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【U2のアルバム⑦】Achtung Baby

BonoReedさん

・発売日:1991年11月18日
・レーベル:アイランド
・プロデューサー:ダニエル・ラノワ ブライアン・イーノ
・チャート:IRE1位、UK2位、US1位

解説

もちろん80年代のU2は凄かったが、けれどもあれは、よくあるビッグバンドのサクセスストーリー。U2が本当に凄いのはここからである。

The Joshua TreeとRattle and Humの大成功の後、U2は活動を休止して次なる方向性を模索した……というのが定説であるが、Rattle and HumからシングルカットされたDesireのB面にはDesire (Hollywood remix)が、When Love Comes to TownのB面にはGod Part II (Hard Metal dance mix)が収録されており、ともにノイジーなリミックスがされていることから、Lovetownツアー中に既に次なる方向性を模索していた可能性が高い。とにかくU2の頭脳エッジが行きついたのは、当時彼が聴いていたEinstürzende Neubauten、Nine Inch Nails、The Young Gods、KMFDMなどのインダストリアルミュージックの要素をU2に取り込むことだった。その小手調べにアルバムのレコーディング前にコール・ポーターのトリビュートアルバムRed Hot + Blueに提供したNigh and Dayと舞台劇「時計仕掛けのオレンジ」に提供したAlex Descends into Hell for a Bottle of Milk / Korova 1でその一端を披露した。

そしてレコーディング場所に選ばれたのは、当時ベルリンの壁が崩れ、東西統一を成し遂げたヨーロッパ一ホットな場所だったベルリンにあり、デヴィッド・ボウイのベルリン三部作たイギー・ポップのThe Idiotがレコーディングされたハンザスタジオだった。バンドはここにイーノ、ラノワ、フラッドという勝手知ったるプロデューサー陣を集結させて、いつものようにセッションを重ねながら音楽の神様が落ちてくるのを待った……が、今度はなかなか神様が降りてこない。やがて「The Joshua Treeを切り倒したい」ボノとエッジと「The Joshua Treeの周囲に花壇を植えたい」アダムとラリーとの間が先鋭化し、バンドは解散の危機に追い込まれた……とその時、空から落ちてくるように出来上がったのがOneで、この曲が再びU2を一つにした。その後バンドはレコーディング場所をアイルランドに移し、ダブリン郊外の海沿いの町に作った”Dog Town”と呼ばれるスタジオ、そしてウィンダム・レーン・スタジオで曲作りに励み、そしてアルバムは完成した。なお当時のレコーディングの様子は2011年に公開されたドキュメンタリー映画「From The Sky Down」で観ることができる。

「レコーディング中、内輪でよく使ってた言葉は、クズ、落ちこぼれ、ダーク、セクシー、そしてロック産業的(すべて良い意味)や、 真面目、上品、甘美、素晴らしい、ロック主義的、直線的(すべて悪い意味で)」(イーノ)

今となってはThe Joshua TreeとAchtung Babyの間にはさほど開きはないというのが定説になっている。実際、バンドを解散の危機から救ったOneはU2クラシックともいえる曲であるし、他にもWho's Gonna Ride Your Wild Horses、So Cruel、Tryin' to Throw Your Arms Around the World、Ultraviolet (Light My Way)などはこの系譜に連なる。逆にThe Joshua Treeに収録のThe Exit、Rattle and Hum収録のGod Part IIなどはアレンジ次第でActhung Babyに収録されえる曲だ……が、こんなものは所詮後世の後知恵で、リードシングルのThe FlyとそのPVを初めて観た時、世界中のU2ファンはその変貌ぶりに驚愕し、黒色のサングラスをかけて黒色の皮スーツを身にまとい、ステージ上で煙草を吹かしたり、ビデオカメラを回したり、ベリーダンサーと一緒に踊ったりするボノを見て、その人格まで変わってしまったのではないか?と訝る声もあったくらいである。

世界がU2の真意を知るようになるのは、アルバムがリリースされて、しばらく経ってのことだった。とにかくこうしてU2のキャリア史上もっとも刺激的だった90年代が幕を開けた。

ジャケット

デザインはスティーブ・アルビニ。写真撮影はアントン・コービン。

前作、前々作がモノクロイメージだったので今回はカラフルなイメージで行こうということになったが、アントン・コービンがベルリンで撮った写真はモノクロばかりだったので、テネリファ、モロッコ、ダブリンで写真を撮り直した。

ジャケットの写真にはキルドレーの農家の写真やアダムのヌードやシングルにも使われたトランバットを運転するメンバーの写真などが候補に挙がったが、アルバムな雑多なイメージを表現するために複数の写真を並べる案が採用された。コービンは反対したがメンバーは押し切ったらしい。

収録曲

1. Zoo Station

Zoo Stationとはベルリン動物園駅(Bahnhof Berlin Zoologischer Garten)のこと。

Lady With the Spinning Headという最終的にB面に収録された曲がZoo Station、Ultraviolet (Light My Way)、The Flyに三分割したが、この曲はその一つ。プロデューサー主導で作ったらしい。

曲のアイデアとなったのは、ボノがベルリンで聞いた第二次世界大戦中爆撃にあって動物園の檻が壊れ、サイやペンギンやペリカンが街中をウロウロしていた話とこの動物園駅にU2線という地下鉄線が乗り入れていたという話。ボノは前者から破壊のイメージを、後者から統合のイメージを読み取り、新しいU2が皆に受け入れられる様をイメージしたのだろう。

このZooという言葉はZoo-TV、Zooropaと90年代前半のU2のキーワードとなった。

2. Even Better Than The Real Thing

・発売日:1992年6月8日
・レーベル:アイランド
・プロデューサー:スティーブ・リリーホワイト、ダニエル・ラノワ ブライアン・イーノ
・チャート:IRE3位、UK12位、US32位
・収録曲:

1. Even Better Than the Real Thing
2. Salomé
3. Where Did It All Go Wrong?
4. Lady with the Spinning Head" (Extended dance remix)

Rattle and HumのアウトテイクでDesireをレコーディングした際に作ったThe Real Thingというデモが元になっている。イーノが”There ain't nothing like the real thing”という歌詞に皮肉が足りないと文句を言ったため、エッジが”Even better than the real thing”に変えた。本質的なものではなく表層的なもので満足する現代人を皮肉った曲で、ダンスミュージックを上手く取り込んだ佳曲といえよう。

ヴァージン・グループのリチャード・ブランソンが、当時ライバル会社のコカ・コーラがReal Thingという宣伝文句を使っていたため、この曲をヴァージン・コーラの宣伝に使いたがったが、U2は断った。

リミックスが多数作られ、特にポール・オーケンフォールドが手がけたThe Perfect MixはUKチャートで8位を記録し、オリジナルよりもチャートアクションがよかった。

90年代のU2はリミックスを量産しており、90年代のUKのクラブシーンでもっとも頻繁に流れたボーカルはボノだという声もあるほどである。

監督:ケヴィン・ゴドレイ ロケ地:ロンドン

彼らは並み外れたグループだね。ほんの小さい頃からずっと一緒にやってきた仲間だからなんじゃないかって思ってる。彼らの集中力も、実に大したもんだ。ビデオのこともフィルムのことも、よく判ってる。自分たちのやってることがどんな要素から成り立ってるか、全てちゃんと把握してるんだ。だから、彼らとの仕事はいつも挑戦だよ。「やりたいようにやってくれ。お、いいねぇ、それ」みたいなのとは違う。彼らは常に向上しようとしてる。だから、こっちも常に最前線にいないといけない。それがいいんだ。(ケヴィン・ゴドレイ)

監督:アルマンド・ギャロ ロケ地:ロサンゼルス

監督:リッチー・スマイス ロケ地:テネリファ(スペイン)、ロンドン

Mysterious WaysやOne(アントン・コービン)のPVの映像も使われている。

監督:ダミアン・ハースト ロケ地: Glastonbury Festival

2011年にリリースされたAchtung Babyデラックスエディションに収録されているリミックス用のPV。

3. One

・発売日:1992年2月24日
・レーベル:アイランド
・プロデューサー:ダニエル・ラノワ ブライアン・イーノ
・チャート:IRE1位、UK7位、US10位
・収録曲:

1.One
2.Lady with the Spinning Head (UV1)
3.Satellite of Love
4.Night and Day (Steel String remix)

Achtung Babyのレコーディング中、ボノ、エッジとアダム、ラリーの対立が極まった時にふとできてバンドを解散の危機から救った曲であるとともに、U2の代表曲の一つ。With or Wothout Youと並んでカバーも多く、2006年にはメアリー・J. ブライジ&U2が(86位)、2009年にはアダム・ランバートが(82位)、2010年には「グリー」というテレビドラマのキャストたちが(60位)USチャートのトップ100に送り込んでいる。

歌詞の解釈については様々な説があったが、U2 by U2でボノは「ゲイであることを父にカミングアウトしようとする息子の父子の物語」と述べている。が、今ではもっと普遍的で、価値観の違うもの同士がどう上手くやっていくか? が曲のテーマになっているように思う。

が、この点について、”We're one, but we're not the same(僕たちは一つ。けれども同じではない)””We get to carry each other, carry each other(僕らは互いに支え合うことが出来る、支え合うことが出来るんだ)”という人間の底力を信じるというのがこの歌詞の肝だと思われるが、多くのリスナーが”We got to carry each other(僕らは互いに支え合わないといけないんだ)”と誤解しており、何か説教臭い曲になっているとボノもエッジも度々嘆いている。

ビル・グラハム曰く「アルバムの保険」的存在の曲で、Achtung BabyはこれまでのU2のイメージを一変させたが、この曲は従来のU2のイメージ通りの曲といえる。そのせいか、アルバムとツアーのプロモーションといえるテレビ番組出演時は、リードシングルのThe Flyではなく、この曲が演奏された。

監督:アントン・コービン ロケ地:ベルリン

PrideのPVで大失敗を犯したアントンが再び得たU2のPVを撮るチャンス。「ゲイであることを父にカミングアウトしようとする息子の父子の物語」という曲のテーマによくそった内容だが、やや説明的すぎるように思える。PVの中にドラッグを思わせるシーンがあり、ドラッグとエイズの関係を想起させるということでお蔵入りとなった。

監督:マーク・ペリントン ロケ地:ニューヨーク

Verison 1がボツになったので急遽制作されたもの。元々はZoo-TVのディスプレイに映す予定の映像を繋ぎ合わせたもの(実際、ライブでも使われた)。が、PVにしてはインパクトに欠けるということで、Version 3が作られることになった。

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