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究極の社会保障制度「ベーシック・インカム」 無駄はなくすが働きたくない人が増える?

政府がすべての個人に、最低の生活水準を実現させるために必要な一定額を支給する制度であるベーシック・インカム。貧困削減はもちろん、複雑化した社会保障を一本化して無駄をなくす効果、そして官僚機構のリストラにつながるなど期待される一方、納税者へのバラマキや勤労意欲低下などマイナス面も大きいとされます。

更新日: 2016年06月06日

egawomsieteさん

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■最低生活保障、月27万円…スイス国民投票否決

年金や生活保護などの社会保障を廃止する代わりに一定額を全国民に無条件で給付する最低生活保障(ベーシック・インカム)制度導入の賛否を問う世界初の国民投票が5日、スイスで行われ、賛成23・1%、反対76・9%の大差で否決された。

国民投票は、制度の推進を掲げる市民団体が発議した。団体は成人1人あたり2500スイス・フラン(約27万円)の給付を主張していた。働かなくても一定額の収入が得られるこの制度は、貧困問題を解決し、複雑な社会保障行政を簡素化できる新たな手段として、フィンランドなど欧州の一部で推進の動きが出ている。

 一方、「財源の見通しがつかない」とスイス議会などからは否定的な意見が出ており、平均月収が6000スイス・フラン(65万4000円)を超すスイスでは、2500スイス・フランの給付では「足りない」との指摘もあった。勤労意欲の低下などを危惧する声もあった。

■国民の7割が賛成、フィンランドがベーシックインカム検討の背景 海外は実現に厳しい見方

貧富を問わず住民に一定の金額を毎月支給するという「ベーシックインカム」制度の実現の可能性を探るため、フィンランドが大規模なパイロットプロジェクトを実施すると発表した。世界のメディアが大きく報じたが、制度実現には大きなハードルがあると辛口の意見も出ている。

発表を受け、日本も含めた多くのメディアが「フィンランドが国民全員に800ユーロ(約11万円)を支給予定」などの見出しをつけ、あたかも同国がベーシックインカム制度を導入するかのように報じたが、ウェブ誌『Vox』によれば、ベーシックインカムのための提言の考察がされているだけで、「全員支給」にまでは全然たどり着いていないらしい。

フィンランド社会保険庁事務所(KELA)のディレクター、Olli Kangas氏は、これから行われるのは国民の一部が参加するパイロットプログラムであり、メディアが報じた800ユーロという数字も、単なる一例だと述べている(Vox)。

Kangas氏は複数のモデルをテストしたいとしており、ほとんどの社会保障給付を置き換えるフル・ベーシックインカム、既存の社会保障給付の多くを継続したままにする部分ベーシックインカム、所得が増えると給付が減るネガティブ・インカム・タックス、既存の給付を一つに統合し、社会貢献をした際に追加の給付をするようなその他のアプローチなどを考えているという。同氏はさらに、実験は国と地域の二つのレベルで行いたいとしている。特に地域全体にベーシックインカムを与えた場合、コミュニティ全体への影響が測れるため、収入が保証されたことで、地域にプラスの循環が生み出されるかどうかを見極めたいとしている。包括的という点で、フィンランドの実験はこれまでのものよりかなり先を行く試みだとVoxは評価している。

実はフィンランドの経済状態は悪かった

フィンランドの構想の背景には、厳しい国内事情があるといくつかのメディアは指摘している。ワシントン・ポスト紙(WP)に執筆したジャーナリストのリック・ノアック氏は、経済協力開発機構(OECD)の調査に言及し、格差の増大で、経済成長の機会を最も逃している国の一つにフィンランドが数えられていると述べる。北欧の高福祉で豊かな国のイメージがあるが、近年はそれが揺らいでいるようだ。ウェブ誌『Mashable』によれば、同国の失業率は約10%で、3年に及ぶ不景気から這い出すのに必死だという。政府は不景気が終わっても成長の速度は遅いと予測しており、先の暗い見通しのために、約70%の国民がベーシックインカムに賛成しているとしている。

ベーシックインカムの最大の問題点は財源だ。Mashableによれば、月800ユーロを成人だけに給付するとしても、年間470億ユーロ(約6.3兆円)が必要となるが、2016年のフィンランド政府の歳入は、ほぼ同額の491億ユーロ(約6.6兆円)と予測されている。ただでさえ緊縮財政と予算カットで財政的余裕はない同国にとっては、財源確保は増税に頼ることになる、と同誌は述べている。

 さらにフィンランドはEUの中でも最も高齢化が進んでおり、これが経済をさらに悪化させる要因となりうる。労働人口は縮小し、生産性は低下。所得税を払う人も減るため、歳入も減ると見られており(Mashable)、ベーシックインカム実現への道は険しそうだ。

今はやっぱり現実的じゃない?

英テレグラフ紙のアシスタント・エディター、ジェレミー・ワーナー氏は、ベーシックインカムはこれまで非現実的理想主義のコンセプトと片付けられており、様々な欠点があると指摘。失業者がベーシックインカムを手にすれば働かない、という負の効果よりも、パートタイムで働いてより収入を増やすというポジティブな効果が期待されているのかもしれないが、結局のところコストは増税と政府の支出削減に跳ね返ると説明する

また、ベーシックインカムを導入すれば、800ユーロがよい収入だと考えるEU諸国民に磁石を提供することになるとし、フィンランドにはすぐさま下層階級が押し寄せ、制度を支えられなくなるだろうとも述べている。同氏はロボットが人間の仕事を行い人が働く必要がない時代になれば、ベーシックインカムの出番ではないかと述べ、当面実現の可能性は薄いと見ているようだ。

 Voxによれば、フィンランドでの実験は、2017年に開始され、2年間続くとのこと。実験に対する評価は、2019年から徐々に明らかになる予定だという。

■フィンランド検討報道で話題のベーシックインカム、日本では実現可能?

ベーシックインカムは、全国民が最低限の生活を送るために必要な金額を無条件で給付するという制度です。多くの国では、生活が苦しいと考えられる人たちに受給資格を絞った上で、生活保護などの社会福祉を提供しています。しかし、誰が貧困状態になっているのかを認定するのはそう簡単ではなく、不正受給など、本当に福祉が必要な人にサービスが行き渡らないケースが散見されます。

また、給付対象の審査や状況の調査のために公務員を雇わなければならず、社会福祉の運営にムダが生じてしまいがちです。ベーシックインカムは、こうした欠点を克服するために編み出された手法のひとつです。

ベーシックインカムでは、最低限度の現金給付を行う代わりに、それ以外の社会福祉は原則として実施しないことが前提となります。与えられた金額をどう使うのかは自己責任であり、それ以上の面倒は見ないという考え方です。確かに全員に生活費を給付するにはかなりの費用が必要となりますが、既存の福祉予算を大幅にカットできるため、運営方法によっては採算が取れるのではないかと期待されています。全員に無条件で給付されるので、原理的に不正受給という問題は生じませんし、この範囲で生活できない人に対するケアは行われませんから、過度に福祉に依存するという人もいなくなります。社会保障業務に従事する余分な公務員も必要なくなるでしょう。給付の単位は世帯ではなく個人になりますから、家族構成によって福祉レベルに差が出てくる心配もありません。

いいことずくめのように見えますが、やはり最大の課題は財源でしょう。フィンランドのケースでは、年間約7兆円の予算が必要となりますが、政府による他の社会福祉予算を停止することで、総費用を抑えられるとしています。ただしフィンランドの政府支出は年間約16兆円ですから、半分を社会保障に割り当てることになります。

以前、日本でベーシックインカムに関する議論が出てきたことがありましたが、その時は全国民に月8万円を支給するというものでした。日本でこれを実現した場合、年間120兆円もの予算が必要となりますが、もう少し現実的に考え月5万円にすれば年間75兆円の予算で済みます。現在、年金や医療は特別会計で別枠になっており、年金については年間53兆円支出(共済含む)しています(一般会計からの支出を差し引くと43兆円)。生活保護や年金・医療への国庫支出など、一般会計の社会保障費32兆円も停止すれば理論的には実現可能です。

 日本人は働くことに対して強い道徳感を持つ民族ですから、ベーシックインカムが行われたからといって働かなくなる人はごく少数にとどまるでしょう。無理だとは決めつけず、検討してみる価値はありそうです。

■フィンランド人に聞いた「ベーシック・インカム」の実現性

北欧のフィンランドが国として初めてベーシック・インカム(最低限所得保障制度)の導入を検討していることがわかったのです。

こちらの記事でも少し触れましたが、近年になって注目が集まってきていた背景はあるものの、これまで単純に「アイデア」として語られていたベーシック・インカム制度が、国の福祉施策として真面目に検討されることになった、という点が重要なポイントです。

実際にフィンランド国内に住むフィンランド人の人たちは、このニュースをどう受け止めているか?ヘルシンキ在住のフィンランド人のEmmi Laineさんに意見を求めました。

── フィンランドにおけるベーシックインカム導入についてどう考えていますか? あなたは賛成ですか、反対ですか? 
Laineさん:私はフィンランド国民すべてに800ユーロ(約11万円)を支給するという、今回の制度改革案に賛成です。とはいえ、世界のメディアはこの改革案を単純かつ大げさにとらえ過ぎていると思います。ご存知かもしれませんが、フィンランドにはすでに手厚い社会保障制度が存在します。私は大学生のとき月に550ユーロの教育奨励金をもらっていました。この手当は、すべての学生がもらえて、返済する必要もありません。また、もし私が失業すれば、月に750ユーロが支給されます。

ですので、今回の改革案は、こうした低所得者(学生、失業者、年金受給者)への補助金交付をより平等にするだけだとも言えます。ある意味、毎月支給される金額が統一されるというだけなのです。今回の新しい提案は、補助金申請に関わる公務員の数を減らし、個人のお金の使い方をより自由にします。特に学生には助かる制度です。現在のところ、学生は収入をかなり低く抑えておく必要があります。そうしないと、政府から補助金がもらえなくなるのです。多くの学生がそのジレンマに苦しんでいます。

がんばってパートタイムで働いても、その分だけ補助金を減らされてしまえば意味がありません。その点、新しく提案されている制度は、パートタイムの賃金に関係なく補助金が支給される点で優れています。そのほうが安心感もあるし、働く意欲も高まります。

── 多くの人は、残りの人生ずっとお金がもらえるとわかれば、働くのをやめてしまうと思われます。あなたならどうしますか?

Laineさん:ベーシックインカムを導入すると、多くの人が働くのをやめてしまうかというと、そんなことはないと思います。今でも失業者は同じくらいの額を支給されています。それに、ほとんどの人は職業的に充実した人生を求めているのではないでしょうか。そして、なにより重要なのは、誰でも最低800ユーロの収入が確保できることです。私の姉はヘルシンキの中心地に小さなワンルームを借りていますが、家賃は700ユーロ近くもします。ヘルシンキではそれが普通の家賃です。

── フィンランドで実際にベーシックインカムが導入されると思いますか?(2016年11月に試験導入の可否が決定されるそうですが...)

Laineさん:すでに引退している叔母とこの話題について話してみたのですが、彼女は、今回の提案は実施されないだろうと考えているそうです。昨今、政治が右傾化する動きが見られ、社会保障の削減や、健康保険制度の民営化といった、この提案とは逆の方向へ行きそうな雰囲気があります。そうなると、国民それぞれがもっと自立することが求められるでしょう。

私の勘では、フィンランドにベーシックインカム的なものは導入されると思います。とはいえ、支給額は800ユーロよりは少なくなって、制度にタダ乗りする人が増えるというよりは、最も問題となるグループ(低収入の学生、失業者、働ける高齢者)に、より働く意欲を与えるものとなるでしょう。

日本のメディアでの騒がれ方とは対照的に、現地のフィンランド人はこのニュースを冷静に受け止めている点が印象的です。すでに手厚い社会保障のあるフィンランドにとって、ベーシック・インカムは「国の社会福祉を根本から変える大変化」というよりも、「複雑になった現行制度を簡略化・効率化する手段」という見方をするほうが適切なのかもしれませんね。

■夢の「ベーシックインカム」制度、オランダで実験導入

米ニュースサイトQUARTZによると、この「夢の制度」の有用性について、来年1月からオランダ第4の都市ユトレヒトで実験が行われるという。ネットには「日本でも早よ」と期待が高まっている。

実験は、ユトレヒト市とユトレヒト大学が共同で実施。ベーシックインカム支給の対象となるのは働いていない約300人の市民。独身の成人には月に約1000ドル(約12万円)、カップルや家族には約1450ドル(約18万円)が支給される。

対象者の少なくとも50人は無条件で支給が行われ、仕事など他の収入源を見つけても支給が続く。また実験の効果を測定するため、現行の福祉法に則ったグループとの比較も行われるという。

ベーシックインカム制度に対する批判としては、これまで「働きたくない人が増える」「労働人口の減少が国の経済に損失を与える」といったものがあった。しかし、プロジェクトマネージャーのNienke Horst氏は、楽観的に捉えているようだ。

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