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頭部に埋め込んだアンテナで「色を聴く」男と、サイボーグの未来

生まれつき色覚障害を背負いながら、頭部に“色を聴く”ためのデバイスを埋め込み自らそのハンディを克服したニール・ハービソン氏。彼はこの色の溢れる世界を、私たちの想像を超える感覚で“見る“ことができるようです。

更新日: 2017年04月23日

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頭部から生えたアンテナで「色を感じる」男

1984年7月27日、イギリス人の父とスペイン人の母の間に生まれ、スペイン・カタロニアで育った男性。
現在はイギリスで「音と色彩」をテーマにした活動を続けているアーティストであり、英国政府公認のサイボーグでもある。

サイボーグの名はNeil Harbisson(ニール・ハービソン)。完全な色盲として生まれ、11歳まで“白黒”の世界で育った。

ハービソンは34歳。「1色覚」というまれな先天異常で、色をまったく認識できない。そんな彼の世界を変えたのが、黒いアンテナだ。後頭部から突き出て、頭上を通り、額の上あたりまで延びている。

信号機や標識の色が認識できないため道路もうかつには歩けず、それ以上にハービソンさんにとっては、「世界の美しさ」が感じられないことが本当に悲しかったという。

自分の見ている世界が他の人とは異なることに気づいてからは、彼は当然のようにそのことについて悩みを抱えるようになります。

2003年にダーティントン芸術大学で行われたある講義を受けたことをきっかけに、「音を聞く」装置の開発に乗り出す。

ニール・ハービソン氏の凄いところは、自身の先天的な障害を誰もやったことがない方法で解決しようとし、実際にそれをやり遂げたこと。

人工頭脳学者アダム・モンタンドン氏と共同で「アイボーグ」の制作に成功。その結果、彼はこれまで誰もやったことのないような方法で色を感じ取ることができるようになった。

世界初、英国政府公認の「サイボーグ」

ニール・ハービソン氏の頭部に装着された色を聴くためのデバイス「アイボーグ」。
この頭のアンテナは、正式に彼の身体の一部として認められています。

英国のWEBマガジン「dezeen」が11月3日に伝えたところによると、そんなハービソンさんが、デバイスを装着したままの姿でパスポート上の写真に載ることを、英国政府が初めて認可したとして話題になっている。

パスポートを所持している人なら誰でも、今までの常識ではこんなことが認められるはずはないと思うだろう。Googleグラスなど今何かと話題のウェアラブル・デバイスも、それを装着したままの姿をパスポート写真として認めてもらうことなど不可能だ。

通常、ウェアラブル・デバイスを装着したままの写真がパスポートに使えることはあり得ません。
しかし、ニール・ハービソン氏の場合は“身体の一部”として、アンテナを装着した姿が公式に認められているのです。

彼が“色を聴く”ためのアンテナ「アイボーグ」とは

ニール・ハービソン氏は頭部のアンテナ「アイボーグ」で捉えた色を音に変換し、音高で色を見分けることができる。

2004年に装置が完成し、現在まで機器の調整や部品交換などをする以外は、10年以上も付けっぱなしにしているそうだ。

「アイボーグ」のコンセプトとは、周囲の色彩を、音波に変換して装着者の聴覚へと届けるためのデバイスだ。

チョウチンアンコウの様なアンテナが捉えた光の波長を「周波数の音」へと変換、後頭部に埋め込んだチップからの骨伝導を通し「色を聞いて感じている」。つまり、音の高低差で何色かを判別しているのだ。

色とは、そもそも光の「波」としての性質からくる現象のひとつです。
彼は頭部のアンテナを通して色の違いによる波長の違いを音に変換することで“色を聴いている”のです。

色と波長を表した図。
人間が眼で見ることのできる最も短い波長は「紫色」、それより短い波長は「紫外線」。
逆に最も長い波長は「赤」で、それ以上は「赤外線」と呼ばれ通常の人間には見ることができません。

「サイボーグみたいだな」
ニールはその装置を一発で気に入った。はじめは音と色の名前とを結びつけることに多少の苦労はあったが、そんなことは物の数ではなかった。

生まれて初めて白黒以外の「色の違い」を知ったニール、その世界は360°の広がりを見せてくれた。アイボーグという装置を使って彼が識別できるようになった色数は360色。丸く一周する色相環すべての色を「聞き分けること」が可能になったのだ。

ハービソンさんは、「アイボーグ」を通して聞こえた色彩に対して自然と感情が湧き出てきた瞬間、このデバイスがすでに自分の体と同化しているように感じたという。

この装置を装着するようになってから、見る夢までもカラーになったと彼は話しています。

共感覚ではなく、直接的に聴いている。正確に言えば、色の周波数を可聴領域に変換し、変換された音を聴いていることになる。だから、色の違いを認識しているが、色自体が見えいるわけではない。

絶対音感を持つ音楽家が音を色で認識する「共感覚」というものがありますが、彼の場合はアンテナを通して実際に色の周波数を聴いているのであり、通常の共感覚とは異なるものです。

ちなみに彼の後頭部には、「アイボーグ」のバッテリと充電用プラグを差し込むためのUSBに似たコネクターが埋め込まれており、そこから3時間充電することで、通常は3日から4日作動させることが可能なのだという。

人類は科学でどこまで進化する?

ニール・ハービソン氏によるTEDでの講演動画。日本語字幕付き、必見です。

現在では彼は色相環の360色を認識できるらしい。それだけではない。可視光線を超える、紫外線や赤外線までセンサーが認識できるようにしているという。

通常、人間には見えない波長である紫外線や赤外線も音として認識することができるとのこと。

彼がいうように、もはやこれは感覚の補完ではなく、感覚の拡張であり、サイボーグとしての新しい可能性であるといえる。

彼の知覚する世界は、色を音として聞くことによって、さらに広く奥深いものになったのではないだろうか。いつか、彼の感覚が味わえるような機器が販売されることを願う。そうしたら、日常はよりエキサイティングに感じられるのかもしれない。

色覚異常をきっかけに常人以上に拡張されたニール・ハービソン氏の感覚。
彼は人類の未来における“機能拡張”のパイオニアなのかもしれません。

感覚を拡張したニール・ハービソン氏。

彼はこのカラフルなネクタイをどのように聴いているのでしょうか。

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