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世界8番目の不思議・悪魔の聖書『コーデックスギガス』、ギガス写本の謎に迫る

「世界八番目の不思議」「悪魔の聖書」…魅惑的なギガス写本についてまとめてみました。

更新日: 2014年10月08日

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mimimi8さん

ギガス写本

チェコの首都プラハにあるチェコ国立図書館で2011年1月20日から、俗に「悪魔のバイブル」と呼ばれている聖書の写本が、一般公開されました。この写本の正式な呼称は「ギガス写本(Codex Gigas)」というもので、これは「巨大な本」を意味しており、英語では言うと「codex giant」でそのままの意味である「巨大写本」となります。

これは現存する最大の中世文書であり、「世界8番目の不思議」とも言われてきました。長さは約1m、重さ約75kgもあり、624ページにわたる肉筆によるこの書物は、その巨大さから運ぶのに最低でも2名の人物が必要で、その中には聖書や古代の歴史、薬物療法や魔法等が記されています。

また、伝えられるところでは160頭のロバの皮膚から作られているとされており、他のいかなるこのような写本もこの世には存在しておらず、この中には、他のどこにも存在しないテキストの組合せが含まれているとされています。

更に、この書物が通称「悪魔のバイブル」と呼ばれているのは書物内に描かれた悪魔の絵と、その執筆者の伝説によるものです。この書物にはページ全面に悪魔が描かれており、驚くことには、「説明のつかない影」が悪魔の周辺ページだけに現われると言われています。そして、全ての写本には旧約聖書と新約聖書と共に悪魔払いの呪文が記されています。

一説には、この写本が完成したのは1230年頃のようだとも言われています。悪魔払いの呪文が記されていながら、ページ全面に悪魔が描かれいるというのも変な話ですが。

この書物は13世紀に現在のチェコ中央部にある修道院で、ある僧侶がこの写本を作製したと伝えられており、その伝説では、その僧侶は重罪を犯したとして幽閉されたため、この写本を一晩で作り上げることで修道院に栄光をもたらし、自らの罪を消し去ってもらおうと考えたところから始まります。

ところが、そのためには悪魔の助けを請わなければならず、その援助への感謝として、書物内に悪魔の絵を描き込んだと言われているようです。

その修道院は15世紀の戦争で破壊されましたが、この書物は戦火を抜けて、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世のコレクションの一部となった後、30年戦争(Thirty Years War、1618~1648年)の際にスウェーデン軍に略奪されていたようです。

ギガス写本は、ヴルガータ版聖書を含み、他にも様々な歴史的文書が含まれていて、全てラテン語で書かれています。三十年戦争中の1648年、スウェーデンが戦利品として持ち帰り、今はストックホルムのスウェーデン国立図書館が収蔵していますが、通常は公開されていません。

神聖ローマ帝国皇帝。
政治には無関心であったが、教養に富んだ人物であり、錬金術に凝っていたことで知られる。

ギガス写本の特異点

・この悪魔の聖書は非常に巨大で、運ぶのに最低でも2名の人物が必要となる。

・かつて、世界第8の不思議と考えられていたこのギガス写本は、長さ3フィート(90センチ)、重さが 165ポンド( 75キログラム)ある。

・旧約聖書と新訳聖書を同時に扱う唯一の写本である。

・ギガス写本は、悪魔の肖像の反対側にそびえ立つ、天国 ( the Heavenly City ) の存在の正当性を含んでいる。

・しかし、その望みと救済のシンボルである天国(それは、対立する悪魔との肖像とは正反対のもの)では誰とも会うことができない。誰もいない。

・ギガス写本には、たとえば熱やてんかんのような病気の実際の治療法や、あるいは、泥棒を見つける方法といった、実際的な問題の解決方法の記述も含まれる。

・2008年に、この写本が1年がかりでプラハに移送された。移動の際には、写本に 1,510万ドル( 12億円)の保険がかけられている。

・悪魔の聖書は、600ページからなっており、それはすべてロバの皮からできている 310枚の革紙から作られている。

制作者はだれ?制作時期は?

伝説では、こうなっています。

ある修道僧が誓いを破り、厳しい刑罰を耐えるため、本を一晩で写本すること誓います。

しかし、夜中の段階でそれが難しいと悟ると堕天使ルシファーに契約を持ちかけます。
その内容は「自分の魂と引き換えに写本を完成させる」というものでした。

結果、悪魔は契約を守り写本は完成。
修道僧は悪魔への感謝を示すために悪魔の絵を追加したというものです。

ギガス写本には虫のインクが使われていたことが既に判明しています。また、一貫して同じ原料が必要なので、2種類のインクが使われたとは考えにくく、インクを調べた限りにおいては、筆者は1人だと考えられているようです。

付きまとう謎…1人でかき上げられるものなのか?

もし筆者が1人ならば、最初の疑問として「時間的制約」が挙げられるでしょう。
これだけの書物であれば完成には何10年もかかるはずで、筆者が年老い、病気に苦しみ、視力も体力も衰えることを考えると、目立った間違いや抜け落ちもないという意味においてギガス写本が完璧であることが、かえって不自然に思えます。

単独説を証明するには更にデータが必要ですが、調査を進めるほどに疑問は深まっているようです。一体どれほどの時間がかかったのかという点だけ見ても、専門家でも所要時間は容易に計算できないようです。

まずは、1行分だけの所要時間を推測するとしても、それには13世紀と同じ方法で書いてみる必要があり、サイズ12ポイントの欧文フォントでギガス写本を写すところから始めます。羽根ペンを使うと羊皮紙に滑らかに書けますが、これ自体は現在も700年前も同じなので、行数によって所要時間を割り出す事が出来ます。これに則って1行を休まずに書くと20秒かかる計算となり、1段は30分、1ページ書くと1時間となります。

そして、眠らずに作業しても、完成には約5年かかることになります。しかし、修道士は忙しく、書写に費やせるのは1日数時間程度と考えられ、更には文字を書く以外の作業も伴う事になります。

仮に5年間、必死に書いたと仮定しても、線を引く作業を行なうとその時間は倍かかり、10年は経過すると考えられます。更に1つの装飾文字に2~3日かかる場合もあります。また、文章を修正したり、日曜日には教会へ行ったり、様々な要素を全て合わせると最短でも20年、分析結果によれば25~30年かかったとさえ考えられているようです。

更に考慮すべき点は、13世紀の状況では書写は過酷な作業だということです。中世の修道院では聖書の書写は苦行の1つといってよく、身体的に辛い作業で魂を清めたとされていたようです。つまり、「中世の人々は、聖書を書き写せば罪を償えると考えていた」という事です。

ギガス写本の悪魔は時代に強く影響された修道士の創造物であり、筆者の自由な精神が悪魔を作り上げたという別の証拠も見つかっています。この専門家は悪魔の絵の細部を見てあることを確信しました。

それは「筆者は素人であった」というものでした。その技術は見事なものの、専門家の目から見れば未熟に映るもので、「彼は名匠ではなく才能ある素人。ゴシック芸術好きの素人と考えるのが妥当だろう。しかも執着心が強い。描いていくうちに、より大きくなり、より奇妙で並外れたものになっていった」という見解を示しています。

実際、同じ特徴が写本の書体にも表われており、それらは美しく綿密ですが、洗練されてはいないということから、独学だったようだと結論付けています。修道院のプロの写本生は写本室で一緒に作業をし、最新技術を交換し合うものですが、写本生の書いた写本を並べて比較すると、ギガス写本は古臭く、稚拙で奇妙ともいえる程度のものだったようです。この事から「写本の作成は1人で行なったものである」という見解に達しているようです。

文字の書き方を分析する筆跡鑑定を行ないます。確実な事実として、筆跡は人によって皆違うものですから、筆者が複数であればその痕跡が残るはずです。文字の特徴としての傾き、筆圧、角度、文字の形など、繰り返し書かれた装飾文字などから様々なことが分かるのです。

そして、専門家は「g」に焦点を絞ると「これは古い書体。“g”の丸い部分の下の方が閉じておらず開いている。これが全体を通して一貫していたら、筆者は1人であることを明確に示すことになる」と考えます。数々の検証の結果、詳細に調べても他の特徴と同様に、古い書体の「g」は統一されていました。

そして、使われているインクは1つで、文字の書体は独特、写本の内容からもギガス写本の筆者は1人のはずだと専門家は結果を出しているようです。1人では運べないほどの巨大な本は最初から最後まで完璧だと言われており、この史上最大の写本は数10年かけて完成されたと見られています。そして、同じ筆者が書いた書物は見つかってはいません。

1人の人間が、おそらく何十年もかけて書き続けた「ギガス写本」
なぞはまだまだあります。

悪魔の姿の謎

中世には悪魔にふさわしい容姿が確立され、そのモデルは異教の神、下半身がヤギの姿をした神である「パン」が悪魔とされました。

悪魔の特徴は様々ですが、角は古典的なもので、書物にはパンと同じ半人半獣の怪物で皮膚はうろこ状、パンを思わせる割れたひづめを持ち、好ましくない獣として描かれています。しかし、その悪魔の絵を入念に調べると、細部には疑問が残る点も見受けられています。

筆者は小部屋の中に悪魔を描いており、その悪魔は地獄に解き放たれてはいないのです。筆者と思われる修道士が、書物を完成させるために悪魔に助けを請い、その感謝として悪魔の絵を書物に書き込んだにも拘わらず、その悪魔は独房に閉じ込められた絵として描かれているのも変な話です。

悪魔の専門家はロンドンでデジタル画像を使い絵を分析し、「中世の一般的な悪魔のイメージは、地獄を統括する存在。でもこの悪魔は独りだ」と語ります。更には、筆者がいた時代や背景、学歴や心理状態までが分かると述べ、「中世の人々の生活は厳しかったので、生活に対する脅威を悪魔として具現化した。人々は神よりも悪魔を気にかけた」と話し、エデンの園の蛇として知られる悪魔も、当初は無害の存在だったとも語ります。

彼の理解ではサタンはアラビア語で「告訴者」、ヘブライ語では「敵対者」を意味することから、旧約聖書ではサタンは人間の罪を告発する者、新約聖書で悪の化身になるということのようです。

また、ヨハネの黙示録に記されたサタンの正体は堕ちた天使で、黙示録の悪魔は機知に富み、誘惑がうまく破壊的で、罪人を永遠の地獄に突き落とすとされています。そして、その専門家は「ヨハネの黙示録によると、かつての天国のように地上で戦いが起こっている」と語ります。

ギガス写本最大の謎

この本の不思議な点としては、一般的には本来、聖書は聖なる本で邪悪なモノを寄せ付けないはずと理解されており、悪魔祓いでも聖書や聖水を使うのは知られているところです。しかし、その悪魔の大敵といえる聖書に悪魔がどうして触れることができるのか、まして、その作成をすることができたのかという疑問が、本書の大いなる神秘として指摘されているようです。

参考・出典HP

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