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パンデミック~世界の終わりの始まりだからこそ触れたい本、映画

何が本当なのか? 検査しないから汚染数が少なく見えるのか、汚染数が少ないから検査しなくて済んでいるのか。ニワトリが先か卵が先か。大混乱するコロナウィルス渦、このような事態に人類がどう立ち向かってきたのか、過去の名作から振り返ります。

更新日: 2020年03月23日

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この記事は私がまとめました

図書館司書、国語講師、編集者。確かなデータと取材からお届けしています。

有川杉菜さん

謎のウィルス禍、疲弊していく人類

はじめに、マスクとか、トイレットペーパーとか、あってあたりまえのものが買えなくなった。十四歳の少女ネルは、何もわからない。ただ、スーパーの棚が空になっていくのを見つめているだけだ。
そんなある日、母親が感染症で亡くなる。しかし病院は閉まっていて、医者もいない。薬も買えなくなっていた。一つずつ物が亡くなる世界で、少女と姉、そして父親は、家にあるモノで生活していく。やがて電気も使えなくなり、少女ネルの情報源は家に残された古い百科事典だけになる。百科事典を開けば、外に生えている草のどんなものが食べられるのか、わかったから。
学校はとうに閉鎖されている。政府の命で外にも出られない。しかし「このままでは死んでしまう」と少女ネルは外に出る決意をする。そこに広がっていたのは人ひとりいない、静まりかえった世界だった。
やがて父親も亡くなる。残された幼い姉妹のサバイバルが始まる!

運河の街で芸術は菌に負けていく

貴族の香漂うイタリアの保養地、ベニス。静養にやってきた作曲家は、北欧から旅行に訪れた貴族一家の長男に目を奪われる。波打つ金髪、優雅な笑み、静かな立ち居振る舞い。一日また一日と日を伸ばすうち、町中が消毒されていく。目の前でばったり倒れる男も。どうやら死病が席捲しているらしいとわかるが、作曲家は、美少年と離れがたく、コレラとわかっていても運河沿いのホテルに滞在し、少年が無邪気に海でたわむれるのを見つめながら至福の死を迎えていく。

パンデミックはいつかは去る。ペストも気が済めば離れていく

致死率50%というおっそろしい病だったペスト。ねずみが媒介するというのも、不気味です。
20世紀に抗生物質が発見されるまで、中国からヨーロッパまで猛威を振るい、ペスト菌を殺傷する効果があるといわれるスパイスを手に入れるため、人類はアフリカやらアメリカやら世界へ出かけ、戦争までしました。そんなにも恐ろしいペスト菌とどう戦ったか――という話なのですが、この本のすごさは、ペスト菌が暴れるにまかせていること。一通り殺し終わった後は、ペストは生き物のように屍体から離れていき、感染は治まるのです。
 もしも感染症がなかったら、地球はとっくに人口爆発していたのではないか。としたら、生き残る(感染しなかった人)人はどんな人なのか。神に選ばれた人物なのか。こんなところから、「優れた人物は自動的に菌も病も寄らず、強く生き残る」という差別的優生学が生まれたのだと思います。病気の始まりから終わりまで、克明に描かれてとにかく怖いですが、最後、不思議にすがすがしい感動が訪れます。

感染症の歴史は、動物と人間の交流の歴史

放射能汚染で地下に潜った人類。抵抗力をつけた猿が人類を駆逐していく西暦3000年がこの大人気シリーズの一弾ですが、この2014年制作のバージョンは、なぜ人類が消滅したかの理由を猿ウイルスのパンデミックとして描いています。医療も検疫体制も崩壊して人類は殺し合い、生き残ったのは猿だけ。犬、鳥、ヘビ、アルマジロ、猿、鼠など、様々な動物と人間は闘い、彼らがもつウィルスや菌を駆逐してきました。闘いが凝縮されているともいえるエンタテインメント。

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