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歌人・工藤吉生が作る『未来』の短歌とは?

短歌は5.7.5.7.7.の31音からなります。 工藤吉生(くどうよしお) ツイッターID@mk7911 の作った、歌誌『未来』に掲載された短歌をまとめました。自分で。

更新日: 2019年09月06日

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この記事は私がまとめました

mk7911さん

『未来』2019年8月号に掲載された短歌

「ビューティー・トワレ」  



ツイッターやめると言ってやめぬ人だいたいやめてもらいたい人

パイプしか吸ってないからコーヒーが好きかは不明のBOSSのおじさん

真夜中にパイの実喰ってるんだよと教えてあげるツイッターにだけ

言おうって思って忘れちゃうんだが思い出したら自慢話だ

そのへんでチャンネル桜を知ってから桜が保守の花に思える

トワレって書いてあるから調べたらトイレのことだやりやがったな

大声でひとりごと言うばあさんとすれちがい聞く「バカはバカだ」と

鏡のなか見てたら思い出したけど詐欺の電話がこないだ来たよ

「居心地のいい人」側にいるオレがうすく眺める@jiro57

エスカレーターで眠ろうつかんでる手すりの角度が変化するまで

『未来』2019年7月号に掲載された短歌

「枯れ枝と財布」



におい付きの風がでてきて春になる虫も変態たちも目覚めて

微笑んで穴掘る人はいないのだ「のだ」なんて言うから土になる

オレ、飛沫、わりと見るかも だいたいは透明なのが多かったかな

ピンクの雲いいなさわってみたいなあ財布にいくら入ってたかな

魔王と言い枯れ枝と言う子と父で馬の手綱を握るのは父

筆くわえアシカが新元号を書くみたいな・でかい白紙みたいな

体液を拭くため置いた一箱のティッシュボックスからっぽ 祭

虹色の花火はじけてたんだよと告げてよく寝た一方的に

ゴミ箱のたったひとつのゴミなので見えたねじれてくちゃくちゃになり

持ったまま眠ってしまい目が覚めてふたたび使い始めるスマホ

『未来』2019年6月号に掲載された短歌

「ミューズさん」


むしゃくしゃな日でも遠景ゆっくりと近景はやく飛び去っていく

走ってる「時」に振り落とされるのは嫌だシワシワしたおでこ嫌だ

あたらしい波がいったん退いてそれを含んだ次の波くる

好きなだけ言わせといたら在日で生活保護で毛が無くて死者

消しゴムがないからツバで消したって少し離れた席で荒れてた

細ければいいのかよ!? って怒ってた脚線美コンテストのタモリ

母親の故郷と旧姓おもいだすネットバンキングのログインに

サザエさん一家みたいに一列にならんで飛んでいた鳥 火曜

何もしていないまんまで笑ってる人が子供の絵にはよくいる

ミューズって名前の子供いるかなと検索すれば実柚(みゆうず)・美夕鶴(みゆうず)・美渦(みゆうず)

『未来』2019年5月号に掲載された短歌

「平成三首、そのほか」


平成のはじめに性に覚醒しあくびしながら平成おわる

年号がうつるくらいじゃ変わらんよ、人は 奥から牛乳えらぶ

振り向けばうしろすがたの平成が後ろ歩きをしているでしょう

デパートとデパートつなぐ空中の通路に人っぽいもの揺らぐ

一点の撮ったおぼえのない画像でてきて知っている白い壁

筋トレじゃなくて赤ちゃんあやしてる動きも視野に信号を待つ

赤ちゃんのころのアルバムひらいたらオレがしゃべっている母の字で

なつかしの「さすがの猿飛」パンチラのページがきたらすばやくめくる

大便が起きる動機になりました寒くてやる気でないこの夜

ひとにもの教えたあとの恥ずかしさ先生たちは感じないのか

『未来』2019年4月号に掲載された短歌

「格付けチェック」

元日になると思うが人間はこんなんじゃあたらしくならない

ついたちの朝見た夢を弟は初夢と言いオレも出たとか

クイズ王が司会のオレを待っている夢の中へともう戻れない

お雑煮のなかにおもちが眠ってるオレの苦手なおもちがひとつ

鼻くその味をかすかに覚えてるもう何年も食ってないねえ

眼が描いてある目隠しの下にあるGACKTの瞳が肉を見分ける

赤いドア開けるふりして青いドア浜田雅功たらこくちびる

映す価値なくなり消えた正月のタレントたのしそうに声だす

一流歌人、二流、三流、そっくりさん歌人、載せる価値なし歌人

一流の俳句を選びそこなっておとなしく読む『第二芸術』

『未来』2019年3月号に掲載された短歌

「さくらももこさんと多くの仕事」




神のもつ力のひとつは「新聞」をさくらももこに描かせるちから

ルレカーサの占いによればドブに落ち犬に噛まれる人生、オレの

いいことも悪いこともしないコジコジに夜空の星はみなぎってゆく

「コジコジはコジコジだよ」の真実に機械教師は打ちのめされて

性的に興奮すればお湯が沸き人が集まるやかん君あわれ

おなべからとびでるインチキおじさんのような大人よあとどれくらい

父ヒロシその生きざまのへらへらをオレの理想にかかげる高く

いま思うキートン山田のひとことは大人になったまる子の声と

たまちゃんはアメリカに去り原稿にももこが落とすおおきななみだ

健康にこだわってるとエッセイに読むつぎのエッセイにも読む

『未来』2019年2月号に掲載された短歌

新人賞受賞式

「愛情」「美」「情熱」などの花言葉もつ赤バラがスーツの胸へ

緊張をほぐし待ちたい一室に社長、代表、馬場、篠、永田……

賞状を穂村弘が読み上げる様子ながめる一番近くで

金屏風背負ってしゃべるオレが見る壁は遠くでぼやけるばかり

花束をかかえることに適してる腕だと思う右も左も

白黒でどこかに小さく載るだろう今こころから笑ってるオレ

受賞者がなぜ隅っこにいるのかと言われる それはオレだからです

歌人からもらった風邪かスピーチをもうしないかもしれない喉に

さようなら新人賞よ こんにちは、と言ってもそっぽ向いてる明日よ

翌朝はホテルのものすごくでかいテレビにとどろきわたるチコちゃん

『未来』2019年1月号に掲載された短歌

東京へ、授賞式へ   


オレの行くときだけ雨がやんでいる予報だったがもう過去のこと

革靴になじまぬ足で歩いてるいつもの道が水中みたい

新幹線 何年ぶりに 乗ったかな 「ん」が3つある しんかんせんに

人混みを我慢して行くガマンしてがまんしてまだひとごみのなか

狭くって高くて不味い東京のうすぐらい店も旅の思い出

地下道をながく歩いて外へ出た雨の水面を白鳥うかぶ

TOKYOは外国人の多い街いずれにしてもみな他人だが

ありがとうグーグルマップのおかげだよってみんなも感謝すればいいのに

早過ぎと思っていたが遅刻する危機に気がつき心いれかわる

これまでは吊らずに済んでいた首にネクタイ巻いて受賞者オレは

『未来』2018年12月号に掲載された短歌

「エライ」  



よいしょ、って座ったソファが思ってたよりも深くて天をあおいだ

眼球のない目でこっちをにらんでるマネキンのコートもう秋だねえ

何時間寝たか計算しているがよくわからない二時間がある

玉ねぎが十キロ入っている箱を持ち上げるときこころはひとつ

悪臭はするけど誰がすかしたかわからぬ電車の客、客!客。客?

コインだと思えばあまり痛くないすごく激しい雨のつぶつぶ

クイズ出しブーとかピンポン言っている中学生の男の背中

オレなんて寝っころがっていたいのにキャッチボールをしていてエライ

看護師のピンクの肩を見てすぎて午後の散歩の六割おわり

さびれてはいるけれど森襖店の中の親父の黒ぶちメガネ

『未来』2018年11月号に掲載された短歌

「男乃道」


誰か死ぬたび平成が終わったと言われて飽きる平成の終わり

九千円たしかにあって受け取ってけれどもごまかされてる感じ

レシートはいろいろ書いてあるねえとひらひらさせるゴミ箱の上

理想郷 生寿司(2割引)のあとヨーグルト(58円)もある

そんなのがいくらでもでてくるんでしょピアノと管楽器の二重奏

ぐきぐきに曲がった松の枝振りの「でや」とテニスの球を打つ人

トラックに「男乃道」と書いてあるオレと関係なさそうな道

電線にとまるだなんてできる気がしない スズメに生まれたくない

天空の城に住んだらゴミのような人を見下ろし泣く日もあろう

霊になり歩く自分と仮定して暮れた地面に空を見上げる

『未来』2018年10月号に掲載された短歌

「パスまわし」

ボロ負けの時も応援する人がサポーターならオレちがいます

赤くてもいいよサッカーボールなら寄ってたかって蹴るまでのこと

くらやみにビデオアシスタントレフェリーが巻き戻し見るあぶないプレイ

引っ張られながらも走る攻撃のこういうふうでなければならぬ

転ばされ手を上げ叫ぶ大声のこういうふうでなきゃいかんのか

レバンドフスキを徹底マークしろ クドウヨシオは相手にするな

フェアプレイポイントちょっとリードして職場のトイレで目を閉じていた

ブーイング あいつもどうせコネだろと名無しさんから言われてるかも

目的のために醜くなれるのが強さであれば断然ほしい

「フェラテクが半端ないって!」のAVを見かけてしまう(あるとは思った)

『未来』2018年9月号に掲載された短歌

「車にはねられました」


自転車で青信号を渡ったら車に当たり飛んだよマジで

死んだとは思わないけど面倒が体を包む感じはあった

自転車と鞄とスマホとスマホ用電池パックと工藤吉生が

腰を打つ 仰向けで「アア!」「アア!」と言う 道路のうえで産まれたみたい

五十秒くらいもがいて立てる気がして立とうとして立ったら立てた

三メートルくらい飛んだと耳に聞く誇らしいのはなぜなのだろう

インテナースパップ70ミリグラムそんな名前の湿布ひんやり

救急車、病院、警察 要するに3マス戻り1回休み

しだり尾のトーキョーカイジョーニチドーはこれでもだいぶ略した名前

腰痛は日に日に弱くなってきていつものオレになってしまった

『未来』2018年8月号に掲載された短歌

「おさまってない」

ポケットにもぐって暖をとっていた両手おのずと出てくる春は

メニューとはちがう気がする春野菜パスタ見比べあきらめがつく

見本より色あせているパスタだが味はおおむね差し支えない

この人にも家族があるんだろうなあと想像させる顔の店員

無着色ながら真っ赤なケチャップをつけてポテトを無意識に食う

耐えているみたいな顔の男から目をそらす、また見る、耐えている

支払いを終えたら外の強風がおさまって、いや、おさまってない

均等な間隔をおいて植えられた黄色や赤に将来はある

若者の味方だという顔がもうしんどくなって背中が痛い

見通しのよい地点から沈む陽を見ていたずっとこうしたかった

『未来』2018年7月号に掲載された短歌

「不審者情報」

最低な歌を「未来」に出詠する夢から覚めてここが現実

いいですよ隣の車輌にもうひとりオレがいたってかまいませんよ

目は閉じることが可能で電車での一人のためにそれをおこなう

遠慮したレジの袋でできているみどりの星よあおい空気よ

同一のポスター四枚ならぶうち奥から三番目を見てた人

バス停に女性が持っている本のタイトル見えてグーグルに打つ

不審者の情報はオレと一致せずまだ大丈夫春はこれから

悪臭がただよってくる「文芸」の棚で立ち読みする自分から

湧いて出た唾ならかまわないのだがよそものは断固おことわりだね

春の日はクリーム色に暮れかかり鼻の右側それとなく掻く

『未来』2018年6月号に掲載された短歌

「変人はみだし放題」


変人が生えてきそうなあたたかい日差しだ さてと散歩に行こう

ギター弾く人のうしろを通るとき振り向かないでくれと願った

ジャヌカンの「鳥の歌」には「笑わせてやりたい放題」という歌詞あり

ふざけてる替え歌みたい制服の上に乗っかるオレの顔面

声のでる自販機いなくなってから記憶が鳴らすイラッシャイマセ

つかのまの光は自分に影がある事実を思い出させてくれた

DOUTORの二つ目のOかたむいて黒さ失うなぜ君だけが

ドトールで使えるカードを表示する会計皿はこすいヤツだよ

BLTつまりベーコンレタストマト 持田香織ファンのユウタ元気か

豪快にはみだしているベーコンをかじって並のはみだしとする

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