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【現代短歌まとめ】代表的な歌人70人と有名な作品300首

現代の短歌の名作やおすすめ作品をまとめました。70人の歌人による約300首です。

更新日: 2018年12月10日

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この記事は私がまとめました

mk7911さん

現代の短歌って、どんなのがあるの?

こんにちは。歌人の工藤吉生です。

いきなりですが、現代の短歌って、どんなのがあるんでしょうか???

短歌に興味をもちはじめたばかりの方のために、まとめをつくりました。
このページだけで70人以上の歌人の300首以上の短歌が読めますので、たっぷり楽しんでいってくださいね!

どの時代から「現代短歌」なのかというのはいろいろな考え方がありますが、ここでは2019年現在で60歳以下の方(1959年以降の生まれ)の作品を現代短歌とさせていただきました。だいたい俵万智さんや穂村弘さん加藤治郎さんから現代短歌が始まるかたちです。これは一般的ではない分類ですが、ここではそういうことにします。

比較的有名と思われる作品を、わたくし工藤の独断で選びました。
順番は作者名のあいうえお順としています。
それでは、短歌の「今」を、ほんの一部ですが覗いてみましょう。


【参考文献】
小高賢編著『現代短歌の鑑賞101』
小高賢編著『現代の歌人140』
山田航編著『桜前線開架宣言』
東直子・佐藤弓生・千葉聡編著『短歌タイムカプセル』
ほか

【あ】

▼蒼井杏

ひとりでに落ちてくる水 れん びん れん びん たぶんひとりでほろんでゆくの  



▼飯田有子

雪まみれの頭をふってきみはもう絶対泣かない機械となりぬ  

女子だけが集められた日パラシュート部隊のように膝を抱えて  

たすけて枝毛姉さんたすけて西川毛布のタグたすけて夜中になで回す顔  



▼石井僚一

傘を盗まれても性善説信ず父親のような雨に打たれて  

生きているだけで三万五千ポイント!!!!!!!!!笑うと倍!!!!!!!!!!



▼伊舎堂仁

海だけのページが卒業アルバムにあってそれからとじていません  



▼今橋愛

たくさんのおんなのひとがいるなかで
わたしをみつけてくれてありがとう  


おめんとか
具体的には日焼け止め
へやをでることはなにかつけること  


「水菜買いにきた」
三時間高速をとばしてこのへやに
みずな
かいに。  



▼井上法子

煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火  



▼内山晶太

ひよこ鑑定士という選択肢ひらめきて夜の国道を考えあるく  

ショートケーキを箸もて食し生誕というささやかなエラーを祝う  



▼宇都宮敦

だいじょうぶ 急ぐ旅ではないのだし 急いでないし 旅でもないし

牛乳が逆からあいていて笑う ふつうの女のコをふつうに好きだ



▼梅内美華子

「今日は笑わないから」という友のいて昼のカレーにコロッケ落とす  

泡立てしシャボン溢るる手の平におぼれもせずに顔洗うひと  

生き物をかなしと言いてこのわれに寄りかかるなよ 君は男だ  

大いなる空振りありてこれならばまだ好いていよう五月の男  

ティーパックのもめんの糸を引き上げてこそばゆくなるゆうぐれの耳 



▼江戸雪

膝くらくたっている今あとなにを失えばいい ゆりの木を抱く

近づいてまた遠ざかるヘッドライトそのたびごとに顔面捨てる 

いじめには原因はないと友が言うのの字のロールケーキわけつつ

▼大口玲子

産めと言ひ殺せと言ひまた死ねと言ふ国家の声ありきまたあるごとし  

形容詞過去教へむとルーシーに「さびしかつた」と二度言はせたり  

記されし祈りの言葉呟きて祈りに似たることをわがしつ 

一週間ひとと暮らしてまだ旅のはじまりのやうな朝の歯みがき 



▼大塚寅彦

指頭もて死者の瞼をとざす如く弾き終へて若きピアニスト去る  

洗ひ髪冷えつつ十代果つる夜の碧空(あおぞら)色の瓦斯の焔を消す  

オルゴール芯のいがいがの手触りを思ひつつ古き旋律(メロディー)聴けり

生没年不詳の人のごとく坐しパン食みてをり海をながめて  

仮想(ヴアーチヤル)の〈死〉に頬あかく照らされてゲームエリアに若者ら群る  

ぬばたまのクローン人間いづくにか密かに生るるごとき春寒 

パンの耳食みつつ聴くは鳥のこゑ天上天下唯我独貧 



▼大辻隆弘

十代の我(あ)に見えざりしものなべて優しからむか 闇洗ふ雨  

あけがたは耳さむく聴く雨だれのポル・ポトといふ名を持つをとこ  

秋の陽をあまねく容るる窓の辺に紙を揃ふる手かしろく見ゆ  

紐育空爆之図の壮快よ われらかく長くながく待ちゐき  

北空は寒きかげりを帯びながらいざなふごとしわれと一羽を  

東京をふたたび敵と思ひゆく飯田橋下酔後の罵声  

受話器まだてのひらに重かりしころその漆黒は声に曇りき 

指からめあふとき風の谿(たに)は見ゆ ひざのちからを抜いてごらんよ  



▼大松達知

満員のスタジアムにてわれは思ふ三万といふ自殺者の数 

予備校のポスターに〈本土国立大学進学〉とあり沖縄一九九七年  

車中にて親指メールする人よ人を思ふとき人はうつくし 

かへりみちひとりラーメン食ふことをたのしみとして君とわかれき  

誤植あり。中野駅前徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど  



▼大森静佳

われの生まれる前のひかりが雪に差す七つの冬が君にはありき  

君の死後、われの死後にも青々とねこじゃらし見ゆ まだ揺れている  

生前という涼しき時間の奥にいてあなたの髪を乾かすあそび  



▼岡崎裕美子

体などくれてやるから君の持つ愛と名の付く全てをよこせ  

したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ  



▼岡野大嗣

散髪の帰りの道で会う風が風のなかではいちばん好きだ  

そうだとは知らずに乗った地下鉄が外へ出てゆく瞬間が好き  

ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた  

脳みそがあってよかった電源がなくても好きな曲を鳴らせる  

骨なしのチキンに骨が残っててそれを混入事象と呼ぶ日  



▼荻原裕幸

剝がされしマフィア映画のポスターの画鋲の星座けふも動かぬ  

たはむれに美香と名づけし街路樹はガス工事ゆゑ殺されてゐた  

▼▼▼▼▼ココガ戦場?▼▼▼▼▼抗議シテヤル▼▼▼▼▼BOMB!  

それはだつて結局つまりうるさいな毎晩ちやんと抱いてるだらう  

見えてゐる世界はつねに連弾のひとりを欠いたピアノと思へ 

春の日はぶたぶたこぶたわれは今ぶたぶたこぶた睡るしかない  

ねえ会議ねえまだ会議トナカイのことばでも研究してるのか?  

間違へてみどりに塗つたしまうまが夏のすべてを支配してゐる  

桃よりも梨の歯ざはり愛するを時代は桃にちかき歯ざはり  

戦争が(どの戦争が?)終つたら紫陽花を見にゆくつもりです  

恋人と棲むよろこびもかなしみもぽぽぽぽぽぽとしか思はれず  

まだ何もしていないのに時代といふ牙が優しくわれ噛み殺す

【か】

▼加藤治郎

マガジンをまるめて歩くいい日だぜ ときおりぽんと股で鳴らして  

鋭い声にすこし驚く きみが上になるとき風にもまれゆく楡  

ここにいる疑いようのないことでろろおんろおん陽ざしあれここ  

まりあまりあ明日(あす)あめがふるどんなあめでも 窓に額をあてていようよ  

もうゆりの花びんをもとにもどしてるあんな表情を見せたくせに  

にぎやかに釜飯の鶏ゑゑゑゑゑゑゑゑゑひどい戦争だった  

たぶんゆめのレプリカだから水滴のいっぱいついた刺草を抱く  

ひとしきりノルウェーの樹の香りあれベッドに足を垂れて ぼくたち  

歯にあたるペコちゃんキャンディーからころとピアノの上でしようじゃないか  

ぼくたちは勝手に育ったさ 制服にセメントの粉すりつけながら  

だからもしどこにもどれば こんなにも氷をとおりぬけた月光  

ほそき腕闇に沈んでゆっくりと「月光」の譜面を引きあげてくる  

ひとしきり母の叫びが風に添う 雲のぷあぷあ草のれれっぽ  

言葉ではない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ラン!  

1001二人のふ10る0010い恐怖をかた101100り0  

ぼくはただ口語のかおる部屋で待つ遅れて喩からあがってくるまで  

荷車に春のたまねぎ弾みつつ アメリカを見たいって感じの目だね  



▼加藤千恵

まっピンクのカバンを持って走ってる 楽しい方があたしの道だ  

ついてない びっくりするほどついてない ほんとにあるの? あたしにあした  

幸せにならなきゃだめだ 誰一人残すことなく省くことなく  



▼川北天華

問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい  



▼川野里子

アンパンマンを怖がりし息子みづからを食はせてしまふ技を見てより 

ふと君の表情のなき視野のかなたバベルの塔が風に揺れてゐる  

あめんぼの足つんつんと蹴る光ふるさと捨てたかちちはは捨てたか 

ふるさとは海峡のかなたさやさやと吾が想わねば消えてゆくべし  

ものおもふひとひらの湖(うみ)をたたへたる蔵王は千年なにもせぬなり  



▼木下龍也

コンビニのバックヤードでミサイルを補充しているような感覚  

B型の不足を叫ぶ青年が血のいれものとして僕を見る  

立てるかい 君が背負っているものを君ごと背負うこともできるよ  

右利きに矯正されたその右で母の遺骨を拾う日が来る 

鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい  

カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる  



▼紀野恵

わたくしはどちらも好きよミカエルの右の翼と左の翼 

ゆめにあふひとのまなじりわたくしがゆめよりほかの何であらうか 

靴を捨つる。スウプのやうな夜の底に。石のぬくみを歩いて渡る 

台所嫌ひの女友達よスイス・ロマンド・カンゲン・ガクダン 

不逢恋(あはぬこひ)逢恋(あふこひ)逢不逢恋(あふてあはぬこひ)ゆめゆめわれをゆめな忘れそ 



▼黒瀬珂瀾

わがために塔を、天を突く塔を、白き光の降る廃園を 

日本はアニメ、ゲームとパソコンと、あとの少しが平山郁夫 

一斉に都庁のガラス砕け散れ、つまりその、あれだ、天使の羽根が舞ふイメージで  

The world is mine とひくく呟けばはるけき空は迫りぬ吾に  



▼小島なお

わたくしも子を産めるのと天蓋をゆたかに開くグランドピアノ  

噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし  

きみとの恋終わりプールに泳ぎおり十メートル地点で悲しみがくる



▼五島諭

海に来れば海の向こうに恋人がいるようにみな海をみている  

歩道橋の上で西日を受けながら 自分yeah 自分yeah 自分yeah 自分yeah

こないだは祠があったはずなのにないやと座りこむ青葉闇

【さ】

▼斉藤斎藤

ぼくはただあなたになりたいだけなのにふたりならんで映画を見てる 

雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁 

こういうひとも長渕剛を聴くのかと勉強になるすごい音漏れ 

三階を流されてゆく足首をつかみそこねてわたしを責める  

撮ってたらそこまで来てあっという間で死ぬかと思ってほんとうに死ぬ 

アメリカのイラク攻撃に賛成です。こころのじゅんびが今、できました

うつむいて並。 とつぶやいた男は激しい素顔になった 

腹が減っては絶望できぬぼくのためサバの小骨を抜くベトナム人 

君の落としたハンカチを君に手渡してぼくはもとの背景に戻った 

前肢が崩折れて顔から倒れねじれて牛肉になってゆく 

シースルーエレベーターを借り切って心ゆくまで土下座がしたい  

池尻のスターバックスのテラスにひとり・ひとりの小雨決行 



▼笹井宏之

ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす

風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが  

真水から引き上げる手がしっかりと私を掴みまた離すのだ  

それは世界中のデッキチェアがたたまれてしまうほどの明るさでした  

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい  

水田を歩む クリアファイルから散った真冬の譜面を追って  

一生に一度ひらくという窓のむこう あなたは靴をそろえる  

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい 

拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません 

風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける  



▼佐々木あらら

庭先でゆっくり死んでゆくシロがちょっと笑った夏休みです  

それなりに心苦しい 君からの電話をとらず変える体位は  

外に出すのが愛なのか中で出すのが愛なのか迷って出した  



▼佐々木実之

本当に愛されてゐるかもしれず浅ければ夏の川輝けり  



▼笹公人

憧れの山田先輩念写して微笑(ほほえ)む春の妹無垢(むく)なり  

「ドラえもんがどこかにいる!」と子供らのさざめく車内に大山のぶ代 

シャンプーの髪をアトムにする弟 十万馬力で宿題は明日  

中央線に揺られる少女の精神外傷(トラウマ)をバターのように溶かせ夕焼け  

三億円の話をすると目をそらす国分寺「喫茶BON」のマスター  



▼佐藤真由美

この煙草あくまであなたが吸ったのね そのとき口紅つけていたのね 

今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて  



▼しんくわ

シャツに触れる乳首が痛く、男子として男子として泣いてしまいそうだ 

我々は並んで帰る (エロ本の立ち読みであれ五人並んでだ)

【た】

▼辰巳泰子

乳ふさをろくでなしにもふふませて桜終はらす雨を見てゐる

橋桁にもんどりうてるこの水はくるしむみづと決めて見てゐる  

男らは皆戦争に死ねよとて陣痛のきはみわれは憎みゐき  

うたがはぬ力授かり生まれ来(こ)し君らに母といふ泥の床  

どこまでも嘔吐してふるさくらばな うそでないからこそ罪ぶかい 

どう夕焼けていいかわからない空のやう子を抱きどこまでも一人の私 



▼田村元

サラリーマン向きではないと思ひをりみーんな思ひをり赤い月見て 

封筒に書類を詰めてかなしみを詰めないやうに封をなしたり 

俺は詩人だバカヤローと怒鳴って社を出でて行くことを夢想す  



▼俵万智

愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う  

はなび花火そこに光を見る人と闇を見る人いて並びおり  

「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛を言う君  

思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ  

子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え  

いくつかのやさしい記憶新宿に「英(ひで)」という店あってなくなる  

砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている  

寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら  

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日  

バンザイの姿勢で眠りいる吾子よ そうだバンザイ生まれてバンザイ  

大きければいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋  

「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ  

愛することが追いつめることになってゆくバスルームから星が見えるよ  

男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす 

愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人  

明治屋に初めて二人で行きし日の苺のジャムの一瓶終わる  

「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの  

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ  

落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し  

シャンプーの香をほのぼのとたてながら微分積分子らは解きおり  

砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね  



▼千種創一

煙草いりますか、先輩、まだカロリーメイト食って生きてるんすか  

あっ、ビデオになってた、って君の声の短い動画だ、海の



▼千葉聡

フォルテとは遠く離れてゆく友に「またね」と叫ぶくらいの強さ  

「おはよう」に応えて「おう」と言うようになった生徒を「おう君」と呼ぶ



▼堂園昌彦

僕もあなたもそこにはいない海沿いの町にやわらかな雪が降る  

ロシアなら夢の焚き付けにするような小さな椅子を君が壊した  

ほほえんだあなたの中でたくさんの少女が二段ベッドに眠る  

秋茄子を両手に乗せて光らせてどうして死ぬんだろう僕たちは



▼土岐友浩

そのひとは五月生まれで「了解」を「りょ」と略したメールをくれる

ヴォリュームをちょうどよくなるまで上げる 草にふる雨音のヴォリューム  


▼鳥居

目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ

【な】

▼永井祐

月を見つけて月いいよねと君が言う  ぼくはこっちだからじゃあまたね

1千万円あったらみんな友達にくばるその僕のぼろぼろのカーディガン

大みそかの渋谷のデニーズの席でずっとさわっている1万円  

パチンコ屋の上にある月 とおくとおく とおくとおくとおくとおく海鳴り

元気でねと本気で言ったらその言葉が届いた感じに笑ってくれた  

会わなくても元気だったらいいけどな 水たまり雨粒でいそがしい  

日本の中でたのしく暮らす 道ばたでぐちゃぐちゃの雪に手をさし入れる

わたしは別におしゃれではなく写メールで地元を撮ったりして暮らしてる 

おじさんは西友よりずっと小さくて裏口に自転車をとめている  

あの青い電車にもしもぶつかればはね飛ばされたりするんだろうな  



▼中澤系

牛乳のパックの口を開けたもう死んでもいいというくらい完璧に  

3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって  

ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ  

かみくだくこと解釈はゆっくりと唾液まみれにされていくんだ  

空くじはないでもたぶん景品は少し多めのティッシュだけだよ  

糖衣がけだった飲み込むべきだった口に含んでいたばっかりに  

小さめにきざんでおいてくれないか口を大きく開ける気はない  

出口なし それに気づける才能と気づかずにいる才能をくれ  



▼永田紅

ああ君が遠いよ月夜 下敷きを挟んだままのノート硬くて 

人はみな慣れぬ齢を生きているユリカモメ飛ぶまるき曇天  

対岸をつまずきながらゆく君の遠い片手に触りたかった

【は】

▼萩原慎一郎

非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている  

ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる  



▼初谷むい

エスカレーター、えすかと略しどこまでも えすか、あなたの夜をおもうよ  

イルカがとぶイルカがおちる何も言ってないのにきみが「ん?」と振り向く



▼服部真里子

野ざらしで吹きっさらしの肺である戦って勝つために生まれた  

水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水  

春だねと言えば名前を呼ばれたと思った犬が近寄ってくる  



▼花山周子

蒲団より片手を出して苦しみを表現しておれば母に踏まれつ  

どうしても君に会いたい昼下がりしゃがんでわれの影ぶっ叩く



▼早坂類

カーテンのすきまから射す光線を手紙かとおもって拾おうとした  

かたむいているような気がする国道をしんしんとひとりひとりで歩く  



▼東直子

え、という癖は今でも直らない どんな雪でもあなたはこわい  

廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て  

ママンあれはぼくの鳥だねママンママンぼくの落とした砂じゃないよね  

特急券を落としたのです(お荷物は?)ブリキで焼いたカステイラです  

好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ  

電話口でおっ、て言って前みたいにおっ、って言って言って言ってよ  

ばくぜんとおまえが好きだ僕がまだ針葉樹林だったころから  



▼平岡直子

三越のライオン見つけられなくて悲しいだった 悲しいだった  

海沿いできみと花火を待ちながら生き延び方について話した  

すごい雨とすごい風だよ 魂は口にくわえてきみに追いつく  



▼穂村弘

「凍る、燃える、凍る、燃える」と占いの花びら毟る宇宙飛行士  

呼吸する色の不思議を見ていたら「火よ」と貴方は教えてくれる  

校庭の地ならし用のローラーに座れば世界中が夕焼け  

「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」  

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は  

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、きらきらとラインマーカーまみれの聖書  

アトミック・ボムの爆心地点にてはだかで石鹸剥いている夜  

恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の死  

ハーブティーにハーブ煮えつつ春の夜の嘘つきはどらえもんのはじまり  

ハロー 夜。 ハロー 静かな霜柱。ハロー カップヌードルの海老たち。  
 
「十二階かんむり売り場でございます」月のあかりの屋上に出る  

目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき  

夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう  

終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて  

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ  

錆びてゆく廃車の山のミラーたちいっせいに空映せ十月  

惑星別重力一覧眺めつつ「このごろあなたのゆめばかりみる」  

目薬をこわがる妹のためにプラネタリウムに放て鳥たち  

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい   

子供よりシンジケートをつくろうよ「壁に向かって手をあげなさい」  

卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け

【ま】

▼正岡豊

みずいろのつばさのうらをみせていたむしりとられるとはおもわずに

だめだったプランひとつをいまきみが入れた真水のコップに話す  

きっときみがぼくのまぶたであったのだ 海岸線に降りだす小雨  



▼枡野浩一

殺したいやつがいるのでしばらくは目標のある人生である  

好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君  

こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう  

手荷物の重みを命綱にして通過電車を見送っている  

だれからも愛されないということの自由気ままを誇りつつ咲け  

わけもなく家出したくてたまらない 一人暮らしの部屋にいるのに  

さよならをあなたの声で聞きたくてあなたと出会う必要がある  

こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう  



▼松木秀

カップ焼きそばにてお湯を切るときにへこむ流しのかなしきしらべ  

核発射ボタンをだれも見たことはないが誰しも赤色と思う  

偶像の破壊のあとの空洞がたぶん僕らの偶像だろう  

輪になってみんな仲良くせよただし円周率は約3とする  

ああ闇はここにしかないコンビニのペットボトルの棚の隙間に  



▼松村正直

手を出せば水の出てくる水道に僕らは何を失うだろう 

「やさしい鮫」と「こわい鮫」とに区別して子の言うやさしい鮫とはイルカ  

声だけでいいからパパも遊ぼうと背中に軽く触れて子が言う 

力まかせに布団をたたく音がする、いや布団ではないかもしれぬ  

極刑を求める声の清しさに揺れつつ昼のうどんを啜る 

忘れ物しても取りには戻らない言い残した言葉も言いに行かない  



▼水原紫苑

白鳥はおのれが白き墓ならむ空ゆく群れに生者死者あり  

われらかつて魚なりし頃かたらひし藻の蔭に似るゆふぐれ来たる  

きらきらと冬木伸びゆく夢にして太陽はひとり泪こぼしぬ  

まつぶさに眺めてかなし月こそは全(また)き裸身と思ひいたりぬ 

殺してもしづかに堪ふる石たちの中へ中へと赤蜻蛉(あかあきつ) ゆけ  

水浴ののちなる鳥がととのふる羽根のあはひにふと銀貨見ゆ  



▼光森裕樹

六面のうち三面を吾にみせバスは過ぎたり粉雪のなか  

しろがねの洗眼蛇口を全開にして夏の空あらふ少年  

ドアに鍵強くさしこむこの深さ人ならば死に至るふかさか  

あかねさすGoogle Earthに一切の夜なき世界を巡りて飽かず  



▼望月裕二郎

さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく  

おもうからあるのだそこにわたくしはいないいないばあこれが顔だよ

われわれわれは(なんにんいるんだ)頭よく生きたいのだがふくらんじゃった

【や】

▼柳澤真実

遠くから手を振ったんだ笑ったんだ 涙に色がなくてよかった  

SMAPと6Pするより校庭で君と小指でフォークダンスを  



▼山崎聡子

さようならいつかおしっこした花壇さようなら息継ぎをしないクロール  

縁日には、おかまの聖子ちゃんが母さんと来ていた、蜻蛉柄の浴衣で



▼山田航

たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく  

靴紐を結ぶべく身を屈めれば全ての場所がスタートライン  

鉄道で自殺するにも改札を通る切符の代金は要る  



▼藪内亮輔

傘をさす一瞬ひとはうつむいて雪にあかるき街へ出でゆく  

枯れたからもう捨てたけど魔王つて名前をつけてゐた花だつた



▼雪舟えま

おにぎりをソフトクリームで飲みこんで可能性とはあなたのことだ  

目がさめるだけでうれしい 人間がつくったものでは空港がすき  

人類へある朝傘が降ってきてみんなとっても似合っているわ  

逢えばくるうこころ逢わなければくるうこころ愛に友だちはいない  

ホットケーキ持たせて夫送りだすホットケーキは涙が拭ける

ふたりだと職務質問されないね危険なつがいかもしれないのに



▼横山未来子

胸もとに水の反照うけて立つきみの四囲より啓(ひら)かるる夏  

あふむけに運ばれてゆくあかるさの瞼の外に遠き雲あり 

ひとはかつてわが身めぐりを指さして全てのものを名づけたりけり 



▼吉岡太朗

後ろから乗って前から出るまでの市バスは長い一本の橋  

新しい世界にいない君のためつくる六千万個の風鈴



▼吉川宏志

鳥の見しものは見えねばただ青き海のひかりを胸に入れたり  

いわし雲みな前を向きながれおり赤子を坂で抱き直すかな  

四十になっても抱くかと問われつつお好み焼にタレを塗る刷毛  

窓辺にはくちづけのとき外したる眼鏡がありて透ける夏空  

背を向けてサマーセーター着るきみが着痩せしてゆくまでを見ていつ  

画家が絵を手放すように春は暮れ林のなかの坂をのぼりぬ  

NO WAR とさけぶ人々過ぎゆけりそれさえアメリカを模倣して  

我を遠く離れし海でアザラシの睫毛は白く凍りつきたり  

瓦礫道 そこに死体があるらしくぼかしをよけて兵士は歩む 

死ぬことを考えながら人は死ぬ茄子の花咲くしずかな日照り 

花水木の道があれより長くても短くても愛を告げられなかった 

夕雲は蛇行しており原子炉技師ワレリー・ホデムチュク遺体なし  

画家が絵を手放すように春は暮れ林のなかの坂をのぼりぬ  

風を浴びきりきり舞いの曼珠沙華 抱きたさはときに逢いたさを越ゆ 

子を産みし日まで怒りはさかのぼりあなたはなにもしなかったと言う

天皇が原発をやめよと言い給う日を思いおり思いて恥じぬ  

秋の雲「ふわ」と数えることにする 一ふわ二ふわ三ふわの雲 



▼米川千嘉子

桃の蜜手のひらの見えぬ傷に沁む若き日はいついかに終わらむ  

鳩のやうな新人銀行員の来て青葉の新興住宅地に迷ふ 

お軽、小春、お初、お半と呼んでみる ちひさいちひさい顔の白梅 

空爆の映像はててひつそりと〈戦争鑑賞人〉は立ちたり  

たましひに着る服なくて醒めぎはに父は怯えぬ梅雨寒のいへ  

かしの実を拾へばおもふ電極の帽子のなかをゆく白き旅  

春の鶴の首打ちかはす鈍き音こころ死ねよとひたすらに聴く 

綾蝶(あやはべる)くるくるすつとしまふ口ながき琉球処分は終はらず 

名を呼ばれしもののごとくにやはらかく朴の大樹も星も動きぬ  

〈女は大地〉かかる矜持のつまらなさ昼さくら湯はさやさやと澄み

【わ】

▼脇川飛鳥

痩せようとふるいたたせるわけでもなく微妙だから言うなポッチャリって 

きのうの夜の君があまりにかっこよすぎて私は嫁に行きたくてたまらん

あとがき

約70人の300首を紹介しました。
現代短歌、どうですか? おもしろそうですか? 
おもしろそうな人がいたら、どんどん本を探したりしてみてください。ツイッターをやってる人もいますよ。短歌に深入りしてくれたらうれしいです。


これをつくったのは、「現代短歌」でググってみても検索の上位にあまりよい短歌紹介のページがないことに気がついたからです。どこのサイトをみても、一人から数人ずつしか紹介してないんです。歌があまり載ってなくて、歌集を買わせようとばかりしている。

歌集ももちろんいいんですが、本を探してお金を出して買わなくても、その前にネット上で気軽に読めるページがあってもいいですよね。だから、一度にまとめてたくさんの短歌を見れるページをつくりました。
無料だけどそのかわり一人の歌人の作品はほんのすこしずつしか読めないし、作者の情報がないんです。これはほんの入り口ですので、気になったらもっと調べてみてください。


たくさんの人をおすすめしたので、最後にわたしの宣伝もさせてください。

わたくし工藤吉生の作品はこちらです。短歌研究新人賞の受賞作品30首です。
http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/52227154.html

ツイッターは @mk7911 です。


ここまでお読みくださりありがとうございました。
それではまたどこかでお会いしましょう。

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