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アイルランド、カトリック教会が運営していた児童施設の跡地から、大量の子供の遺体が見つかった。

西部ゴールウェイの施設跡地に大勢の子供たちの遺体が埋められていると、2014年には指摘されていました。そのときは指摘した人々はただ反発を買い、罵倒の言葉を浴びせられたのですが、2017年にようやく、政府が事実と確認しました。埋められていたのは誰かの子であり誰かのきょうだいである子供たちです。

更新日: 2017年03月08日

nofrillsさん

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アイルランド共和国では、国家 (state) と教会 (church) の関係が非常に深く、教会のやっていることには何らチェックが入らない時期があった。

20世紀前半に、(現在の「北アイルランド」、つまり北部6州と切り離された上で)段階的に英国の支配からの独立を実現してきた、現在のアイルランド共和国(南部26州)では、教会(カトリック教会)の力が大変に大きかった。

字数にも時間にも余裕がないので雑な説明をするが(正確性を犠牲にしていることはお断りしておく)、教会はアイルランド各地で、親が何らかの事情で養育できない子供たちのための施設を運営するなどしていたが、その施設内で起きていることは、まさに「密室内での出来事」となっていた。暴力、強制労働といった形の虐待、性的行為の強要といった性虐待が横行していた。

特に性虐待については、2009年にようやく、アイルランド共和国政府の公的な調査の結果として報告書がまとめられ、1930年代から90年代にかけて、どのようなことがあったかが白日のもとにさらされた(ライアン報告書)。詳細は下記参照。
https://en.wikipedia.org/wiki/Roman_Catholic_Church_sexual_abuse_scandal_in_Ireland
https://en.wikipedia.org/wiki/Commission_to_Inquire_into_Child_Abuse

Des witnessed sexual violence in Artane but did not encounter it directly himself. “I remember seeing a Brother on the landing and he was spotting the boys,” he says. “They carefully chose their victims. You wouldn’t see the boys going into the Brothers’ room, but sometimes you’d see them running out, screaming. They chose the vulnerable ones.”

上の画像の出典、2009年のライアン報告書公表時のアイリッシュ・エグザミナー紙の記事より。虐待が行なわれていた施設にいたデズ(デズモンド)という男性が、自分自身は性的な虐待は受けなかったが、施設内で目撃したことを回想して語っている。施設を運営していたのは修道会で、施設スタッフはそこに属するブラザーだが、そういうブラザーが「注意深く被害者を選んでいた。子供がブラザーの部屋に入っていくところは見なかったが、叫び声を上げて駆け出してくるのを見ることがあった。反撃してこなさそうな子を選んでいた」

そういった「教会の悪行」を明らかにすべきという声が高まるきっかけとなった映画のひとつ、『マグダレンの祈り』(2002年)は、ダブリン市内にある女子修道会運営のマグダレン洗濯所(日本では「マグダレン修道院」とも)で何があったかを語っていた。

マグダレン洗濯所については既に過去に書いているので、それをご参照いただきたい。
https://matome.naver.jp/odai/2136008460559764201

アイルランドに設営された避難所の存在は、1993年に、ダブリンを拠点とするある女子修道会が修道院の一部を不動産業者に売却するまでは、あまりよく知られていなかった。(このときに)敷地内にあった墓標もない墓に埋められていた収容者155人の遺体が(偶然に)掘り起こされたのだ。(発見された遺体は)1人を除いて火葬され、Glasnevin墓苑の集団墓地に再埋葬された。このことがきっかけでスキャンダルとなり、ダブリンでもアイルランド全体でもニュースとなった

上記リンクの「まとめ」より。

1993年、The Sisters of Our Lady of Charity(修道会)は、ダブリンのDrumcondra(北部郊外。東京で言うと北千住くらいの都心からの距離か)にあるハイ・パーク修道院の土地を開発業者に売却した。その土地に墓地が含まれており、133人の女性の遺骸が発見された。その多くは、洗濯場という地獄で賃金の支払いも一切受けずに何年も、閉じ込められていた人々だった。国の環境省は、遺体の掘り起しと近くにあるグラスネヴィン墓地での火葬を許可した。

同上

棺の移送作業に当たっていた作業員たちは、さらに22体の遺体を発見した。その多くが、掘り起こされたとき、足首やひじ、手首や手などに骨折治療のギプスを装着したままだった。1体は、首がなかった。何故、これらの遺骸がギプスをつけたままだったのかは想像に難くない。というのは、この女性たちはカトリック教会の許諾もなく性的関係を結んだことがあると判明したために、死ぬまで懲罰的に下僕として働かされていたのであるから

同上

この22人の女性たちの遺骸が発見されたとき、環境省は単に別途(改葬の)許可証を出しただけで、この女性たちが誰であるかについての調査は開始しなかった、とされている。死亡記録を怠ることは刑法上の違法行為である。しかしながら、最初に遺骸が見つかった133人のうち死亡証明書が存在していたのは75人にすぎなかった。またこの場所で見つかった155人の遺体は別の場所に移され、1体を除いてすべて火葬された。こうなってしまうと、その死亡についての調査を行なう上での身元の確定は不可能である

同上。以上、もともとの出典はアイルランドのブログ。

そして、ライアン報告書が出てから8年、マグダレン洗濯所での人権侵害について政府が謝罪してから4年の2017年2月……

北アイルランドの自治議会選挙開票と同時進行で、アイルランド共和国でまた、カトリック教会運営施設の敷地から人間の骸がたくさん見つかったというニュース。以前もこの施設には赤ん坊がたくさん埋められていると言われてて、保守系の人たちが断言調で否定してて、そのことも合わせて話題になってる。

また、ひどい話が明るみに出たのだ。

それだけではない。過去においてその「ひどい話」を明るみに出そうとしていた人を、メディアで発言できるだけの立場にある人びとが、よってたかって叩いていたのだ。

Even though it's confirmation of what all the available evidence was suggesting, I feel physically ill. #Tuambabies

「入手可能だった証拠が示していたことが、事実だと確認されたにすぎないのだが、本当に吐きそうだ。 #TuamBabies」

ツイート主はリムリックの歴史家で、そんなにやわな神経の人ではない。

My June 2014 blog post revealed existence of extensive sewage vaults at #TuamBabies site #800deadbabies ln.is/tumblr.com/jOd…

2014年6月に、ここに遺体が埋まっている可能性を指摘した人のブログ記事。今日のニュースで改めてフィードされている。
http://izzykamikaze.tumblr.com/post/89770303451/vaults-under-tuambabies-site-are-part-of-sewage

ここで前提知識として、アイルランドのカトリック教会が一般社会でどのようなことを説いていたか。

この画像は、教会の児童虐待などの問題が出るたびにTwitterにがんがん流れてくるもの。そう遠くない時代(おそらく1970年代か80年代)の学校の教科書で、「神様が一番愛するのは次のうちどれか」として、低いところから「植物」、「動物」、「洗礼を受けていない赤ん坊」、「洗礼を受けた赤ん坊」。

生まれてほどない赤ん坊に洗礼を受けさせることを否定するプロテスタントの宗派の人々の信仰などは、もちろん、アイルランドは国家として基本的に全否定だった。

北アイルランドでプロテスタントの間でカトリックへの拒否感が強いのは、こういう文脈もある(単なる「支配階級」、「差別」の話では語れないものがたくさんある)。

The established facts were that 796 deaths had been registered during the 36 years that the home was open; that this represented a mortality rate several times the national average, that no place of burial was known for most of these and that eyewitnesses reported that there were burials at the site, although the number could not be established.

2014年6月の段階ではっきりわかっていた事実。これが政府によって事実と認められたのが、2017年3月だ。それまでは、このような指摘をする人々は、いわれのない中傷にさらされた。

「確定した事実は、施設が運営されていた36年の間に、796人の死亡が届け出られているということ。この数値から導き出される死亡率は、全国平均の何倍にもなること、死者の大半について埋葬地(墓)がわからないということ、そして目撃者の話では、人数はわからないが施設敷地に埋葬されているということ」

At this point, only two eyewitnesses were reported. Two young boys...had lifted a slab on the site when playing there in the 1970’s. This exposed a pit “filled to the top with bones.” It was apparently assumed that the bones were those of “famine victims.” A priest was sent for, some prayers said and the grave was closed again. Sometime after that, a local couple began to tend the site as a memorial... But when these boys were playing there, it was an untended wilderness...

「この時点では、目撃者は2人だけだった。1970年代に2人の少年(字数制限のため削ったが、原文には名前が出ている)がこの敷地で遊んでいて、そこにあった石版を持ち上げてみたところ、その下の空間は『骨で一杯になっていた』というのだ。当時、これは(19世紀半ばの)『ジャガイモ飢饉での犠牲者たち』の遺骨と考えられ、聖職者が派遣されて祈りが捧げられ、蓋はまた閉められた。その少しあと、地元の夫婦がこの敷地の手入れをするようにいなったが、少年たちが遊んでいたころは、子供でもなければ誰も行きたがらないような荒れ放題の一角だった」

人が寄り付かなくなった古い建物の廃墟や、草ぼうぼうの空き地を遊び場にするのは、どこの子供もやることで、アイルランドのこの子供たちもそうしていたのだろう。

そして、Izzy氏のブログにある通り、アイルランドでは19世紀にジャガイモ飢饉ということがあったし(それ以外にもいろいろと苛烈な歴史もあって)、地面から人骨が出てきた場合、遠い過去のこととみなすのが普通だったのだろう。

だがこの少年たちが発見したのは、遠い昔の気の毒な人々の骨ではなく、十数年前まで存続していた施設で人間扱いされなかった子供たちの骨だったのだ。

※この写真は本文とは無関係。

Salient reminder from 2014 of how the #tuambabies story was exposed by a diligent local historian. irishtimes.com/news/social-af…

2014年6月、上のIzzy Kamikaze氏(筆名)と一緒に疑惑を公にした地元の歴史家についてのアイリッシュ・タイムズ記事。

Peter Mulryan and his sister Marian were born in Tuam Mother & Baby Home. He is still searching for her resting pl… twitter.com/i/web/status/8…

「ピーターと妹のマリアンは、テュアムの母子院で生まれた。ピーターは今もなお、妹の埋められた場所を探している」

リンク先は映像。URLからどうぞ。

※Tuamは「チュアム」とも。本稿では「テュアム」の表記を用いる。

▼テュアム (Tuam) という町の、母子収容施設の赤ん坊たち

The Bon Secours Mother and Baby Home, St. Mary's Mother and Baby Home, or simply The Home, was a maternity home for unmarried mothers and their children that operated between 1925 and 1961 in Tuam, Ireland. It was run by the Bon Secours religious order. From its construction in the mid-19th century until the early 20th century, what became The Home's building served as a workhouse for the poor.

施設は19世紀半ばに建設され、20世紀初頭までは貧困層のためのワークハウスとして用いられていた。そこが未婚のまま子を産んだ母親とその子供の施設(母子院)となったのは1925年で、1961年まで続いた。運営していたのはthe Bon Secours修道会。

A mass grave containing the remains of babies and children has been discovered at the orphanage where it has been alleged up to 800 died, government-appointed investigators said. Excavations at the site of the former Bon Secours Mother and Baby Home in Tuam, County Galway, have uncovered an underground structure divided into 20 chambers containing “significant quantities of human remains”, the judge-led mother and baby homes commission said

2017年3月に政府の調査委員会が行なった発表より(詳細後述)。

現場の様子。

塀と門は残っているが、建物は取り壊されて更地になっている。

ここを掘り返して行なった調査の結果として、2017年3月3日に、相当数の人骨(子供のもの)が発見されたと発表されたのだ。

これらの写真が撮影されたのは、2014年6月のこと。最初に、地元の歴史家が「たくさんの遺体が埋まっている」と報告したときの取材で、敷地に作られたメモリアル(記念碑)などが撮影された。

夏だから緑がうっそうと濃くて、小さな草花がたくさん咲いている。

2014年6月の写真。

誰かの子であり、誰かのきょうだいである子供たちのために、花を手向ける人々。

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作った「まとめ」の一覧は:
http://matome.naver.jp/odai/2133787881446274501

※基本的に、ログを取ってるのであって、「まとめている」のではありません。