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マーケット感覚を身につけるには

これからの時代、データとにらめっこをしていてもヒット商品の種は見つからないかもしれない。それがビッグデータの限界なのだろう。むしろ、人がそれを感じて拾い上げられるだけの共感力と、実際に試してみようとする意欲や勇気が、重要なファクターとなっていく可能性がある。

更新日: 2017年03月24日

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▼「マーケット感覚」を提唱するちきりん氏に、まずは学んでみよう

先行きの不透明なこれからの世の中で生き抜くために、もっとも重要な能力が「マーケット感覚」と言える。もっと一般化すると、顧客が、市場で価値を取引する場面を、直感的に思い浮かべられる能力を指す。たとえばもし、価格を受動的にのみ受け入れてしまえば、やがては苦しくなって価格競争に陥ってしまう。また、その市場には生身の人間がいて、単に価格の論理だけで動くわけではない。そういうところにどうやってアンテナを張るかが、極めて重要になってくる

「月間200万PVの超人気“社会派"ブロガー・ちきりんの完全書下ろし」。同氏が指摘するのは、市場で取引されているものが「価値」である点。それを理解する能力が、いわゆる「マーケット感覚」なのだとか。しかもこれからは、より多くの商品・サービス・人材などが市場型取引に移行していく。しかも市場では常に、相互に影響を与え合っている。カニの需要が高いと、カニの漁に大きな投資をしたら、いつの間にか、カニカマボコが人気化していたこともありえる。市場の変化は常にダイナミックなのだ

マーケット感覚は「非論理」であり「人間の素直な欲求」という。このことだけでも、一気に身近な感じになる。たとえばグルメ・レビューサイト。すでに突出した企業はあるが、そもそもレビューとは価値観が同じ人のものでないと意味がない。そう考えると、まだまだここにも参入の余地がある。また、高級料理店を立ち食い感覚で実現してしまうという「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」。たとえ客が来たとしても、こんなところに一流シェフが来てくれるのか。それは、シェフの持つ「作る喜び」の欲求という「インセンティブ・システム」を満たしたことで実現した新業態だった。

【参照:上掲ちきりん氏の書】
爽やかな好青年で、背格好から性格まで問題なさそう。ただし、年収が300万円以下で、学歴も高卒。こんな男性が結婚情報サービスを利用して、まったく会ってもらえない。実の問題は、このサービスの利用の仕方にあった。年収設定の区切りが300万円ラインに置かれ、学歴の区分も大卒と短大・専門学校の次に高卒があり、その次が「問わない」。これでは、彼に不利だ。彼はわざわざ自身を不利な市場に売り込んでいたのだ。もし、実際にアポさえとれれば、状況は一変したはず。これは婚活に限らず、今の時代は、デザイナーやイラストレーターも含め、自分をどう売り込むかが非常に大事な時代である。

【参照:上掲ちきりん氏の書】
最近は、ニュースキュレーションアプリが大人気。ニュース自体は誰でも読めるのに、わざわざコメントの方にこそ価値を置いている。そしてニュースの厳選と、コメントの質を上げること、さらには「かなり高額?」な有償記事も設けるなど、強気・独自の姿勢が目立つ。こうした個性派キュレーションメディアが証明したのは、コメントに対するニーズが決して小さくないことだった。これはかつて、ニコニコ動画が画面に様々な人のコメントを流したのと共通点があったりもする

【参照:上掲ちきりん氏の書】
土産屋は、中国人を見ると「5ドル」と言い、アメリカ人を見ると「10ドル」、さらに日本人を見ると「50ドル」とふっかける。そんな話題が、円高の時代にはずいぶん語られ、多くの日本人が不愉快になったことだろう。しかし、このプライシングは「ぼった」のではなく、極めて合理的だ。なぜなら、実際に売れたからである。これは、コスト積み上げ発想からの脱却を、逆に私たちに求めているものだ。たとえば「スタンプカードで10個に1個が無料」というサービス。常連には割引という仕組みだ。その他、クーポンやアプリなどでの割引も同様。一物多価は不合理ではない

出典purse.io

【参照:上掲ちきりん氏の書】
国や業界団体が定める規格。これは強制力をもっている。他方、市場が選んだ事実上の標準とは、強制力でも何でもない。かつてお金と言えば、政府が唯一絶対の発行者だった。しかし、今日ではどうだろう。一時、「負」の話題を呼んだビットコインが再び盛り上げってきている。国の裏付けなどまったくない通貨だ。そもそもひと昔前は、国の通貨でさえ紙切れ扱いされ、黄金の裏付けを求められた時代もあったくらいだ。また、アマゾンや楽天のポイント。これが至るところで流通し始めている。事実上の通貨になりつつある。これらをいち早く利用することも重要だ

ちきりん:「東京23区の学校はクーラーを設置しているのに、なぜ横浜市はつけないんだ」なんてびっくり。「あの企業はやっているのに、なぜウチの会社は」なんてのも思考停止

つまり、同氏の一貫した主張は、価値を認識する能力を自分の頭で見つけようということ。これはマーケット感覚に通じる。ポイントは次の5つ:
1)妥当な値付けをその都度考える
2)強制よりも、インセンティブで考える
3)組織ではなく、市場から選ばれる
4)とりあえずやって、早く失敗し、学ぶ
5)「市場」に身を置いて、感覚を磨く

「変わる」ことを拒否する者は、「替えられてしまう」

市場の力は、一見盤石である規制さえこじ開けてしまう。たとえば羽田空港の国際化。政治家に任せていては遅々として進まなかったことが、市場の力によって大きく変わった。具体的には、韓国の仁川国際空港の登場だった。日本の地方の人々は、羽田から成田へと乗り継ぐより、仁川国際空港経由でより便利に世界に行けるようになったのだ。「国内線は羽田、国際線は成田」という消費者無視の岩盤規制が、変わった瞬間である

【参照:上掲ちきりん氏の書】
「守られているものほど危ない」。たとえば、書店の再販価格制度。これはすでにブックオフのような中古市場と、電子書籍の存在によって挟撃されている。要は、消費者から見て「非合理な状況」は、早晩崩されるのだ。言うまでもなく、これを突破した人々は消費者の支持を取り付けて「儲ける」ことになる。マーケット感覚があればこそ、これに気づき、行動を起こせるのだ

マーケット感覚とは、「非論理的」、つまり人間の素直な欲求の集合体を市場ととらえ、その台頭や存在に光を当てる感覚のことである。他方、別の書で主張しているのが「論理的」思考。他人の評価や偏見、旧来型の知識に惑わされず、自分でその解を解きほぐしていこうというもの。いい人材を求め、新しい製品・サービスを世に出すには、自分なりの新しい視点で市場を照らすことが必要。そうすれば、そこには需要があり、担い手を希望する人材がいる可能性も出てくる。失敗してもいい。とにかく、動く。動いて気付き、感じること。これが真の解へと近づく早道かもしれない

上掲書の復習。
「マーケット感覚とは、価値発見力」

マーケット感覚を磨くために、本書では5つの方法が紹介されている:
1)プライシング能力を身につける
2)インセンティブシステムを理解する
3)市場に評価される方法を学ぶ
4)失敗と成功の関係を理解する
5)市場性の高い環境に身をおく

▼マーケット感覚と言えば、その感覚だけで企業再生を果たす星野リゾートがすごい

どこまでも広がる雲海を見下ろしながらコーヒーを楽しめるカフェが、北海道のど真ん中にある。このカフェは「雲海テラス」と呼ばれ、トマム山の山頂にある。実はこのリゾート・トマムは、バブル前夜の1983年に会員制リゾートしてオープンしていた。しかし、バブル崩壊後、ここも破綻してしまい、2004年星野リゾートが運営を継承した。星野は、競合先がいずれも若者のスキー愛好者をターゲットにしていたのを見て、「かつて若者としてスキーを楽しんだファミリー層」へと絞り込んだ。そして冒頭のカフェを前面に出し、山頂付近から雲海が見える可能性が高い午前5時からのオープンで話題を作った

青森県の古牧グランドホテルがある古牧温泉は、東京ドーム約17個分の広大な敷地や4館のホテルを有する青森県一の観光地だった。それが、220億の負債を抱えて経営破たんした。倒産のきっかけは、これまでの激安プランをやめたことだった。社員も、顧客満足より『さばく』『こなす』ことに慣れきっていた。そこでトップダウン・縦割りだった組織をシャッフルし、フラットにもした。さらに部門によって繁忙時間が異なるの利用し、複数兼務を進めた。そして新しいコンセプトを決め直し、青森を体感できるイベント型の夕食会場が立ち上がった。こうなると、経費削減からサービス向上へ大きく舵を切れるようになり、魅力復活への道筋が見えてきた

京都市西京区嵐山。桂川のほとりに「星のや京都」は位置する。総支配人は31歳(同記事2014年時点)。部屋にはテレビもなく、自然が多い。夕食やお抹茶の時間、あるいは朝食や、ここのバー。少しにぎわいで夢中になり、あっという間だったというような時の忘れ方をご用意したい。お部屋のリビングやお風呂にはプライベート感があり、ボーっとできるような仕掛けを入れている。カラオケではなくて朝体操、お酒が好きなら蔵を改造したバーを利用してもらえる。リピーターのために徐々に仕掛けも増やしている

星野リゾートでは、2003年からスキー場施設「星野リゾート アルツ磐梯」で提供するカレーライスに“美味しさ保証”をつけた。メニューのカレーを食べて「おいしくない」とスタッフに申し出たお客様に商品代金を全額返金している。実際、初日に1組のお客様が返金を要求された。理由は「ごはんがベタベタだったから」。そこでスタッフたちは3日間で炊飯器を買い換えた。彼らは一致団結して結論を出したのだ。つまり、一番の目的は社員の意識改革だった。運営当初、アルツ磐梯の現場に行って驚いたのは、指示待ちや上司の顔色うかがい。しかし、こうした改革の結果、意識が客に向き始めた

「リゾート運営の達人になる」 、これが星野社長の決意である。まず、「人材が育ちやすい企業文化・風土はどんなものか」 と考えてきた。そして第一に、「言いたいことを言える環境」だった。良い意見があれば職位に関係なく通る。そんな企業文化を育てようとした。星野が介入するのは議論の精度を高めさせるところまで。決断はしない。混乱はみんなの成長のチャンス。全体としては、星野リゾートの各施設にも共通の要素を課している。それは、お客様を絞ること。いわゆるニッチ戦略。しかもリピート重視。その絞り方は、現場のスタッフに任せてしまう。日本の「観光をヤバくする」という表現にエッジを利かせることも歓迎している

まず、仮説を立てて動き出す。さもなければ、競争上出遅れることになる。そして、まずいと判断したら瞬時に軌道修正する。ただし、事前に、可能な限りの情報を集めた上で仮設を立てるべき。再生にあたっては、それまでの社員も努力してきている。しかし、これ以上何をしたらいいのかわからないのが本音。再生にも疑心暗鬼だったはず。多くの場合、従来はまだまだフォーカスが足りなかった。もっと絞り込んで、そのお客様にリピートしてもらうことが何よりも重要

星野社長は就任以来、経営書をひもとき、「教科書通り」の経営をしてきた。定石経営のほうがリスクを最小化できる上、意思決定の迷いや行動のぶれも少なくなるからだ。
●情報を共有
●風通しを良く
●スタッフに任せる

1)問題意識の共有:
→データに触れ、言いたいことを言う
2)議論の掘り下げ
→アイデアの出現よりも、それぞれのアイデアに
対する気づきをもってもらう
3)コンセプトから具体先へ
→スタッフにコンセプトを考えてもらえば、共感度やモチベーションがまったく異なってくる

時代の要請を受けて、星野氏のような人物が登場した。所有と運営を明確に分けることで、地方の旅館などの再生を手がけている。バブル崩壊以降の、リゾート受難の時代に、それを逆手にとって次々と星野リゾート傘下に組み入れていった。再生対象案件とは決まって、赤字続きで人材流出後の最悪な状態ではあるが、その会社に残れた人々は説得しやすい、火を点けやすい心理状態だ

軽井沢町の老舗旅館、星野温泉の四代目として生を受ける。慶応義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学でホテル経営を学ぶ。日本航空開発(現・JALホテルズ)に入社して、シカゴに2年間、新ホテルの開 発から開業までの業務に携わる。その後、シティバンクに転職し、リゾート企業の債権回収業務に携わった。1991年、星野リゾートにて代表取締役社長に就任した。そして、苦戦・破綻している大型リゾート施設の再生活動を開始:
「リゾナーレ」(山梨県)、
「アルファリゾート・トマム」(北海道)、
「磐梯リゾート」(福島県)、
「白銀屋」(石川県)、
「湯の宿 いづみ 荘」(静岡県)など

星野リゾートは日本で32の施設やリゾートを運営している。JALとのタイアップで、新しい旅のカタチとライフスタイルを提案する

▼マーケットを見る神様と言えば、セブン・イレブン創業者の鈴木敏文氏

小売業の中で群を抜くセブン-イレブン・ジャパン。グループの総合力はもちろん、コンビニ単体で見ても、数々の品目で日本一の販売量を誇る。近年の大ヒットは「セブンカフェ」だ。初年度の販売数だけで、日本マクドナルドの「マックカフェ」(年間約3億杯)を軽く超える、4.5億杯。セブンは30年も前から、入れたてコーヒーの販売を手掛けてきた。開発すること実に4度。それでも販売は伸び悩み、やがて店頭から姿を消した。5度目の挑戦になる今回のセブンカフェは、ドリップ式を採用。しかも日本人にとってコーヒーはすでに身近な飲料のひとつとなっていた

セブン-イレブンの100円コーヒーが想定外のうまさである。『スタバやタリーズのレベル』との声も。実は、セブンが30年以上にわたってコンビニコーヒーに挑戦し続けてきたことは、あまり知られていない。1回目の挑戦は、1980年代前半だ。店頭のコーヒーサイフォンでコーヒーを作り、注文のたびに小分けしていた。2回目の挑戦は1988年。コーヒーマシンによる挑戦だった。その場で1杯ずつ作るドリップ方式だった。その後も十分な成果を上げられないまま、今回の5回目となった。セブンの強さはつねに仮説検証を繰り返し、飽くなき挑戦をしていく姿勢だ。今なお「リニューアル」を続けている

鈴木流経営学:
「逆転の発想術」
「マーケティングの極意」
「ビジネス心理学」
「情報術」
「仮説の立て方」

鈴木氏はいつも「顧客のために」ではなく、「顧客の立場で」考えろと言う。そうすると、美味しいものばかりでなく、飽きられないことが重要だという結論になるはずだ。また、顕在化されたもの(POSデータ)はすでに過去のものであり、潜在的なものに目を向けろとも言う。そして何より、ちょっとしたことに気づき、仮説を立てることで、ニーズの見える化に挑戦することだ

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