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【詳細まとめ】映画「セッション」論争『菊地成孔vs町山智浩』 #tama954 #denpa954

2015年 第87回 アカデミー賞「編集賞」「録音賞」「助演男優賞」受賞映画「セッション」についてジャズミュージシャンの菊地成孔さんが長文酷評を公開。映画評論家の町山智浩さんがそれを批判しYahoo!ニューストップに掲載され炎上!時系列で本人同士のブログをソースの軸にして経緯を詳細にまとめました。

更新日: 2017年03月13日

kikuchigumiさん

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【注意】ネタバレのため先に本編を御覧頂くことをオススメします!また、長文を読み解く力のない方はご遠慮ください!!長文が苦手な方は【簡易】まとめを御覧ください

■町山智浩氏が論争記事の初稿の内容を周知せずに覆す内容に編集した事が確認できたため、2015年4月27日に確認した本文をすべて引用させて頂きました。

【ソース一覧】

2007.11.22 町山ブログ 菊地成孔先生の07年ベストは『ハッスル&フロウ』!
 http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20071122
2007.11.26 菊地ブログ 『懺悔の値打ちも無い』(←ページ検索推奨)
 http://www.kikuchinaruyoshi.net/past-diarys-06-04-11-05/2007/nov/
2015.02.23 ★第87回アカデミー賞受賞結果発表
 http://eiga.com/official/oscar/sokuhou.html
2015.02.23 ☆菊地ブログ 『第87回アカデミー賞直前予想(「直前」はギリ挫折)』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar736785
2015.04.08 ★菊地ブログ (長文酷評)『「セッション!」~<パンチドランク・ラヴ(レス)>に打ちのめされる、「危険ドラッグ」を貪る人々~』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar767402
2015.04.11 ☆菊地ブログ 『マンガを愛好する皆様に陳謝致します』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar768999
2015.04.17 ★映画『セッション』劇場公開
 http://session.gaga.ne.jp/
2015.04.17 ★町山ブログ 菊地成孔先生の『セッション』批判について
 http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20150417
2015.04.19 ★菊地ブログ 『町山さんにアンサーさせて頂きます(長文注意)』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar774129
2015.04.20 ★Togetterまとめ 菊地成孔の批判は、本当に映画ファンの足を遠のかせたのか?統計
 http://togetter.com/li/810640
2015.04.22朝 ☆菊地ブログ 『町山さんに激敗(笑)+』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar776146
2015.04.22夕 ★町山ブログ 『セッション』菊地成孔さんのアンサーへの返信 ★二度改訂し少なくとも3パターン有
 http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20150422
2015.04.24 日経MJ アントニオ・サンチェス インタビュー記事
 https://twitter.com/244fukuda/status/591600534236205056
2015.04.25 ☆ライムスター宇多丸のウイークエンドシャッフル
 https://www.youtube.com/watch?v=tFofwvko6qc
2015.04.25 ★Yahoo!ニューストップ 「セッション」の是非めぐりネット炎上中
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150425-00000004-ykf-ent
2015.04.28 ★菊地ブログ 『町山さん手打ちにしませんか(笑)』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar779974
2015.05.05 菊地ブログ 『バードマン準備稿+』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar784876
2015.05.13 菊地ブログ 『最高な音楽ドキュメント2本必見+』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar790286
2015.06.02 菊地ブログ 『JUNE砂の惑星(喉治りましたが)+』
 http://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar803636

★は重要記事

映画評論家、コラムニスト、元編集者、東京都出身

音楽家/文筆家/音楽講師
東京ジャズシーンのミュージシャン(サキソフォン/ヴォーカル/ピアノ/キーボード/CD-J)として活動/思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、極度にジャンル越境的な活動を展開、演奏と著述はもとより、ラジオ/テレビ番組でのナヴィゲーター、コラムニスト、コメンテーター、選曲家、クラブDJ、映画やテレビドラマの音楽監督、対談家、批評家(主な対象は音楽、映画、服飾、食文化、格闘技)、ファッションブランドとのコラボレーター、ジャーナリスト、作詞家、アレンジャー、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。

プロローグは2007年11月22日町山智浩氏のブログ記事

BRUTUSの映画特集号が届いた。
「映画選びの教科書」という特集で、私、町山は映画コンシェルジェという企画で、長嶋有氏やしまおまほちゃんのリクエストに応えてお勧めの映画を選ぶという仕事をやらせてもらいました。
で、他の「コンシェルジェ」がどんなことを書いてるのかと思って読んだら……。
?????????
菊地成孔という音楽の偉い先生が『ハッスル&フロウ』という音楽映画を絶賛しているんですが、その誉め方がどうもおかしい。


(菊地記事引用)白人がラッパーになるには? という成り上がりストーリーで、昨年の私のベストワン映画です。白人が主役なのでパーフェクトな黒人の映画じゃないのですが、映画として死ぬほどよくできていますし、主役以外はほとんど黒人です。(ここまで引用)

えー、この『ハッスル&フロウ』という映画を知らない人に説明しますと、
主演はテレンス・ハワードという俳優さんで、こんな顔です。
http://f.st-hatena.com/images/fotolife/T/TomoMachi/20051226/20051226172419.jpg
……
……
……
……
……
パーフェクトな黒人じゃん!
実際、アフリカ系だし。
『ハッスル&フロウ』にも白人のDJは出てきますが完全な脇役です。
菊地さんは、「昨年のベストワン映画です」と言っていますが、
ずっとテレンス・ハワードを白人だと思い込んだまま観て、ベストワンにしたんでしょうか?
それで「死ぬほどよくできている」と思ったんでしょうか?
いったいどうしてこんな事態になったのか、いろんな可能性を考えてみましたが、
ものすごく目がお悪い、以外に考え付きません。
これが「映画選びの教科書」です。

その4日後、菊地成孔氏のアンサーとなるブログ記事

さて、とうとう見つかってしまった。というのもフテブテしい事この上無いのですが、「ブルータス」の「映画コンシェルジュ」という企画で「ハッスル&フロウ」についてムチャクチャを書いた事が、町山智浩さんのはてな日記に指摘されてしまい、顔から劫火が放射される思いです。いやーやっちゃいました。ワタクシ多忙につき、この映画を見もしないで、評判だけで内容も知らず、知らない方に勧めてしまったのですが、内容に関して、知らずに書いたので大ポカをやってしまい、、、と書きたい所なのですが、流石にワタクシそこまで大物ではなく、ワタシのファンの方ならご存知の通り、ワタシはこの映画を劇場でも見ており、DVDも持っておりまして、川勝&下井草さんの「ポップカルチャー年鑑」の06年版でベスト映画に推薦しております。サントラ(米盤)も持っております。

"懺悔の値打ちも無い" Nov-26-2007 項 参照 (ページ検索推奨)

では何故、あんな事をしてしまったかというと、これが顔から火が出るほど恥ずかしく、穴があったら埋葬されたいほどの羞恥心で、こうしてキーパンチしながらもだっはははははー!!!と大爆笑してしまいたく成るほどバツが悪いのですが、あな恥ずかしや。実はちょっとあれは怒っておりまして(くー)、一種の怒りの表現なのです(ううううー)、「誰に何を怒っていたのか?」というと、これは御勘弁頂きたいのですが(もうまったく怒っていないので)、何であんな事に腹が立ったのか、自分でも頭がおかしいのではないかと思うのですが、とにかくあの時は死ぬほどムカムカし、かといって怒りをあらわにする事も出来ず、「ムチャクチャ書いてやれ。すっとぼけて」と、自爆にも似た意味不明な行動に出てしまいました。「恥ずかしい」のは、この「とった行動が意味不明(挙動不審に近い)。とはいえ自分的にはものすごおく解る」という点で、セルフ羞恥プレイの如し。他にも数作ルコマンデしていますが、他の物は普通にちゃんと紹介しています。

"懺悔の値打ちも無い" Nov-26-2007 項 参照 (ページ検索推奨)

「ううー。やってしまった。やってしまった。誰かに指摘される。絶対指摘される」と、怯えの様な、楽しみな様な複雑なキブンで過ごしていたのですが(事の全てを知っている)知人から「ウエイン町山が書いてたじょ」と言われ、「うひー」と成った。というお粗末。ブルータス誌及び「ハッスル&フロウ」関係者各位に深くお詫び申し上げます。恥ずかしいやら申し訳ないやらのままごきげんよう。

"懺悔の値打ちも無い" Nov-26-2007 項 参照 (ページ検索推奨)

・・・時は流れ・・・2015年2月23日、第87回アカデミー賞 各受賞発表

作品賞 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
主演女優賞 ジュリアン・ムーア「アリスのままで」
主演男優賞 エディ・レッドメイン「博士と彼女のセオリー」
監督賞 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
脚色賞 グレアム・ムーア「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
脚本賞 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコボーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr.、アルマンド・ボー「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
作曲賞 アレクサンドル・デプラ「グランド・ブダペスト・ホテル」
主題歌賞“Glory”「セルマ(原題)」
長編ドキュメンタリー賞 「CitizenFour」
編集賞 トム・クロス(「セッション」)
撮影賞 エマニュエル・ルベツキ「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
美術賞 「グランド・ブダペスト・ホテル」
視覚効果賞 「インターステラー」
録音賞 「セッション」
助演男優賞 J・K・シモンズ「セッション」

速報 2015年2月23日(月)(日本時間)一部略

同日、菊地成孔氏セッション酷評公開予告『第87回アカデミー賞直前予想(「直前」はギリ挫折)』ブロマガ記事

「セッション」


 ワタシはこの、憤りと吐き気が絶えないジャズ侮辱映画がアカデミー賞最優秀作品賞を受賞した際には、アメリカという国家の、白人の大学ジャズ関係者という異教徒どもが、ワタシのジャズという神を侮辱したという罪状で、一生をかけてもテロリズムを続ける事をここに誓いますし、グランプリを与えたサンダンスに対しては、馬鹿の運営する馬鹿の祭りとして認識する事に決定しています。あすこで賞を取った者は全員、馬鹿のお墨付きです。
 と、敢えて悪罵を重ねずとも、この作品とワタシの相性の悪さに関しては、以下の裏話を開陳する事で、そのほとんどが説明されてしまうかもしれません。
 ワタシは配給会社から、この映画の、「マスコミ向けのプレスシート」の評論原稿を依頼されました。「ジャズを大学で教える」映画ですから、ムチャクチャ的外れなオファーではありません。

"セッション" 項 抜粋 参照 (ページ検索推奨)

ワタシは、こうした依頼に際して概ね慎重で「先ず見せて下さい。書くか書かないかはそれから決めます」と返答するようにしているのですが(このプロセスを経て、「観たけど解説は書かなかった」映画は、解説を書いた映画よりも数多くあります)、あろうことか、世の摂理とはそういう物なのでしょうが、この作品に関しては、プレスキットを読んだだけで書く事を約束してしまったのです。「ジャズを大学で教える」映画だからです。

 ですので原稿は書きました。が、プレスシートには掲載されていません。

 引き受けた以上、常に最高の仕事をすべく誠実でありたいと思う、小市民的なワタシは、こんな映画にでも美点を探し、褒め、かつ、お金を払って鑑賞する方々への解説として面白く、ためになるものにしよう。と全知全能をかけて書いたのですが、結果、遠回しの、苦し紛れの、結果DIS。以上の物にならなかったからです。配給会社の方の名誉の為に申し上げますが、悪いのは観ずに引き受けたワタシです。

"セッション" 項 参照 (ページ検索推奨)

以下、稿料は頂戴していないので、掲載不可とされた原稿は私の掌中にあり、ワタシに所有権がありますので、ここに公開させて頂きます。

(*日本公開後にアップすることにしました)

 ワタシの絶望と悲嘆が、七転八倒な滑稽さとともに伝わって来る名文だと思うのですが如何でしょうか。
 ワタシはこの映画を、大西順子さん(一緒にDVDを観たので)と共に、絶対に許しませんし、「許さない」などという純情可憐な気持ちが自分の中にまだ燃え盛る可能性があったのかと、自分自身に激しく驚いています。
 大西さんだけではありません。アメリカでこの作品を観たジャズミュージシャンの友人に、ワタシと大西さんは片っ端から感想を聞きましたが、怒っている者さえ少なく、苦笑か脱力、といった反応でした。

"セッション" 項 参照 (ページ検索推奨)

アメリカでジャズが大学の教科となった事はジャズの歴史を大きく変えました。厳密には、そこに流れが向かった時から大きく変わっているのですが、取りあえずウィントン・マルサリスの功罪の内の、罪の部分だとはっきり言う事が出来ます。(この作品の中には、マルサリスの名前が出てきます)。
 ウイントンはスクエアでも何でもなく、大変なヒップですが、残念な事に、その志に比して、政治がヘタクソ過ぎ、白人のクソ共に搾取されまくった挙げ句、ジャズが、こんな陳腐なキッチュの素材に使われるのに最適なジャンルに成り下がってしまったのです。
 ヘヴィメタでやればこれは、抱腹絶倒の安心して観れる素晴らしいコメディになったでしょう。ヒップホップやファンクでは成り立たないでしょう。アメリカの大学のビッグバンドジャズだから成り立つのです。陳腐な侮辱と、特に面白くもない、悪趣味な空回りが、白人が仕切り、白人が学ぶ大学科目としてのジャズには、お似合いなのです。

"セッション" 項 参照 (ページ検索推奨)

と、こうした「ジャズ/アメリカ/白人/教育」の話はワタシが話者である限り、とめどなくスリップして映画の話ではなくなる可能性があるので、ここでは壁を正拳突きで陥没させ続ける事で敢えて踏みとどまり、劇映画として、ジャズの歴史も現状も、一切興味が無い映画ファンの方に向けて続けてみます。
 この映画は「ジャズ版ファイトクラブ」「ジャズ版フルメタルジャケット」と言われています(両作には大変な侮蔑だと思います)、つまり、地下合法的な暴力と、悪夢的なハラスメントによって駆動する物語が、それによってでしか最早もたらされ得ない、ドン詰まりの現代のカタルシスをもたらす。といった、ある種サド的な聖性の輝きの有無ですが、ご覧になった方で、この作品からそういったカタルシスを得られたでしょうか?(ファイトクラブもフルメタルジャケットもご覧になっていないという方は是非ご覧になってみて下さい)
 「へえ、ジャズって、こういう事が、、、起こりうる世界なのかしらね。まあ、巨人の星みたいなカリカチュアなんだろうけど、でも最後、何か良くわからなかった。あれって何?裏切りな訳?」

"セッション" 項 参照 (ページ検索推奨)

といった所なのではないでしょうか?その感想の中に「解らないけど、外様だから(ついでにいえば「菊地さんは関係者でもあるから、見方が深くなっちゃうんでしょうけど」)そんなもんなのかも、、、、」といった、放棄や距離感があったのではないでしょうか?
 しかし、あなたは、大学の、白人が白人に教えるビッグバンドジャズの外様でもあるかもしれませんが、非常に高い確率で、地下での喧嘩の大会の外様でもあるし、ベトナム戦争の兵役特訓の外様でもある筈です。
 素晴らしい作品というのは、素材が観客に近かろうと遠かろうと(衣服にまったく頓着が無い人にも「プラダを着た悪魔」は面白いように)、メッセージが伝わります。距離感は正直です。「映画館のポップコーン売りの子が可愛いかったけど、何か単に途中でフラれちゃうだけだし、、、、」という感想は至極もっともです。

"セッション" 項 参照 (ページ検索推奨)

サンダンスのみならず、この映画に賞を与えた総ての審査員が受けたであろうカタルシスを、ワタシは安っぽくて邪悪だと感じます。SNS時代のカタルシスと言いましょうか。あくまでワタシにとって、ですが、「嫌な感じの欲求不満」「興奮ではなく、萌え」といった感じです。「萌え」が悪いと言っているのではありません。「萌え」が「カタルシス」の代替物であっては、セコくて気持ち悪いだけです。萌えは独立していれば立派な文化です。白人のハラスメント萌えなんかごめんだね。といった感じです。
 ワタシは、この映画を、世界中のジャズドラマーに必ず観て頂きたい。そして、侮辱された屈辱から一斉にスクリーンにアンチのテレパシーを送るべきです。そして、そのまま「バードマン」を必ず観て頂きたい。そして、大いなるインスピレーションと、ジャズドラマーである誇り、リズムという神の言葉に改めて耳を澄ます敬虔さによって、大いなる生命力を取り戻して下さい。今年のアカデミー賞最優秀作品賞のミニーは、ジャズドラマーを踏みつけ、そして蘇生させる2作品が並んでいます。

"セッション" 項 参照 (ページ検索推奨)

2015年4月8日、菊地成孔氏『「セッション!」~<パンチドランク・ラヴ(レス)>に打ちのめされる、「危険ドラッグ」を貪る人々~』長文酷評ブロマガ記事

今から約1万6000文字という、大変な文字数で本作を酷評しますが、沢山の人間が大変な努力によって制作した制作物を酷評するという行為への義務&最低限の倫理として酷評の根拠は可能な限り明確にします。「無根拠で感情的/呪詛的な酷評に共振する興奮がお好み」という方に於かれましては「頑張って長文を読んだ結果、大変な徒労になった」という可能性があるので、予めお断りしておきますし、そもそも長文読解が苦手な方や、「長文」という言葉を目にした瞬間から苛立ちが止められないという重症の患者の方は、精神衛生上、絶対に読まないで下さい。筆者は責任を取り得ません。ではどうぞ。

 映画批評の手法として、やや珍味ですが面白いと思いますので、こういうやりかたからはじめたいと思います。
 先ずはお手数ですがコチラをご覧下さい↓

 「セッション!」公式サイト
http://session.gaga.ne.jp/comment/index.html

各界で活躍される、錚々たるメンツですね。皆さん絶賛されております。公式サイトに寄せられたコメント集なのだからして、当然至極であります。
 これだけの豪華メンバー、そして、最近の「公式サイトに並べられるコメント数平均」からみて、「ちょっと多くね?」というに吝かではないポーションです。
 しかし、何かお気づきになりませんでしたでしょうか?
 この中に「ジャズミュージシャン」「ジャズ批評家」そして何はなくとも1人の主人公の職業である「ジャズドラマー」もしくは、もう1人の主人公の職業である「ジャズのビッグバンドのリーダー」が、1人でもいるでしょうか?ぎりぎりまで範囲を広げ「ジャズ関係者」としても、何人いるでしょうか?
 二度手間をかけまして大変申し訳ありません。再チェックしてみて下さい。
 ワタシの知る限り、それはジャズヴォーカルの綾戸智恵氏のみです(そして、氏のコメントは「ほぼ最初の位置」に掲示されますが、これについてはこの長文の最後に再び触れます)。

綾戸氏は、冒頭に「音楽をする私としては吐きそうな映画や」と仰り「でもいろんな人が見る。先生も生徒も親も。それぞれに強烈なメッセージを送れるという点ではピカイチの映画や!」と続けて、最後は「私はニコルとピザ食べたーい」と結んでいます。
 綾戸氏らしい、実にオトナな、バランスのとれた素晴らしいコメントだと思います。
 以下ネタバレますが、「ニコル」はものすごく可愛い映画館のモギリで、主人公であるドラマー志望のガキと恋に落ちます。その、最初のデートがピザ屋で、そのデートのシーンだけが、本作の、普通に美しい、ハートに染み入るシーンです。若い2人は、ごくごく普通に、はにかみながらも熱く、夢を語ります。

因に、このニコルは、終盤でこの、主人公のリズム音痴のガキが、ジャガジャガうるさいばかりの不快なドラミングに人生を捧げる為に捨てられますが、「主人公は、こんなに可愛い女の子を、にべもなく振ってしまうほど、ドラムに妄執しているのだ」という意味を示唆するだけの、重要度10ぐらいの存在です(どういう数値なのか基準が全然解りませんが&そういう脚本なので、その事自体が悪いと言っているのではありませんが)。
 繰り返し強調しますが、彼女は、女性である綾戸氏をして一緒にピザデートをしたいと思わせしめるほどにキュートです。そして、主人公である、リズム感の悪いお祭り騒ぎ太鼓しか叩けないガキは、苦悩の果て、逡巡の終わりとして決然と彼女を捨てるのではなく、もう、妄執に突き動かされて、繰り返しますが、にべもなくポイと振ってしまうのです。
 その後、映画の終盤、早く手を動かせば偉いと思っている、バカ以下のガキは、ニコルに振られ返されますが、映画は「確かにあそこはちょっと痛かった。しかし、もうそれどころではないのだ」という本作を駆動する妄執というベクトルによって、ぐいぐい進んで行きます。

一度振った後に、もう映画にニコルが出てこないと思ったワタシは、このエピソードにすら嫉妬しました。「リズムとグルーヴの神に振られた哀れなオマエは一生手のひらから血を出し続けてるがいい。ニコルはもう戻らない。オマエにじゃない。この映画に。だ」というテレパシーをスクリーンに放っていたからです。
 かすかな嫉妬の感情のためにスリップが長くなりまして失礼。話を戻します。

 探偵小説の世界の名言に「木の葉を隠すなら森の中」というのがあります。「セッション公式サイトには<各界絶賛コメント>がぎっしり」。この「ぎっしり」は、一体何を意味しているのでしょうか?

もし本作が、あの愛すべき「スクール・オヴ・ロック」だったら、<ギッシリ>の中に、どれだけロックミュージシャン、ロックギタリストがいたことでしょう。もし本作が、あの素晴らしい「キャデラック・レコード」だったら、どれだけブラックミュージックの批評家や愛好家がいたでしょう。先日、ワタシがラジオでご紹介したばかりの「はじまりのうた」だったら、どれだけの女性ポップスシンガー(ギターを弾きながら、自作曲を歌う。というスタイルの)が、どれだけのポップスの名プロデューサーがコメンテーターとして名を連ねたでしょうか?
 読者の皆様ご存知かどうか、我が国には、世界に出しても全く恥じる所のない名ジャズドラマーが数多くいます。実名を出しますが、小曽根真氏のような、世界を股にかけて活躍されている、ジャズのビッグバンドの偉大なバンドマスターがいます。あらゆる音楽大学にはジャズ科があり、一流の現役ジャズミュージシャンでもある講師達がいます(ワタシの友人も、その中の数多くを占めます)。そして何せ、実名を出しますが、あの菊地成孔大先生がいらっしゃいます(←この中で、最も程度の低い男ですが)。

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