“第一次世界大戦中、わが国の国際収支は空前の受取勘定超過を示し、おかげで政府及び日本銀行の所有正貨(対外債権を含む)は激増し、大正3年末わずかに3億4千万円であったのが、大正8年末に20億円をこえるにいたった。
ところが戦争がすむとともに、国際収支は再び逆転して、累年著しき支払超過となり、大正11年末の政府及び日銀の正貨所有高は18億3千万円に減じた。もちろん民間所有の正貨はこの間に全く底を払ったと思われる。
そこに大正12年の地震は起り、国際収支はいっそう悪化した。商品貿易は、大正12年と13年とで約13億5千万円に上る入超を示した。
もしこれを前記した政府及び日銀所有の正貨で決算したとすれば、大正11年末の正貨18億3千万円は、半分以下の9億円足らずに減じたわけで、その影響は容易ならざるものがあったろう。
すでに外国為替はこの事情を反映し、大正12年に49ドル(100円につき)を維持した対米相場が、13年の10月には39ドル半にまで低落した。”

出典湛山回想 (岩波文庫 青 168-2)/石橋 湛山 名分話 第328回 ハルとグルー(9)|メモ垣露文

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