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【読書感想文】 太宰治 人間失格 【夏休みの宿題】

読書感想文といえば、夏休みの定番の宿題ですね。きっと簡単に済まそうとネットで検索して全文丸写しなんていう暴挙に出る学生もいることでしょう。ただ、そんなの宿題としての意味が全く無い。まずは一読して欲しいけど、内容と私の主観で感じたポイントを書いてみたいと思う。参考になったら幸いです。

更新日: 2017年04月01日

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この記事は私がまとめました

まずはザックリとした内容を手短に

あまりにも有名な作品なので、一度は目を通しておいても損は無いです。私は高校生の時に、通っていた塾の講師の薦めで一気読みしました。読み終わった後の焦燥感の中に、拙い考えしかもっていない自分の甘さを実感しました。ただ、この作品の主人公(太宰治本人であるとも言われているが)が女性にモテる様子は、全く共感できませんでした(笑)

内容は以下のとおり。

主人公である『大庭葉蔵』の幼少期の回想から始まる。自らの感情を悟られることに羞恥心を感じた葉蔵は、それを悟られないために道化(ピエロのような役割)になるという手段をとってきた。今でいうキャラクターを演じているようなものだろうか。学友や周りの大人の前ではもちろん、家族の前でもそうすることで楽な気持ちになった。
しかしながら学生時代に、貧弱で学力も劣っているクラスメートの竹一に、葉蔵が道化をするのは自然なものではなく、わざと、演技であると見破られる。『世界が一瞬にして地獄の業火に包まれて燃え上がるのを眼前に見るような心地』と書かれているように、それは葉蔵にとって耐え難い恥だったようだ。

話は進み、葉蔵は東京へ出る。酒と煙草に溺れた葉蔵。そして3人の女との関係が綴られていく。

一人目はカフェで出会った女給(今で言うホステス)「ツネ子」。世の中への恐怖、金、女、学業に疲れ果て、そんな劣悪な精神状態からかツネ子と鎌倉の海に飛び込む心中を計る。しかし葉蔵だけが生き残ってしまう。自分だけが助かり、自殺幇助罪に問われるが、父親と取引のある男が引受人となり釈放される。葉蔵が気づいた時には、道化であることが意識してではなく、性(さが)になってしまっていた。

二人目は雑誌記者のシヅ子。心中から一人だけ生き残った葉蔵はシヅ子の家に転がり込みます。今でいうと、ヒモ生活です。葉蔵の書く漫画が売れ始めるも、シヅ子が娘シゲ子二人が幸福そうに暮らす姿を見て、葉蔵は自分が二人を不幸にするのではという不安を覚え、家を出ます。

三人目は人を疑うことを知らない無垢なヨシ子。人柄に惹かれ葉蔵はヨシ子と結婚します。束の間ですが、結婚生活はこの小説で唯一の幸せな期間です。しかし、ヨシ子はその人を疑わないという性格のせいで、家を出入りしていた男に無理やり犯されてしまいます。ヨシ子の信頼という美質が汚されて、葉蔵はヨシ子が隠し持っていた致死量の睡眠薬を飲み自殺を図ります。しかし死にきれず、それから葉蔵はアルコール依存症になり挙句の果てにはモルヒネ中毒になります。
最終的には脳病院へ入院させられて狂人のレッテルを貼られ、自分は人間を失格したのだと悟ります
3カ月脳病院で過ごしたのち、長兄が迎えに来て故郷の近くで療養生活をします。廃人同然となり不幸も幸福もなく、ただ時間は過ぎていくだけなのだと最後に語り、この小説はバッドエンドを迎えるのです。

自分の弱い部分を隠して生きる、救いようのない男にみえるが・・・

救われるところは一つも無いこの物語が、なぜこんなにもベストセラーとなり、太宰治の代表作と言っても過言ではないモノになっているのか。それは読了した人が口を揃えて言う、この一言に込められているような気がします。

『自分の救いようの無い一面が、この作品の中にあるので共感してしまう』

人はそれぞれ自分の『キャラクター』を定めて生きている。それを『演じている』と表現したのが太宰治だった。自分を客観的に見過ぎた結果、二重人格のような雰囲気を醸し出していたのだろう。陰のある男はモテるというがそれはイケメンに限るわけで、主人公の大庭葉蔵はやはり男前だったのだと想像に容易い。

感想文のポイントを2つに絞ってみました

1.誘惑や欲望が支配する普遍を思わせる社会構造
ちょっと学生が読書感想文にするには、この『人間失格』という作品は向いていないかもしれません。酒やタバコやドラッグが頻繁に出てくるのも過激であるし、男と女の理想的な付き合い方は作中にほとんど登場しません。ただ、夢や理想を打ち砕くのが現実であるという1点で言えば、そこに現代の日本を見ることができるかもしれません。

反面教師としてこの人間失格という小説を受け取ることで、感想文が成立するかもしれません。喫煙者は現在世界的に批判の的になっているのが現状であり、百害あって一利なしなどと言われています。とはいえ、嗜好品とは本来そういうものです。一部の愛好家に嗜まれる程度でモラルを持って扱われるならば、文句を言う人などいないのです。タバコには常習性があり、一度習慣化すると止められなくなる。なのにも関わらず、一般大衆が手に取りやすい値段で普及させてしまった。そこに問題があったのではないでしょうか。お酒も同様。禁止する必要はないけれど、摂取する以上はそこに限度が伴わなければ、行きつく所まで行ってしまう人が出てくる。

我々は資本主義社会の中で生きている。それが当たり前で、一番優れた社会であるというように教育されている。強いものが勝ち、努力した人が救われる世界。そう言われれば資本主義に疑問を持つ人なんていない。
しかしながら、酒タバコのような誘惑や欲望は自制しなきゃいけない。人生一度きりなんだから自由を謳歌する!なんていう考え方は、まるでアメリカ人そのものだ。それは日本人のあるべき姿では無いと思う。とはいえ誘惑や欲望を否定していると、その先にある社会のルールそのものに疑問を持つようになる。ただ左翼的思想は危険だと、作中でも葉蔵は言っている。クーデターでも起きて社会が劇的に変わるか、それか日本人が一度滅びない限り封建制度復活みたいなことはありえない。

この欲望が溢れた世界に疲れ果ててしまう人は、葉蔵のような闇に入り込みやすいのかもしれません。

2.女性目線で見る葉蔵の魅力
大前提として、私が男であるので女性目線ではこの葉蔵のことは語れない。そこは許していただきたい。
口が堅い男、多くを語らず二面性のある男、道化を演じきれる男、こういう男は女性から見ると魅力的であるようだと、葉蔵自身が語っている。明治後期から昭和初期にかけて、日本男児は面倒臭い男が多かったと思うが、そんな中で優男は珍しかったのか。

『人間失格』の大庭葉蔵という男はどんな人なのか。目を閉じて想像してみる。石田純一のような雰囲気を思い浮かべ、サッカー日本代表だった武田修宏のようなマメな男。『それは大変だったね』と話を聞いてくれる福山雅治。まあそれは言いすぎかもしれないけれど、マメで女性を大事にしてくれて大人な雰囲気を持つイケメンが、自信なさげに佇んでいたら女性は助けてあげたくなっちゃうんでしょう。逆にそんな雰囲気の女性がいたら、男としたらすぐに救いの手を差し伸べるでしょうから。
女性は自分が『若さ』という武器を持っている時は、ギラギラとしていてカリスマ的な男に魅力を感じるかもしれませんが、落ち着いてくるに従って家庭的は男に魅力を感じませんか?

葉蔵のもう一つの魅力。それは破滅的な思想を心の奥底に隠しているからじゃないでしょうか。衝動的な行動もあるんでしょうけれど、行く末を悲観したり、不貞を目の当たりにしてしまったくらいのことで自殺を躊躇うことなくすることが、何か尖った刃物のような危うさのような魅力なんだと思ったりします。自殺に対するというだけでなく、葉蔵には行動力もあったんじゃないかな。引っ張っていくような強引さではなく、いざという時に素早く動く的確に動ける、そんな動物的な。

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