その当時私は学生でした。
用事が出来てしまい、避けていた八木山橋をどうしても夜に通らなければならなくなりました。
八木山橋は地元では自殺の名所として有名なため、日が暮れてから通るのは勇気がいります。できれば足を運びたくありません。
それでも原付で素通りすれば大丈夫だろうと思い、渋々出かけることにしました。

橋へ着いてみると、予想通りなかなかの雰囲気です。私の先入観からか、別世界の入口のような気もしてきました。
とりあえず、早く通り過ぎようと思いました。

橋を通っていると、視界の左隅に何か白いものが見えました。でも左側は橋の外側です。何かがいるはずがありません。
「何もいない。気のせいだ。」
無視してそのまま走っていると、その白い何かも一緒に移動してきます。
やめておけば良かったのに、気になった私はついその白いものを見てしまいました。

それは白い服を着た女の人でした。
宙に浮いていて、私に向かって手招きをしています。

「うわ~ヤバい!ヤバい!」

完全に幽霊でした。しかもいわくつきの場所で見てしまった…。
冷や汗がドッと吹き出し、突然意識がもうろうとしてきました。
気づいたら、バイクを止めてしまっていました。

絶対に近寄ってはいけない!
そう頭の中ではわかっているのですが、なぜか判断力が鈍っていて女性の幽霊に近づいていきます。
私は頭の中で、うる覚えのお経を繰り返し唱え続けました。

その時、橋の上を車のライトが照らしました。
そしてその車の運転手は橋の上で立ち尽くす私を見るなり、「どうしました?」と声をかけてきてくれました。
もう女の幽霊は消えていました。

偶然にも車の運転手はお坊さんで、事情を話すとちゃんとしたお経を唱えてくれました。
高いフェンスがあるとはいえ、あのまま引き込まれていたらどうなっていたのでしょうか…。
やはりあの橋は、普通ではないのだと思います。

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