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2018年のブッカー賞、同賞史上初めて北アイルランド出身作家の作品が選ばれる

今年のブッカー賞は、北アイルランド紛争の時代を生きた18歳少女が1人称で語る小説、Milkmanで、ベルファスト出身のアンナ・バーンズが受賞。この小説、新聞の評では「実験的」とされ、選考委員長のアッピアも認めているとおり、さらっと読むというわけにはいかなさそうですが。

更新日: 2018年10月18日

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2018年のマン・ブッカー・プライズ(以下「ブッカー賞」)に、アンナ・バーンズという作家のMilkmanという作品が選ばれました。バーンズは北アイルランドのベルファスト出身で物語は北アイルランドが舞台。同賞を北アイルランドの作家が受賞するのは初めてのことです。

nofrillsさん

ブッカー賞

The Man Booker Prize for Fiction (formerly known as the Booker–McConnell Prize and commonly known simply as the Booker Prize) is a literary prize awarded each year for the best original novel written in the English language and published in the UK.

「マン・ブッカー・プライズ・フォー・フィクション(一般には「ブッカー賞」として知られている)は、毎年、英語で書かれ英国で出版されたものを選考対象とし、最も優れた創作小説に与えられる文学賞である」。

※「ブッカー賞」については日本語のウィキペディアにもエントリーがありますが、説明が古すぎるので、英語版を参照してください。日本語版は受賞作だけアップデートされてる状態で誰も本体に手をつけようとしてないらしい。困ったものです。

ブッカー賞の創設は1969年。以後、紆余曲折ありながらも続けられてきた文学賞で、英語圏では「最も信頼できる文学賞」として知られています。以前は、選考対象は英・愛と旧英連邦諸国の作家の作品に限られていたのですが、2014年から「英語で書かれたもの」から選ばれるようになりました。

過去の受賞作として日本で最も有名なのは、後にノーベル文学賞も受賞することになるカズオ・イシグロ(英国)の『日の名残り』(1989年)でしょうか。

サルマン・ラシュディ(インド、後に英国)の『真夜中の子供たち』は1981年に受賞。

アルンダティ・ロイ(インド)の『小さきものたちの神』は1997年。

ジョン・バンヴィル(アイルランド)の『海に帰る日』が2005年。

『イングリッシュ・ペイシェント』として映画化されたマイケル・オンダーチェ(カナダ)の『イギリス人の患者』は1992年の受賞作です。

リチャード・フラナガン(オーストラリア)の『奥のほそ道』は2014年の受賞作。第2次世界大戦時に日本軍の捕虜となった英国やオーストラリア軍兵士たちの過酷な体験に基づいた作品です。

昨年、2017年の受賞作は米国のジョージ・ソーンダーズのこの作品。その前、2016年のポール・ビーティも米国の作家で、「(元々英国圏の賞であった)ブッカー賞の存在意義が問われる」的な批判の声も見かけました。

(正式な言い方ではないのですが)南アイルランド(つまりアイルランド共和国)からは、上述のバンヴィルのほか、ロディ・ドイル、アン・エインライトとこれまで3人の作品が選ばれています。

一方、英国の一部である(はずの)北アイルランドからは、これまで受賞作は出ていませんでした。

※写真は北アイルランドの海岸線でのもの。このまま本の表紙になります。

北アイルランドから初の受賞作

Fantastic to be here to see Anna Burns win Man Booker prize for Milkman. A marvelous book and deserved winner. pic.twitter.com/g2QLg4qsFd

受賞の瞬間。

※現地はまだサマータイム中なので時差8時間。ここでのタイムスタンプの17日午前5時台は、現地16日午後9時台。つまり授賞式は夜10時近く。

Anna Burns for Milkman and she can’t believe it! pic.twitter.com/FK5PGIzsXw

バーンズさんは受賞したことをしばらく信じられなかったようで、なかなか登壇しなかったらしい。

Anna Burns has been named the winner of this year's Man Booker Prize for her novel Milkman - becoming the first author from Northern Ireland to win the prize #ManBooker2018 bbc.in/2COPlUQ

BBCのフィード。「今年のブッカー賞に、アンナ・バーンズの『ミルクマン』が選ばれました。これによりバーンズは、北アイルランド初の同賞受賞作家となりました」

BREAKING - Northern Ireland first - Anna Burns wins Man Booker prize belfasttelegraph.co.uk/life/books/bel… pic.twitter.com/nNHMugunf2

北アイルランドの新聞、ベルファスト・テレグラフの速報フィード。「北アイルランドで初」

Milkman is the winner of the #ManBooker2018, a huge congratulations to Anna Burns ✨✨✨ pic.twitter.com/ADCcUla4Jb

版元のFaber & Faber社。

Set in an unnamed city during the Troubles, Anna Burns’s ‘utterly distinctive’ Milkman is the winner of the #ManBooker2018 pic.twitter.com/lJ9o1MDiyv

版元Faber & Faberのフィード。「北アイルランド紛争が続いていたころの、名前を特定しないある都市を舞台とした作品」。付属の映像は、冒頭部分の音読。

‘Anna Burns’s novel is, for all its darkness, ultimately hopeful about the future imagined and represented in the strong, intelligent and brave young woman at its centre.’ – @IrishTimes in praise of Milkman ahead of tonight's #ManBooker2018 announcement. irishtimes.com/culture/books/…

Anna Burns (born 1962) is an Irish author. She was born in Belfast and raised in the working class Catholic district of Ardoyne. She moved to London in 1987. Her first novel, No Bones, is a gripping account of a girl's life growing up in Belfast during the Troubles.

「アンナ(アナ)・バーンズ(1962年生)はアイリッシュの作家である。ベルファストに生まれ、労働者階級のカトリックの町アードイン地区で育った彼女は、1987年にロンドンに移り住んだ。最初の作品であるNo Bonesは、北アイルランド紛争の時代にベルファストで育った少女の物語で、読む者の心を引きつけてやまない作品である」

賞プレゼンターのダッチェス・オブ・コーンウォール(カミラさん)から盾を渡されるバーンズさん。

授賞式後、マスコミのカメラの前のバーンズさん。

Anna Burns has been named the winner of this year's Man Booker Prize - becoming the first author from Northern Ireland to triumph bbc.in/2yJoqVP pic.twitter.com/QrEw1aNXaV

BBCのインタビュー。「ベルファストのご出身ですが、この小説のどのくらいが実際の体験から引き出されているのでしょうか」という質問に、「育ったのはベルファストで、それはこの本に、それから長期の暴力の影響を受けた社会全体について書くことに、大変に大きな影響を与えています。緊張状態のもとでの生活が当たり前の日常になる。私が育つ過程では、それが当たり前なのだと思っていました」

VIDEO: Anna Burns has became the first Northern Irish writer to win Britain's #ManBookerPrize for her novel "Milkman", an exploration of Northern Ireland's three decades of sectarian violence pic.twitter.com/XBzi71741I

北アイルランド紛争での女性に対する構造的ともいえる暴力(性暴力)がこういうふうに脚光を浴びるとは……感慨無量。今はTwitterにかぎかけちゃってるけど、非常に勇気のある性暴力被害者の女性が公然と名前を出して支配的な立場にいた人びとを批判するのをリアルタイムで直接見てたから……。

Me gurning with Anna Burns - author of @ManBookerPrize winning Milkman. And an exceedingly special author... pic.twitter.com/EF48qozkRT

Faber & Faber社の編集者、ルイーザ・ジョイナーさんがバーンズさんをぐっと抱き寄せて記念撮影。

Presenting the winner of the #ManBookerPrize 2018 Huge congratulations to Anna Burns for Milkman, her unsettling, original and distinctive tale of gossip and hearsay. Find it here: waterstones.com/category/cultu… pic.twitter.com/Iv22hJSVNy

大手書店、Waterstones. 「噂話・風評についての独創的で際立った物語、読む者の心は穏やかではいられない」

Wow! Anna Burns wins the #ManBooker2018 Here’s the special @ManBookerPrize edition of her novel Milkman designed exclusively for the author. pic.twitter.com/piMInEJ6D5

著者のためだけにデザインされた特別の装丁。出版されている美しい空の写真とはずいぶん印象が違います。

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