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カラマーゾフの兄弟 解説【文学の最高傑作】【ドストエフスキー】

難しい小説を難しく論じるのは簡単です。そのまんまってことです。難しい問題を簡単に計算できるからパソコンは偉大なのです。カラマーゾフの兄弟は準備さえ十分すれば誰にでも読める本です。パソコンやスマホを使うよりもわかりやすいのです。

更新日: 2018年12月19日

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人類文学の最高傑作 ドストエフスキー作「カラマーゾフの兄弟」

「カラマーゾフの兄弟」は人類文学の最高傑作と言われています。これ以上の文学作品が今後生まれるとは、まず考えられません。

まず一つの理由として、エネルギーを投入するならば、映画なりドラマなり、もっと予算規模の大きなジャンルで生産されるだろうからです。

いまひとつの理由ですが、大天才はどうしても精神異常と隣り合わせだからです。ドストエフスキーさんは正にギリギリの存在です。現代ではおそらく社会生活不能です。だから再生産されません。

それくらいの名作ですので、参照されることが多いです。文学や映画、アニメなどの分野を鑑賞するには、どうしても押さえておかなければならない大作です。

気が遠くなりそうな長さ

欠点もあります。長いのです。文庫本で最低3冊必要です。途中でわけがわからなくなります。
登場人物もロシア名なので覚えにくいです。でも最高傑作なのです。攻略しなければなりません。できるだけ手っ取り早く、できるだけ安易に。

先に概略を掴んでから読む(以下ネタバレ有り)

「読めばストーリーくらいわかるだろう」そう思ったあなたは素人です。読んでストーリーをわかろうとしてはいけません。まずストーリーの概略を何度か読んで、あらすじとして十分把握した後読み始めるべきです。長すぎる小説は全てそうするべきなのです。

感動は10%くらい減少するかもしれません。
でも途中で放り投げる確立は70%くらい減少します。
誰が誰だかわけがわからなくなる確率も、90%くらい減少します。

元々2回目、3回目と繰り返すほどに面白くなる作品です。最初にストーリー押さえておいても、問題なんにもありません。

登場人物はプリントして手元に

上気リンクの「あらすじ」の下、主要登場人物はプリントして、手元に置いておきましょう。ロシア文学最大のガンは、名前が途中で混乱することです。

キャラ配置と文明論

この小説理解のカギは2点あります。

1、キャラ配置を把握する
2、背景にある文明論を意識する

この2点です。
これだけでなんとかなります。

鎌倉時代の日本人に連立方程式を理解させようとすると、
ほぼ全員逃げ出すと思います。
でも現在の中学生はほぼ全員理解できます。
時代は進歩します。
文学理解も進歩します。
効率的に、要点を押さえれば、だれにでも消化可能なのです。

キャラ配置1

基本的に、親父と三人息子の話です。
親父は後に回して、三人兄弟のキャラ把握からはじめましょう。


長男:パワフル、感情的、女好き、酒飲み、軍人
次男:陰気、シニカル、頭脳的、女好き
三男:てんかん持ち、前向き、善良、敬虔(僧院にはいるくらい)

以上です。簡単ですね。
ジャイアンとスネ夫とのびた(ただしてんかん持ち)です。キャラ配置の王道です。

キャラ配置2

さらに詳しく見てみましょう。表にまとめました。画像ファイルです。クリック→クリックで大きくなります。簡単ですね。

三兄弟が現在、過去、未来に展開します。

物語のわりとはじめのほう、ゾシマ長老と信者の女たちとの会話で、この構造があきらかにされます。これもプリントして手元に置いておいてください

たったこれだけの構造でも、私は30回くらい通して読んだ挙句に、ようやく見つけ出しました。好きだったから何回も読んで楽しかったし、見つけ出した瞬間はもっと楽しかったですが、文学好きなら初めから共通知識として持っているべきだと思います。

すば抜けたキャラ立て能力

ドストエフスキー最大の特徴は「キャラ立て能力」が高いということなのですが、キャラを時空を超えて展開させるとは、もはや人間技ではありません。いっちゃったレベルの天才です。犬まで巻き込んでいるのが恐ろしいです。

作中長男ミーチャが夢を見ます。家事で焼けだされた可哀想な人達が立っている夢です。ミーチャは思わず問いかけます。
「どうして焼け出された母親たちが立ってるんだ、なぜ人間は貧乏なんだ、なぜ子供は不仕合わせなんだ、なぜあの女たちは抱き合わないんだ、なぜ接吻しないんだ、なぜ喜びの歌をうたわないんだ、なぜ不幸のためにこんなに黒くなったんだ、なぜ子供に乳を飲ませないんだ。」

そう、ミーチャの目の前で泣いている子供はミーチャ自身なのです。自分は時空を超えて存在しているのです。

文明論1 歴史

一つの家庭の物語を書いているように見せかけながら、大きな歴史も語っています。

父親のフョードルの最初の妻は、浅黒く、喧嘩するとフョードルをひきずり廻すくらい強かったとされています。これはロシアを占領していたモンゴル帝国のことです。
次の妻は信心深く、てんかんの持病がありました。これはモンゴル・タタール人から解放されたロシアが、キリスト教国家になったことを示しています。
どうしようもない父親、フョードルはロシアそのものを表しています。

人間失格 あらすじ解説【太宰治】

http://matome.naver.jp/odai/2143840513532471801

この、歴史を人間の一代記のように描く、という小説技法を最大限に発展させたのが、太宰治の「人間失格」です。日本と天皇の歴史を擬人化した主人公を描いています。

文明論2 ギリシャ文化

「カラマーゾフの兄弟」は簡単に言えば、父親殺しの話です。原型はギリシャ神話、オイデップスにあります。

文明論3 キリスト教文化

「カナの婚礼」はキリスト教の新約聖書に書かれている逸話です。イエスの奇跡の話です。イエスが婚礼を祝して、無限のぶどう酒を用意してくれます。作中最重要箇所でこのシーンが出てきます。

文明論4 ギリシャ文化とキリスト教文化のドッキング

ドストエフスキーはギリシャ文化とキリスト教文化を、この小説の中でドッキングさせようとしています。これはひとりドストエフスキーだけの問題ではなく、西洋人が皆苦しんできた問題です。

明治から昭和の日本人が、西洋文化と日本文化という対立を消化しようと苦しんできたのと同じです。芥川、太宰、三島、川端、大変すぎてみんな自殺しちゃいました。文化のドッキングってのは、ものすごくヘヴィーな作業なのです。(中国や半島やイスラムは、この努力もう少し足りないんじゃないかと思っています)

西洋で言えば、
ダンテの「神曲」もこのドッキングの努力の賜物です。
ゲーテの「ファウスト」もこのドッキングの努力の賜物です。

しかしダンテもゲーテも、(最大級の文豪ですが)あまり成功しませんでした。
成功したのはドストエフスキーです。だからみんなに読まれています。

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