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日本国有鉄道史 組織改変論議と国鉄 第4話 風向きが変わってきた民営化

公共企業体とはなんぞや?実は、多くの有識者の間でもその解釈はまちまちであり、その辺を含めて今一度その制度のあり方を検討しようと始められたのが、臨時公共企業体合理化審議会でした、当時の資料などを参考にblogでは書き切れなかったことを深掘りしてみたいと思います。

更新日: 2018年10月29日

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この記事は私がまとめました

鉄道ジャーナリスト,日本国有鉄道研究家の加藤好啓です、今回は、国鉄の組織について議論する、公共企業体合理化審議会について解説をしていきたいと思います。

blackcat_katさん

有識者も,国有鉄道という制度に関して見識を持つものはいなかった。

民営化はせずに、公社としての自主性を認めようという意見がありましたが、やがて世間の風は民営化もよいのではないかという流れに変わりつつありました。
 政府は、昭和29年に臨時公共企業体合理化審議会という組織を設け、公共企業体(公社)の有り方について以下の趣旨で検討する旨指示を出しました。
 「公共企業体は、公企業の合理化と民主化のための新しい企業体であるが、その公共的かつ能率的経営を確保するため、なお改善を加える必要があると認められる。
 これに対する改革要綱を示されたい」と諮問しました。
 要は、戦後GHQ主導で作られた公共企業体という組織を、国営に戻すべきなのかそのまま現在の形態でよいのかを日本人の目で見直してみようというわけです。

臨時公共企業体合理化審議会の設置について
昭和28年11月13日 閣議決定  昭和29年2月2日 閣議決定 改正

公共企業体の公共的且つ能率的経営を確保するため左の要領により臨時公共企業体合理化審議会(以下審議会という。)を設置するものとする。
1.設置
審議会は内閣総理大臣の諮問に応じ、公共企業体が行つている事業の経営内容を調査分析し、その公共的運営の経営の合理化のための方策に関し調査審議するために、臨時に内閣を置かれる非公式の機関とすること。
2.機構
審議会の機構は次のとおりとすること。
会長 委員の互選によること。
委員 委員の構成は次のとおりとすること。
大蔵大臣
運輸大臣
郵政大臣
労働大臣
行政管理庁長官
日本専売公社総裁
日本国有鉄道総裁
日本電信電話公社総裁
学識経験ある者のうちから内閣総理大臣が委嘱するもの(その数は15名以内とする。)
幹事 若干名
3.運営 前段省略
審議会は、審議の結果を6ヵ月以内に内閣総理大臣に報告するものとすること。
4.庶務 省略
5.議事 省略

詳細は、是非リンクをクリックしてみてください。

議論されただけという感もある、審議会の様子

公共財団法人 交通協力会 国鉄線昭和29年から引用

根本の問題は、公共企業体という制度、これを失敗と認めて、もとの官営形態に戻すべきか、またはもっと民営に近付けるべきかということである。この点については財務、労働関係における現在の実状程度のものは官営形態としても採用できる姿のもので、これだけで公共企業体に編成替をしなけれぱならないという理由に乏しいという考え方もできるようだが、されぱとて、一旦出来てしまったものを、わざわざ手数をかけて官営に引き戻す必要もこれまた考えられない。また民営ということは、沿革的にも、事業の公共性、独占性の上からも、日本における民間資本の実勢上からも不可能に近いという考えである。
 結局現在の行き方を改善して行ぐ方向が妥当だという考え方が大勢を占めていたようである。電々の部会の方では、それにしても順次民営の形に近いように進んで行くべきだという意見も出たようである。この問題は、根本問題であるが、また同時に、経営の自主性と、政府の干渉との実体論の方が先決であって、それがきまれぱ形体は自からそれに従うということにもなるのであろう。

加藤好啓追記
上記の画像の記事を書き起こしたものですが、電電公社を擁する(現在のNTT)が、順次民営の形に近いように進んで行くべきだ,と言う意見が出たことは注目に値すると思われます。
国鉄がどちらかというと、国営に戻すべきか、それとも民営化すべきか・・・といった議論を進める中で注目すべき点ではないかと思われます。
ただ、当時としては、民営化するのにはあまりにも巨大すぎるということで、一先ず現状維持で行こうと言う趣旨が示されています。

国鉄、電々の両公社から、現在の予算制度は官庁会計的な拘束予算で、企業会計にふさわしくない、純計予算なり、標準予算制度なり、現在の形を改めるべきだという主張があり、経理専門委員会では、専門委員に委嘱された。古川栄一(一檎大)、柳川昇(東大)の両教授、金子佐一郎(十条製紙)、西野嘉一郎(東芝)の両民間人も、この点については一も二もなく同感の意を表明していたが、大蔵省側は、現在の制度で少しも不自由がない、‐公社の予算制度は、一般会計の予算とは形式を一にしていても実質上はまるで違う、弾力性もあり、流用繰越も殆ど自由になっているから、別段これ以上形だけの変更をする必要はないという意見で押していた。
 公社側にしても予算運用の非際的な面において、必ずしも現在ひどく企業会計の特殊性が束縛されているということは立証し難く、ただ建前上拘束予算制度はおかしいではないかという点に主張が築かれたかの感がある。従ってこの予算制度上の問題は表面的には建前諭であって、実賀的な価値がないという意見をもつ委員もあったよう である。

加藤好啓追記
予算の運用に関して、自由な予算を組みたい公社側と、あくまでも国の機関として,国の会計制度の中に置きたい大蔵省とのせめぎ合いが続けられており、これに関しては後述しますが、会計検査院の委員の意見として、公社という性格上予算の流用などが難しい,紐付けされた、いわゆる拘束予算はしない方が良いと発言しています。

但し、公社側と大蔵省側のおのおのの議諭の裏面には、公社としては少しでも大蔵省の制肘を脱したいという気持と、そうはさせじとする大蔵省の考え方とが相桔抗していたのではないかと思われる。その点について会計検査院の主管局長が、会計検査院の意見として申し述べるわけには行かないがと前提して、損益勘定については拘束予算制はやめた方がよいと思うと述べたのは、注目される。しかしこの意見に附帯して、給与総額の制限をおくことは必要であると述べているので、いささか意見の首尾一貫を欠くようなことになってしまってはいる。

加藤好啓追記
上記のとおり、拘束予算は,公共企業体で行うべきでないと言いつつ、給与総額は拘束予算であるべきということで、主幹局長の見解としては、人件費が青天井に増加することを避けたいという思いからの意見だと思います。
実際に、国鉄などの公社では、賃上げに関して、交渉は出来ても最終的な決定権は政府に拘束されることに成るため。仲裁裁定による賃上げというスタイルが更迭時代には続きその都度、違法ストライキ等が繰り返されることとなりました。

さて、三公社を比較すると、その事業内容も自から異なり、専売の如く全然資企調達に心配のないものもあれぱ、電々の如く、料金値上によって、既に十分なる自己資金の調達に成功している所もある。
 ひとり国鉄のみは運貨べースの低いために、十分なる減価償却をすることができず、資金調達にも困難な問題を包蔵している。
従って、国鉄の問題を取り上げるときは常に運賃ベースの問題が、その解決の鎧となるといっても過言ではないのである。またこの当面の根本問題が解決されずに制度をどう変えてみても、満足すべき結果を得られないことほ当然である。
 にも拘わらず、運賃問題に関する限り、合理化審議会は、その引上の必要性を裏書きする責任を何とか回避している。経理専門委員会においては、減価償却を第三次評価ベースに従って行うこと゛、減償基金積立、あるいは退職手当引当金の必要性を理論的には十分認めながら、運賃問題と直接関連するから別個に研究する必要があるという逃げ方をしている。

これはデフレ経済下における運賃の引上はいろいろな論議の対象となるので、合理化審議会で、その必要性を露わに表明するのは避けたいとの気持であろうが、国鉄側からみれぱ物足りない感は免かれない。さすがに国鉄部会では、運賃引上の必要性を肯定せざるを得なかったが、その表現は、ある時期にはとか、適当な機会にはとかいうような修飾をつけて糊塗しているようである。

加藤好啓追記
この記録を読んでみますと、国鉄だけが当時でも一人負けのような状況に置かれているように思われます。電電公社も、需要に供給が追いつかない状況であり、値上げで十分な資金を得たと書かれています。
専売公社の場合は今もそうですが、不足する場合はたばこ料金の値上げで補填する方式であり、赤字になり得ない体質でしたので、そうした意味では、戦時中は繰越利益を戦費に繰り込まれ、公共委企業体発足後は、知らんふりで、過重な公共負担【学生定期の割引、身体障害者割引等々】と言った公共負担を強いられていましたし、その上、運賃は低めに抑えられていたこともあり、減価償却費もままならず、自ずと鉄道債券などの発行に頼らざるを得なくなる悪循環となっていました。

答申は行われたものの、重要な問題は先送りにされてしまいました。

この答申は、昭和29年11月に行われ、公共企業体としての形はその後も継続することが確認されましたが、これが後に国鉄の赤字体質を産むことになるのは当時既に予見できたにもかかわらず放置されてしまいました。
本文でも書かれていますが、鉄道部会としては何らかの措置は必要と感じていたようですが、その責任を誰が取るのか、もっと言えば、誰も責任を負いたくないからでしょうが。
「運賃引上の必要性を肯定せざるを得なかったが、その表現は、ある時期にはとか、適当な機会にはとかいうような修飾をつけて糊塗しているようである。」というぼやかした表現にとどまっています。

以降も,当時の記事が続くのですが、これ以上は解説の範疇を超えてしまいますので、改めてブログにまとめてアップさせていただきます。

臨時公共企業体合理化審議会の廃止について
昭和29年11月16日 閣議決定

臨時公共企業体合理化審議会は、さきに諮問をうけた公共企業体の合理化について昭和29年11月4日答申とし、その任務を終了したので、廃止する。

結論からすれば、民営化論議などもあるけど、一先ず現在の公社制度で存続することを確認

その点は、後ほど述べたいと思います。
 この答申では、「本来の企業性を十二分に発揮するため、また同時に公共事業の本質も顧みて、改善すべきものは改善したうえ、公共企業体としての形態を存続すること」とされました。
具体的には、経営委員会の強化、合理化への取組、政府資金の手当て等がおもな要望事項とされました。
 なお、鉄道部会の報告書では特に、「私企業とちがって、株主に対する利益の配分がないし、経営者に収支の決算の結果が痛切に感ぜられないと思われるので、運営当局としては常に留意すること必要」との指摘もあったのですが、この問題が国鉄問題の根本的要因として既に指摘されていたにも関わらず、ローカル新線建設の是非などは議論されたとしても鉄道敷設法そのものには言及されないなど、答申自体が中途半端なイメージを受ける結果となりました。

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