友人が、顔を直撃させた岩が滝壷にある。
救急隊が到着するまで友人が枕にしていた石がある。
友人が背負い、落下時に千切れたザックがある。
強引に滝の上まで伸ばしたザイルが、垂れ下がっていた。

友人が落ちた時に聞いた笑い声は聞こえず、目の前に現れた、
人の姿をした山の怪は、今はどこにも見えない。

鼓動がせわしなくなり、全身が硬直し、力が入らなくなった。
友人が顔から叩きつけられた滝壷の岩には、べっとりと血がついており、
流れもせず、滝のしぶきを浴び、磨き立てたように光っている。
茶色い蝶が岩にとまっていた。
その蝶は、岩についた友人の血を吸っているようだった。
蝶が血を吸うだろうか。
とにかくそう見え、そう思えた。

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