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さらっとよめる女性作家の短編小説集

本を読みたいけど時間がない…なんとなく面倒くさい…。そんなあなたにおすすめなのが短編小説集。特に、女性作家のまるで詩のような文体は、すらすらと読み進められます。活字離れしてしまった方、ひさしぶりに本を手に取ってみてはいかがでしょう。

更新日: 2017年09月21日

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Kugelkugelさん

すいかの匂い 江國香織

あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに――バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。

デッドエンドの思い出 よしもとばなな

ただこうしてなんとなく話をしているだけで、おなかの底から言いようのない活気が湧いてきて、
ああ、これだ、これでいいんだと思えてきた。
・・・・
何かを失くした感じがずっとずっとしていた。
それは心のどこかで知っている何かだったけれど、まさかこれだとは思わなかった。
ずっと寂しかったが、それはこれがなかったからだったんだ。
あまりにも淋しくて、そう思うことさえできなかった、そういうふうに私の魂が言っていた。

ドラママチ 角田光代

殺してしまいたい、という気持ちと、死んでくれないか、という気分は、似ているようでまるで違う。

もちろん私も含めたいがいの人間は、そう思ったからといって行動に出ることはない。ただ、漠然と思うだけである。

その漠然とした思いにも、両者には違いがある。殺してしまいたい、のは、その対象に強く関わりたいのだし、死んでくれないか、は、できうるかぎり関わりたくないのである。

妊娠カレンダー 小川洋子

「もう食べないの?」

 わたしが聞くと、姉はうんとうなずいて頬杖をついた。
 ストーブの上でやかんがしゅんしゅん鳴っていた。姉は無口にわたしを見ていた。仕方なく、わたしは一人で続きを食べた。

「グラタンのホワイトソースって、内臓の消化液みたいだって思わない?」

 姉がつぶやいた。わたしは無視して氷水を一口飲んだ。

「その生温かい温度とか、しっとりとした舌触りとか、ぽたぽたした濃度とか」

ジョゼと虎と魚たち 田辺聖子

昂奮してまた息を忙しげにもつらせるので
恒夫は出られなくなってしまう。
大丈夫かなぁ、と恐る恐る寄っていったら、

「帰ったらいやや」

とすがりつかれてしまった。

「帰らんといて。もう、三十分でも居てて。
テレビは売ったし、ラジオもこわれてしもたし、
アタイ淋しかったんや・・・・・・」

「何や、僕、テレビやラジオ代りかいな」

「せや。このラジオは返事するだけマシや」

ジョゼは泣き笑いしていい、恒夫はにわかにジョゼが可愛かった。

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