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【大恋愛】で登場した「脳みそとアップルパイ」を読んでみたいよね。~快速特急、ホントに降りられんの?~

大恋愛~僕を忘れる君と~でシンジが妻・尚にささげた本として登場する「脳みそとアップルパイ」。冒頭「共に砂漠を歩こうとしたNさんに捧ぐ」で始まり、処女作「砂にまみれたアンジェリカ」から20年後の発売の本です(ドラマ上でね!)。ドラマで読み上げられた部分だけ読みたいよね・20万部突破の販売部数

更新日: 2019年03月20日

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orihoanさん

最終話で、シンジがやさしく尚に脳みそとアップルパイをよみきかせてあげます。その内容をお届けします。

順番が一部いれこになっていたり、わからない点がありますよ!

ー共に砂漠を歩こうとしてくれたNさんに捧ぐー

彼女はあの頃から、いつも急いでいた。
まるでなにかに追われるように、いつもいつも走っていた。

人は誰しも、残りの持ち時間に追われている。

そして死に向かって走っている。

だからと言って、そのことを普段は意識しないものだ。

でも彼女は違った、生まれた時から残り少ない持ち時間を知っているかのごとく、全力で走っていた。

彼女には婚約者がいた。

若年の女性には珍しいであろう、所謂お見合いという形で出会った二人には、共通点があった。
その共通点は、思いの外二人の距離を近くさせた。

何度かの逢瀬を重ねるうちに、お互いを適切な結婚相手だと認めることができたのであろう。
最終的に、肉体的相性も確かめ合って、2人は正式に婚約をした。

その事実が、彼女の人生をどう左右させたのかは、今となっては分からない。
しかし、少なくとも俺にとっては、彼女の婚約者という存在が、何よりも高く巨大な壁であったことは間違いない。

それは、決して超えることが出来ず、何をどう足掻いたとて、届くはずのない壁だった。

女医だと聞いていたが、人を見下す高慢ちきな女に見えた。

自分でも忘れかけていた遠い昔の作品が見知らぬ人の体の中でこんなふうに息づいている事に驚きを感じた。

僕はなぜか彼女を直視することが出来ず、ずっと水漏れではがれかかった壁に向かって立っていた。

シンジと出ても気付かないのか、と半分安堵し、半分失望した。

間宮真司のファンなんて調子の良いこと言いやがって。

俺が背を向けて歩き出すと「ねぇ」、と彼女がまた声をかけて来た。

なんだよ、まだ言うことあるのかよ、と思って振り返るとなにかを彼女が空に投げた。

きれいな放物線を描いて俺の手に落ちて来たのは、あの黒酢はちみつドリンクだった。

彼女の人生は、俺が想像するよりも壮大で波乱な人生だった。

彼女の母親は、彼女を若くして―――(?)

そして、父親は彼女が中学校に入る前に亡くなった。

彼女の母親は、自分の夫の死を―――(?)

ことしかできないまま、自らの人生を彼女の人生へと費やした。

そんな母親の―――(?)

彼女は勉学に励み、母親の仕事を手伝うようになった。

彼女の仕事が軌道に乗り―――(?)

すっかり一人前の社会人として自立をし、彼女と彼女の母親は―――(?)

彼女にとって母親は、母親以上の存在となり、良き理解者であった。

彼女の―――(?)

それは、彼女が恋愛に対してドライな考え方を―――(?)

婚約者と出会う前に、他の男性と関係がなかったわけではない。

「快速特急、ホントに降りられんの?降りたとしても道じゃないよ、砂漠だよ。砂漠歩けんの?」と聞くと、彼女は即座に「歩く。」と答えた。

次の瞬間、彼女の頭がいきなり俺の頭をめがけてぶっ飛んできて、気が付くと俺たちは長いキスをしていた。

もうこのくらいかな?と思って顔を離すと、彼女は俺を見つめたまま「あっち行こう」とベッドを指さした。

もう一か月近くシーツも枕カバーも替えていないベッドに行くのは躊躇されたが、他に行くところももはやなかった。

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