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保守党がDUPに「閣外協力」を求めている……今、英国で起きようとしていることが、いかに深刻であるか

2017年6月8日の総選挙で微妙な結果を得た英保守党が「閣外協力」を求めている北アイルランド(NI)のDUPという政党は、単なる「地域政党」ではありません。またNIの政党と英国政府が、こういうふうな「協力関係」を作ることは、法的に問題なはずです。最悪、NI和平が危なくなります。大げさではなくマジで。

更新日: 2017年06月12日

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nofrillsさん

以下、日本語圏の報道で「地域政党と閣外協力」などというマイルドな表現で伝えられていることについての詳細である。

英国政治に興味がない人にはちんぷんかんぷんかもしれない。

2017年4月、英国のテリーザ・メイ首相は突然、国会下院(庶民院)の解散・総選挙を宣言した。いよいよ動き出す英国のEU離脱を円滑に進めるため、議会の意思を「EU離脱」でできる限りまとめることが目的だった(簡単に言えば、「EU残留」派の議員を退場させたかったのだ)。保守党のスローガンは「強く安定したリーダーシップ Strong and stable」。そういう政権を作り、Brexitという難局を乗り越えよう、と保守党は訴えた。

当初はメイの保守党の圧勝が予想されていた。しかし、6月8日の投票日が迫るにつれムードが変わってきた。メイがTVでの討論に及び腰だったことは「有権者の厳しい質問に耐えられないのだろう」といった印象につながったし、5月23日(マンチェスター)と6月4日(ロンドン)に相次いだテロの実行犯は、メイが内務大臣だったときに見落としていた過激派だった。

テロ対策を訴えつつ、緊縮財政を理由とする警察の人員削減は待ったなしだという主張も、国民健保(NHS)に関する保守党の政策も、多くの疑問を集めるだけだった。

そうして迎えた6月8日の投票日、投票所の締め切りとほぼ同時に各メディアで告知された出口調査では、メイの保守党が議席数を増やして「強く安定した」政権を作るどころか、単独過半数の維持すらできないと示していた。

代わりに、ダメだダメだと叩かれ続けたジェレミー・コービン党首の労働党が「躍進」と呼べるほどの伸びを示しはしたが、議席数は「労働党の勝ち」には程遠い。開票途中では「連立のやり方しだいではひょっとしたら保守党を凌げるのでは」とも言われたが、最終的にはその可能性もない数字だった。

最終結果は、保守党が317議席、労働党が262議席(定数650)。

保守党は第1党の座は死守したものの、議会は誰も過半数を持たない「ハング・パーラメント」となった。メイは辞任など考えもせず、即座に組閣の手続きに着手した。

前回ハング・パーラメントとなった2010年の選挙(ゴードン・ブラウンの労働党の敗北)では、第1党の保守党(デイヴィッド・キャメロン)が第3党のLibDems(ニック・クレッグ)と連立を組み、議会の過半数を確保して政権運営にあたった。

今回はLDは「どことも連立はしない」と明言しており、保守党が単独で、議会の過半数を有さないまま組閣する「マイノリティ・ガヴァメント」になると思われた。

メイが言っていた「強く安定した政権」にはならないだろうが、それが民意だ。

ああ、おもしろい選挙だった。コービンがんばった。労働党は次だね……そう言って終われるはずだった。

しかし事態は一瞬で暗転した。

誰の発想なのか、はたまた誰かの入れ知恵なのか、メイは素直にマイノリティ・ガヴァメントという道を選択するのではなく、数合わせに動いた。保守党は317議席、下院の定数は650議席、半数は325議席……あと8議席で半数に達する。

8議席以上を持っていて、保守党と連立なり閣外協力なりで関係を持てそうな政党は、ブリテン島にはいない。しかし北アイルランドにはいる。

DUP (the Democratic Unionist Party) だ。今回の選挙でなぜかバカ勝ちしたDUPは、10議席も保有している。

仮に私がテリーザ・メイの立場だったら、と考えてみよう。選挙という賭けに出て大負けして、政敵を喜ばせ、多くの同僚を失職させた。党内からは突き上げが激しい。そんなときに議会の過半数を有さないままの政権運営は不安だ。

しかし現有議席に10議席をプラスできて、過半数を確保できたらどうか。

大変に魅力的な話だ。

DUP、なるほど北アイルランドの「地域政党」だ。しかしBrexitでは利害が一致している。なぜ組むことができない?

……まさに悪夢である。

そしてDUPにとっては、ものっすごいタナボタである。「えっ、いきなり、うちら、主役?」みたいな。

The DUP have confirmed they have given their formal backing to the Conservatives to form a government

最初はさほど大げさな話ではないように聞こえた……んだけどね。「保守党の組閣に反対しませんよ」程度であるように。

I have spoken with the PM. We will enter discussions with the Conservatives to explore how we can help bring stabil… twitter.com/i/web/status/8…

"I have spoken with the PM. We will enter discussions with the Conservatives to explore how we can help bring stability to our nation."

一言でいえば、悪夢ですな。寝て起きたら「何だ、夢か」ってなってないかな。#GE2017 : Theresa May says Tories will work with DUP to proceed with Brexit… twitter.com/i/web/status/8…

May reaches deal with DUP to form government after shock election result theguardian.com/politics/2017/… これは英国首相の一存で決められる範囲… twitter.com/i/web/status/8…

"May reaches deal with DUP to form government after shock election result www.theguardian.com/politics/2017/… これは英国首相の一存で決められる範囲を超えてるでしょ。GFA関係してくるはず。 "

"May reaches deal with DUP to form government after shock election result www.theguardian.com/politics/2017/… これは英国首相の一存で決められる範囲を超えてるでしょ。GFA関係してくるはず。 "

忘れてはならないのは、DUPは常にGFAには反対しているということ(1998年時点でGFAに反対したUUP議員が離党して加われる場だったのがDUP)。2007年以降のストーモント体制についても、DUPは「GFAではない。セント・アンドルーズ合意だ」というスタンスで正当化している。

つまりDUPにとっては「GFAなんぞ壊れてもかまわない」わけ。

あと、DUPのことを「民主統一党」という訳語で理解しているとわけわかんなくなりますよ。どうしても日本語化しないと理解できないのなら「民主ユニオニスト党」で。(「ユニオニスト」「ユニオニズム」は英国ではひとつの政治思想。DUPはその思想の信奉者の団体で、なおかつ宗教政党)

To be very clear - this is a Conservative minority Government. There is no deal, so far with DUP. More an informal assurance.

Sky Newsファイサル・イスラムさん。

Sky Sources to @skydavidblevins: DUP confirm no deal... there are discussions... Again, this is a Conservative minority government

言い張るね。形式はそうでしょうけど、実態は?
そこに抜け道を作られてますよね。

twitter.com/faisalislam/st… これね。Informalだから、formalなagreementなり何なりに要求されるようなコンプライアンスは関係ない。少なくともDUPはそういうふうに動く政党だし、メイの保守党もそうだ。

しかもDUPというのは、非公式な形で、北アイルランドのロイヤリスト武装勢力と関係がある(「関係がある」ことをDUP自体は認めようとしないが、ロイヤリスト界隈は結局プロテスタントの宗教団体のつながりでメタにつながっているので、宗教団体が武装組織へのサポートの隠れ蓑になる)。

※この画像はコラ。DUPのロゴとアーリーン・フォスターの写真を実際の壁画に合成している。実際の壁画は: http://www.belfasttelegraph.co.uk/sunday-life/news/uda-puts-its-paintbrushes-beyond-use-28402713.html

@sabaiteir @DanielJHannan @iainmartin1 @duponline The UDA killed my friend in front of me as a teenager. But I gues… twitter.com/i/web/status/8…

"The UDA killed my friend in front of me as a teenager. But I guess they are the 'right' kind of terrorists..."

「10代のとき、UDAは私の目の前で私の友人を殺した。しかしUDAは『正しい』側のテロリストということなのだろう」

Two years of smearing Jeremy Corbyn on IRA rubbish and now Theresa May will apparently rule with supporters of the UVF and Ulster Resistance

「2年にわたってジェレミー・コービンはIRAの支持者だとかいうことを並べ立ててきておいて、今度はテリーザ・メイはUVFだとかアルスター・レジスタンスだとかの支持者と手を組もうってのか」

Ulster Resistance:
https://en.wikipedia.org/wiki/Ulster_Resistance

So after all the Corbyn-IRA scaremongering, the Conservatives are entering government with the DUP who are backed by loyalist paramilitaries

My column- After all the Cobryn-IRA scaremongering, the Tories enter coalition with a party backed by paramilitaries independent.co.uk/voices/dup-con…

@SiobhanFenton Loyalist paramilitaries who *two weeks ago* murdered a man in a supermarket car park, in front of hi… twitter.com/i/web/status/8…

"Loyalist paramilitaries who *two weeks ago* murdered a man in a supermarket car park, in front of his 3 year old child, in broad daylight."

ほぼ同じことをリパブリカン側のパラミリタリーがやったときは(リパブリカンは三歳児の目の前ではやらなかったけど)、DUPもUUPも大騒ぎして、ストーモントを機能停止に追い込みました。今はストーモントが元々機能停止してるので、何も起こらなかった。

Always look on the bright side of lifeするならこれでDUPとテロ組織との関係がようやくメインストリームのメディアで普通に取り上げられるかもしれない。「信教の自由に守られた宗教団体」というカバーを得ていた兄弟団、UDA, LVF...暗いw

北アイルランド紛争の当事者のうち、リパブリカンの側については凶暴で凶悪だと思うんですが、ロイヤリストの側は凶暴とか凶悪とかいったレベルを超えた何かがあると思います。

例えば70年代にベルファストでカトリックの民間人を適当に拉致して、生きたまま皮をはぐ、肉をそぐ、四肢を切り落とすなどしていたぶって殺していた「シャンキル・ブッチャーズ」という殺人者集団がいるんですが、彼らについてシャンキル地区の宗教団体(「青年団」的なものでもある)の人は「信仰のあついいい子だった」などと述懐してるんです。ソースはピーター・テイラーの本。

It's hilarious that Arlene Foster, whose government in Northern Ireland collapsed over a scandal to do with heating churches, is kingmaker.

そういう、いわば「文化」的なことだけでなく、現DUP党首のアーリーン・フォスターは腐りきってる。冬季の暖房の再生エネへの切り替えに支給される補助金をめぐり、いわゆる「第三世界みたいな汚職」が、昨年後半から今年はじめにかけて、北アイルランドを危機に陥れたんですが、それでも一切、責任を取ろうとしないし、改めようともしない。

ツイート主はメイル・オン・サンデーの記者。メイルでさえこれ。

When a devolved administration is brought to its knees and sectarian conflict rekindled, over church boilers, you're not good at government.

おっしゃるとおり。無能なんですよ。無能だけど強欲で、権力にはしがみつくタイプ。

Arlene Foster , re deal with the Tories , talks of how it "may be possible " to reach a deal . Foster is the King maker .

BBCラジオのパーソナリティ、スティーヴン・ノーラン。
"Foster is the King maker ." OMG

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