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憧れのタワーマンション 光と影

「高級」の代名詞のタワーマンションは若者夫婦から高齢者まで広く人気を集める定番商品ですが、階層によっての格差や住民構成の複雑さからくるトラブル、もしもの建て替えで同意を得るのは難しいなどのリスクを抱えます。

更新日: 2018年06月19日

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egawomsieteさん

湾岸タワマン28階に住んだのに、予想外の“負け感”。主食はコンビニ弁当…

37歳、独身、年収は1200万円。湾岸エリアでも人気の月島にある賃貸タワーマンションの28階で一人暮らしをする酒井優一さん(仮名)。

 住んでいる部屋は42平米の1LDKで、家賃は19.8万円。以前からタワマンに憧れていて、昨年引っ越したばかりだという。――これだけを聞くと独身貴族を謳歌する成功者に思えるが、タワマンに引っ越しをして、すでに後悔しているという。

「僕が住んでいるのはホテルライクなラグジュアリー感のあるタワマンではなく、築年数がたっていて比較的安め。周辺相場より3万~5万円は安くて、家賃20万円以下だったので決断したんです。しかも28階と憧れの高層階でした。よくタワマンでは高層階用と低層階用のエレベーターがあって、住民のヒエラルキーがあるって言いますよね。たしかに最初は優越感に浸ることもありました。でも実際には……」

 高層階に住んでいても、エレベーターで人と一緒に乗ると劣等感を抱くことが多いという。

「ウチのマンションは1階から24階までの低層階用と、24階から最上階までの高層階用のエレベーターがあるんですが、僕の部屋は高層階のなかでは低いほう。だから、誰かと一緒に乗るときは自分のほうが低層で先に降りることが多いんです。乗っている30秒間は、どこか負けた感じがしますね……。『鶏口牛後』という言葉があるように、“上の下”ではダメなんですよ」

 タワマン住民にとっての階層ヒエラルキーは「高層階vs低層階」ではなく、同じエレベーターの中にあるんだとか。

酒井さんがこのタワマンを選んだ決め手は部屋から見える夜景だったというが、それも最初の1か月で見飽きたとか。

「キレイな夜景が見たくてタワマンに住んだはずなのに、毎日同じ景色を見ているとさすがに飽きて、1か月もしないで感動はなくなりました。それに、残業残業で毎晩終電近くで帰ってくると周囲はもう電気が消えていて真っ暗。そもそも疲れて寝るだけだから、夜景なんて見てる場合じゃないですよ」

当初は「女の子に夜景を見せて感動させよう」なんて思いもあったが、期待は見事に外れたという。

「たまに女の子が部屋に来ても、夜景にまったく興味を示さないんです。夜景がキレイだから見てよと言っても、『高いところは苦手』とか『別に夜景はそんなに好きじゃないし』と言われて。女の子って夜景に興味がないんですか? 正直これじゃ、タワマンに住んでる意味がないですよ」

また、多少収入が高いとはいえ、やはり毎月20万円の家賃の負担は大きいようで。

「月20万円ということは、1日あたり7000円ほどかかっている計算になります。しかも寝るだけで。7000円も払えば、都内のちょっとしたビジネスホテルくらいには泊まれますよね。仕事柄、夜遅くまで長時間働くこともありますが、意地でも帰って寝てやろうって気持ちになりました。

 じゃないと、次の日の“宿泊代”が1万4000円かかることになりますから。でも、こんなことを考えている貧乏性の人間はタワマンに住むものじゃないのかもしれませんね」

月島は男一人で入れるチェーン飲食店がない!

「月島はもんじゃ焼き屋ばかりで、一人で入れるようなチェーン店が少ないんです。牛丼屋もないし定食屋もない。有名チェーン店といえば、マクドナルドくらいですね。近くには比較的安いことで知られる食品スーパーがあるんですが、ファミリー層が多い街のせいか、夜11時には閉まってしまう。

 それに、高所得者が多いエリアだからか、閉店直前に値引きしてもわずか2割引き程度で全然安くならないんです。しかも、総菜コーナーが小さいから仕事帰りに寄ってもほとんど残っていない。結局、毎晩コンビニ弁当ばかりですね」

 個人経営のシブい飲食店なら多そうだが、酒井さんのようなチェーン店好きの貧乏性だと入る店がないそうだ。

湾岸エリアが人気な理由がわからない

湾岸エリアを通る電車にも不満が炸裂。勝どきは都営大江戸線、豊洲は有楽町線、月島はその両方が通っていて利便性は高いはず。

「以前は山手線の駅から徒歩3分の普通のマンションに住んでいて、電車待ちなんて2分程度。それに慣れていたから、どこの駅も不便にしか感じません。

 大江戸線はかなり地下深い路線だから、ホームまで時間がかかる。電車の本数も少なめで、電車待ちが長いですね。有楽町線は都心部で乗換駅が多くあるのですが、乗り換えに距離があり10分ほど歩くこともザラ。実は有楽町線は乗り換えがかなり不便で不人気路線みたいですね。

勝どきのタワマンも内見しましたが、勝どきは海に近くて高層ビルやタワマンが多くて、どこも風が強かった。内見したのが弱い雨の降っている日で、傘がまったく役に立たないくらい風が強くて歩くのもしんどいし、雨も横殴り状態でした。正直、勝どき、月島、豊洲あたりの湾岸エリアが人気の理由がまったくわかりませんね」

 更新がくるまでは我慢して住むつもりだが、もう引っ越しを考えているという。

「普通のマンションだと退去する1か月前に告知すれば引っ越しできますが、タワマンの多くは解約の2か月前。つまり、引っ越したくても2か月近くの家賃を無駄に多く払う必要があるんです。以前のマンションより家賃は2倍になりましたが、不満まで2倍になりました……」

 住んでみて初めてわかった、数々のタワマンへの不満。高い家賃に見合うほどのメリットはないようだ

それでもタワマンに住みたい? 修繕費地獄に住民から悲鳴

「タワマンは、そのスケールメリットによって1戸当たりのコストが抑えられます」

 マンションデベロッパー営業担当者がよく口にするセールストークを全否定するのは、不動産ソリューションビジネスを展開するオラガ総研代表の牧野知弘氏だ。

「タワマンには、規模が大きいからこそかさむコストがいくつもある。例えばエレベーター。数十階分の距離を高速移動するタワマン用のそれは高性能なものが採用されており、1基あたり10階程度のマンションのエレベーターの倍以上の価格で、耐用年数も30年です。また、震災対策で非常用発電機を設置するタワマンが多いが、この1台の価格も数千万~1億円はする。しかも一度も出番がなくても15年で交換する必要があります」

住宅ジャーナリストの榊淳司氏もこう付け加える。

「十数年ごとの大規模修繕も、タワマンは一戸当たり250万円と、通常マンションの2倍以上の費用がかかるとみられている。足場の組めない物件の外壁改修は、屋上からゴンドラを吊って作業することになる。雨や風の強い日は作業ができず、工期や工費もやってみなければわからない。そもそも工事の担い手がいないかもしれない。3年ほど前、東京の湾岸エリアのタワマンの管理組合が大規模修繕の見積もりを大手ゼネコン5社に依頼したところ、全社辞退となったこともある。ゼネコンにとって20億円程度の案件など取るに足らず、不確実性が多い大規模修繕はリスクが多いのでしょう」

 ちなみに大規模修繕の費用を負担するのは住人自身だ。管理組合は住人から毎月、修繕積立金を徴収しているが、積立額が十分でないタワマンも多いようだ。国交省は、20階建て以上のタワマンに必要な修繕積立金の目安として、「月206円/㎡」という指針を策定している。しかし『日経新聞』(3月26日付)によれば、全国900棟のタワマンのうち8割弱が未達で、目安の半分に達していない物件も1割あったという。

そんななか、各タワマンの管理組合では、修繕積立金の値上げも提案されているというが、実現は厳しい。住宅ローン支払いと現状の修繕積立金、それに管理費ですでにカツカツという住人が少なくないからだ。

有明のラウンジや温水プール完備のタワマンに住む持田浩平さん(仮名・42歳/会社員)は言う。

「月々のローン支払いは13万円で、加えて修繕積立金が1万1000円、管理費と駐車場代が3万3000円毎月かかる。管理組合では、修繕積立金の値上げが議題に上っているらしいのですが、反対が多数。それどころか、年間2000万円の管理費がつぎ込まれながら、利用者が限られているプールの温水設備をやめたり、ラウンジ利用を有料にして管理費を値下げする案も出ているほど。みんな、ギリギリの経済状況なんです」

 修繕費用が賄えず“バベルの塔”と化してしまう物件も、今後続出する可能性があるというわけだ。

 それでもあなたはタワマンに住みたい!?

タワマン住民の見栄っ張り生活。高級ランチにタクシー移動…ローンでカツカツなのに |

江東区有明の新築タワマンに2年前に引っ越したばかりの大野友恵さん(仮名・29歳/主婦)は、住民同士の見栄の張り合いで疲弊している。

「ウチの場合、20人くらい同年代の奥様たちが参加するLINEのグループがあるのですが、そこでたびたびランチ会が企画される。どこのお店がいいか、案を出し合うのですが、みんな貧乏くさいと思われたくないので、高い店ばかり提案する。

結局、行先はお台場のヒルトンやニッコーホテル、ベイコートクラブなど2000円以上するホテルランチになる。互いに無理をしていることはわかっているのに、誰も『サイゼリヤでいいじゃん』とは言えない」

 かくいう大野さんだが、十分にタワマン社会に毒されているという。大野さんの夫(32歳)の証言。

「自転車がないとどこにも行けない有明では、乗っている電動自転車が格付け対象。妻曰くパナソニック、ブリヂストンは車でいえばベンツやアウディ。妻にはネット通販で買ったノーブランドの安いのを買い与えていたんですが、恥ずかしいから買い直せと懇願された。結局、車を買い替える際にグレードをワンランク落とし、浮かせたお金で13万円以上する、女性誌『VERY』とブリヂストンのコラボ電動自転車を買わされました。

あと、彼女は豊洲の高級スーパーのアオキに行くといつも袋を余分にもらう。普段、買い物をしている庶民スーパーの文化堂の袋で空き瓶や缶を捨てると、格好がつかないというんですよ……」

 タワマン社会の不毛な見栄の張り合いは、子供の心を蝕んでいる。武蔵小杉在住6年の岡田昭三さん(仮名・44歳/会社員)の話。

「5歳になるウチの子が、保育園の複数の友達に対して『○○くんの家って何階?』と聞いていた。そして、自分より低層に住んでいる子には『ウチは23階!』と勝ち誇ったような顔をし、逆に自分より高層だと『すごい……』と白旗をあげていた。このままここで子育てをしていいのかと、思い悩むようになりました」

蛯名光一さん(仮名・44歳/会社員)が住む有明と同じ江東区でも、価格帯が高い豊洲になると、自転車に乗ること自体が恥とされているとか。蛯名さんは話す。

「ウチは、豊洲駅から徒歩13分なのですが、見栄っ張りな人はタクシーで外出している。とはいえ、目的地まで行くと高額なので、勝どきや越中島など付近にある別の駅に乗りつけ、そこから電車移動するんです。

 ウチと同じフロアに住む主婦も、お上品な奥様という風情だったけど、錦糸町にあるクリーニング店でアルバイトしているのを偶然、目撃したときはショックでした」

蛯名光一さん(仮名・44歳/会社員)が住む有明と同じ江東区でも、価格帯が高い豊洲になると、自転車に乗ること自体が恥とされているとか。蛯名さんは話す。

「ウチは、豊洲駅から徒歩13分なのですが、見栄っ張りな人はタクシーで外出している。とはいえ、目的地まで行くと高額なので、勝どきや越中島など付近にある別の駅に乗りつけ、そこから電車移動するんです。

 ウチと同じフロアに住む主婦も、お上品な奥様という風情だったけど、錦糸町にあるクリーニング店でアルバイトしているのを偶然、目撃したときはショックでした」

優雅に見えるタワマン住民たちだが、住宅ローンの支払いで生活はカツカツという人も少なくない。

 前出の岡田さんもその一人だ。

「私が組んだのは、毎月の返済額が徐々に増えていく元利逓増型。6年前はアベノミクスで収入が上がっていくと思っていたが、実際は横ばいで、可処分所得は減少する一方。同じような状況の人は少なくないようで、近所のスーパーでは、割引シールが付いた商品をめぐって、奪い合いのトラブルが発生することもあります」

岡田さんは生活費節約のため、ある秘策を講じている。

「タワマンの共有施設にキッチン付きのパーティルームがあるんですが、友人を招待し、パーティをしている。目当ては持ち寄りの食材や酒。残ったものはみんな置いていくので、それで食いつないでいます」

 地上からは、羨望のまなざしを向けられる天空に住む人々だが、その実、彼らはギリシャ神話のイカロスなのかもしれない。

■タワマン住民が過酷な生活に悲鳴…「買わなきゃよかった」と後悔するワケ

朝7時45分――。JR武蔵小杉駅の新南改札の外には、すでに200mほどの行列ができていた。彼らが目指す横須賀線ホームへと続くエスカレーターに乗るには、5つの自動改札のうち、左端の1台をくぐらなくてはならない。

 この10年、雨後の筍のようにタワーマンションが建設されている神奈川県川崎市の武蔵小杉周辺では、人口が予想以上に増大しており、通勤ラッシュ時の駅のキャパオーバーが問題となっている。神奈川県の県勢要覧によれば、同駅(JRのみ)の1日の平均乗車人員は6年間で3割増となっているが、拡張工事は行われていない。

同地の新築タワーマンションに2年前に入居した峯山健太さん(仮名・36歳/会社員)も毎朝、横須賀線で出勤している。

「混雑は日を追うごとにひどくなっている印象です。人身事故でダイヤが乱れると、ホーム上は押すな押すなの地獄絵図。駅構内への入場制限がかかることもしばしばで、始業時刻の30分前に到着するように家を出ている。会社がある品川まで10分ということで武蔵小杉を選んだのに、通勤に40分かかっている。購入前に何度も足を運びましたが、いずれも休日の昼間だったので、想定外でした。夏に子供が生まれるんですが、保育園も絶望的。産休明けに妻は会社を辞めないといけないかもしれず、そうするとローン返済計画も狂う。後悔しかない……」

一方、東京で“タワマン銀座”といえばやはり江東区の豊洲だろう。同地区のタワマンに住んで6年になる蛯名光一さん(仮名・44歳/会社員)の過酷な通勤は、タワマンを出る前から始まる。

「朝はエレベーターを5分以上待つこともザラ。やっと来たと思っても満員で乗れないこともある。入居開始直後は、多くの世帯が新婚夫婦のふたり暮らしだったのが、5年もたつと子供が生まれ保育園や学校へ通い始めるので、エレベーターのキャパが足りなくなった。予想外でしたね」

タワマン生活の意外な過酷さを痛感しているのは、毎朝通勤するお父さんたちばかりではない。4年前、東京・中央区勝どきのタワマンに入居した、主婦の野上裕子さん(仮名・37歳)は話す。

「都会的な暮らしにあこがれてタワマンを買ったのに、住んでみると極度のムラ社会でした。毎月のように催される自治会のイベントや、ラウンジ・ジムなどの共有施設で住人同士が交流する機会も多い。『〇〇号室の旦那さんは転職したらしい』とか『△△ちゃんにはもう生理が来た』とか、噂話もすぐに広がる。マンション内では常に誰かに見られている気がして、夜、ちょっとコンビニに行こうと思っても化粧や服装に気を使わないといけないんです」

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