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「さらざんまい」考察【幾原邦彦】ネタバレあり

おそらく何十年後も名作として語り継がれているであろう「さらざんまい」をじっくり考察します。ネタバレ含みます。視聴後に読むことを強くオススメします。

更新日: 2019年07月29日

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おそらく何十年後も名作として語り継がれているであろう「さらざんまい」をじっくり考察します。ネタバレ含みます。視聴後に読むことを強くオススメします。

yomitoki3さん

さらざんまい

アニメ「さらざんまい」は2019年4月から6月まで放送されていた幾原邦彦監督の作品です。
幾原監督といえば名作「少女革命ウテナ」や「輪るピングドラム」などの監督もされている方です。
幾原作品を一つも見たことがない方はまずこちらの予告映像をご覧ください。

見てなんとなく分かると思いますが、幾原監督はメタファーを多用し非常に難解なテーマを扱うことで有名です。また、それにも関わらず不思議なキャッチーさを持つことを特徴としています。

本まとめではそんな幾原監督の作品「さらざんまい」の考察を行います。

アマゾンプライムに登録されている方はこちらから見られます。
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07QH8JJT2/ref=atv_hm_hom_3_c_lgORqa_brws_7_14

以下ネタバレあります。
本まとめは視聴後に読まれることを強くオススメします。

目次

1.さらざんまいの何が優れているか
1−1.多層構造
1−2.対称構造
1−3.登場人物のつながり
1−4.参照作品抜粋

2.欲望に関するテーマ考察
2−1.㋐とは何か
2−2.カッパ(コミットメント)vsカワウソ(デタッチメント)
2−3.白ケッピ(希望)vs黒ケッピ(絶望)
2−4.欲望
2−5.2章まとめ

3.去勢に関するテーマ考察
3−1.エディプス・コンプレックス
3−2.河童-人間失格-豊穣の海-色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
3−3.カワウソとカッパ
3−4.カズキ-エンタ-トオイ
3−5.レオとマブ
3−6.3章まとめ

追記:「欲望の河を渡れ」とはなんだったのか?

1.さらざんまいの何が優れているか

幾原監督は本作のインタビューで何度も「今回の作品は『耽美だ』と言われたくない」と述べています。

実際『さらざんまい』はよりアート色が強かった『少女革命ウテナ』『輪るピングドラム』『ユリ熊嵐』と比較して純粋にエンターテイメントとして楽しんでもらえるように作られていると感じます。

一方で、ただポップにしたというわけではなく、エンタメに寄せるなら寄せるで究極のエンターテイメントを作ろうという気概を感じます。

後で詳しく説明しますが、『さらざんまい』は非常に多くの作品を参照して作られています。
一番有名なところで芥川龍之介の『河童』の影響を受けて作っていることが指摘されていますが、タイトルを見ても分かる通り同じ芥川の『戯作三昧(げさくざんまい)』も参照していると思われます。

戯作三昧の詳しい解説は上記リンクを読んでいただくとして、簡単なあらすじを説明しますと
小説家の主人公が過去の作品や自分を振り返って、再度小説の創作に没頭していく(三昧の境地に至る)というお話です。

おそらく幾原監督にとって『さらざんまい』はそのような立ち位置の作品であると思います。
つまり、過去の名作と過去の自分の作品を振り返り、自分が今できる究極のアニメを作った。それが『さらざんまい』であると思います。

第1章ではそんな『さらざんまい』がどう作品として優れているかを見ていきます。

1−1.多層構造

名作は多層構造を持つものです。
例えば上記リンクにある斜陽でいうと
1、華族の没落小説
2、キリスト教小説
3、日本神話小説
4、経済小説
5、政治小説
の五層構造あります。

さらざんまいも三層構造を持ちます。
1、エンタメアニメ
2、欲望に関するアニメ
3、日本の去勢に関するアニメ
です。

本まとめでは章ごとにそれぞれ解説していきます。

さらざんまいの魅力は「よく分からないけれどおもしろい」「よく分からないけど壮大」と感じる点にあると思います。
この第1章ではその「よく分からないけどおもしろい」「よく分からないけど壮大」とさせている要素を解説していきます。

「多層構造を持つこと」もその一つです。

1−2.対称構造

さらざんまいは11話構成ですが、6話で折りたたまれて話が対称になっています。
つまり1話↔︎11話、2話↔︎10話、3話↔︎9話、4話↔︎8話、5話↔︎7話、6話前半↔︎6話後半でそれぞれ話が対になっています。

「モチーフ」はCMに入る時とCM明けに出ていた図のことです。

図のように、折りたたんだ話数同士でモチーフ含め様々な点で対応関係があります。
おそらく私が気づいていない対応関係もこれ以上にあると思います。

このような対句表現は文学ではしばしやられてきたことです。
夢十夜も物語を半分で折り返して対になるように作られています。
しかしアニメでここまで綺麗に対句をやっている作品を私は見たことがありません。

さらざんまいの優れていると思う理由二つ目がこの綺麗な対称構造を持つ点です。

1話-11話の黒線で囲っている部分はストーリー進行もちょうど逆になっていることを意味しています。
アの世界に入る、アの世界から出るって何?という部分は2−1にて説明します。

1−3.登場人物のつながり

文学の最高峰『罪と罰』では登場人物を6つのグループに分けて描くことで、物語に多重性を与えています。いわゆるポリフォニーと呼ばれているものです(詳しくは上記リンクをご覧ください)。

さらざんまいでは主要キャラ5人が自分以外の4人それぞれと共通点を持つことで、物語に多面的な視点を与えています。

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