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人は「呼吸」に合った感情を抱く

ベルギーの心理学者、ピエール・フィリッポのめざましい研究によって、感情によって呼吸が変化することが明らかになった。

リラックスするために意識して呼吸をゆっくりにし、息を腹へと送りこむことができる。訓練によって、困難に直面したときにはいつでも、深くゆっくりとした腹式呼吸に頼ればいいとわかるようになる

呼吸をより意識すると、呼吸やその瞬間の感情もコントロールできるようになる。それがわかっていれば、不安が襲ってくるときには、呼吸が速まり、浅くなることに気づくだろう。

心穏やかながらエネルギーに満ちた状態は、呼吸によって実現可能であるだけでなく、それこそが理想的な状態と言えるのだ

ストレスがかかっていると、性急で衝動的な決断をしてしまうことも多い。反応が速すぎたり、後悔するようなことを言ったりしたりしてしまう。さらには、交感神経が絶えず働くことで、疲弊しやすくなってしまう

成功にはストレスがつきものと考える人は多く、リラックスして緊張をゆるめることがパフォーマンスに影響をおよぼすのではないかと心配になるのも意外なことではない。  しかし、ストレスがかかっているよりも穏やかな精神状態でいたほうが、どんな状況にも理性的に思慮深く対応する助けとなるはずだ。

呼吸がストレスを減らしながらもエネルギーを高めてくれると言うと、逆説的に聞こえるかもしれない。束縛が多く、過剰なストレスがかかる今の社会では、心の穏やかさがエネルギーの高さに結びつくとはふつう考えないからだ。何かを成し遂げるときにストレスが必要不可欠と感じるのはそうした思いこみのせいだ

定期的に呼吸法の訓練をすることで、〝ストレス・ホルモン〟であるコルチゾールの分泌を一定に保てることがわかっている。呼吸が体を穏やかな状態に戻し、ストレスからすばやく回復させ、困難に直面したときの反応を小さくする助けになるよう訓練できるのだ

呼吸がストレスを減らしエネルギーを高める  呼吸を自発的に変えることが、特別な状況で心をおちつかせる役に立つのもたしかだが、日々の呼吸法の訓練が──日々の運動の習慣と同じように──さらにめざましい効果を長期にわたって発揮する

呼吸はストレスにさらされた場合にいつでも手軽に使える道具である。たとえば、仕事へ向かうときに渋滞に巻きこまれたような場合に

呼吸を利用して心の持ちようを変えることができるというのは、革命的な発見である。頭を使って心の状態を変えるのが──たとえば、強い怒りや不安を理性でもって抑えるというようなことが──どれほど困難であるか考えれば、呼吸を利用するやり方を学ぶことは、最高のパフォーマンスをするためにストレスをコントロールする、非常に効果の高い、革新的な方法と言える

さらに、その後追加で行われた実験では、研究者は参加者をいくつかのグループに分け、まずはさまざまな感情に呼応するパターンで呼吸をしてもらった。それから、参加者にどんな気分か尋ねた。なんと、参加者は「呼吸のパターンに呼応する感情」を抱きはじめたというのだ! つまり、深くゆっくりと呼吸すると、穏やかな気分になり、浅く速い呼吸をすると、不安や怒りを感じるようになったのだ

自分の呼吸を観察してみるといい。そのとき抱いている感情によって呼吸のパターンはちがうはず。精神状態が呼吸に影響を与えるように、逆に呼吸を通して精神状態に影響をおよぼすことも可能である。

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稲浦悠馬

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