテロにより人生に大きな傷を負ってしまった方々のため、テロ事件の内容を後世に伝え再発を防止することを目的とし、まとめさせていただきました。

2. 事件概要

東京都多摩市。東京都下の丘陵地帯に造成された多摩ニュータウンにあるそば屋の「泰尚(たいしょう)」。幹線道路沿いの好立地で営業していたにも関わらず今年8月に閉店。東京地裁に破産を申請して、10月9日に破産手続き決定を受けた。

アルバイト店員の男子大学生が店内での悪ふざけ画像をインターネット上に公開したのだ。「洗浄機で洗われてきれいになっちゃった」というコメント付きで洗浄機に横たわったり、顔を突っ込んだりした画像をツイッターで投稿。さらには流し台に足をかけたり、胸をはだけ、店の茶碗をブラジャーのように胸に当てたりした画像など、目覆わんばかりの画像も投稿していた。

問題行為が発覚して、ネットが「炎上」する騒ぎになったのは8月9日。「不衛生だ」などとクレームの電話が相次ぎ、店は閉店に追い込まれた。そして、その後、営業を再開することなく、破産に至ってしまった。

日経ビジネスオンラインでは、事件についての詳細な取材を行っていました。
倒産に追い込まれた店主の苦しい心情、前店主であった夫を亡くしてからの経営の苦労など、第三者の立場でさえ悔しさで読むに堪えないものでした。

3. 事件詳細情報

■小川純子社長から日経ビジネスに宛てられたメッセージの全文

突然の出だしで失礼いたします。
 私と主人は共に東京に生まれ、主人の父はサラリーマン、私の父は公務員、双方共に片親に早く死なれ、決して幸福とは言えない環境だったと思います。そして主人は専門学校卒とは言え暴走族のリーダー、私は一流企業に就職しましたが高卒です。
 主人が30才の時に独立、(有)泰尚を始めました。細かい数字は割愛させて頂きますが、大繁盛いたしました。飲食の基本は早い、安い、そして美味しい、とにかくお客様に喜んで頂く事、そしてまた来店して頂き常に笑顔を絶やさず、本当によく働いたと思います。
ところが時流の波には逆らえず、経営は厳しくなってまいりました。
 とうとう昨年の9月13日(奇しくも義父と同じ命日)に主人は負債を背負いきれず自ら命を絶ちました。葬儀には1000人近い方がみえて下さいました。
 私と娘も覚悟しておりましたので、主人は私達のために犠牲になってくれたと思っております。
 そしてあの事件から早4カ月近く経った今、彼らのやった事は一生許す事はできないし、その子(今ではもう立派な大人です)も憎いですしその親達にさえあきれるばかりです。
 決して世の中の役に立つ人間になれなどとは申しません。でも少なくとも、人には迷惑をかけるな、ありがとうとご免なさいをなぜ言えないのかと。
 やはり今後、裁判になる可能性は高いと思います。そんな中で損害賠償が支払われたとしたら、それはもう私が受け取るべきものではありません。
 そして私は先程の「決して世の中の役に立つ人間になれなどとは申しません。でも少なくとも、人には迷惑をかけるな、ありがとうとご免なさいをなぜ言えないのかと」の言葉通り、さらにつけ加えるなら、人様に借りたものは必ずお返しする。それらができたビジネスウーマンで終えることができます。
 そしていつか死を迎える時は、主人の様に沢山の人達に見送られて旅立てたら、こんなに幸福な事はありません。

■倒産までの状況

泰尚は1984年創業。多摩市の永山店のほか、一時は町田市にも2店を運営して、2011年5月期の売上高は約1億2000万円(帝国データバンク調べ)だった。前社長の死後、永山店のみを残し営業していたが、力尽きた。負債額は約3300万円。

■テロ犯人とその手口

■事件後の犯人への制裁状況

現在民事訴訟中で店主はアルバイトに対しなんと、

1385万円の損害賠償請求をしている!

この金額の内訳を担当の弁護士に聞くと、1000万円は精神的損害、385万円は未払い家賃や従業員の給料だという事。精神的損害が1000万円というのは高すぎると思われるかもしれないが、女性店主は夫が亡くなってから冷蔵庫を買ったり借金返済したり1000万近く設備投資をして経営を立て直そうと頑張って切り盛りしてきた。それをバイトテロによって台無しにされ、悔しさは計り知れない。
ネットでは1人の多摩大生の写真ばかりが出回っていたが、被告は4人の従業員。

2014年8月時点の情報では、店主はバイト店員に対し民事訴訟で損害賠償請求を行っている。
裁判上の請求は非常に時間も労力も費用も要する、大変なものです。極力早く、そして高い賠償金が支払われるよう判決が下るのを祈るばかりです。

■関連するであろう法規

民法

(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

まずは民法の不法行為による損害賠償からアプローチできます。
「故意又は過失」があるのは、ツイッター上の画像からも客観的に明らかです。
「他人に権利又は法律上保護される利益を侵害」していることについても、実際に倒産に追い込まれているという事実があります。
「生じた損害」については、具体的な計算が必要となります。
ただし、不法行為は「被害者側に」立証責任があるため、犯人に故意・過失があること、損害が発生していること、犯人の行為と損害との間に因果関係があること、具体的な損害金額を全て小川元社長が立証しなければならないという負荷が生じます。
また、不法行為は犯人を知った日から3年で時効となります。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

民法上は、不法行為のほか、債務不履行責任を問うというアプローチもあります。
バイトは「雇用契約」となりますが、契約上取り決めた債務の他にも、いわゆる付随義務として信義則上要求される義務があることは判例で明らかになっています。
債務不履行は債務者側に故意・過失がある場合のみ発生しますが、故意・過失が無いことについては不法行為と違い犯人側に立証責任があります。時効は20年です。
ただし、「債務の存在」については被害者側に立証責任があるため、被害者側にも多くの負荷が発生します。

刑法

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条  虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第二百三十四条  威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

告発があればのこととなりますが、刑事事件となる可能性もあります。
刑事では検察官が公訴するため、被害者側は何もする必要がありません。ただし、有罪となっても、それで被害者が救済されることもありません。
犯人に業務妨害の罪が成立するには、業務妨害に関わる法規の構成要件に該当すること(実行行為があり、結果が発生し、実行行為と結果との間に因果関係があり、故意があること)、違法性阻却事由がないこと(正当防衛や緊急避難など)、責任阻却事由が無いこと(責任能力が無いなど)が必要となります。

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