その場にいた誰もがそう感じました。
その後はバイトどころではなくなり、上司の機転で即解散となりました。

家に妻と1歳ほどの子供を置いてきた私は、電話をかけてみるもやはり繋がりません。幸いにもバイト先と自宅は近かったので、早く帰って無事を確認しようと会社のロッカーに走りました。
仕事場は人の立つ場もないほどに荒れ果てていました。倒れそうにもなかった重量のある機械も倒れており、もし避難していなかったら…と考えるとゾッとしました。
電気もない暗闇の中、携帯の明かりで荷物を取り出した私は、一目散に自宅へと急ぎました。

会社から道路に出ると、目に飛び込んできたのは今まで見たこともない渋滞でした。なぜなら、信号がついていないのです。
動かない車を横目に、ひたすら家へと走りました。

「大丈夫か!?」
家のドアを開けてみると、足の踏み場もないほど物が散乱していました。そして「怖かった~」という嫁の一声を聞くなり、ただただホッと胸をなでおろしました。

とりあえず家にいてもしょうがないので、車で待機しながらラジオで情報を聞きます。
その時降り出した大粒の雪が、さらに異常気象を感じさせました。

「マグニチュード8.9の大地震」「落ち着いて避難を」「震度7」…
ラジオ局も混乱しているようで、同じ情報を繰り返し流すばかりでした。

するとその時、上空に飛んできたヘリコプターから大声でアナウンスが聞こえます。
「津波が来ていま~す!建物の高い所へ避難してください!」

え?津波?でもまさかここまでは来ないでしょ…。
耳に入った情報に半信半疑になりながらも、とりあえず近くの指定避難所である中学校に身を寄せることにしました。

中学校に入ると、人人人…。皆避難をしているようです。しかし不思議なのが、体育館ではなく校舎内へ案内されました。しかも3階より上の階へ。
この時、目の前の沿岸部で発生した大惨事を一体どのくらいの人が知っていたのでしょうか…。

情報源はラジオと携帯のインターネット。次第に日が落ちて暗くなり、蝋燭の明かりが灯されました。
配られた非常食を食べながら外を見ると、遠くに真っ黒な煙と真っ赤な炎が見えました。どうやら大規模な火災が発生したようです。
無力感と誰か助けてあげて!というすがるような思いで、私たちはただ見ていることしかできません。
ラジオから流れてくる情報は、耳を疑う内容でした。

「○○区(私たちの住んでいた所)の沿岸部では、数百人の遺体が…」
「津波で甚大な被害が…」

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