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李さんから聞いた怖い話・不思議な話

このまとめの作者が親戚の李さんから聞いた怖い話と不思議な話を掲載します。

更新日: 2019年11月12日

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この記事は私がまとめました

親戚の李さんは怖い話や不思議な話をたくさん知っています。それらの話を私の記憶だけに埋もれさせるのは惜しいと思い、ここに掲載する運びとなりました。

RichardGongさん

前置き-まずはこちらをお読みください。

表題の「李さん」は私の親戚です。苗字は「李」ですが、普段は日本名を使って生活しています。よく大陸や半島出身者の中に表札などにご自身の苗字と日本人名を併記している方々がいらっしゃいますが。李さんの家の表札には、日本人名だけが書かれています。李さんは普通の日本人です。
また、親戚の李さんは人数が多いため、以下に掲載した話の時代や場所は多岐に渡ります。この点、あらかじめご了承ください。
こちらに掲載した話は、本人のプライバシーを考慮して一部に仮名を使用しています。その上で本人から了解をもらい、ここに以下の話を掲載しています。

注意: このまとめに関して何らかの問題や損害、それらに類する事象が発生した場合、このまとめの作者はそれらに関する責任を負いません。この点をご理解の上、ご自身の責任の下でお楽しみください。

第18話 金素永(김 소영)

その少女は彼女の学校にもいた。これは、李さんの親戚の孫娘かひ孫娘の体験談。

初等学校の頃、彼女の学校にはある不思議な話があった。それは、ある少女の話。その少女は「金素永」といった。「金素永」は、日本で言えば「トイレの花子さん」に近い存在だ。ただし「トイレの花子さん」とその少女との相違点はいくつか存在する。そのうちの1つは、花子さんがトイレ限定なのに対し、その少女はどこにでも出没すること。またトイレの花子さんが日本全域で知られているのに対し、その少女はごく一部の地域や学校でしか知られていない。
それらの相違点の中で一番顕著なもの、それは「金素永」が幽霊と言うにはあまりにも身近で、恐怖の対象と言うよりは、どちらかというと精霊やおまじないの類に近かった。特に女子の間では、「金素永」に占ってもらうことが流行っていた。

彼女が体験した不思議な話というのも、その少女の占いに関すること。彼女はある日、友達の女子たちと放課後の教室でおしゃべりに興じていた。思春期に入るか入らないかの女子にとって、恋愛は背伸びして触れてみたいもの。子供同士でドキドキしながら恋の話をし、雰囲気が盛り上がった勢いで、友人の中の1人が言い出した。
「金素永に占ってもらおうよ」
そのとき話題に出たのが、ある男子のこと。その彼「朴正道(박 정도)」は勉強が得意で、おっとりとした男子。小太りでメガネをかけたその姿はイケメンからは程遠いものの、彼はその温和で優しい性格から、一部の女子の間で一定の人気を誇っていた。
「朴正道って、どんな人と結婚するのかな?」
結婚は遠い未来の話、そのくらい幼かった彼女たちは、早速占いを実行に移すことにした。彼女が占いに参加するのは、実は初めてだ。それでもその方法については友達との会話を通してすでに知っていた。彼女はロッカーにあるスケッチブックから紙を1枚取り出し、そこに鉛筆で占いに必要な文字列を書いた。後で消して紙を再利用するための、鉛筆というチョイス。母音と子音が並んで描かれた円と、その中央に書かれた「はい」「いいえ」。中央に硬貨を置いて、1人が
「金素永様、金素永様、悩める私たちのためにお越しください」
とお願いの口上を述べた。半信半疑だった彼女がひとりでに動き始めたコインに驚いたのは、言うまでもない。緊張を隠しながら、彼女はその後の展開を待った。
「金素永様、金素永様、朴正道の結婚相手を、私たちにお教えください」
コインは動き出した、ゆっくりと、1つずつ文字を指していくコイン。紙面を這い回ったコインは文字を指し終えると、「はい」「いいえ」の中間に来て、動きを止めた。
「え、うそ、朴正道の結婚相手って、A(李さんの親戚のその娘の名前)じゃん!」
全く予想だにしていなかった答えに、うろたえる彼女。しかしそんな戸惑いも一瞬のこと。
(きっと誰かがふざけて私の名前を指示したんだろう)
その場は盛り上がり、彼女も「えー、信じらんなーい」などと言って調子を合わせた。楽しい話として終わった、彼女が少女だった頃の、ある日のおしゃべり。彼女が朴正道を意識したのは、それが初めてだった。

夫との馴れ初めを聞かれても、初等学校で「金素永」に占ってもらったことは、誰にも話していない。あまりにも突飛な話だから、話す機会がなかったとのこと。
「ずっと、好きでした。結婚してください」
それが、今の彼女の夫、朴正道のプロポーズの言葉だった。
「運命って、本当にあるのかしら?」
2人は温かい思い出を育んできたのだろう。李さんの親戚の孫娘かひ孫娘のその彼女は、温かい笑顔でそんな話をしてくれた。

第17話 卒業式

卒業式の日を迎えた彼女。これは、李さんの親戚の孫娘かひ孫娘が体験した話。
その日は、彼女の中学校の卒業式。友達との別れは悲しいもの。出会いと別れは表裏一体。その年の卒業式も、涙を流す卒業生が、他のクラスにはちらほら。彼女のクラスでは、ほとんど全員が涙を流していた。それは、クラス皆の仲がよかっただけではない。1人、卒業を前に亡くなった女子がいたから。その女子は中学校3年生に上がってからすぐに、交通事故でこの世を去った。懸命に部活や勉学に励み、充実した毎日を謳歌していたその女子。当日、その女子の親友が遺影を持ち、皆で卒業式に臨んでいた。
永遠の別れ、とても悲しい卒業式だったのを、李さんの親戚の彼女は今でも覚えている。

あの卒業式から数週間が経ち、李さんの親戚のその彼女は高校生になった。まだ中学校の懐かしさが余韻として残っている頃、彼女は中学時代に仲のよかった友達から連絡を受けた。
「卒業式のビデオに、何か変な音が入ってるんだって」
寝耳に水のその出来事に当惑する彼女。別れの悲しさを包んだ思い出の宝石箱に場違いで取るに足りない石塊を混ぜられたことで、彼女の心に一種の不快感が水滴のように落ちて広がった。
知らせを聞いた週の週末、彼女はその友人と一緒に中学校に集まった。見慣れた校舎と見慣れた顔ぶれ。だいぶ早い同好会と怪談話に沸き立つ元クラスメートたち。かつての教室に集まった彼らはビデオテープの周りに集まった。ビデオを持って来たのは、元学級委員。ビデオの電源が入った。
再度流れる、卒業式の様子。早送りで彼らのクラスのところまで来た。
「…り…ず…ゆ…あ…」
ところどころで、人の言葉のような音が聞こえる。しかし、その音は周期的に繰り返される。参加者の誰かのしゃべり声が混じっていたら、同じ音が繰り返されることはないはず。
「実は私、この音を抽出して解析してみたの」
元学級委員は、親戚に動画を頻繁に投稿している人がいるそう。クラスの代表として学校から「変な音が入っている」という連絡を受けた元学級委員は、その親戚にビデオのことで相談したのだ。
「みんな、落ち着いて聞いてね」
彼女は卒業式の動画を止め、SDカードを取り出してビデオに挿入した。最初は機械音のみが流れた。そして、その声は聞こえてきた。
「みんな、ばかり、ずるい、ゆるせない、ゆるせない、ああああ…みんな、ばかり、ずるい、ゆるせない、ゆるせない、ああああ…」
それは、あの亡くなった女子の声。ビデオは同じ言葉をひとしきり繰り返し、再生を終えた。

温かい、大切な卒業式の思い出が一気に冷めた出来事だった。幸いなことに、李さんのその親戚の娘は無事とのこと、今のところは…

第16話 李家が頻繁にお世話になっている霊媒師

李家は頻繁に霊媒師にお世話になっている。これは、その中の1人の方についての話。その霊媒師は女性、年齢的には中年のはずだが、見た目は20代の若さを保っている。それが霊能力によるものかどうかは不明。何よりも特筆すべきなのは、その能力。彼女の霊能力の高さと特殊さを裏付ける出来事はいくつもあるのだが、その1つをここで紹介する。

その出来事というのは、悪魔祓いだった。ある日のこと、李さんの親戚の誰かが知人をその霊媒師のところに連れて行った。霊媒師がその知人を診た結果、その知人は悪魔に取り憑かれていることが判明。悪魔の間にもヒエラルキーが存在するらしく、その知人に憑いた悪魔は高位の者だった。普通の霊媒師がその悪魔と対決したならば、生きるか死ぬかの問題どころか、むしろ奇跡が起こらなければ死ぬ。そのくらい強い悪魔だったそう。ところが李さんのその親戚は彼女の能力の高さとその特殊さを知っていた。それが、李さんがその知人を彼女のところに連れてきた理由だった。
「あなたなら、悪魔祓いができると思って」
その親戚の人選は正しかった。その霊媒師は
「やれるだけ、やってみます」
と言いつつ、最終的にその知人に憑いていた悪魔をやっつけた。

では、何をしたか? それは、書けばいたって単純だ。彼女は最初に霊視でその知人に憑いている者が悪魔であることを認めた。次に、霊媒師はその悪魔に説得を試みた。
「その知人から離れて地獄に帰れば、何もしない」
という言い方だったそう。当然、知人に憑いていた悪魔は応じない。
「やむを得ませんね」

***
ここで、この霊媒師の霊能力の「特殊さ」について紹介する。彼女は除霊を行う際、悪魔や悪霊を使役する。陰陽師が式神と称して鬼を使うようなものと考えると、わかりやすいかもしれない。悪魔や悪霊と言っても、全てが根っからの悪というわけではない。ある時期は悪者だったが、今は改心しているというパターン、何らかのメリットがあるため彼女に従っているパターンがほとんどだ。一部には、彼女のファンになった悪魔もいるとのこと。
***

「やむを得ませんね」
彼女はそう言うと、彼女の後ろから黒い影が現れた。それはコウモリの翼を左右に1枚、その前側にカラスの翼を左右に1枚持っていた。影が形を成すにつれ、それは羊の頭を持ち、身体がいかつい体型の男性であることが視認できた。足はブタの足、つま先の辺りが割れており、ブタにしては長い(1m程度)尻尾が生えていた。身長は、2m程度。
「xxx、あれを滅せよ」
xxxは、彼女が使役するその悪魔の名前。李さんのその親戚はその悪魔の名前を聞き取れなかったとのこと。その悪魔は護衛のように彼女の前へと移動し、その知人と対峙した。するとその知人の身体が震え出し、先ほどの悪魔の出現と同様、黒い影がその知人の周囲を覆った。その影は形を成した。その姿は、漆黒の大蛇。ただ1つ、通常の蛇とは異なったのが、その大蛇は頭から枝分かれした大きな角を生やしていたこと。その角は髪の長い女性の上半身の形をしていた。2体の悪魔はにらみ合い、先に攻撃を仕掛けたのは、大蛇だった。大蛇は素早くその身をくねらせて羊の悪魔に突進し、蛇の頭の部分が相手の悪魔を一飲みにした。

勝負が決まったのは、次の瞬間。つい先ほどまで余裕の表情を浮かべていた大蛇の角の女性は苦悶の表情を浮かべ、断末魔の叫び声をあげた。その直後に大蛇の腹が裂け、中から羊の悪魔が飛び出した。のたうち回り、その場から逃げようとする大蛇。圧倒的な力の差を思い知らされたのだ。羊の悪魔は大蛇を追いかけ、捕まえた。
その先は、見るも無残な光景が繰り広げられた。わずかな抵抗と懸命な逃走を試みる大蛇と、肉を引き裂き、骨を砕き続けた羊の悪魔。辺り一面には大蛇の黒い血と、その黒い血に覆われた肉片がばら撒かれた。そして大蛇の動きが止まった頃、羊の悪魔は攻撃を止め、彼女の方に向けて合図を送った。いつの間に準備していたのか、彼女は手に銀色の剣を持ち、大蛇の角の女性のところへと歩いて行った。
「これより、お前を滅する。覚悟はいいな」
何も答えない、大蛇。答えるほどの体力が、残されていないのは明白だった。彼女は刀を振り上げ、まずは角の女性の頭、そして心臓、大蛇の目を刺した。それから彼女は大蛇の頭と角の女性を中心に銀の剣で切り刻み続けた。すると大蛇の身体は銀色の光で覆われ、辺り一面に広がった黒い血もろともその場から忽然と消え去った。
「悪魔祓いは、完了です」
羊の悪魔も消え、辺りは静寂を取り戻した。李さんのその親戚も、知人も、悪魔祓いと言えば大声でお祈りを繰り返す程度のイメージしか持っていなかった。まさかその女性霊媒師にそのような暴力的な光景を見せつけられると、彼らは予想だにしていなかった。

以上が、その霊媒師の霊能力の高さと特殊さの話。いろいろなタイプの霊媒師が存在していることを示す一件だった。

第15話 ダイエットの薬

李さんの親戚の孫かひ孫の話。中高生の女子には悩みが尽きない。人間関係や恋愛、勉強など、枚挙に暇がない。彼女もそんな高校生の1人だった。彼女の場合は、外見。
「もっとスリムになりたい」
というのが、彼女の悩みだった。彼女は別に太っていたわけではないのだが、年頃の女子の中にはモデルの体型に憧れを抱く者も多い。彼女もまた注目のモデルに憧れを抱き、
「自分もあんなふうにきれいになりたい」
と、日々目標とするモデルに近づくために努力していた。
彼女があのダイエットの薬に遭ったのはそんなとき。
「メッチャ効果高い漢方薬なんだって」
そんな噂を耳にした彼女は、休日、友達と一緒に怪しげな店へ行った。
「A子も、B代も、C美も、みんなココ来てるんだって」
周囲を見ると、満員ではないものの、店内には同じくらいの年頃の女子が何人もいた。中には見覚えのある顔も。2人は目的のブツが売られているコーナーに行った。
「これだって、その薬は」
その友達が手に取ったのは、「餓鬼玉」という薬。「ガキノタマ」と読むのだと、教えてもらった。彼女は友達の勧めもあってそれを購入し、帰宅後、早速服用した。

効果は抜群だった。みるみるうちに彼女は痩せ、憧れていたモデル体型を手に入れた。周囲から集まった羨望の眼差しに彼女が優越感を覚えたのも納得だった。しかしその代わりに、彼女はあるものを失った。彼女の食欲は満たされなくなった。いくら食べても太らないから、たくさん食べられる。たくさん食べても、満足できない。
「何かがおかしい」
食欲が満たされなくなり、徐々に擦り減っていく理性的思考。モデルのようなスリムな体型を手に入れた当初は彼女の虚栄心が満たされたものの、急速に減っていく体重は、確実に彼女の体力を奪っていった。
「本当に、大丈夫なの?」
友達が心配で声をかけてきたとき、彼女はすでにガイコツのようにやせ細っていた。彼女の身を案じた両親は彼女を霊媒師のところに連れて行った。
「間違いなく、餓鬼が憑いてますね」
そう言われ、餓鬼玉に思い当たった彼女。彼女はダイエットの薬について霊媒師に話した。
「おそらく、その漢方は不良品ですね。本来その漢方は、適度に痩せるためだけのもの。太りやすい体質の人にとって効果的な薬なんです」
霊媒師によると、不良品の餓鬼玉には餓鬼そのものが憑いているそう。服用した人間はやせ細って餓鬼と酷似した姿になり、餓死するそうだ。
霊媒師に除霊してもらい、彼女に憑いた餓鬼は追い出された。
「後日、餓鬼玉を持ってくるように。絶対に服用しないこと」

その一件で、彼女はごはんのありがたみを思い知り、餓鬼玉を服用する前のときよりも太った(この話を聞いた時点では、標準体型に戻っていた)。

第14話 余命10日

李さんの子か孫の体験談。その日も彼女はその夢を見た。夢の中の彼女は10代の女の子。目の前にいるのは、ランニングと半ズボンを着た、坊主頭の男の子。彼は小学生くらいの年齢だ。毎晩、彼は彼女に人差し指を突き付け、何かを叫ぶ。その後彼はゆっくりと両手の平を彼女の方に向ける。次の瞬間、彼女は後ろから大きな衝撃を受ける。いつの間にか周囲には水が満たされ、彼女は溺れる。下へ、下へ、彼女は沈んでいく。上から降り注ぐ日の光が消え、真の闇が訪れたところで彼女は目を覚ます。
「あと8日」
その夢を見始めたとき、彼は両手の指を全て広げていた。翌日、彼はそのうちの一本を内側に折っていた。それが何らかのタイムリミットであることは、彼女にとっては明白だった。なぜならその男の子は彼女の弟。戦時中、彼女は弟を栄養失調で失った。あと少しで戦争が終わるというときに、弟は亡くなった。
「ジョンフン(정훈)が、私を呼んでいる」
彼女はすでに70代。もう十分生きた。
「きっと、弟が私を迎えに来てくれたんだろう」
彼女はそう理解していた。夢に現れる場所は、彼女の生家の近くにあった公園。その公園はもう存在しない。
現在彼女は実家から遠く離れたところに住んでいる。戦争が終わり、高校を卒業した彼女は就職のために宮城に来た。以来、故郷に帰るのはお盆や正月程度。夫はすでに他界。子供も独立して上京した現在、彼女には思い残すことなど何もなかった。

運命の日は、刻々と近づいてきた。毎晩弟は夢に現れ、そのたびに広げた指の本数は減っていった。
7本、6本、5本…
その日に合わせて、彼女は久々の故郷へ帰ることにした。
「夢に昔遊んだ公園が出てきたのは、『最期に故郷へ来い』という弟からのメッセージなのだろう」
そう解釈した彼女は1人、電車に揺られながら故郷へと向かった。
最期のときを迎えるにあたり、旅館の中で居心地のよさそうな小さな部屋を予約した。少し歩けば全てのものに手が届く空間が、彼女にとっては心地よかった。そして最期の夜、彼女は床に入り、夢を見た。弟は目の前に拳骨を突き出し、彼女は水の中へと沈んでいった。

明くる日目を覚ました彼女はいつ迎えが来てもいいように、部屋の中でお茶を飲んで過ごしていた。
「もうすぐでおやつの時間だわ。いつ迎えが来るのかしら?」
そう思った矢先、運命の瞬間がやってきた。最初は大きく揺れる地面。揺れの次に来たのは旅館内の職員や他の宿泊客の話し声、足音、緊迫した空気。2011年3月11日の彼女は震災に遭遇したものの、太平洋側から遠く離れた故郷に帰っていた彼女は亡くなる前にテレビ越しに地獄の風景を拝むことになった。
余震、津波、廃屋、そして死体…
彼女が住んでいた地域は地震と津波で壊滅的な打撃を受けていた。もし弟が彼女を故郷に呼び寄せていなかったら、彼女はどうなっていたのだろうか。

その日以来、弟は夢に現れなくなった。宮城に戻ってきた彼女はボランティア活動に参加して復興に尽力し、充実した毎日を過ごしているそう。

第13話 呪いのAV

注意: こちらの「第13話」については卑猥な表現(下ネタ)があります。この点を了承の上で以下の文章をご覧ください。

李さんの親戚の孫かひ孫の友人が大学生の頃に体験した話。それは数年前のこと。その友人は李さんの親戚のその彼に、こんな噂を話した。
「『呪いのAV』って、知ってる?」
20世紀末に一躍有名になった呪いのビデオにあやかった噂かと思った彼は友人の話が信じられず、最初彼はその友人にからかわれているのだと思ったそう。しかし話が進むにつれ、件の「呪いのAV」が実在するか、そのAVが本当に超自然的な力を持っているかの真偽はともかく、少なくともその友人はその噂を信じていることがわかった。

肝心の噂の内容というのは、次の通り。
「呪いのAV」はインターネット上にアップロードされた動画。アップロードされたサイトは、「P*rn H*b」のように自分で撮影した動画で視聴者を集め、広告収入を得るというもの。今大流行のY*uT*beのAV版だ。その「呪いのAV」を観た人は、そのAVの虜になって生気を奪われ続け、1ヶ月後に死ぬというもの。何でもその「呪いのAV」を撮影した人はお金ほしさにたくさんの動画を撮影し、プレイが行き過ぎて亡くなったそうだ。その人のアカウントは消されたという話だが、なぜかその「呪いのAV」だけが生き残り、オンライン上を彷徨っているという話。

さらに話は進み、その友人の話では実際に犠牲者が出たそう。そしてその犠牲者は李さんの親戚のその彼も知っている先輩だった。その先輩はその友人とサークルが一緒だったため、噂の内容を聞けたのだ。
「とにかく、AVを観るときは『呪いのAV』に気を付けないといけないな」
友人のその言葉と共に、その話は締めくくられた。

それから1週間後だった、その友人が怯えた声で彼に電話をしてきたのは。
「ヤバい、俺、『呪いのAV』を観たかも」
「観た人が亡くなる動画」という理由もあるので、その内容はほとんど知られていない。実際に中身を聞いたことのある人は限られており、その友人も中身を見るまではほとんど何も知らなかったほどだ。ただ、「呪いのAV」は高品質で、観た者がその動画から離れられなくなるほど魅力的であるそう。一度その動画を見始めたら視聴者はその動画に惹きつけられ、ほとんどの人が最後まで見てしまうのだという。
その友人の場合も同様、動画を最後まで観たそうだ。その日以来、友人は毎晩鮮明な夢を見るようになった。その一連の夢の中で友人は同じ女性と淫行をしていた。日ごとに異なるプレイはどれも激しかったので彼は消耗し、夜の寝つきは格段に悪くなった。目を覚ますと友人は歩くのがおっくうに感じられるほどの疲労感を感じていた。その友人の変貌ぶりは周囲の目からも明らかで、友人が彼に電話をかけてきたときには、すでに頬がこけ落ち、目の下に濃いクマができ、何日も満足な睡眠が取れていないことは明白だった。
そこに加えて彼が心配したのは、友人の行動の変化だ。その動画を観た日から、その友人は毎晩のように繁華街をぶらつき、その夜相手をしてくれる女の子を探すようになった。友人はお金を浪費し、毎晩とっかえひっかえ違う女の子とベッドを共にしていた。そんな生活が10日くらい続いたとき、つまり彼がその友人から電話を受けてから2、3日が経った頃、友人の相手をした女の子のうちの1人からこんな話を聞いた。
「プレイの後、彼がシャワーを浴びているとき、突然浴室から悲鳴のような、大きな喘ぎ声が聞こえました。恐る恐るドアを開けると、彼は右を向いて、背中を反らして、大量に射精していました。Aさん(友人の名前)は恍惚の表情を浮かべて口角からよだれを垂らしていて、まるで誰か別の女性に絡みつかれ、愛撫されているような光景でした」

それからさらに1週間が経過した頃に、李さんの親戚のその彼はその友人の元を訪れた。その頃にはすでに友人は大学へ来ていなかった。彼以外の学生は友人が「呪いのAV」を観たことを知らなかったので、まじめに通学していたその友人が大学にいない理由が全くわからず、戸惑っていた。彼が友人と会ったとき、その友人は死人のように顔が青く、生気を失っていた。立っているのがやっとの状態。
「今度、一緒に行きたいところがある」
次の週末だった、2人が霊媒師の元に来たのは。霊媒師は友人を呪いから解き放ち、無事に生還した。

「危ない状況だった。Aさんに憑いていたのは、女性の悪霊。あと1日か2日遅かったら、Aさんはその悪霊に生気を搾り取られ、亡くなっていたかもしれない」
霊媒師からそう伝えられ、2人とも背筋が凍る思いがした。

みなさんも、変な動画を観るときは、ご注意ください。

第12話 逆転の発想

李さんの親戚が実際に実践した話。その親戚のおじさんは不動産屋を営んでいて金持ち。アパート・マンションの売買や賃貸、新築マンションの建設など、不動産関連の事業は何でも手掛けているやり手ビジネスパーソンだ。そんな剃刀のように頭の切れる人なので、問題解決の方法も他の人では思い浮かばないような斬新なものが多い。ここで紹介するのは、その中の1つ。

そのおじさんが運営するものの中に、学生寮がある。男子学生用と女子学生用があるのだが、これは男子学生寮の話。学生寮の中には異性を連れ込むのを禁止しているところが多い。その理由は当然、若気の至りが行き過ぎないようにすること、行き過ぎて犯罪行為に発展しないようにすることだ。そのおじさんは将来ある若者の健全な成長ために、寮内の雰囲気、特に寮生の素行には注意を払っていた。しかしそれでも隙はできてしまうもの。ある日、寮生が彼女を連れ込むという事件が発生した。これに頭を悩ませたおじさんは解決策を考えるものの、一向に効果的な方法を考案できずにいた。そんな折だった、おじさんが奥さんからある噂話を聞いたのは。
「近所に事故物件がある。その物件には、婚約者に不倫された挙句、婚約破棄された女性がいた。その女性は自殺した。以来その物件では、自殺したその女性の霊が出現するようになった。その霊は女性の住人の元に現れ、最終的にその住人を追い出すまで苦しめる」
普通なら怖い話で終わっていたであろうその話も、おじさんにとっては天の助けに聞こえた。

翌日、おじさんは早速懇意にしている霊媒師のところへと向かった。その霊媒師はおじさんの相談を聞き、最初は驚き、当惑したそうだ。
「幽霊を、ある場所から別の場所に移したい」
それが、おじさんの相談内容だった。具体的な案は、
「近所で噂になっている事故物件に住む、その自殺した女性の幽霊を、おじさんが運営する男子学生寮に移す」
というもの。おじさんの家族は寮とは別に所有する自宅(豪邸)に住んでおり、その女性の幽霊は男性に対しては危害を加えない。つまり、寮生の男子学生が女子を連れ込んだときにその女性の幽霊が女子を追い返すことが期待できる。これにより、男子学生たちは自然と女子を連れ込めなくなるという仕掛けだ。霊媒師は逡巡した結果、おじさんの提案を受け入れることにした。

数日後、おじさんと霊媒師は件の物件へと足を運んだ。霊との交渉は、霊媒師が担当した。これを読んでいる読者の皆様の多くが、その女性の霊もおじさんの案に当惑したものと想像していると思います。それでも交渉の結果、その霊はおじさんの提案を承諾したそうです。

以来、その男子学生寮では異性を連れ込む寮生がいなくなったとのこと。今もその寮は存続しているそう。

第11話 バイト先での体験談

李さんの親戚の孫かひ孫が体験した話。大学生のとき、彼女はピザ屋でアルバイトをしていた。飲食店だと安く、運がよければタダで飯にありつけるという魂胆で始めたピザ屋のバイト。初めは配達や調理現場が忙しく、バイトが終わるたびに疲労困憊していたものの。慣れてくると楽しく働ける、いい職場だった。人間関係にも恵まれ、大学生活との両立も上手くいったので、彼女は日々の生活に満足していた。
そんな折だった、彼女があの注文を受けたのは。

彼女が働いていたバイト先ではネット、アプリ、電話から注文を受け付けていた。ほとんどの注文がネットだったこともあり、彼女は電話注文への応対に慣れていなかった。
その日、珍しく電話注文を受けた。応対したのは彼女だった。
「xxピザを1つ、お願いします」
か細い声だった。声の主は住所と名前を伝え、電話を切った。いつも通り彼女は調理担当に注文内容を伝えた。「はいよ」という威勢のよい声。店長が
「届け先はどこ?」
と訊き、彼女は先ほどメモした電話の内容を伝えた。その瞬間、明るくて賑やかな店内が、一斉に凍りついた。彼女はその店で一番の新参者だったため、注文を伝えただけで空気がおかしくなったことに、正直驚くしかなかった。ただ1つわかったことと言えば、彼女が伝えた住所か名前のどちらかに何か問題があるということ。店長は
「わかった。どうもありがとう」
と言うと店員を通常業務へと戻し、店内は賑やかさを取り戻した。それでも彼女は見逃さなかった、どの店員の顔にも、緊張の色が浮かんでいたところを。

その日の配達当番は彼女だった。彼女は先ほどのか細い声の主が住んでいるところにピザを配達した。到着した先は、普通のマンションの1室。彼女はインターフォンを押し、ピザの配達に来た旨を伝えた。ドアが開き、中から出てきたのはやせ細った白い腕。その手には代金が握られていた。彼女はドアの開口部から中を覗き込むと中は暗く、腕の主の姿はほとんど見えない状況だった。
「ピザは、ドアの前に置いておいてください…」
気味悪さに寒気を覚えながらも彼女はピザを置き、料金を受け取った。
「ありがとうございます」
と言い終わるか終わらないかのうちに、部屋の主は中に入ってしまった。一方の彼女はその部屋の主が男か女かすらわからない状態であったこともあり、恐怖を感じてすぐにその場を離れた。

翌日も、同じ電話を受けた。今度は別の人が、同じピザの注文を。注文を受けた瞬間、その同僚の顔が青ざめたのを、今でも覚えているそう。その人は電話機を置くと、
「xxピザです。1つ……」
昨日と同じ凍った空気が奔った。その日、彼女は調理担当だったが、
「悪いけど、配達お願いしてもいいかな?」
と、配達業務を押し付けられた。嫌々ながらも彼女は引き受け、昨日と同じ住所に向かった。
到着すると、彼女はマンションの部屋の前に、昨日と同じピザの入れ物が置かれていることに気づいた。見たところ、中身に手を付けた痕跡がない。客の奇妙な行動に怯えながらも彼女は勇気を出してインターフォンを押した。
「ピザは、ドアの前に置いておいてください…」
前の日と同じやり方。彼女は代金だけを受け取ってそそくさとその場を去った。

そんな配達が1週間も繰り返されると、誰だって疑問を抱くもの。彼女は店長に、その電話とその住所について問い質した。
「僕も正直、本当のところはよくわからないんだ」
と、店長は答え、こんな話をしたそうだ。

その電話の主は毎回同じピザを注文する。それは毎年、一定期間繰り返される。その期間は、大体1週間から長くて1ヶ月。ピザの中身は手を付けられない。季節はまちまちだが、一連の配達が終わった後は半年以上の期間が空く。店長自身は、昔そのマンションのその部屋で凄惨な殺人事件があったという噂を聞いただけとのこと。その店で一番長く働いていた人も、詳細は知らなかったそうだ。店員たちは皆気味悪がっている。しかし代金を支払われている以上、配達しないわけにはいかない。そのため毎年、その一連の配達は繰り返されているそうだ。

店長と話してから数日後、その年の配達は終了した。2、3ヶ月後に彼女は別のバイト先を見つけ、そのピザ屋を辞めたそうだ。

第10話 Captured by deep web

これは李さんの親戚の孫かひ孫が体験した話。当時彼はカナダに留学しており、平日は勉強、休日はパーティで多忙な日々を送っていた。そんな状態だったので、純粋に自分1人の時間はほとんどなかった。そんな生活が功を奏し、日本ではどちらかと言うと物静かだった彼も自然と話術やコミュニケーション力が向上した。
カナダに来てから1年が経った頃、留学生活にも慣れたあたりで彼はその噂を入手した。
「I’ve got a good website. (和訳: いいウェブサイトがある。)」
以前から彼はあるウェブサイトが学生の間で流行していることは知っていた。しかし元来安全志向だった彼は危ないと思われるサイトにはアクセスせず、また外出時も危険地帯と言われているところにも行かなかったため、危険とは無縁な生活を送っていた。その噂を教えた友人は、彼が安全志向なのを知っていた。その友人は彼に
「You'll regret for the rest of your life if you miss it. (和訳: あなたがそれを見逃した場合、あなたはあなたの人生の残りの間、後悔するよ。)」
と言い、強く勧めてきた。友人のそんな押しもあり、当時たくさんの学生がそのサイトを見ていたこともあり、このときは好奇心に勝てなかった。その夜、友人からURLが送られ、彼はそのサイトにアクセスした。

パソコンの画面に映し出されたのは、暗い部屋。天井、床、壁が全て灰色のコンクリートで覆われたその部屋は地下室のように見える。画面中央には椅子に座った白人女性がおり、彼女は椅子に縛られている。襟付きのシャツにグレーのスラックスというOL風の出で立ち。目隠しをされ、口にビニルテープを巻かれた状態で、彼女はくぐもった声を出しながら身体を揺らしていた。明らかに、助けを求めている雰囲気。そんな彼女のわずかな抵抗もむなしく、助けがやってくる気配はない。
1分ほどが経過し、1人の人が入ってきた。全身黒のジャージに覆われたその人は頭に黒い頭巾のようなものを被っていたので、顔も判別できない。体型から、なんとなく中肉中背の男性に見えた。その男性は小さいダンボール箱を抱えており、蓋が閉まっていて中が見えない。その人は画面の方に近づいていき、箱の蓋を開けて中を見せた。
衝撃が、画面を見ていた彼の背を奔る。そこに入っていたのは、ムカデ、ナメクジ、ミミズ、クモ、その他種々雑多な生き物。箱の中に入っていた生物の全てが「吐き気を催す生き物」に分類されることは明白だった。その人は蓋を開けたまま画面を離れ、女性の方へと近づいた。するとその人は、箱の中から中身を取り出した。最初の生き物は、ナメクジ。その人はそのナメクジを彼女の肩に乗せた。冷たく、粘り気のあるその感触に怯える彼女。声のボリュームが一段、上がった。画面越しに見ていても首筋に寒気を感じる彼。
次に取り出された生物は、ムカデ。その人はそれを彼女の首筋に置いた。襟から入り、彼女の背中から服の下に侵入するムカデ。彼女は何をされているのかを理解したようだ。口を塞がれた状態でも、彼女の声が悲鳴であることは明白だった。その人は次々に生き物を取り出し、彼女の身体に置いていった。
ミミズ、イモムシ、クモ、カエル…
箱から出てくる醜い生き物は彼女の身体の上や服の下を我が物顔で這いまわっていた。その人がそれらの生き物を置く場所も、彼女の身体の外側から、だんだんと内側へと移動していった。
足首、膝、頭上、鼠径部、腹部、胸の上、胸の谷間、スラックスの内側(陰部)。
生き物が彼女の身体の内側へと迫るにつれて彼女の悲鳴は大きくなり、視聴者である彼にも彼女の感じている恐怖が伝わってきた。そして、それが彼の興奮を掻き立てたのも、事実。ディープウェブが流布する理由を、彼は肌で理解するに至った。

その動画自体は十分程度の時間で終了したが、彼にとってはまるで1時間のように感じられ、その余韻は床に入った後も残っていた。

その日以来、彼はディープウェブにハマったそう。女性の身体を虫が這う動画、美女が口の中で昆虫やミミズ、ナメクジを自身の舌と絡み合わせる動画、女性が男性の局部を傷つける動画。画面の前で繰り広げられる異常な光景は恐怖を掻き立て、それ以上の性的興奮が彼の身体を加熱し、苛んだ。ディープウェブに病みつきだった日々は数か月続き、その恐怖はやがて彼のすぐ近くへと触手を伸ばした。

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