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この記事は私がまとめました

近年、専門的なトランスジェンダー外来を設置する医療機関・クリニックにより、トランスジェンダーやGID性同一性障害の治療が受けやすくなったといわれる。しかし、そのようにトランスジェンダー外来での受診にいたったとしても、そこではどのような治療が受けられるのか、詳しくは知られていないのが現状だ。そこで、そのようなトランスジェンダーやGID性同一性障害の治療の中心をなす、ホルモン治療の選択肢とその実際について、日本精神神経学会のガイドラインを踏まえて、編集部がまとめてみた。
(医学監修)九州ベテルクリニック福岡トランスジェンダー外来
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意外に知らないGID性同一性障害ガイドラインとホルモン治療の実際

まず、トランスジェンダー・GID性同一性障害に関わる多くのひとが耳にする「ガイドライン」について、そのガイドライン上でのホルモン治療はどのように定められているのか。編集部ではトランスジェンダー外来の担当医に話を聞いた。

トランスジェンダー外来担当医「ホルモン療法の臨床について、使用すべき治療薬や用法・用量について、ガイドラインは具体的には定めていません。ガイドライン上の表現としては、「MTFの場合,エストロゲン製剤やゲスタゲン製剤の投与を行う。FTM では,アンドロゲン製剤の投与を行う。」と記載があるのみで、どの薬剤、どの製品をどういったタイミングでどういった期間においてどのように投与する、といった具体的な基準は定められていないのです。」

トランスジェンダー・GID性同一性障害の「ガイドライン」という響きから、編集部記者は、てっきりどういう薬をどれくらいの量を1日何回使う、というようなことがこと細かに網羅されているのだと思っていた。しかし、ガイドラインの実際の記載とはそういうものではないらしい。では、実際の治療は、具体的にはどのように行なわれるのか、さらに聞いてみた。

トランスジェンダー外来担当医「ガイドラインでは、「MTF」の場合エストロゲン製剤等、「FTM」の場合アンドロゲン製剤の投与を行なう、となっていますが、これらの製剤が中心的に使われる治療分野は、男女更年期障害の分野です。トランスジェンダー・GID性同一性障害の方の場合、性自認に対して、それに適合した内分泌を欠いた状態にあると観念できますので、以後の治療は更年期障害の治療に準じて行い、それを基に個別具体的な事情に応じて適宜薬剤の変更と用法用量の調整を行なっていきます。ただ、日本におけるこれらホルモン製剤の選択肢は多くはなく、FTMの場合は男性ホルモン剤メチルテストステロンと蛋白同化剤メテノロンの2種、MTFの場合結合型エストロゲンとエストラジオールの2種が、経口剤及び注射剤における事実上の選択肢の全てです。」

このように日本国内でのトランスジェンダーGID性同一性障害のためのホルモン治療というのは、その実際の選択肢はまだまだ限られているようだ。そこで、編集部では、海外のトランスジェンダーGID性同一性障害のために使われている薬や製品の種類について海外の研究医にも意見を聞いてみた。

すると、海外ではスポーツ界でのステロイド使用が日本よりもずっと広く浸透していることもあり、WADA(世界アンチドーピング機構)の禁止リストに挙げられている薬剤のほとんどが、トランスジェンダーGID性同一性障害のためのホルモン治療で実際に使われているのだという。

いや、むしろ、更年期障害やトランスジェンダーGID性同一性障害の治療といった正当な目的で使われてきた薬が、スポーツ界でのパフォーマンス向上目的に流用されてきた歴史が、その結果としてそれらの正当なホルモン治療薬がWADA(世界アンチドーピング機構)の禁止リストに挙げられた、というべきであろう。

さらに、海外のトランスジェンダーGID性同一性障害のホルモン治療では、月経生理を止めるためのGnRH療法、GnRH偽閉経療法、乳がんにおけるホルモン治療で使用する薬剤を応用した抗エストロゲン治療といった選択肢も最先端の治療の選択肢もあるというのだ。

トランスジェンダー研究医「GnRH療法はFTM/MTF男女いずれにも応用できる治療法です。この治療法は、従来のホルモン療法とは異なり、単に性自認に適合したホルモンを外的に投与しつづけるのではなく、ホルモンの分泌指令を司る最上位の器官である脳下垂体に直接働きかけて、性自認に適合しない自己の内分泌を遮断するという方法です。」

日本薬局方と保険適応の縛り

このように、海外でのトランスジェンダーGID性同一性障害のホルモン治療の選択肢はもっと幅広く、自己の内分泌を性自認に合わせてコントロールする方法まである。このような海外での最先端の研究成果が、なぜ日本のトランスジェンダーGID性同一性障害のホルモン治療の現場では生かされないのか。

トランスジェンダー外来担当医「それは、ホルモン療法を保険適応の元で受ける場合、その治療で使用できる薬剤は日本薬局方に登載されているものを、その適応の通りに使用しなければならない、という規則があるからです。ただ、海外のGnRH療法のような治療については、日本では研究実績も臨床実績も、いずれも蓄積が不充分であるということも事実です。」

だが希望はある~ホルモン療法の選択肢の充実を目指して

いくつかの国内のトランスジェンダー専門外来や大学病院では、自費診療扱いにはなるものの、このようなGnRH療法(MTF)、GnRH偽閉経療法(FTM)、抗エストロゲン療法(FTM)に取り組んでいる医療機関もあるというのだ。トランスジェンダーGID治療のさらなる発展に期待したい。

GnRH療法・抗エストロゲン療法・抗アンドロゲン療法等の臨床応用に取り組んでいる医療機関

(ホルモン療法の対応状況)
標準的なFTM/MTFホルモン療法
成人FTMのGnRH療法(相談対応可・治療実施可)
成人MTFのGnRH療法(相談対応可・治療実施可)
FTMの抗エストロゲン療法(相談対応可・治療実施可)
MTFの抗アンドロゲン抗テストステロン療法(相談対応可・治療実施可)

(ホルモン療法の対応状況)
標準的なFTM/MTFホルモン療法
成人FTMのGnRH療法(相談対応可)
成人MTFのGnRH療法(相談対応可)
FTMの抗エストロゲン療法(相談対応可)

大阪医科大学附属病院精神神経科(関西 大阪)

(小児対象)
大阪医科大学附属病院精神神経科
GnRHによる治療は小児のみ対象 
治療実施までの平均期間6ヶ月~1年
月1回注射・健康保険適外
費用 1回約3万5千円
回数の制限 月に1回まで
http://www.psyom.com
連絡先:大阪府高槻市大学町2番7号(〒569-8686) 電話072-683-1221(代表)

(ホルモン療法の対応状況)
標準的なFTM/MTFホルモン療法
成人FTMのGnRH療法(相談対応可)
成人MTFのGnRH療法(相談対応可)

(ホルモン療法の対応状況)
標準的なFTM/MTFホルモン療法
FTMの抗エストロゲン療法(相談対応可・治療実施可)

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