1. まとめトップ

【追悼】映画原作も書いた医者、オリバー・サックスを振り返るまとめ

現代医学はベルトコンベヤー式に患者を次から次へと受け流す…そんな流れに逆らうように、患者との対話を重んじ、作家と医者を両立したオリバー・サックスさんが亡くなりました。『音楽嗜好症』や映画化した『レナードの朝』など名著を遺した知の巨人。2015年に亡くなった人物の中で最も惜しむべき人の一人でしょう。

更新日: 2015年12月27日

2 お気に入り 4319 view
お気に入り追加

この記事は私がまとめました

lingtoshiさん

医学の矛盾に立ち向かった男:神経学者としての人生

出典wired.jp

医学は多くの人を助けようとする分野である側面が強く、目の前の患者さん一人ひとりに気を配ることはどうしても難しくなります。しかし本来、医者と患者は向き合うことが必要なはず。そんな医学の矛盾に抗い、医者のあるべき姿を自らの人生を通して示したのがオリバー・サックス。

サックスの著作を読めば、患者1人ひとりへ注がれた彼の真摯な視線に気づき、それがまさにシステムとは正反対に位置する、医学が根源的に持っていた愛にほかならないことがわかるだろう。すべての患者は、「患者」である前に1人の人間であるという、ヒューマニストとしての信念がまさにそこから伝わってくるのだ。

「患者」である前に1人の人間である…なかなか見落とされがちなことですよね。

わたしは見て考えるタイプですが、オリヴァーはそうではありません。言葉で考えるタイプです。ただわたしの心を描き出すという時になると、彼はわたしのことを正しく理解しました。オリヴァーは、普通の人とは違った神経障害のある人の心に入り込むのが、素晴らしく上手かった。

オリヴァーはもうわれわれの部屋を出て行った。一人ひとりの好奇心に火をつけ、科学、交流、合理主義、愛がお互いに施しあうことができるということを見せつけて、われわれに計り知れない恩恵を与えてくれたのだ

事実、実践的な神経科学者としてわたしは、柔軟に思考できる人間としての自分自身を「追放する」ことを恐れないで、神経科学が人間という存在へシフトしていることを認めている。それは、サックス博士が科学的合理性と人間の感情をミックスしたときのアーティスト性のおかげである。

著作からもわかるその心遣い:作家としての人生

音楽に魅了された人々についての名著。

作家としてのサックス氏は、「レナードの朝」「音楽嗜好症(ミュージコフィリア)」、そして「妻を帽子とまちがえた男」といった多くのベストセラーを生んだ。

サックスの語り口はひとりの患者の症例を眺める、というよりは、その病気込みでの故人の人生まるごとを捉えようとしている。そして、その視点は個人のみに留まらず、その人間が生きている社会をも視界に据えている。特にこの点で興味深いのは「トゥレット症候群の外科医」と「火星の人類学者」だろう。

分布曲線の両端に位置するような患者の個人物語を丁寧に紡ぐことで、かえって人間の脳のもつ可塑性や柔軟性、可能性を描き出すことにもなっている。

映画化もした『レナードの朝』

映画の方で知っている人も多いのではないでしょうか。

オリヴァー・サックスの実話を基に、治療不能の難病に挑む医師の奮闘を、一人の重症患者との交流を軸に描いた感動のヒューマン・ドラマ。30年間昏睡状態だった男レナードが、奇跡的に意識を回復した。セイヤー博士の治療が功を奏したのだ。博士はその治療を、他の患者にも適用してめざましい効果をあげるが……。

映画レビューサイト「allcinema」での評価は★4つ。

実話である原作では20名の患者全てに対する記述が行われているが、映画は原作に基づくフィクションであり、レナードに対する描写が主である。患者が示す症状は必ずしも科学的に正確でない。第63回アカデミー賞において作品賞、主演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)、脚色賞の3部門でノミネートされた。

命の重さ、生きるってどういう事なのかをすごく考えさせられる。

ハッピーエンドなんかじゃ全然ないんだけれど、観終わった後に温かい気持ちに包まれる。

自分自身を語った最新作、『道程』

この本の中で、彼は他人にしてきたように、自分自身を観察しています。思いやり深く、まばたきもしないほどしっかり、知的に、素直に、そして正直に。

最新作『On the Move』について、ウォールストリートジャーナル誌の記者のコメント。原文は英語。訳はhttp://www.huffingtonpost.jp/2015/08/31/oliver-sacks-dies-at-82_n_8063310.htmlより。

・池谷裕二氏(脳研究者・東京大学教授)推薦
「覚醒剤、同性愛、身内の精神疾患――
末期肝癌の告知を受けたオリヴァー・サックスが、
赤裸々に綴った衝撃の自叙伝。
圧倒的な筆力で綴られた大著は、切なくも愛に満ちていて、
人生とはなんと美しいのかと、じわじわとした感動を呼ぶ。
オリヴァーの新刊はもうこれで最後。惜しすぎる」

本書は、名文家サックスならではの珠玉の自伝といえるだろう。わたしたちの知るサックスと、わたしたちがまったく知らなかったサックス、そのどちらをも楽しめる本である。個人的には、いくつか読んだ彼の本のなかでも、本書は一二を争うおもしろさではないかと思う。こんな本を遺してくれてありがとうと、心からそう言いたい。

遺稿が一部公開

オリバー・サックスの声が聴けるページ

1