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いったいなぜ……英極右のあの男がシリアに行った理由

今年7月まで英極右政党BNP (the British National Party) の党首で、5月の選挙まで欧州議会議員(1期)だったニック・グリフィンが、11月末にシリアを訪問していたそうです。そのことについて、少し。

更新日: 2014年12月07日

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この記事は私がまとめました

nofrillsさん

「英国の極右の顔」といえば、この人物(だった。最近までは)

http://en.wikipedia.org/wiki/Nick_Griffin

1959年、ロンドンのバーネット生まれ。父親は保守党所属の地方議会議員。8歳でイングランド東部のサフォークに引越し、パブリック・スクールからケンブリッジ大に進み、歴史と法学を専攻し、平凡な成績で卒業。14歳でヒットラーの例の本を読み、ナショナル・フロントに入っていた。

※写真は2009年、欧州議会選挙当選後の記者会見続行を断念して外に出てきて、メディアに囲まれたところ。

10代のころから極右で活動し、大学ではナショナル・フロントの学生団体を立ち上げるなどしてきたグリフィンは、1980年代をナショナル・フロントで過ごすが分派し、90年代にジョン・ティンドールに拾われてBNP (the British National Party) に入った。1990年に事故で片目を失って以来、義眼を入れている。

1999年にティンドールを破ってBNPの党首となり、2009年には欧州議会議員となった。

2014年5月の欧州議会選挙で議席を落とした後、7月に党首を退き「会長」的なポジションについていた。

……と書くと順調なように見えるかもしれないが、破産宣告されてたり。

グリフィンは「人種差別煽動」(パンフレットの配布など)で複数回起訴され有罪になっているが、発言をやめたことは一度もない。ユダヤ人に対するヘイトスピーチをしながら、パキスタン系英国人のスポーツ選手のファンであることなどを強調して「私はレイシストではない」と主張しているような人物だ。

彼が党首として、2000年代の「大躍進」を実現させた(させちゃった)BNPは、Bloody Nasty Peopleともじられる(元はThe Sunの一面のネタだが)。

※以上、基本的に、以前私が書いたものの転記。
http://matome.naver.jp/odai/2141220093050817401

▼この「顔」は、現在、「過去の人」になっている。

ほぼ1年前の2013年11月、ウリッチでの英兵殺害事件の被告の裁判の際は「英軍の支持者」の顔をして裁判所前に押しかけ、支持者に囲まれて「死刑を復活せよ」という極論で煽っていたグリフィンだが、2014年5月の欧州議会選挙で議席の維持に失敗するとあっけなく党内で失脚、「会長」的なポジションに追いやられたあと、10月にはBNPという党そのものから追放された。

BNPは元々、この数年は内部分裂やら追放やらを繰り返していた。ニック・グリフィンは腹心まで追放していたが、今度は自分が追放されたのである。

Funniest news of the day: Nick Griffin expelled by the BNP for trying to "destabilise" it! bbc.co.uk/news/uk-politi… (via @SangitaMyska)

サニー氏笑いすぎである。

その「過去の人」がまたニュースになっていた。

Ex-BNP leader Nick Griffin poses in ancient mosque during Syria 'terror conference' visit ind.pn/1A7e5fL

ほう、英国の主要全国紙4紙の中で唯一アサド政権側についた報道を展開してきたインディペンデントが。。。ふむ。

ニック・グリフィン、シリアに行ったのか。英国に帰国したら逮捕されるんだろうな(まがお)

最近、英国では「シリアに行っただけでアウト」論が盛んなので。

▼改めて検索でさかのぼってみたら、極右ウォッチャーのみなさんは既にがっつりチェックしてた。

No surprise to see Nick Griffin in Syria again. No one anywhere else listens to his vile hatred. pic.twitter.com/lXyKQlYMJC

▼インディペンデントの記事の内容

http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/what-on-earth-is-nick-griffin-doing-in-syria-9895196.html

記事は、ニック・グリフィンのシリアからのツイートや、人々の反応を見ながら、「グリフィンとアサド政権」についてけっこうしっかりと書いている。(なので「ネットで話題」系の記事とはいえ、あまりお手軽なものという感じではない。)

記事はグリフィンが週末(11月29日、30日の土日)にシリアを訪問し、ダマスカスのウマイヤド・モスクから写真をツイートしていたことを紹介し、「ニック・グリフィンはバシャール・アサドの利益を代弁する代理人にでもなったのか」という疑問が生じているという方向性を出して始まる。全編、グリフィンについてはきわめて批判的なトーンである(当然のことだが)。

いわく、グリフィンがダマスカスに行ったのは、シリアの司法省(Justice Ministry)がオーガナイズした会議に招待されたため。この会議のトピックは「テロリズムと宗教的過激主義」で、招待されていたのは世界の80カ国以上の政界や社会一般の著名人。

インディの記事にSANA(シリア国営メディア)の記事がリンクされているので、詳細はそれを見ればわかるのだろう。
http://www.sana.sy/en/?p=19996

が、今はとりあえず先にいく。(SANAの記事の内容については次ページに)

80カ国から人が集まったというこの会議だが、英国から参加した政治家はニック・グリフィンのみ(グリフィンが政治家っていうけどもうその実態ないっすよね。「元欧州議会議員」というだけで)。

グリフィンはこの会議の期間中、「1日で10本以上もインタビューを受けた」と主張し、シリアのテレビで1時間の討論番組にも出演していたという。

グリフィンのこれらのツイートに対して、「いったいシリアで何をしているのか、アサドに招待されて英国代表として会議に出席するなんて」的な疑問が続出。記事はそれらの人々のツイートをいくつか埋め込んでいる。

Nick Griffin, head of the far right British National Party, is in #Syria again. He's expressed support for Assad b4 pic.twitter.com/RnK5ypmehU

インディの記事に埋め込まれていたツイートのひとつ。「以前にもアサド支持を表明していた」。

この件についてはもう少しあとで改めて。

Nick Griffin has travelled to Syria. Can we cancel his passport now please? i100.io/iXTIfba

「ここでパスポートを失効させるんだ」

記事の続き。

そして、11月30日夜(英国時間)、「今日はウマイヤド・モスクに行きましたよ」といって、洗礼者聖ヨハネの墓の前での記念撮影やら、ダルウィーシュの踊りの写真やらをアップしては、「ネオコンがシリアをイスラミストに引き渡したらこれは破壊されますね」とか「ネオコンが支援したがっている連中に見つかったらその場で殺されますね」と発言。

そう、グリフィンの頭の中は「反ネオコン」の陰謀論(根は反ユダヤ主義)。彼の考えでは、アメリカと欧州連合とイギリスは「ISISを口実として利用し、シリア軍を爆撃して、イスラミストを権力の座に着かせること」を画策している!!!!!!!

(な、なんだってーっ!(AA略)

どこでどうしたら、米英etcの連合軍が「アサド政権の軍勢」を爆撃しているなんて思えるのか、不思議でなりませんよ、あたしゃ。 (・_・)

ちなみに、グリフィンが訪れたのはこのモスク。

"ウマイヤド・モスク(Umayyad Mosque, Arabic: جامع بني أمية الكبير)とは、ウマイヤ朝第6代カリフのワリード1世によって705年(ヒジュラ暦86年)にダマスカスに建築された現存する世界最古のモスクであり、世界最大級のモスクのひとつでもある。世界遺産「古代都市ダマスカス」の一部である。"
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%82%AF

"もとはキリスト教の洗礼者ヨハネ教会であったが、7世紀になってダマスカスがムスリムの支配下に入り、10年の歳月を費やして敷地全体がモスクへと改装された。……内部には当初から洗礼者ヨハネの墓があり、キリスト教徒にとっても重要な巡礼地のひとつである。"
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%82%AF

記事はさらに続く。グリフィンはラッカ(ISISが「首都」としている都市で米軍の空爆が行われている)やアレッポからはずっと遠くに離れているにも関わらず、「シリアではすべてが平穏」みたいなことを吹聴している……というのは、やだー、インディペンデントがやってきたことと同じじゃないですかー。(私は2013年夏の「毒ガス」攻撃のあと、この新聞の記事を読んで、もう基本的に、この新聞のシリア関連の記事は読まないだろうなと思った。)

記事はそのあと、最新の戦況(「水曜日、シリア政府軍とヒズボラの戦闘員が何週間もかけて奪還を試みているダマスカス近郊で、反アサド政権側の軍勢50人ほどが政府側の待ち伏せ攻撃で殺されたと国営SANAテレビニュースが11月27日に伝えた」といったこと)を書き添えて、「グリフィンがアサドに招待されてシリアを訪れたのは今回が初めてではない」という事実の指摘で締めくくっている。

'He returned from two "peace missions" in June and August last year making big claims that he had influenced the speaker of Syrian Parliament to send a letter to British MPs and officials offering them to "come and see [the country] for themselves" before participating in US-led military action against al-Assad.'
「昨年6月と8月、2度の『ピース・ミッション』から戻り、シリア国会の議長が英国会議員や当局者に『(米国主導の軍事行動に参加する前に)どうかご自身の目で確認しにいらしてください』という書簡を送ったが、それは私の影響だと大口を叩いていた」

2013年8月というと、英国会で毒ガスの使用を理由とした「シリアへの軍事介入」の動議が否決されたときです。

※インディのこの記事にはこんな反応が……

Fascist Nick Griffin in Syria: independent.co.uk/news/world/mid… His pro-Assad/anti-"neocon" rhetoric is identical to too many folks on the left.

や、そりゃそうなんすけど、そんなこと、言ってみたところであんまり「意味」なんかないってことに気づかないんですかね。「犯罪者の99.9パーセントがパンを食べたことがありました」みたいな指摘をしたって、意味はない。ただ「左翼」をdisりたいだけかもしれませんが。

ただ、「陰謀論」、「反帝国主義」が仲良しというのは指摘しておくべきだろうと思います。

あんまりいろいろ書くとめんどくさいことになるので書かないけど、「世紀末」が終わって変な終末論に頼れなくなったあと、BNPは「エネルギー業界の陰謀」とか「遺伝子組み換えの陰謀」のようなことを唱えて、「エコ」方面にずいぶん伸張してきてました。それを主導したのがニック・グリフィンです。この人は「バカ」ではないというのは、そういうところです。

※写真はただのミーム。

no surprise, british #Nazi Nick #Griffin loves "#Russia Today". #RT pic.twitter.com/W8oI9fTApq

ああ、こういうことになってるんですか。

(2010年ごろにジュリアン・アサンジがつけた火が燃え広がってきた感ぱねぇ)

▼2日になって、日本語圏でも多少話題になっていた。

ニック・グリフィンのダマスカス訪問の件、書いといたほうがいいんですかね。アサド政権とグリフィンの関係は以前からです。 theguardian.com/politics/2013/… あとでちょっと書きます。

ニック・グリフィンは今年(2014年)の改選までの1期、MEP(欧州議会議員)だったのですが、その欧州議会の「ぶっちゃけ極右」の会派の議員たち(フランスのFNなど)が昨年団体でシリアに行っているわけです。彼らは「反イスラム過激派」で、「敵の敵は味方」でアサド政権側と仲良しに。

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