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学校の運動会「手つなぎゴール」の都市伝説 いつからどんな風に広まった?もっとも古い内容は?

運動会の「手つなぎゴール」についてのラジオ番組の調査が話題に。この調査は「ゆとり世代」と関係あるかに絞って、「手つなぎゴール」は何かについてはあまり話されなかったので、それ以外の話をネット検索した結果をまとめ。

更新日: 2016年06月26日

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この記事は私がまとめました

雨男さん

「手つなぎゴール」とは、運動会の徒競走で、足の遅い子がビリになって嫌な思いをしないように、足の早い子らがゴール手前で立ち止まり足の遅い子が来るまで待ち、全員揃ったら全員で手をつないで一斉にゴールする、という指導。

少し前の時代、「悪しき平等教育」だとして学校教育改革の理由付けの一つとして頻繁に引用されていた。また、近年は、いわゆる「ゆとり教育」が批判される時などに「手つなぎゴール」が「ゆとり」の象徴の一つとして批判・揶揄されることがあるという。

しかし、広く認知されている一方で「手つなぎゴール」を実際に行っている(いた)という学校が見つからず、都市伝説の一つともされていた。

*「手つなぎゴール」は「順位をつけない運動会」問題における一つの例示ではあるが、「手つなぎゴール」=「順位をつけない運動会」という話ではない。「順位をつけない運動会」は事実として存在し報道されている(徒競走で等旗を使わない、など)。NHK「クローズアップ現代」「競争のない運動会 ~順位をつけない教育改革の波紋~」(http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/585/index.html)は1996年の放送。


**2016年6月13日放送の『たまむすび』内容を2ページ目に追加

TBSラジオの『たまむすび』で、運動会の「手つなぎゴール」は本当にある(あった)のかが調査される

『たまむすび』では1997年の朝日記事や小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』原因論が。

『たまむすび』では、スタッフが探した「手つなぎゴール」に言及した過去の出版物の記事が紹介され、この話がいつから存在していたか調べていたが、時系列が順不同で流れが分かりにくい、ということで時系列順に整理。

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『たまむすび』調べ「手つなぎゴール」の歴史
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1994年 愛知県豊川市の33歳女性の体験談メール「小学生の時、校長先生の方針で競争はほぼ禁止になり、『手をつないで』ではないものの、ゴール直前でストップし、全員が揃ったところで『せーのっ』でゴールさせられた記憶があります」

1997年2月17日 朝日新聞朝刊「教育会で広く読まれている専門誌の最近号で、ある大手企業の会長が人から聞いた話として、~全員手をつないでゴールインさせた」

2001年7月号 雑誌『ミセス』 重松清コラム「今どきの運動会は、~みんなで手をつないで走るかけっこ」

2002年2月26日 日本経済新聞朝刊 ソニー副会長森尾稔氏のコラム

2002年8月22日9月4日合併号 雑誌「sapio」 小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言 12』第173章 「反米という作法」「運動会のかけっこは、横一列 手をつないでゴール」

2003年10月2日 日本経済新聞夕刊 サントリー相談役津田和明氏のコラム「一部の小学校では、ゴール直前でもう一度横一列に並ばせてからゴールさせていた」

2004年 雑誌『エコノミスト』 和田秀樹氏「酷い時は運動会の徒競走でさえ手をつないでゴールインさせる」

2005年 小林よしのり『新・ゴーマニズム宣言 15』第225章「格差社会とは何か?」「運動会で横一列でゴールさせられる」

2005年10月 雑誌『エコノミスト』 和田秀樹氏「手をつないでゴールイン~その現場を見たものはいない」

2006年10月15日 朝日新聞コラム高橋庄太郎「順位つけぬ運動会」風聞の先に「伝聞の形でかなり広まったらしい」http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/sava95/20061123/p2

2006年11月17日号 週刊朝日 内館牧子コラム「昨今の手をつないでゴールという運動会」

2006年11月21日 第一次安倍内閣での国会質疑。安倍総理らの答弁。「よく結果平等の典型的な例として、例えば徒競走をして、最後は全員が手をつないでゴールするということが実際に行われていたということでございますが、」「今のその徒競走の例については、私はたしか新聞等で読んだ記憶がありますが、現場でそれを目撃したということではございません」参議院会議録情報 第165回国会 教育基本法に関する特別委員会 第1号http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/165/0091/16511220091001c.html

実は以前にも「手つなぎゴール」検証記事が書かれていて話題になったことがあった

この運動会での「手つなぎゴール」の指導というものは、実は随分前から疑われていた。はてなブックマーク等で調べると、検証記事が人気エントリにもなっている。

また、教育評論家の森口朗氏は、東京都での教育現場経験から、「手つなぎゴール」は都市伝説である、と2005年の著書に書いている。Amazon.co.jp: 戦後教育で失われたもの (新潮新書)の BCKTさんのレビューhttp://www.amazon.co.jp/review/R1CMBA8AEDMNMD/

実は、運動会でリボンなどを与えて順位を明確にする学校は少数派だ。東京都小学校体育連盟の調査(1997年)では、都内の小学校の約8割は、運動会で子どもたちの順位をつけないようにしている。ゴール前で手をつないで一緒にテープを切らせたり、足の遅い子には距離の短いコースを走らせるなどの工夫もしている。

2003年10月13日の読売新聞記事。ネット掲載もされ『教育新世紀 / YOMIURI ON-LINE 「順位づけ」継続求める声多く』反響を呼んだ。

この1997年の東京都小学校体育連盟の調査は他でも引用されていたという。

もっと前には共産党が部落解放同盟と絡めて「手つなぎゴール」について国会で委員会質問したことも

「手つなぎゴール」は国会質問でもたびたび取り上げられているが、最初に取り上げたのは何と日本共産党だった。

1998年9月24日の第143回国会・文教科学委員会で、日本共産党の林紀子参院議員(当時)が、部落解放同盟による教育への介入について問題提起として、広島県の学校では「運動会で順位を付けるのは差別だから、皆で手をつないでゴールしようなんてことが行われている」という事例を批判的に挙げていた。

○林紀子君
 この要覧とか書いてあるものだけではなくて、この書いてあることが実際の教育に移される、実践されるとどういうことになるのか。私が知り得ている部分というのはまだほんの一部だと思うんですけれども、こんなことがあるというのも、ついでにと言ってはなんですが、御紹介させていただきたいと思うんです。

 まず、運動会なんですけれども、これは三次、庄原、福山といった市の小学校。徒競走、駆けっこというのがありますよね。あれでは一等、二等と順番をつけるのは差別だ、みんなが一緒に手をつないでゴールしましょう。こんなばかばかしいことが大まじめで行われているんです。この問題だったらまだばかばかしいで済むかなと思うんですけれども、それよりもっと深刻なことが行われているわけなんです。

部落問題雑誌と「手つなぎゴール」

この「手つなぎゴール」の話。共産党が部落解放同盟に絡めて質疑しているように、同和問題とも関わっているのだろうか。

さらに検索してみたら、1990年出版の部落問題研究所が発行してる『部落』第42巻に、「手つなぎゴール」の話が。ただし「実際にあった」という話ではないが。

44 ページ
だつたら運動会はどうすればよいのでしょうか。ゴ—ルに手をつないで横一列で入るのでしようか。日常の保育にもこれらのことで支障のあった町職労保育部は、本来の保育ができるようになり今、元気づいています。学校用務員についても、事務、用務貝部会で ...

これは、まさに「手つなぎゴール」の話。
実際に運動会で行われているという文章ではなく、被差別部落団体による要求に対し、「だったら手を繋いで横一列にゴールすれば満足なのか」と主張するもののようだ。小学校ではなく保育園の話のようだが。

『部落』第42巻は、近所の図書館にもなく前後の文脈は未確認。

ただ、Googleブック検索で可能な限り、前段を調べてみると、以下のような文章があり、そこから「だつたら運動会はどうすればよいのでしょうか。ゴ—ルに手をつないで横一列で入るのでしようか」の前段の内容を類推。

44 ページ
ていた保育所等は平常どおりの保育になり、父母への負担もかからなくなりました。町職労保育部は町同敉加入時に随分泣かされてきたようです。各種学習会等の報告書作成のため日常保育ができないとか、小学校に入学してもおしっこをもらす子がいるのは ...

この『部落』を出版した部落問題研究所は、Wikipediaによると、部落解放同盟とは対立関係にあり、日本共産党と協力関係にある団体とのこと。

九州では1990年前後に「手つなぎゴール」が行われていたという新聞記事

「差別につながる」と、運動会のかけっこで順位を付けない。手をつなぎみんなでゴールする—。

 一九八〇年代から九〇年代にかけ、九州の小中学校でそんな現象が起きた。その「思想」は今も一部引き継がれている。

2005年12月29日 西日本新聞朝刊記事。
「そんな現象が起きた」の中に、「手をつなぎみんなでゴールする」がある。

ただし、特にその後の文章で「手をつなぎみんなでゴール」の詳細は書かれていない。

2000年前後の保守系雑誌・機関誌に「手つなぎゴール」批判

[Sapio, 第 10 巻、第 8~14 号 1998年]
130 ページ
のはどうしてでしょう

たけし 子供のサッカ—教室で、コーチに贈り物をして自分の子供をレギュラーにするつて話を聞いたけど、最低だね。今、運動会でも競走しないでみんな手をつないで走りましない。じゃあ、大人になってもみんな手をつで、全員が東大に入って、全員が高級官僚になれるかっていえば、そんなわけない。必ず選択されるわけでね。そういう勝負の联は子供のうちから知つておかないだと思うね。親が「うちの子がかわいそう」なんていつても、そういう子たちはいざ本当の勝負のときには上がれない。外国の選手みてると、この人たちはもつと厳しいところで生きているな、つて思うもの。

未確認ながら、小学館『Sapio』別冊『Sports SAPIO ワールドカップ特集号』(1998年)での、ビートたけしとラモス瑠偉の対談記事のようだ。

「今、運動会でも競走しないでみんな手をつないで走りましない。」

1998年の教育 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/1998%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%95%99%E8%82%B2

[日経ビジネス 第 1048~1055 号 2000年]
403 ページ
こんな「甘えの構造」の積み重ねが、今の教育の; ^を招いたのだと思レ、ます。孫力《通っていた幼稚園の運動会の徒競走では、園児たちはゴール前で横に並び仲良く手をつないでゴールしていました。敗者を出さないとの趣旨なのでしようが、無差別悪平等でしか .

日経BP社の雑誌『日経ビジネス』2000年7月3日号(1048号)から2000年8月28日号(1055号)まで。
2000年7月17日号(1050号)辺りの記事に、「孫が通っていた幼稚園の運動会の徒競走では、園児たちはゴール前で横に並び仲良く手をつないでゴールしていました」とある。
幼稚園で行っていたのを実際に見た、という記事となっているようだ。誰の記事なのか、原本未確認。

[正論 第 10~12 号 2000年]

190 ページ
「競走」を忌避する教育 える一部教師の提唱で、競走などを廃止したり、廃止しなくてもスタートラインに差をつけたり、速い子をゴール前でわざわざ立ち止まらせて、遅い子とお手々つないでゴールインといった馬鹿げた運動会をやっている所があるが、この保育

産経新聞出版の雑誌『正論』。 Googleブック検索では文章が崩れているが、修正。原本未確認。前文を調べると、当時話題だった品川区立中延保育園での運動会廃止問題に絡めたコラムっぽい。

日本共産党品川区議団 -区立保育園の運動会廃止問題-
http://www.jcp-shinagawa.com/report/08/20001020_01.htm

191ページには「勉強のできる子どももいれば駆けつこの得意な子もいる。それぞれの特質を認めてやることこそ「個性の尊重」ではないのか。それを「お手々つないでゴ1 ルイン」を強制するとは、」ともある

[月刊自由民主 第 580~585 号 2001年]
49 ページ
した平等ということ、公平ということをあまりにも強く意識しすぎたからです。したがって、ぼ〃の競争で、九十パまでは突力で走らせ、^後はお手々をつないで一緒にゴールするようなことになつてしまった。私が子供ころには、優等赏があり、努力賞があり、運動会で

自民党の機関誌『月刊自由民主』2001年。 Googleブック検索では文章が崩れているが修正。「手つなぎゴール」批判の論文が書かれているのかと。自民党議員が国会質問に「手つなぎゴール」を使い始めた年。

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