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【洒落怖 シリーズ】 沙耶ちゃん

数ある洒落にならない怖い話の中で同作者によるシリーズ物の作品を紹介します。今回の作品は『沙耶ちゃんシリーズ』です。

更新日: 2019年03月28日

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この記事は私がまとめました

Ghostailさん

『沙耶ちゃん』シリーズ

この話は俺が20代の後半に正規の仕事を辞めてしばらく深夜のコンビニで
アルバイトをしていた時の事だ。
そこには「沙耶」っていう女子大生の娘がいたのだが少し変わった娘で、
所謂「霊感」があり、彼女と一緒にいると変わった事に遭遇することがあった。
好奇心と彼女への下心で一緒にいる事が多くなっていたが、
その好奇心がとんでもない事件へと発展してしまう事に・・・・。

「洒落怖シリーズ」は同作者によって書かれた怪異譚。
同じ登場人物や語り部などが登場する複数の話を
シリーズ化した作品を載せています。

第01話『坊主』

いまはもう30代も後半に突入している俺ですが、
20代の終わりごろに、正規の仕事を辞めてフリーターしてた頃があったんだ。

夜のほうがいい金になるんで、コンビニの深夜アルバイトをしてたりしてね。

ある大手に勤めていた時のこと。

俺の入る23時からのシフトには、主に梶っていう体育大生と、
沙耶っていう女子大生がいたんだ。

梶はまあ鍛えてるだけあって見た目からごついヤツで、性格も陽気だった。

一方で沙耶ちゃんは、陰気ってわけじゃないが、無口で会話は弾まなかった。
顔はめちゃめちゃ可愛かったんだけどね。

朝までの俺たちと違って、沙耶ちゃんは0時上がりだった。

近くに住んでるらしかったけど、なんとなく心配ではあった。

若い女の子だし。梶もいつも「気をつけて帰れよ」って声かけてたな。

たしか、バイトを始めて半年ぐらいの頃だったと思う。

夕方のシフトのヤツが欠勤したとかで、俺にヘルプの要請が来たのよ。

17時から0時まで。

梶と沙耶ちゃんはいつもどおりだったから、
その日は沙耶ちゃんと同時に退勤することになったわけね。

一緒に店は出たんだけど、改めて『送ってくわ』ってのもなんか言いづらかったんで、

彼女のあとをついて歩いたんだわ。逆方向だったんだけどww

ちょっと歩くと左手に公園、つか、グランドがある。なんでか彼女、その敷地に入ってく。

入り口は一つしかないから、中を突っ切って近道するとも考えられないんだが。

グランドの一角に、トイレと雑草にまみれたブランコがあった。

『ああ、トイレか』と思って、グランドの入り口で立ち止まって待った。

だけど彼女、ブランコに行くんだ。

2つある右側に座って、なんつーか・・・アンニュイな雰囲気を漂わせてる。

思い切ってそばに行って聞いてみた。

「何してんの?帰らんの?」

そしたらさあ彼女、隣りのブランコを見ながら言うんだよ。

「この子と話をしてあげないと、淋しがって他の子どもを連れて行っちゃうから」

誰も乗ってないんだけどねえ、そのブランコ。

でもまあ俺も、『沙耶ちゃんって見える人だったんだな』ぐらいで納得した。

ほら、こんな板に来てるぐらいだからwww

面倒なんで、後は会話形式にさせてもらうな。

「何歳ぐらいの子どもよ?男?」

「小学5年生・・・って、何歳?男の子だよ」

「なんで死んだの?交通事故?」

「ううん・・・池に落ちたんだって・・・」

沙耶ちゃんの通訳によると、その坊主は母子家庭で、
母親も夜遅くまで仕事だったようだ。

ある晩、1人で留守番をしてた坊主は、
近所の沼にザリガニを取りに行こうと思いついた。

昼間にでかい蟇蛙をつかまえていたんで、
エサにすればかなりの釣果が期待できるはずだった。

泥に足を取られて沈んだ坊主の体は、数日浮き上がることもできなかったらしい・・・

俺は思わず、空いているほうのブランコに向かって言った。

「ドジだなあ坊主(笑)」

すると右腕のあたりから、子ども特有の甲高い声が聞こえた。

「しね」

全身に鳥肌が立ったな。

沙耶ちゃんが慌てた様子で、俺の右腕にしがみついてきた。

そのまま公園の外に引っ張っていかれて、真剣に叱られたよ。

意外にいい人だね、彼女。

職なしでごく潰しの俺なんか、憑り殺されようが誰も悲しまないんだがww

幸いというか、坊主は俺にも公園利用者にも何もしなかった。

沙耶ちゃんが言うには、それ以来姿が消えたらしい。

いまでもたまに花を供えてるのは、恥ずかしいから内緒な。

第02話『割り箸』

沙耶ちゃんがそういう子だと知ってから、思い出して合点が行ったことがある。

俺がコンビニでバイトを始めたばかりの頃、
いつも0時を回ってから来る女の客があった。

格好と化粧から想像するにキャバクラ嬢。買う物は弁当とビールを1本。

コンビニって弁当を渡すときに、一緒に箸を渡すだろ?

最初は俺も当然のように、キャバ嬢の袋に割り箸を入れた。

そうしたら彼女、わざわざ「家に帰って食べるから要りません」って断るわけ。

エコなキャバ嬢だったねw服の面積も最小限だったしwww

ある日、少し早い時間に彼女が現れた。レジにいたのは沙耶ちゃんだった。

俺は商品の棚に張り付きながら、
沙耶ちゃんが箸を断られるだろう様子を観察していた。

沙耶ちゃんは箸を入れた。なぜか2膳。キャバ嬢は断らないんだ。そのまま店を出て行く。

俺はキャバ嬢の後を目で追った。彼女は駐車場の車の助手席に乗り込んだ。

「ああ、今日はデートかあ(笑)」

「そうらしいですね」

「箸2膳とは気を利かせたね」

「あの人がそうしてほしかったみたいなので」

そのときは、沙耶ちゃんの神経の細かさに感心しただけだった。

でも、今考えると妙だったんだよな。

沙耶ちゃんは、

『彼女が普段1人で来ること』も、『箸にこだわっていること』

も知らなかったはずなんだから。

第03話『香典泥棒』

長い余談で悪い。ここからが本題。

グランドでの一件があってから、
俺と沙耶ちゃん、それに事情を話した梶も含めて、
俺たちはよく会話するようになった。

沙耶ちゃんが無口だったのは、見える自分と見えない俺たちとの、
感覚の食い違いが怖かったからだ。

夜中のコンビニは、たまに緊急の用を足しに来るヤツがいる。

香典袋と黒い靴下なんてその典型。

そういう客が来ると、俺たちは沙耶ちゃんに

「亡くなったの誰だと思う?」って、

霊感試しみたいなことをやった。

悪趣味だったなあw

沙耶ちゃんは笑って答えなかったけどね。

でも1回だけ「わからない」って、はっきり答えたことがあったんだよ。

30代中盤ぐらいの男だったかな。顔はもう忘れた。黒靴下と黒いネクタイを買って行った客。

レジで対応しているときから、沙耶ちゃんの様子はなんとなくおかしかった。

落ち着きがないっていうか、客と視線を合わせようとしない。

俺から見たら普通の客だったんだが。

沙耶ちゃんの困惑した様子に、俺と梶は俄然興味を惹かれちまった。

梶が客をそっと追っかけて、俺は沙耶ちゃんと留守番。

「お葬式に行くのに、あんなに何にも感じてない人って初めて・・・」と沙耶ちゃん。

梶は30分ぐらいして戻ってきた。

「やばいわ、あれ」

「何?変質的なん?」

「つか・・・香典泥棒じゃ・・・」

「マジ?なんで?」

「途中で靴下履き替えてネクタイして、その先で通夜やってた家に入ろうとした」

すでに出入りの絶えていた喪中の家は、玄関を開け放してあったらしい。

あの客は少しためらったあと、門をくぐって玄関先に立った。

「で、どうしたのよ?」

「もちろん臨戦態勢でしょwお客さん落し物ですよって声かけてやった」

「おまえ、すげーなw」

「ww飛び上がって驚いてたよ。そのまま逃がしちゃったけど」

「お手柄体育大生の称号を逃したなあ」

梶を持ち上げまくりながら、俺は沙耶ちゃんを横目で観察してた。

沙耶ちゃんは梶に憧憬のような視線を送りながら、話に聞き入ってた。

ちょっとだけムカついたねww

ただな・・・ああいう霊感の強い人間っていうのは、
やっぱり何かで苦労してるんだな。

話が終わったあと、沙耶ちゃんが梶に言ったんだ。

「ありがとう。いつもはわかってもどうすることもできないから、
 こんなふうに役立ててくれて嬉しい」って。

見えりゃ気にするわな。沙耶ちゃんのせいじゃないんだけどさ。

後になって聞いた話だけど、霊感って、
都合のいいときだけ出し入れできるものじゃないんだって。

沙耶ちゃんにとっては、霊体までひっくるめて『個人』だったみたいだ。

祖父さんが守護霊でついてる孫娘は、男っぽく見えるし、
軍人の家系は、本人がどんなに物腰が柔らかくても、高圧的に感じるらしい。

背後の霊に好かれたから、本人とはそれほど気が合わなくても、
人間関係が上手く行くこともあったようだ。

そんなわけのわからない世界の中で、沙耶ちゃんが良識を保っていられたのは、
彼女の人格がものすごく高次元のものだったからだと、俺は思ってる。

第04話『ナマてるてる坊主』

箪笥に、ばあさんが畳まれて入っていた。

かなり昔に読んだB級オカルトだが、意外に長いこと印象に残っている。

幽霊というのは、どんな形をして出てくるのだろう。

グロテスクな死体や、ありえない不気味な姿をしているのだろうか。

それなら沙耶ちゃんのような人間は、神経が参ってしまわないのか。

「ふつーですよ」

バックヤードの暗い照明でもわかるほど明るい笑顔で、沙耶ちゃんは答えた。

「気持ちの悪い霊は、見ないようにしていますから」

「へ?ってことは、見ないですむこともできるわけ?」と俺。

ちょっと前に彼女は、
『自力で霊能力を出したり引っ込めたりはできない』
と言っていたはずだ。

「んー……」

思案顔の沙耶ちゃんは、でも非常に的確な説明をしてくれた。

例えば、様子のおかしい人間がいるとする。そんなとき、他人は目を逸らせるだろ。

沙耶ちゃんの場合、やばそうな空気を感じると、
うつむいて周囲を見ないようにするんだそうだ。

もしくは、反対の方向に目を向けるか。

直接見てしまわない限りは、頭の中にイメージが浮かんでこようが、
声を聞こうが、それほど怖くはないらしい。

霊に負けてる霊能者ってのが、沙耶ちゃんらしくてちょっと笑えた。

そんな沙耶ちゃんが、不意打ちを食らったことがあった。

彼女が小学生のときに、登下校の道の途中に豪邸があったそうだ。

同級生の家で、父親は医者。

ある夏の日、沙耶ちゃんは日の暮れかけた時間に、

1人でその家の前を通ったんだ。

学校は集団下校を推奨していたが、人付き合いの苦手だった彼女は、
あえて遅くまで学校に残ることが多かったらしい。

鮮やかな夕焼けが、逢魔の闇を隠していた。

「明るかったから気が緩んでたの」と、今の沙耶ちゃんが説明する。

前方から1台の外国車が走ってきた。

ハンドルは国産仕様にしてあるらしく、右側の運転席に実年の男が乗っている。

授業参観などで何度も見たことのある、豪邸の主の父親だった。

そして助手席には子ども……とも言えない、色あせた何かが乗っていた。

車が近づき、沙耶ちゃんの真横をかすめた。助手席の物体が目の前に来た。

白に近いほど色の抜けたデニムのショートパンツ。

元は黄色と黒だっただろう、汚れた横じまのTシャツ。

ひょろっと背の高い、4年生ぐらいの少年。

助手席に膝立ちになり、頭を天井につけていた。

正確に言えば……首が骨ごと折れ曲がり、天井からヒモで吊り下げられていた。

車は沙耶ちゃんから離れると、不自然に蛇行した。

そしてすぐに、豪邸のブロック塀に突っ込んだ。

沙耶ちゃんは一連の光景をよく把握できないまま、車に駆け寄った。

運転席の父親は、フロントガラスに頭を打ってグッタリとしていた。

助手席の少年は折れた首をブルンブルンと振って、ヒモの呪縛から逃れようとしていた。

「事故のショックで泣いてたことにされちゃったけど」

野次馬が集まってきたとき、沙耶ちゃんは車のバンパー付近で、
悲鳴をあげながら泣いていたそうだ。

「そりゃ……可哀相だったなあ」

現場を想像して同情すると、沙耶ちゃんはまた、
バックヤードの暗い照明でもわかるほど明るい笑顔を見せた。

第05話『親父の病気』

沙耶ちゃんにいろんなものが見え始めたのは、小学生の高学年ぐらいだそうだ。

彼女の父親と母親は、次女である沙耶ちゃんにはあまり興味を抱かなかった。

家はそこそこ裕福だったようだが、沙耶ちゃんは食事をもらうのにも頭を下げるという、
劣悪な環境に身を置いていたようだ。

ストレスのすべてをぶつけてくる親に対して、
沙耶ちゃんは先回りして逃れる必要があった。

親の顔色をうかがい、金銭の制約を持ち出されないようにするために。

彼女に最初に芽生えたのは、霊を感じる能力ではなく、
他人の心を読み取る感応力だった。

テレパスと言い換えたほうがわかりやすいか。

霊能力はオマケ。むしろ要らないと彼女は言っていた。

バイトで親しくなってから数ヶ月後、
俺はプライベートでも沙耶ちゃんと会うようになっていた。

……と言っても、彼女が大学から帰ってくるときに、
車を用意するだけの関係だったがorz

俺が30を目前に控えたある日、沙耶ちゃんが真面目な口調で切り出した。

「まことさんって、ご家族に恵まれてないですよね?」

「まあ当たってる」

「……結婚は考えてないんですか?」

「相手いねーしww」

内心、期待に弾けそうになりながらそう答えた。

いま考えると、馬鹿すぎ俺……

「探したほうがいいですよ。
 まことさんは、家族がなくなったらダメになる人だと思います」

「いや、いないことはないんだけどね(汗)」

『沙耶ちゃん、俺の家族にならない?』って言えっつーの俺……

俺の家族は、親父しかいなくなっていた。

母親は、俺が高校に入ったばかりのころに蒸発した。浮気相手と。

姉貴がいたが、なぜか母さんのことは棚に上げて、親父ばかり非難していた。

そして駆け落ちという形で、自らも家を出て行った。

俺には親父の非がわからなかった。

子どもだったからかもしれない。いまもわからないけど。

親類でひしめく田舎の集落のことだ。

俺の家庭のことはすぐに知れることになった。

同情が多数だったと思うが、若かった俺は、母や姉を恥部とすることが嫌で村を出た。

高校は卒業しなかった。

沙耶ちゃんを送り届けてから、なんとなく気になって親父に電話をした。

そういえば、電話すらここ何年もしていなかった。

親父は浮かれた様子で、俺の連絡を喜んだよ。そして言った。

『今日な、医者に肝臓癌だと言われた。
 俺の顔を見られるのもあと一年だぞ』

余命をはるかに凌いで、2年後に親父は他界した。

俺は自宅アパートと故郷を飛行機で行ったり来たりして、
自分が納得するまで親父の余生につき合った。

臨終の少し前、親父は言った。

「お前が電話して来なかったら、
 このときまでお前には知らせないつもりだった」

沙耶ちゃんには感謝してるよ。

もし彼女に再会することができたら、真っ先にこの話を伝えてやりたい。

彼女は自分の能力を含めた、存在自体を消したいと思っていたようだから。

梶が無事に3年に進級した。

留年してやがったから、知らせを聞くまで俺もなんとなくやきもきしてた。

お祝いに飲もうということになって、
バイトが終わった朝からファミレスにしけこんだんだ。

俺も梶も、睡眠時間を削っても気にならない性質だったし。

「体育大って、単位取れなかったら潰し効かないんだろ?
 中退にならなくてよかったなあ」

「まことさんが言うと重みあるねwwさすが中卒」

「うるせえよwこれで2年は安泰だろ。俺が徹夜仕事きつくなったら、店頼むな」

梶の大学は、3年生から4年生はエスカレーターになっているそうだ。

次は卒業をめざせばいいってことになる。

「えー?あの店治安が悪いから、夜中はひょろいの入れないんでしょ?

まことさんの後が見つからなかったら、俺、当分1人?」

梶が不満に思うのも無理はない。

店の場所は繁華街の外れで、夜中になると客層はひどく低レベルになる。

俺が採用されたのだって、武道の段持ちって理由なんだ。

「真面目な話、俺、バイトでつないでる余裕がなくなってきてんのよ。
 飛行機代稼がないと」

梶には親父の容態は伝えてあった。

「ああ、そっか……そろそろ定職持たないと、沙耶姫も可哀相だしw」

なぜそっちに話を振るかなあ……orz

「沙耶ちゃんは関係ねーよ、馬鹿」

「『おやすみなさあい♪』の携帯メールが入るのにー?」

「……頼めばお前にも入れてくれるよ」

我ながら不機嫌な声で答える。

俺が沙耶ちゃんとプライベートで会うようになってから、1年以上が過ぎていた。

なのに俺は未だに、彼女の運転手としての域を出ていない。

なんつか……容姿的にも性格的にも彼女は完璧すぎて、
俺には入り込む余地がないって感じで……

まあ、そんなことはいいんだよ!って俺が独りごちてる間に、

梶のヤツが沙耶ちゃんに電話を入れていた。

「沙耶姫、ここに来るってw」

……絶対に、よくやったとは言わねえぞ。

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