1. まとめトップ

フランスで、イギリスで、アメリカで……西洋世界の女性をターゲットにしたISISの「新人獲得技術」

「テレビの中のスター」ならぬ「YouTubeビデオの中の戦士」が、ソーシャルネットを通じて「もし僕との結婚に同意してくれたら、女王様のように扱ってあげる」といった甘い言葉をささやく。巷の組織支持者が、友達の少ない孤独な女性に毎日声をかけ、贈り物をする……最近、いくつもの事例が報告されています。

更新日: 2015年07月23日

7 お気に入り 22753 view
お気に入り追加

この記事は私がまとめました

nofrillsさん

2015年5月末、ガーディアンにすごい記事が出ていた。

イスイス団のやり口を探るため自らおとりになってネットで接触したフランスの女性ジャーナリスト。最初の接点はYouTubeのビデオの男。ルックス良し、35歳。20歳のころから各地で戦闘…これで女子が目をハートにすると。 / “Skyp…” htn.to/EogkKtR

記事を書いたアンナは、パリに暮らすジャーナリスト。雑誌などのフリーランス記者として、この1年ほど、欧州のジハディストについて取材し、書いている。

欧州では10代から20代前半の若い人たちが、ISISに共感し、シリアに行ってしまうなどするケースが多発している。アンナはなぜ、どのように、そのようなことが起きているのかを取材しようとしていた。

※以下、写真は本文とは関係なく、単に「パリ」などの検索ワードで探したものです。

彼女は「メロディ」というハンドルを使って、ソーシャル・メディアのアカウントを開設。その名前で、「欧州人の若者の間でのジハディズムへの共感」について調べるため、「ISISに興味がある女子」としてオンラインで行動している。といっても目立つことをするわけではなく、声高に何かを訴えるでもなく、ジハディストのフィードを購読し、彼らの流す情報に接し、リンクを投稿したりする、という形だ。

アンナは書いている。「その晩、私はカウチに座って、アカウントからアカウントへとフィードを見て回っていた。ふと、フランス人ジハディのビデオに目が留まった。35歳くらいだろうか。軍服を着て、『アブー・ビレル』と名乗っていた。シリアにいるのだという」

後に、アブー・ビレルはこの15年、世界各地で戦ってきたジハード戦士だということがわかるが、このときはアンナはまだ何も知らない。

「ビデオの中の男は、SUVのグローブボックスの中身を見せて自慢げに説明している。シリア・ポンドの分厚い札束、お菓子、ナイフ。レイバンのミラーレンズのサングラスを外すと、黒いアイラインを引いた目が現れる」

「アフガニスタンの兵士がコール (kohl) で目を縁取るということは知っていた。けれども、テロリストが私と同じようにアイメイクをしているのを見て、びっくりしてしまった。端正な顔立ち。完璧なフランス語を話している。少しアルジェリアのアクセントのようなものが感じられる。画面のこちら側を見つめてにっこりと微笑んで、彼は『ヒジュラ』(移住)を呼びかける。さあ、君も不信心者の地など後にして、イスラム主義者の国に加わるのだ、と」

「メロディ」はディズニー・アニメ、『アラジン』のプリンセス・ジャスミンの絵を、アイコン(アバター)に使っている。そのとき書いている記事に応じて、居場所の設定を変更している。このとき、「メロディ」はトゥルーズ在住ということになっていた。

メロディはアブー・ビレルのビデオをソーシャル・メディアでシェアした。その直後、アブー・ビレルからメロディにプライベート・メッセージ(DM)が送られてきた。

そのときのことをアンナはこう書いている。

「2014年の春、金曜の夜10時だった。パリの1DKのアパルトマンでソファに座っていた私のところに、シリアにいるフランス人テロリストからメッセージが届いた。『はじめまして。ぼくのビデオを見てくださったようですね。あのビデオ、ものすごく拡散されてて、本人もびっくりです。あなたはイスラム教徒ですか? ムジャヒディーンについて、どう思われます?』」

3通届いていたメッセージの締めくくりは、「最後にお尋ねします。シリアに来ることは考えていらっしゃいますか?」だった。

「メロディ」は、「こちらこそはじめまして」と返信した。

「ジハディの人から話しかけられるなんて予想外でした。ほかにもっといい時間の使い方があるのでは、なんて(笑)」

ムジャヒディンについての質問には、「戦闘員に対する偏見はありません。結局、その人がどういう人かですよね」と答えた。信仰については「改宗者です」と伝えたが、細部は一切書かなかった。

10代の女の子らしい言葉を使い、わざと綴りを間違えておいたりもした。そうしてアンナは彼の返事を待った。胃がキリキリするようだった。「まさか、本当にこんなことがあるなんて」

アンナはそれまでにもムジャヒディーンに話を聞いたことはあった。しかし年齢はせいぜい20歳という人たちばかりで、上から言われたプロパガンダの文言以上のことを口にする人とは話をしたことがなかった。

そこに返信が来た。

「もちろん、やることならほかにいくらでもありますよ。でもこちらでは夜の11時で、みなもう眠っています。さっきのビデオについて質問があったらどうぞ。シリアで何が起きているか、何でも説明してあげますよ。唯一の本当の真実、つまり神様の真実を。Skypeで話しませんか。ぼくのユーザーネームをお伝えしますね」

展開、早っ
(・_・)

アンナにとって、Skypeなんて問題外だった。「またの機会にしませんか」と言うと、アブー・ビレルは納得した。「じゃあ、明日、時間作っておきますね」

   すごい。セールスマンみたい。
   てかマルチ商法の勧誘?
   (・_・)

「改宗したんですよね。なら、ヒジュラの準備をしないと。ぼくが何でも面倒見てあげますよ、メロディさん」

アブー・ビレルはこのとき、この「メロディ」と名乗る女の子について何も知らない。なのにもう「こっちにおいでよ」と呼びかけている。

アンナは書く。「嫌悪感を覚えた。メロディーのような女の子を狙うのは簡単極まりない。私はこの子のような大勢の女の子たちに会ったことがある。教育も十分ではなく、指導してくれる大人もいない。付け込まれる余地の大きな女の子たち」

しばらく前に日本語圏のネットでも話題になった、微妙にぎこちないような、でも本当はぎこちないのではなくわざとらしく不自然な「片言の日本語」を使う、「自爆要員」を名乗る人物がいました。

その人物のTwitterアカウントについて調べられた方の記録があります。
http://togetter.com/li/777241

そこからの引用:

   中には仏教からイスラム教に改宗したという女性(J氏)がいた。
   ……改宗の方法すらわからず、とりあえずSyriaにいけば成れると思ってたようだ。
   いつの日からか、そのJ氏はハーデスにメンションを送るようになった。
   自分はハーデスの彼女だと。
   そしてそのJ氏の妹をハーデスの嫁にあげると。。。。。
   たった2週間の間のやりとりである。

……

アンナの記事に戻ろう。

I wanted to understand how European children were falling for this propaganda, and to grasp the mindset of soldiers who spent their days torturing, stealing, raping, killing, and their nights staring into their computers and bragging. Perhaps this man would give me an insight.

「欧州(生まれ・育ち)の子供たちが、どのようにしてこのプロパガンダに引っかかるのかを理解したかった。毎日、昼間は拷問したり盗みを働いたり、強姦したり殺したりし、夜はコンピューターを見つめて大言壮語を連ねて過ごしている戦闘員のマインドセットを把握したかった。きっとこの男は、私に洞察を与えてくれるだろう」

「しかし今は」とアンナは書き進める。「もう遅いし、ボーイフレンドのミランがうちに来ることになっている。でも私はミランに電話して、私がそっちに泊まりに行きたいんだけどと言う。さっきまで何をしていたかは言わない。ただ、あなたの隣で眠りたいと言っただけ」

週明けの月曜日。アンナはよく仕事をしている雑誌社に駆け込んで、何をつかんでいるかを編集者に話し、アブー・ビレルのビデオを見せた。こんなにも簡単に接触があるのかと驚いた編集者は、これはいいネタだけど、ちょっと危険かもしれないねと言い、アンナと組んで仕事をすることの多いフォトグラファーのアンドレをつけてくれた。アンナがSkypeでアブー・ビレルと話をし、アンドレがその様子を撮影する。

アンナは実年齢より10歳若い「20歳の改宗者、メロディ」に見えるようにしなければならない。別の編集者からヴェールと服を借りて、アンナは「メロディ」になる。

午後6時、アンドレがアンナのアパルトマンに到着し、撮影アングルの確定などの準備を始める。シリアとは1時間の時差があり(1時間しかないのか……近いね)、アブー・ビレルがネットにつなぐまでに時間はある。

アンナは、テロリストに自分の顔をさらすことを心配している。いくら、相手がすぐにはフランスには戻ってこないだろうといっても。

「改宗者」らしい衣装に着替えてきたアンナを見て、アンドレが爆笑する。ヴェールのかぶり方が浅すぎる。アンドレの手を借りて直す。指輪を外し、手首に入っているタトゥーをファンデで塗りつぶす。アブー・ビレルはもうFBにログインして、メロディを待っている。

アンナは背のついたソファに座り、なるべく部屋の中の様子がわからないようにして、アカウントにアクセスする。安全第一。アンドレはソファの影で死角になる位置に陣取り、録音機器もスイッチを入れて、「メロディ」がサイン・インする。IPアドレスは隠すように設定した。相手はもうかなり待たされている。

「お待たせしてごめんなさい、アッサラーム・アレイコム」

The Skype ringtone sounded like a church bell. I took a moment to breathe, then I clicked the button, and there he was. Bilel stared at Mélodie. His eyes were still accentuated with dark liner. He appeared to be Skyping from his car, using a smartphone. He looked clean, even well-groomed. He was a proud man, his shoulders pulled back and his chin thrust forward, but I sensed he was nervous. After what felt like an eternity, he finally broke the silence: “Salaam alaikum, my sister.”

「Skypeの呼び出し音が教会の鐘の音のように響いた。一瞬置いて呼吸を整え、ボタンをクリックすると、彼の姿が現れた。ビレルがメロディをじっと見つめていた。まだ目の周りには黒いアイライナーを引いていた。車の中から、スマートフォンを使ってスカイプを使っている様子だ。こざっぱりとして、身だしなみに隙がないとさえいえる。堂々としていて、胸を張りあごを上げているが、緊張している様子も伝わってきた。永遠かとも思えるような時間が経過して、ついに彼が沈黙を破った。『サラーム・アレイコム、マイ・シスター』」

I made my voice as tiny, sweet and bright as I could... And I smiled. “It’s crazy to be talking to a mujahid in Syria,” Mélodie said, impressed. “It’s like you have easier access to the internet than I do in Toulouse! I share the computer with my sister, and my mum takes it away from us a lot. Even your phone is newer than mine.” I was giving Mélodie a plausible excuse for future unavailability. She lived with her family, she couldn’t always honour her engagements.

「実際には喫煙歴15年の私だが、なるだけかわいらしい作り声を装い、にっこりと笑った。『シリアのムジャヒド(聖戦士)とこうやって会話してるとか、すごすぎる』とメロディは感慨深げに言った。『トゥールーズの私より、そちらにいるあなたほうがネットにつながりやすいみたいですね。私のパソコンは姉と共有だし、母が使ってて私たちが使えないこともあるんですよ。スマフォも、私のはあなたのほど新しくないし』。こうしておくことで、この先、メロディがオンラインで応答しないことがあっても不審がられないだろう。メロディは家族と同居していて、いつも約束どおりにできるとは限らないのだ」

“Syria is amazing,” Bilel said. “We have everything here. Masha’Allah, you have to believe me: it’s paradise! A lot of women fantasise about us; we’re Allah’s warriors,” he said.

「『シリアはすばらしい』とビレルは言った。『何だってありますよ。マシャラー(神の思し召し通り、という意味だが、強い肯定・賛同を示す間投詞)、嘘じゃない。天国ですよ。僕らにあこがれる女の人も大勢います。神の戦士ですから』と彼は言った」

“But every day people die in your paradise…”

“That’s true, and every day I fight to stop the killing. Here the enemy is the devil. You have no idea. The enemy steals from and kills poor Syrians. He rapes women, too. He’s attacking us, and we’re defending peace.”

“Is the enemy the president of Syria?”

“Among others. We have many adversaries.”

メロディ: でも、あなたの天国では毎日人が死んでますよね……

ビレル: その通り。で、毎日僕は、その殺戮を止めるために戦っている。敵は悪魔ですからね。あなたにはわからないでしょう。敵は、貧しい(気の毒な)シリア人のものを盗んで殺している。女の人を強姦してもいます。敵は僕らを攻撃していて、僕らは平和を防衛しているんです。

メロディ: その敵というのは、シリアの大統領ですか?

ビレル: だけじゃないです。敵はたくさんいますよ。

ビレルは、アサド政権軍のほか、アル=ヌスラ・フロントもシリア人も、ほか彼が「インフィデル」と考える勢力の名前を「敵」として挙げた。

そして、メロディに、毎日ヒジャブを身につけているのかと聞いた。

メロディは、取材調査で面談した、家族に内緒で改宗した女子たちから聞いた言葉をそのまま言った。いわく、朝は普通の服装で家を出て、外に出たらジェラバ(全身を覆うワンピース状の服)とベールをつける、と。

それを聞いたビレルは、「ちゃんとした行ないだ」と褒めちぎり、内面が美しいのだと賞賛したうえで、「さらに、外見も美しい」と言った。

そしてビレルは、いやらしい目つきをしてメロディをじっと見つめた。

メロディはビレルに、周囲の様子を見せてほしいと言った。アレッポ近くにいるんだと言っていたが、実際にはラッカから数マイルのところにいたと思われる。

ビレルは車から出て、周囲の様子を写した。破壊されたシリアの映像が現れた。人影はまったくなかった。午後9時ごろで、完全に静まり返っていた。

と、突然男の野太い声が響いた。ビレルはメロディに「ちょっと黙ってて」と言った。「君のことを、誰にも見せたくないし声も聞かせたくない。君は僕の宝物、けがれのない大切なものだから。いいね」

聞こえてきたのはビレルのほか、男2人の声。アラビア語で挨拶をしたあとはフランス語で会話していた。どうやら母語がフランス語のようだった。そして「連中をブチ殺してやりましたよ」といった会話がなされた。

ビレルは男2人の上役のようだった。ビレルは「見張りに立っている」とか「荷物の到着が遅い」といったことを言い、1分後に男たちとの会話を終えてSkypeに戻ってきた。

A minute later, he said goodbye to his fellow fighters and spoke into the phone, worried Mélodie might have hung up: “Oh, you’re still there! And just as beautiful.”

(もうやだこの人……うざい)

甘い言葉をささやき、ビレルは「君のことをもっと聞かせてほしいな」と言ってくる。「神(アッラー)へ至る道にたどり着いた経緯とか」

アンナは一服したくてたまらなかったが、「メロディ」になっている今は無理だ。設定も十分には考えていなかった。言葉に詰まりながら、従兄がムスリムで、信仰によって心の平安を得ているから、といったことを話した。

「その従兄のお兄さんは、きみがシャーム(シリアの一帯)に来たがっていることを知っているの?」

ビレルの中では、メロディは完全にシリア行きを決意していることになっていた。

「そういう気持ちを固めたわけじゃないんですけど」とメロディが言うと、ビレルは……

“Listen, Mélodie, among other things, it’s my job to recruit people, and I’m really good at my job. You can trust me. You’ll be really well taken care of here. You’ll be important. And if you agree to marry me, I’ll treat you like a queen.”

「いいかい、メロディ。仕事はいろいろあるけれど、何よりまず、人を集めることが僕の仕事だ。それも、とてもうまくやっている。信じてくれていいんだよ。ここできみに不自由はさせない。きみは有力者になる。もし僕の妻になることに同意してくれたら、女王様のように扱ってあげる」

1 2 3 4 5 6 7 8